ヤブイヌ
ヤブイヌ(Speothos venaticus)は、哺乳綱ネコ目(食肉目)イヌ科ヤブイヌ属に分類される食肉類。現生種では本種のみでヤブイヌ属を構成する。別名ブッシュドッグ。
分布
アルゼンチン北東部、コロンビア、ガイアナ、スリナム、パナマ東部、パラグアイ、ブラジル、フランス(仏領ギアナ)、ベネズエラ、ペルー東部、ボリビア東部[1][2][3][4]
形態
体長57-75センチメートル[3][4]。尾長11-15センチメートル[4]。肩高30センチメートル[3][4]。体重5-7キログラム[1][2][3][4]。体型は頑丈[2][3]。吻は短く、幅広い[3][4]。全身は短い体毛で粗く被われる[3][4]。毛衣は暗褐色[3][4]。頭部や頸部の毛衣は黄褐色、腹面や四肢、尾の毛衣は黒い[3][4]。
耳介は小型で、丸みを帯びる[2][3][4]。歯列は門歯が上下6本、犬歯が上下2本、小臼歯が上下8本、大臼歯が上顎2本、下顎4本と計38本の歯を持つ[2][3]。盲腸は捻じれない[3]。四肢は短く[1][2]、藪の中を移動したり泳ぐのに適していると考えられている[3]。指趾の間には水かきがあり[4]、指趾の肉球が繋がる[3]。
乳頭の数は8個[3]。
分類
ヤブイヌ属は化石種が1939年に記載されたが、後に現生する本種が発見された[4]。現生のイヌ科では最も原始的な種と考えられている[3][4]。
生態
湿潤林に生息し、水辺を好む[3][4]。昼間も夜間も活動する[3]。一方で狩猟圧の強い地域では夜間に活動する[4]。穴やアルマジロの古巣などで休む[1][4]。ペアもしくはその幼獣からなる小規模な群れを形成し生活する[4]。頻繁に鳴き声を交わしあい、見通しの悪い下生えの中でも連絡を取り合うことで群れを維持していると考えられている[2][3]。逆立ちして放尿(メスは後肢を木などに立てかける)して臭いをつける(マーキング)[2][3][4]。メスの方がマーキングの頻度が高くペアを形成したときに特に回数が増加することから、マーキングがペアの形成や維持に役立っていると考えられている[3]。水中を泳いだり潜ることができる[1][2][3][4]。
食性は雑食で、哺乳類(アグーチ属、カピバラ、パカ、マザマ属など)、鳥類(レア)などを食べる[2][3]。群れで狩りを行う[1][2][4]。
繁殖形態は胎生。メスの膣内でオスの陰茎基部が膨らむ(交尾結合、タイ)ことがない[3]。妊娠期間は65-67日[4]。木の根元や倒木の下などで1回に1-6頭(主に3-5頭)を産む[4]。授乳期間は4-5か月[4]。オスも子育てに参加し、授乳中のメスに食物を与える[2][4]。幼獣は生後17日で眼が開き、生後38-71日で硬い食物も食べることができるようになる[4]。飼育下では生後10か月で性成熟した例がある[4]。飼育下での寿命は13年4か月の例がある[4]。
人間との関係
開発による生息地の破壊などにより生息数は減少している[4]。ブラジルやペルーでは法的に保護の対象とされている[4]。
- Chien des buissons.JPG
頭部
- Chiens de buissons.jpg
ヤブイヌと子犬たち
- Bushdogs.jpg
ヤブイヌの交配
参考文献
関連項目
外部リンク
テンプレート:Animal-stub- ↑ 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4 1.5 今泉吉典、松井孝爾監修 『原色ワイド図鑑3 動物』、学習研究社、1984年、63、229頁。
- ↑ 2.00 2.01 2.02 2.03 2.04 2.05 2.06 2.07 2.08 2.09 2.10 2.11 今泉吉典監修 D.W.マクドナルド編『動物大百科1 食肉類』、平凡社、1986年、97頁。
- ↑ 3.00 3.01 3.02 3.03 3.04 3.05 3.06 3.07 3.08 3.09 3.10 3.11 3.12 3.13 3.14 3.15 3.16 3.17 3.18 3.19 3.20 3.21 3.22 3.23 今泉吉典監修 『世界の動物 分類と飼育2 (食肉目)』、東京動物園協会、1991年、127-128頁。
- ↑ 4.00 4.01 4.02 4.03 4.04 4.05 4.06 4.07 4.08 4.09 4.10 4.11 4.12 4.13 4.14 4.15 4.16 4.17 4.18 4.19 4.20 4.21 4.22 4.23 4.24 4.25 4.26 4.27 4.28 小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著 『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ2 アマゾン』、講談社、2001年、36-37、123頁。