原核生物
原核生物(げんかくせいぶつ、ラテン語: Prokaryota プローカリオータ、英語: Prokaryote プロカリオート)は、細胞核を持たない生物のこと。構造的に真核生物よりも遥かに小さく、内部構造も単純である。性質の異なる真正細菌と古細菌の2つの生物を含んでいる。
かつて原核生物は細菌(バクテリア)と同義語とされ、五界説では一括してモネラ界に分類されていた。しかし、リボソームRNAなどをもとにした系統解析では、原核生物は大きく異なる2つのグループ、真正細菌(バクテリア、狭義の細菌)と古細菌(アーキア)より構成されることが示され、また古細菌は真正細菌よりむしろ真核生物に近いことがわかった。すなわち、このことは原核生物は大きく異なった二つの系統からなり、加えて生物界を真核生物と原核生物に二分する分類が必ずしも実際の系統関係を反映しているとは限らないことを意味する。
ラン藻や大腸菌は真正細菌であり、通常細菌と呼ばれる生物は全て真正細菌である。古細菌には海底火山の熱水鉱床付近に生息する超好熱菌、陸上の温泉などに生息する好熱好酸菌、死海などの高塩濃度の環境に住む高度好塩菌、ウシの胃などに存在するメタン菌がある。
性質・構造
歴史的に原核生物は細菌、すなわち真正細菌と同義語として扱われてきた。原核生物の性質や構造として説明される場合も実際には真正細菌のものである場合が多い。
真核生物と比較した場合の特徴は、遥かに小さいこと(多くの場合1-5μm)、細胞核やミトコンドリアを初めとする細胞内小器官が殆ど見つけられないことが最も大きい。この他に微小管を持たず、細胞質流動、エンドサイトーシスを行わない。細胞分裂の際にFtsZリングが出現する、有糸分裂を行わずDNAは細胞膜に付着して移動する、リボソームが70S(真核生物は80S)であることなど幾つか見つけられる。原核生物は非常に多様なので例外もまた多いが、基本的には上記の形質を保存している。そのバイオマス(生物量)は真核生物の数倍から数十倍に達するとも言われている。
原核生物は下等な生物であると思われがちだが、多様な生物種が存在を脅かす現環境下で生き延び、非常に早い増殖を可能にするために無駄を省いたシステムをもつ現生原核生物は、高度に特殊化しており原始的な生物とは大きく異なっていると想像されることもある。だが、普通は、古細菌は太古の時代のものとさして違いはないだろうと見なされている。実際、古細菌の化石が見つかっているが、現在の古細菌と大きな違いはないようだ。