バハムート
バハムート(アラビア語 بهموت Bahamūt)とは、『ヨブ記』などに登場する怪獣の一種。ベヒモス(Behemoth、ビヒーモス、ベヒーモスとも)をアラビア語読みしたもので、由来はベヒモスと同一。ただしイスラム世界では伝播と伝承の中で変化し、巨大な魚の姿を与えられている。これに関しては、同じく『ヨブ記』にあるレヴィアタンの「海の怪物」の属性が混じっているためだと考えられる。
大魚型のバハムート
バハムートはその巨体で大地を支えているとされる。神が作った大地を天使が支え、その天使を支えるためにルビーの岩山が置かれ、岩山を支えるために巨大な牡牛クジャタがあり、そのクジャタを支えるためにバハムートが置かれている。ちなみにバハムートの下には海があり、海の下には空気の裂け目があり、その下には火があり、それらを最下層で支えるのが口の中に6つの冥府を持つ巨大な大蛇ファラクとされている。
バハムートの鼻孔に海を置いても、砂漠に置かれた芥子粒ほどの大きさでしかないと表現される巨躯で、その体からは眩しい光を発している。
『千夜一夜物語』の第496夜にも登場、イサ(イエス・キリスト)がバハムートを見る恵みを与えられたが、その姿を見て気を失って倒れた。三日三晩経ってようやく意識を取り戻したが、まだバハムートの巨体はイサの前を通り過ぎていなかった。
ドラゴン型のバハムート
ドラゴンの姿をしたバハムートを生み出したのはアメリカのテーブルトークRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ』である。その中でのバハムートはプラチナ色の強力な力を持った神のドラゴンとして扱われている。なぜ魚からこのような姿へと変更されたかには諸説あるが、一説には竜とされることもあるバビロニアの海水の神であるティアマトが『ダンジョンズ&ドラゴンズ』では悪魔のドラゴンの王として出ているため、その対比として同じ水に関係のある神(魔物)の名を使ったのだとされる。
日本ではゲーム『ファイナルファンタジー』第1作に竜王としてドラゴンの姿で登場し、試練を乗り越えた者をクラスチェンジさせる役割を持っていた。その第3作でも黒いドラゴンの姿で登場し、作品中最上級の召喚魔法として扱われた。以降の『ファイナルファンタジーシリーズ』にもほぼ第3作と同様の位置づけで登場し続けている。また、その一方で本来同一であったベヒモスは、別の陸上型の巨大なモンスターとして登場している。日本ではその影響もあり、他のゲームや作品においてもドラゴンの姿で登場することが多く、本来の大魚型の印象やイスラム世界以前のようなベヒモスと同一視される傾向は極めて薄い。