ビリー・シーン
テンプレート:Infobox Musician ビリー・シーン(Billy Sheehan, 1953年3月19日 - )は、アメリカのハードロックバンド、Mr.Bigのベーシスト、アメリカニューヨーク州バッファロー出身。かつては「ビリー・シーハン」と日本語表記されることもあった。
ロックシーンにおける、超絶技巧派ベースヒーローの一人である[1]。
目次
略歴
幼少期、ジミ・ヘンドリクスの生前のステージを生で見る機会に恵まれたことから音楽の道を志す。ベースを手にしたきっかけは、ヤードバーズのベーシスト、ポール・サミュエル・スミスと、自宅の近所に住んでいたジョー・ハッシーというベーシストからの影響であると語っている。
タラス、Mr.Big、ナイアシンなどのバンドに在籍し、数々の作品を残している。またデイヴィッド・リー・ロスやスティーヴ・ヴァイ、B'z、松本孝弘のレコーディングやライブへの参加、友人でもある超絶技巧を有するドラマー・テリー・ボジオとのアルバム発表も話題になった。また一時的にではあるが、UFOのツアーに参加したこともある[2]。
近年でもソロアルバムを発表するなど、50歳を越えてもなお精力的に活動中。2006年には新しい教則本とDVDも発売し、スティーヴ・ヴァイとのライブなどにも参加している。2010年にはエディ・ジョブソンの The Ultimate Zero Project のメンバーとして来日公演を行なっている。
2012年にはリッチー・コッツェン、マイク・ポートノイとのトリオ編成によるバンド『ザ・ワイナリー・ドッグス』を結成。2013年にアルバム「ザ・ワイナリー・ドッグス」でデビュー。7月には初来日公演も行われた。
サイエントロジーの信奉者である。
奏法
プレイスタイルはティム・ボガートからの影響が強く、彼をフェイヴァリット・ベーシストとしている程である。
フィンガー・ピッキングを多用し、ピック奏法を用いることは殆どない。ストラップを短くしているため、演奏時はベースを胸、又はみぞおちの辺りという高位置で演奏している(本人曰く「椅子に座って弾いている位置で弾いている」との事)。そのため腕は伸ばさず、肘をくの字に曲げながら演奏している。スリーフィンガー・ピッキングとライトハンド奏法を駆使した速弾きは、ファンに強烈なインパクトを与えた。
スリーフィンガー・ピッキングを始めた理由は、アートロックバンド・ヴァニラ・ファッジのレコードでのティム・ボガートのプレイを聴き、ビリーが「ティムのピッキングの速さはきっと3本の指を使っているんだ」と思い込んだからであるが、実際はティムはスリーフィンガー・ピッキングではなく、レイキング奏法[3]で演奏していた。ティムは、ビリーを「僕のプレイに影響されたとビリーが言ってくれるのは本当に光栄だ。ビリーはその影響をうまく消化して、自分自身のスタイルをきちんと確立していると思うよ。ビリーのプレイは確実にビリー自身のものだね。」と評価している。
ライブでのベースソロではベンディングも多用し、スリーフィンガー・ピッキングに飽き足らず、人差し指、中指、薬指に小指を加えたフォーフィンガー・ピッキングも披露する。また、Mr.Bigにおけるポール・ギルバートのギターとのドリルピッキングの掛け合いも、彼を語る上で欠かせない。ドリルピッキングを用いるベーシストは数少なく、希少な存在である。
一方でスラップ奏法はあまり得意ではないらしく、本人も「僕が若い頃は、白人は『親指テクニック(スラップ奏法のこと)』は必要とされなかったんだ」と語っている。しかし最近は自身が出演しているビデオなどでスラッピングを披露していたり、ナイアシンの楽曲である『Slapped Silly』でも要所要所でスラッピングを見せ、特にイントロではハモンドオルガンの音色と絡めた高度なスラッピングフレーズを披露するなど、スラップ奏法の技術も上達していると言える。
4弦エレキベースだけに止まらず、5弦ベースや6弦ベース、バリトンギター、更にはダブルネック・ベースや12弦のバリトンギターまで、幅広い楽器を演奏する。バリトンギターは、2001年頃からピックで弾き始め、ソロ・アルバム『コンプレッション』の多くの楽曲で用いている。
使用機材
独特のプレイスタイルを早くから確立していた彼ゆえ、機材にも独特のスタイルがある。ハイスクールの頃に入手したフェンダー・プレシジョンベースのボディをくり抜いて、ギブソンのベースのフロントピックアップをウーファーピックアップとして取り付け、元々のピックアップをツイーターとして使用するステレオ出力に改造したものを、デビュー時から長らく使用していた。改造はそれだけでなく、4弦のチューニングを一音下げるHipshot社製のベース・エクステンダーが取り付けられているほか、ネックはテレキャスター・ベースのものに交換され(ティム・ボガートの影響と言われている)、1、2弦の最終5フレット分の指板が削られスキャロップ加工が施されている。これが、その後の彼の使用するベースの基本となる。
