VHS-C
VHS-Cは、VHSの小型テープでVHS-Compact (ビデオホームシステムコンパクト) を略したもの。1982年(昭和57年)に規格がまとめられた。
概要
ポータブルビデオの小型化でVHSの先を行くベータマックスに対抗すべく日本ビクター(現・JVCケンウッド)によって開発された規格。同社より1982年にポータブルビデオデッキ「HR-C3」が発売された[1][2]。後に登場した8ミリビデオへの対抗としてビデオカメラに採用されるようになって脚光を浴びた。
カセットのサイズはVHSフルカセットのおよそ3分の1。当初の録画時間は20分だったが、その後テープ素材の改良などで40分まで延長され、3倍モードで2時間の録画を可能にした。記録フォーマットはVHSと互換性があり、カセットアダプタを使用することで通常のVHSビデオテープとしてVHSデッキで再生・録画することができる。カセットアダプタを必要としない「コンパチブルビデオデッキ」(ビクターHR-SC1000等)も発売された。
構造上ケースの中でテープがたるみやすく、子供がいたずらしてテープを引っ張り出してダメにしてしまったり、たるみを取らないままカメラに装填してトラブルを起こすケースも少なくなかったようだ。後にセーフティロック機構などと称したたるみ防止の対策を講じた製品が登場している。
8ミリビデオと激しいシェア争いを展開していたが、1989年にソニーがパスポートサイズの「ハンディカム・CCD-TR55」を発売し、爆発的にヒットさせると市場は大きく8ミリに傾いた。VHS-C陣営も松下電器産業(現 パナソニック)が「ブレンビー・NV-S1」などの小型タイプのビデオカメラを販売し、VHSデッキでそのまま見られる事をアピールして対抗したが、録画時間の短さなども不利となって次第にシェアを落としていった。
一方、日本を上回る市場規模を持つアメリカでも、VHS-C規格は普及しなかった。アメリカ市場のニーズでは小型化されたカメラはボタンが小さく、操作がやりにくいと敬遠され、レンタルビデオソフトの再生機能を兼ねたフルサイズのVHS規格のビデオカメラが好まれた。後に安価なビデオデッキの登場で、レンタルビデオ再生を専用の据え置き型デッキで行う趨勢となった時には、日本の場合と同じく録画時間の短さやテープのたるみの問題からVHS-Cは敬遠され、8ミリビデオが普及した。
8ミリビデオの攻勢に押される中、VHS-C陣営だったシャープや日立製作所、東芝は、8ミリビデオに転向した。松下電器産業も国内ではVHS-Cを販売する一方で海外メーカー向けに8ミリビデオもOEM製造しており、たびたび「8ミリ転向説」が噂された事もあった。
1995年(平成7年)秋にはDV規格が登場。その後、ビデオカメラの市場はDVやメモリーカードタイプなどに置き換わっていった。VHS-Cのカムコーダについては販売を終了しているが、テープとカセットアダプターは、JVCケンウッドとパナソニックから引き続き販売されている。
仕様
- 形状:92mm×52mm×23mm
- 録画時間(SPモード):20分(~40分)
備考
- 映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のパート1で1985年の世界から1955年の世界にもっていったビデオカメラはビクター製(JVCブランド)のVHS-Cカムコーダー「GR-C1」で、1984年に発売された市販品。VHS-C初のビデオ一体型カメラである。C1のカタログなどにはバック・トゥ・ザ・フューチャーの写真が表紙を飾っていた。この映画ではJVCブランドの製品がほかにも出てくる。