キューブ (映画)
テンプレート:Infobox Film 『キューブ 』(Cube)は1997年製作のカナダ映画。監督はヴィンチェンゾ・ナタリ。
概要
立方体(キューブ)で構成されトラップが張り巡らされた謎の迷宮に、突如放り込まれた男女6人の脱出劇を描く。「ワンセット物で登場する役者は7人」という低予算作品。終始張り詰めた緊張感の中で物語が進んでゆく。
ビデオ版、DVD版に収録されているナタリ監督の短編映画「Elevated」が本作の原点である[1]。
本作の人気に便乗し、幾つかの類似タイトル作品が出回った(原題には「CUBE」という言葉を使用していないにも関わらず、日本リリース時にそれを含んだ邦題を冠せられた物も存在する)。また、正式な続編である『キューブ2』『キューブ ゼロ』の監督は共にヴィンチェンゾ・ナタリではない。
あらすじ
目が覚めると謎の立方体(CUBE)に捕らえられていた数人の男女。誰が何の目的で閉じ込めたのかも分からないまま、彼らは死のトラップが張り巡らされたこの立方体からの脱出を試みる。
登場人物
- クエンティン
- 演 - モーリス・ディーン・ウィント、日本語吹替え - 玄田哲章
- 肉体派黒人男性。3人の子供がいるが、妻とは別居している。警察官という職業柄、その行動力でメンバーを牽引する。
- ハロウェイ
- 演 - ニッキー・グァダーニ、日本語吹替え - 谷育子
- 中年独身女性。職業は精神科の開業医。博愛主義的な理想を持ち、正義感を振りかざしてキューブに閉じ込められた不条理に立ち向かう。口煩いフェミニストタイプ。
- レブン
- 演 - ニコール・デボアー、日本語吹替え - 津村まこと
- 数学科の女子学生。退屈でつまらない毎日を送っていた若者であったが、突然キューブに放り込まれてパニック状態に陥る。クエンティンのリーダーシップに助けられ、徐々にやる気を持ち始める。
- レン
- 演 - ウェイン・ロブソン、日本語吹替え - 西川幾雄
- 小柄な初老の男性。7つの刑務所から脱獄し、“アッティカの鳥”の異名を持つ。目の前のことだけに集中し、無駄なことは一切考えない主義。
- ワース
- 演 - デヴィッド・ヒューレット、日本語吹替え - 田原アルノ
- 無気力な独身男性。脱出に真剣味がなく胡散臭い雰囲気。
- カザン
- 演 - アンドリュー・ミラー、日本語吹替え - 桜井敏治
- 途中から参加した青年。他のメンバーから発見されるまでずっと部屋から動かなかったらしい。行動上の特徴から何らかの精神障害を持つと思われる。現状把握を全くできないため何度もメンバーの足を引っ張るが、ハロウェイが献身的にサポートする。
- オルダーソン
- 演 - ジュリアン・リッチングス
- オープニングに登場するスキンヘッドの男性。「部屋にはトラップが仕掛けられており、むやみに動くと危険である」という設定を印象付ける役を担う。
CUBEの内部構造
一辺が約4.2mの立方体の小部屋からなる。 小部屋の上下左右前後の六面は全く同じ構造・デザインとなっている。 一つの面は囲の字で、中央に正方形のハッチ式扉が一つ、井の形に2本の細い梯子が縦方向・横方向共に埋め込まれている。 壁は全面発光パネルとなっており、電子基板を連想させる幾何学的な模様が浮き出る。 このような小部屋を1単位として、一辺が130mの立方体である外壁の内側にぎっしりと積み重なっている。 発光パネルの発色は部屋によって白・赤・青・緑・薄茶と様々であるが、カラーリングが意味するところは不明。 上記のように、どの部屋も基本構造は全く同じであるが、部屋によっては殺人的なトラップが仕掛けられている場合がある。 扉は隣接する部屋の扉と連動しており、手動で自由に開閉し、そこから近傍の部屋を覗き込んだり、ハッチをくぐって移動することができる。 センサーおよびトラップには様々なタイプがあるが、どれも発動するまでは壁面に格納されているため、一見してトラップの有無を判別することは困難。 「罠のある部屋に入る」=「即死」というわけではなく、罠やセンサーの種類によっては、回避したり、発動させずに通過することもできる。 劇中で見られたセンサーおよびトラップは以下のものがある。