その後ヤマハと契約し、BB3000、RBXのカスタムメイドの使用を経て、いよいよメインベースの地位を確立した"Attitude"が登場する。DiMarzio製の特製ピックアップにステレオ出力、フロントピックアップの高域カットスイッチ、そしてかなり太く分厚いネックグリップ、高音弦の部分スキャロップ加工と、ビリーのこだわりを完璧に具現化したものとなっている。このAttitudeには、彼だけのものとして、指板にLEDを埋め込んだもの、8弦のもの(スイッチを切り替えて、ピッコロベースとなる高音だけ出力できる)、ダブルネックのものが存在する。一方で、「僕の求めるトーンを、ビギナーにも幅広く楽しんで欲しい」という彼の願いを具体化したモデルが、2009年にヤマハからリリースされた。このベースは、本人の監修のもとインドネシア工場で製造される。また市販されている"Attitude"は、ビリー側からの契約条件として「市販されるモデルは自分がステージで使用するものと全く同じものであること」という条件の元で製造されるため、市販されるモデルは基本的にビリー本人がステージで使用するものと寸分の互いも無いものとなっている。現在市販されているモデルはフロントピックアップがDiMarzioのものからヤマハのオリジナルウーファーピックアップに変更され、ボディとネックのジョイントが新しく開発された特殊なジョイント方式に変更された他、ヤマハが独自に開発したボディとネックの振動伝達性を高める「A.R.T」という加工が施されている。
弦はロトサウンド製のビリー・シーンモデルを使用。
アンプはアンペグを使用しているが、ベースがステレオアウトプットである上に、様々なプリアンプ、パワーアンプ、イコライザー等を介しているため、システム自体がかなり巨大なものになっている。アマチュアでこれを再現するのは不可能に近いと言われているが、ビリーはこのシステムをフル活用して、バンドサウンドの中でも決して埋もれる事の無い、太くてパワフルな広がりのあるトーンを得ている。2010年頃から、アンペグが生産拠点をアメリカから東南アジアに移した為に、メーカーとの関係が上手く行かなくなったことからハートキーのアンプを使用し始め、現在同社と契約している。それに合わせ、システム自体の若干のコンパクト化が図られている。
ディスコグラフィ
タラス
- Talas(1979年)
- Sink Your Teeth Into That(1982年)
- High Speed On Ice(1983年)
- Talas Years(1990年)
- If We Only Knew Then What We Know Now(1998年)
- Live In Buffalo(1998年)
スラッシャー
- Burning at the Speed of Light(1985年)
トニー・マカパイン
- Edge of Insanity(1986年)
KUNI
- MASQUE(1986年)
グレッグ・ハウ
- Greg Howe(1988年)
デイヴィッド・リー・ロス
- Eat 'Em and Smile(1986年)
- Skyscraper(1988年)
Mr.Big
- Mr. Big(1989年)
- Lean Into It(1991年)
- Bump Ahead(1993年)
- Hey Man(1996年)
- Get Over It(2000年)
- Actual Size(2001年)
- What If...(2011年)
ナイアシン
- Niacin(1996年)
- Live(1997年)
- High Bias(1998年)
- Live! Blood, Sweat & Beers(2000年)
- Deep(2000年)
- Time Crunch(2001年)
- Organik(2005年)
エクスプローラーズ・クラブ
- Age of Impact(1998年)
ソロ
- Compression(2001年)
- Cosmic Troubadour(2005年)
- Prime Cuts(2006年)
- Holy Cow(2009年)
テリー・ボジオ&ビリー・シーン
- Nine Short Films(2002年)
ザ・ワイナリー・ドッグス
- The Winery Dogs(2013年)