ホッコクアカエビ
テンプレート:生物分類表 ホッコクアカエビ(北国赤海老 Pandalus eous)は、エビ目(十脚目)・コエビ下目・タラバエビ科に分類されるエビの一種。北太平洋の深海に生息し、重要な食用種として漁獲される。アマエビ[1](甘海老)、ナンバンエビ[1](南蛮海老)とも称される。
特徴
体長は12cmほどで、和名の通り全身がピンク色から赤橙色をしている。「ナンバンエビ」という別名は、外見が赤く熟した唐辛子の実(別名ナンバン)に似ることに由来する。他のタラバエビ科のエビと比べると体や脚が細長く、甲が柔らかい。額角は細長く、頭胸甲の1.5倍以上ある。また、6つある腹節のうち、3番目の腹節の後半部に上向きの小さな突起があり、腰が曲がっているように見える。
島根県以北の日本海沿岸から宮城県沖の太平洋、オホーツク海、ベーリング海、カナダ西岸までの北太平洋に広く分布する。日本海は生息の南限に当たる。
日本近海では水深200-600mほどの深海砂泥底に生息し、生息至適水温は0 - 8℃、下限水温は-1.6℃とされている。高緯度海域では100m程度の水深にも分布する。食性は肉食性で、小型の貝類や甲殻類、多毛類などを捕食する。天敵は人間の他にも頭足類やタラ、アコウダイ、サメなどの肉食魚がいる。また、鰓腔にエビヤドリムシが寄生し、頭胸甲の一部が黒くふくれあがる場合がある。
春から夏にかけてが産卵期で、南の地方ほど早い。ただし日本海側の個体群は隔年でしか産卵しないことが知られている。卵は直径1mm前後の球形で、一度に2000-3000個を産卵し、抱卵期間は約10ヶ月でメスは受精卵を腹脚に抱えて孵化するまで保護する。水深200 - 300mまで移動し、卵(幼生)を放出する。生まれた幼生は遊泳脚をもち、プランクトンとして浮遊生活を送る。他のタラバエビ科のエビと同じく雄性先熟の性転換を行い、若い個体はまずオスとなり、成長すると5 - 6歳でメスに性転換し、卵の成熟には7歳で幼生孵化直前の抱卵状態となる。寿命は11年ほどとみられ、産卵は生涯に3回以上と考えられる。但し、生息海域の水温が高いほど成長が早く、低ければ成長は遅くなる。
利用
日本では高級食材として扱われる。北日本では重要な漁業対象で、底引き網や籠漁などが行われる。20世紀末頃からは冷凍されたエビの輸入量も増加していて、タラバエビ類では比較的安価に流通する。
甲が柔らかく、身から離しやすい。生で食べるとグリシン、アラニンなどのアミノ酸に由来する甘みがあり、これが別名「アマエビ」の由来となっている。ただし捕獲直後の極めて新鮮な状態では甘さは感じられない。死後、多少時間が経過すると甘みが感じられるようになるのは、自己消化の過程でタンパク質からアミノ酸が生成されるからであり、生きている状態や新鮮な状態では含有量が少ないためとされている。基本的に、輸送時間などを考慮すれば店頭で並んでいる時点で最も食べごろとなっているのが通常である。冷蔵と物流が進展するまでは殻のまま煮る「具足煮」が一般的だった。
刺身、寿司種、塩辛、煎餅、天ぷら等様々な料理に使われるが、小型のオスは煎餅、大型のメスは刺身や寿司種など、大きさによって使い分けられる。身だけでなく頭胸甲内にある中腸腺(いわゆる「海老味噌」と俗称される部位)も濃い旨みがある。胴の殻を取って刺身にして、頭のヒゲを取って頭を味噌汁にして、三つ葉などを散らして、頭の海老味噌を吸うとおいしい。
頭の横の鰓にエビヤドリムシが寄生して黒く盛り上がっているものが見つかることがあるが、身の食用には影響しない。
近縁種
北大西洋のバレンツ海、北海、グリーンランドからカナダ沖にもよく似たエビが分布するが、これは別種Pandalus borealis Krøyer, 1838 とされている[2] [3] [4]。FAOではホッコクアカエビと同種内の亜種の関係にあるとしている[5]。
脚注
参考文献
外部リンク
- 日本海能登半島近海産ホッコクアカエビの成長 日本水産学会誌 Bulletin of the Japanese Society of Scientific Fisheries 65(6) pp.1010-1022 19991115
- 日本海能登半島近海産ホッコクアカエビの海深別の分布と移動 日本水産学会誌 Bulletin of the Japanese Society of Scientific Fisheries 66(6) pp.969-976 20001115
- テンプレート:Cite web