- センサー
- 加圧・振動探知機
- 音声探知機(扉の開閉音には反応しないようになっている)
- 接触探知機
- 分子探知機(靴などには反応せず、人体に反応するようになっている。探知しやすくするためか、このセンサーが設置されている部屋は空気が乾燥している)
- トラップ
- 格子網目状に張り巡らされたワイヤーナイフ(非常に鋭く、人体をも切断するワイヤー)
- ガスバーナー
- 薬品噴射(薬品には人体を溶かす効果がある)
- 円錐状に張り巡らされたワイヤーナイフ
- 無数の針
部屋番号の謎
- 金属プレートの発見
- 各部屋をつなぐ通路内には、部屋番号のような数字が刻印された金属プレートが取り付けられている。レブンが最初に発見した。各部屋固有の3桁の数字が3つ記されており、ハッチから覗き込むことで隣接する部屋番号とともに確認できる。発見当初は番号の意味するところは不明であったが、数学専攻の学生であるレブンの眼鏡だけがアイテムとしてキューブ内に持ち込まれていることに関連づけ、部屋番号が何らかの“暗号”ではないかとの推理にクエンティンが至る。
- 素数トラップ仮説
- レブンはトラップが発動した部屋番号をすべて記憶しており、そのいずれにも素数が含まれていることに気づいた。素数がトラップナンバーとなっているという仮説を基に、次々と部屋を移動して行くことに成功する。しかし一向に出口は見えず、遂にはこの素数仮説が崩壊してしまう。
- デカルト座標仮説
- 部屋番号が3つの数字からなる理由について、それが三次元の座標を示しているという仮説。レブンは外壁設計者であるワースの情報から、CUBEは最大一辺26部屋からなることを概算している。そこで以下のようにして各数字の各位の数字を足し合わせることでマッピングが可能であると考えた。たとえば、(898,552,175)という部屋番号であれば、(8+9+8,5+5+2,1+7+5)となり、(26,12,13)という端の部屋であることがわかる。しかし、レブンは27の座標を持つ部屋を、CUBE中央部にて見つける。そのことで本仮説は棄却されるが、部屋番号が三次元空間内の位置を示すものであることの発見として重要である。
- ただし、実際に部屋が動くためには多くの隙間(部屋が動くための迂回路として欠番にせざるを得ない座標)が必要となる上に、すべての部屋が同時に動いているとは考えにくい。
- 因数の数仮説
- 暗号法則の再考を迫られたレブンが行き着いた答えが、各数字の因数の個数がトラップの有無を決定付けているというもの。本説では素数だけでなく、素数のべき乗もトラップナンバーであるとする。すなわち、因数の個数が1となる数字(例えば841=29^2)はトラップナンバーとなる。因数分解を暗算で瞬時に行えるカザンが、この暗号解読におけるキーマンとなった。
- 順列組合せ移動説
- デカルト座標仮説はあくまでも初期値を示すものであり、実際は各部屋が数字に従って移動しているとする説。ワースがレンの死体を再発見した端部屋において、レン死亡時に隣接していたはずの部屋がなくなっていることから展開された。レブンの解釈では、部屋の移動は部屋番号の各桁の数字を順列に従って引き算すれば良いとのこと。確かに、順列に従って引き算をすれば3回で一巡して元の位置に戻る。本説により、27番目の部屋がCUBE外部へと続く架橋通路となっていることを確信し、暗号の謎をほぼ解決できたといえる。
続編
- 『キューブ2』(Cube 2: Hypercube、2002年)
- 3次元から4次元になるなどさらに進化したキューブが登場。
- 『キューブ ゼロ』(Cube Zero、2004年)
- 完結編。すべての謎が解かれる。時代設定が『キューブ』『キューブ2』より前。
特記
- 登場人物は一様に同じ姿でキューブという密室に送り込まれてくるが、それぞれに付けられた名前は実在の刑務所に由来している。
- 一つのセットを複数に見せる(本作では室内の色を変えている)手法が本作でも利用されている。
脚注
- ↑ ただし、DVDファイナル・エディション版など収録されていないものもある。収録されているものでは、CUBE終了後に続けて「Elevated」が再生される。