乱視
乱視(らんし)は、目の屈折異常のひとつ。角膜や水晶体が歪んで回転体でなくなる事によって光の屈折がずれ、焦点が合わなくなる。
生物の目は完全ではないため万人が乱視の要素を持っているが、軽微な場合は問題がない事が多い。ものが多重に見えるなど視覚に問題が生じる場合は、屈折補正を要する。
正乱視
光が2か所で焦線を結ぶ乱視。ほとんどの乱視は正乱視に分類される。
矯正
乱視は、眼鏡、コンタクトレンズ(ハードコンタクトレンズもしくはトーリックのソフトコンタクトレンズ)、レーシックで矯正できる。
円柱レンズを使えば、乱視自体は矯正できる。円柱レンズによって正常視となる乱視を単性乱視という。
単性乱視でない場合は、円柱レンズによって近視または遠視となるので、さらに凹レンズまたは凸レンズによる矯正が必要になる。この2枚のレンズの機能を1枚で果たすトーリックレンズを使うことが多いが、近視・遠視用コンタクトレンズと乱視用眼鏡を併用することもある。
通常のコンタクトレンズは角膜上で自由に回転するが、乱視用コンタクトレンズは角度を固定しなければならないため、特定の角度で安定する工夫がなされている。
軸角度と度数
円柱レンズで補正できることから分かるように、乱視には方向がある。これを軸角度という。視力矯正の場合には軸角度をA(Axis)で表し、レンズの軸が水平方向の場合A=0度、鉛直方向の場合A=90度と決められている。A=0付近の乱視を直乱視、A=90付近の乱視を倒乱視、それ以外を斜乱視という。
レンズの強さ(度)はC値(cylindrical value)で呼ばれる。C=0.25D、A=77度の場合、矯正するレンズは
- C -0.25 A 77
と表す[1]。
乱視の軽いうちは近視と同じような症状を示すが、C値の大きさが-1.00Dを超える強い乱視になると、遠くも近くも見えづらくなる。
検査
視力検査では、放射状の線からなる乱視表を使って検査する。乱視なら、ピントが合っていない方向の線ははっきり見えるが、ピントが合っている方向の線はぼやけてあるいは二重に見える(ピントの合う合わないと線がぼやけるぼやけないは逆の関係にある)。正乱視の場合、最もはっきり見える線の方向(上下を0度とする)が乱視の軸角度となる。つまり、直乱視(A=0)なら縦線、倒乱視 (A=90) なら横線がはっきり見える。
ランドルト環(いわゆる「C」字)でも、乱視を検査できる。乱視ならば、環の切れ目の角度により視力に差が出る。ただし、正確な検査(特に軸角度)は難しいので、乱視表と併用するか、クロスシリンダーを使う。
クロスシリンダーは、2枚の円柱レンズを垂直に重ねた効果を持つ(1枚の)レンズで、裏返すと縦横が逆転するよう45度の角度に柄が付いている。乱視なら、クロスシリンダーの表と裏どちらを使ったかで視力に差が出る。また、クロスシリンダーをある角度にしたとき最も視力がよくなり、その角度で乱視の軸角度がわかる。
不正乱視
どこにも焦点が結ばれない乱視。角膜の異常により発生する事が多い。不正乱視がまったく無い人もほとんど居ないが、補正無しあるいは近視・遠視・正乱視のみの屈折補正で1.0以上の視力が出れば通常問題にしない。
ハードコンタクトレンズにより補正可能だが、コンタクトレンズが使用できない場合、屈折補正の効果が低い場合は外科手術を要する。