リュードベリ定数
テンプレート:物理定数 リュードベリ定数(リュードベリていすう、テンプレート:Lang-en-short)は、原子の発光および吸収スペクトルを説明する際に用いられる物理定数である。一般に、R∞ で表される。名称はスウェーデンの物理学者ヨハネス・リュードベリに因む。
2010CODATA によるリュードベリ定数の値は
- <math>\begin{align}R_\infty &= 10\;973\;731.568\;539(55)\; \hbox{m}^{-1} \\
&= 1.097\;373\;156\;8539(55) \times 10^7\; \hbox{m}^{-1}\end{align}</math>
である[1]。
定義
リュードベリは19世紀末に観測結果からリュードベリ定数を求めたが、20世紀に入り量子力学が発展すると、ボーアやゾンマーフェルトによって理論的に導出できる値であることが示された。
ボーアの原子模型によれば、リュードベリ定数は、電子の質量 <math>m_e</math>、電荷素量 <math>e</math> 、光速度 <math>c</math> 、プランク定数 <math>h</math> 、真空の誘電率 <math>\epsilon_0</math> を用いて、
- <math>R_\infty =\frac{m_ee^4}{8ch^3\epsilon_0^2}</math>
と書き表せる。
微細構造定数 <math>\alpha</math> を用いると、
- <math>R_\infty = \frac{\alpha^{2}m_{e}c}{2h}</math>
と簡略化できる。
また、ハートリーエネルギー <math>E_h</math> を用いて、
- <math>R_\infty = \frac{E_{h}}{2hc}</math>
とも書くことができる[2]。
水素原子のスペクトル
水素原子の線スペクトルについて、
- <math> {1 \over \lambda} = {\nu \over c} = R \left( {1 \over {n^2}} - {1 \over {m^2}} \right) </math>
という関係が成り立つ。
この時、上式右辺の係数<math>R</math>がリュードベリ定数である。ここで、 <math>\lambda</math> [m] は光(線スペクトル) の波長、 <math>\nu</math> [Hz] は振動数、<math>c</math> [m/s] は光速、<math>n</math> 、 <math>m</math> は適当な整数である(但し、 <math>m >n</math> )。
整数nに関して、
- n = 1、m = 2, 3, 4…: ライマン系列(1906年) (121.6nm 遠紫外線領域)
- n = 2、m = 3, 4, 5…: バルマー系列(1885年) (656.3nm 紫外可視光領域)
- n = 3、m = 4, 5, 6…: パッシェン系列(1908年) (1875.1nm 赤外線領域)
- n = 4、m = 5, 6, 7…: ブラケット系列(1922年) (4050.0nm 近赤外線領域)
- n = 5、m = 6, 7, 8…: プント系列(1924年) (7460.0nm 遠赤外線領域)
- n = 6、m = 7, 8, 9…: ハンフリース系列(1953年) (12370nm 遠赤外線領域)
と呼称される。
水素原子以外での重要性
原子や分子において、その中の電子の1つを主量子数 <math>n</math> の大きい原子軌道に励起すれば水素型の励起状態となる。この状態をリュードベリ状態といい、その状態にある原子をリュードベリ原子という。
リュードベリ原子において、軌道半径は <math>n^{2}</math> に比例して非常に大きく、原子・分子で最も簡単な系でありながら、長さ・時間・エネルギーの尺度について基底状態の原子・分子から大きくかけ異なる性質を示す[3]。