宇宙葬
宇宙葬(うちゅうそう)は、故人の遺骨などをカプセルなどに納めてロケット等に載せ、宇宙空間(多くは地球を周回する軌道上)に打ち上げる散骨の一形態。
概要
打ち上げるロケットには容積・質量の制約があることから、多くの例ではシリンダー状の容器に数グラムの遺骨を装填し、数十ないしは数百人分の遺骨を同時に打ち上げる方法がとられる。2004年に行われた例では150人分の「散骨」が行われた。打ち上げに用いるロケットは、費用削減のため既存の商業ロケットを転用、格安プランでは他の衛星を打ち上げる際に相乗りする場合もある。
「宇宙葬」とはいうものの、実際にはロケット能力の制約などによって遺骨は地球の重力圏を離脱できず、地球周回軌道に乗せられる事が多い。そのため「スペースデブリの増加につながる」として、この行為に対する批判もある。ただし、これらの遺骨は上層大気から受ける抵抗によって徐々に高度を下げ、最終的には大気との空力加熱によって結果的に「火葬」され、場合によっては流星となりうる。
この発展形としては、人工衛星に遺骨を搭載するもの、月面や外宇宙に対して遺骨を打ち上げる例もある。シューメーカー・レヴィ第9彗星の共同発見者であるユージン・シューメーカーは1997年に交通事故で急逝したのち、2005年に遺骨が探査機ルナ・プロスペクターにより月に送られた。これは月面に対して遺骨が送られた初の例である。また、冥王星の発見者クライド・トンボーは1997年の死後、遺骨の一部が2006年に打ち上げられた冥王星探査機ニュー・ホライズンズに搭載された。これは外宇宙に向けて遺骨が打ち上げられた初の例である。外宇宙や他の惑星へ向かう衛星は重量制限が厳しいため、現在は何らかの功績を残した著名人に限られている。
歴史
初の宇宙葬とみられるものは、空中発射型ロケットのペガサスロケットによって1997年4月21日に行われた。このロケットにはジーン・ロッデンベリーなど24人分の遺骨が格納されており、カナリア諸島の上空11kmから発射された。このロケットは遠地点578km・近地点551kmで公転周期96分の楕円軌道に乗り、2002年5月20日にオーストラリア北部に落下した。
次の宇宙葬は前記のユージン・シューメーカーのものであり、1998年1月7日にアテナロケットを用いて月面に対する科学調査と同時に行われた。このロケットは1999年7月31日に月の南極付近に衝突した。
他に、次のような例がある。
- 1998年2月10日・30人分・トーラスロケットによる打ち上げ・地球周回軌道
- 1999年11月20日・36人分・トーラスロケットによる打ち上げ・地球周回軌道
- 2001年9月21日・43人分・トーラスロケットによる打ち上げ・地球周回軌道
- 2012年5月22日・ファルコン9による打ち上げ(ジェームズ・ドゥーアン、ゴードン・クーパー、ランディ・ヴァンウォーマー 他)[1]
- この2012年5月のフライトは同社の11回目の打上げ[2]。
フィクションでの宇宙葬
宇宙を舞台とした諸作品において行われる、架空の葬儀方法の一つ。日本の場合、アニメ『宇宙戦艦ヤマトシリーズ』に代表されるように、宇宙船での長期航海中に乗員が死亡した場合に行われることが多い。死亡した者の遺体を納めた棺を宇宙船などから宇宙空間へ流すことが多く、水葬のイメージを宇宙に移転したものとも言える。
脚注
- ↑ 「スター・トレック」俳優の遺灰、宇宙へ (CNN.co.jp、2012年5月25日)
- ↑ テンプレート:Cite news
外部リンク
- Elysium Space Inc. - 日本でも販売を行っているアメリカの宇宙葬業者
- Celestis - アメリカの宇宙葬業者
- ㈱銀河ステージ - Celestisの日本代理店
- WIREDjp 低価格になって人気集める「宇宙葬」
- 東洋経済オンライン「宇宙葬がお墓と同じ存在になる日がくる」
- 日経ビジネスオンライン 20万円の格安「宇宙葬」を日本でも 元NASA技術者が提案する異色の「おくりかた」