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丸山ワクチン(まるやまワクチン、テンプレート:Lang-en-short)は、1944年に皮膚結核の治療薬として誕生した医薬品。タンパク質を除去したヒト型結核菌青山B株から抽出したリポアラビノマンナンおよびその他のリポ多糖 (LPS) を主成分とする。
がんに対して予防・治療効果があると支持者によって主張されているが[1]、薬効の証明の目処は立っておらず、2013年現在がんに対する医薬品としては未承認である。
開発
元々は、ドイツのロベルト・コッホが1890年に発明したヒト型結核菌製剤ツベルクリンにヒントを得ており、「ツベルクリン」は現在では結核診断用の薬剤として知られるが、もともとは結核の免疫療法として開発されたもので、逆に症状を悪化させる結果を招き、治療薬としては失敗に終わった。日本医科大学の皮膚科教授丸山千里は、コッホの試みに強い関心を持ち、「副作用につながる毒素を特定し、それをツベルクリンから取り除く」という発想の下に実験に着手した。
1945年より丸山は、開発した多糖体を主成分とするワクチンによる治療を開始した。
丸山はさらに、がん治療にワクチンを用いることを決意した。そして、昭和40年代以降『がんの特効薬』との噂が一気に高まり、医薬品の承認の手続きより世論が先行することになってしまった。
支持者による嘆願署名運動などが行われ、国会でも医薬品として扱うよう要請された[2]が、今日においてもその薬効の証明の目処は立っておらず、医薬品として承認されるには至っていない。
有効性について
抗がん剤
愛知県がんセンターと東北大学がそれぞれ行った臨床試験については、丸山ワクチンの有効性が認められなかったとされている[3][4]。
また、丸山ワクチンに対して特別に不利な扱いをしているとする疑惑については、クレスチンやピシバニールは提出された資料で効果が証明されているので承認が早かった、丸山ワクチンは提出された資料では効果の証明が不十分なので追加資料を求めたから時間が掛かったとされている[5][6][7][8]。
尚、丸山ワクチンの承認を求めた小林進衆議院議員によると、丸山ワクチンは1%から2%の効果があるかないかだとしている[9]。
白血球減少症の治療薬
放射線療法による白血球減少症の治療薬として、1991年に承認された「アンサー20」(ゼリア新薬工業)は、丸山ワクチンと同成分である。アンサー20が効果ありとされた白血球減少症は、悪性腫瘍によって引き起こされる症状、あるいは、その化学療法や放射線療法時の副作用への対策薬である。抗がん剤として承認されたわけではない。
支持者の動向
丸山ワクチンは、有効性の確認の為の研究を継続するため、治験期間3年で有償治験を行い、その結果によって、その都度、治験期間の延長の届出[10]が行なわれている[11][12][13][14][15]。丸山ワクチンによる治療を望む患者あるいはその家族は、丸山ワクチンの治験を引き受けてくれる医師を探し出し、治験承諾書(丸山ワクチンによる治験を引き受けるという担当医師の承諾書[16])およびSSM治験登録書(現在までの治療経過をまとめた書類[16])を整えさえすれば、丸山ワクチンの投与が受けられるという1972年以来の状況が続いている[17]。
有償治験薬として、2011年12月末、丸山ワクチンの使用者は38万9000人を超えたとされる[18]。
脚注
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関連項目
外部リンク
↑ テンプレート:Cite web
↑ テンプレート:Cite web
↑ 1981年、第94回国会衆議院社会労働委員会第20号テンプレート:Cite webにて桜井欽夫癌研究会癌化学療法センター所長は、愛知県がんセンターの中里による投与データは、胃がんの手術不能患者では効果がないが手術後では統計学的に有意な差があったが差は小さく有意義とは言えない、腹膜転移のない患者では効果がなかったが腹膜転移のある患者でははっきりとした差があったが症例数が20例程度と少なく、もっと症例数を増やせば有意な差が出るのではないかとし、無作為割付の違反例の処理によって有利な解析結果となっている可能性を指摘している。また、東北大学が行った臨床試験の症例の大部分を占める胃がんでは差がない、その他のがんが少数まじっているが効くかどうかはがんの種類によって違う、膵癌の例は慢性膵炎の疑いがあるとされたがその後の組織診断からがんだと確定できたのでがんとして訂正したとしている。同委員会にて、砂原茂一国立療養所東京病院名誉院長は、東北大学が行った臨床試験は症例数が少ないので効くかもしれないとは言えるが効くとまでは言えないとしている。
↑ 第95回国会参議院社会労働委員会第3号テンプレート:Cite webでの持永和見厚生省薬務局長の答弁によると、東北大学が行った臨床試験にて、各種消化器がん、胃がん、肝がん、胆嚢癌、肺癌の切除不能、あるいは術後再発患者に対して、化学療法剤+丸山ワクチン184例(うち解析対象105例)と化学療法剤+生理食塩液179例(うち解析対象107例)の比較を行なった結果、腫瘍縮小効果や自覚症状の改善は見られなかったが、延命効果として20日間程度の延長があり、生存率も統計的には有意であった(具体的数値は不明)としながらも、「医薬品としての有効性は認められない」とされている。同委員会にて、村山達雄厚生大臣は、生理食塩液の群は最終的に全員死亡したが丸山ワクチンの群105例のうち3名が生存していた、うち2名は末期がんではなかったと判定され、残りの1名も膵臓がんではない疑いがあったが調査会では膵臓がんだったと判定したとしている。
↑ 1979年、第87回国会参議院社会労働委員会第16号テンプレート:Cite webにて本橋信夫厚生省薬務局審議官は、クレスチンやピシバニールにあった腫瘍縮小効果のデータが丸山ワクチンになかったので提出を待っているとしている。
↑ 1981年、第94回国会衆議院決算委員会第9号テンプレート:Cite webにて山崎圭厚生省薬務局長は、クレスチンやピシバニールは提出されたデータだけで十分有効性が認められるとして承認されたが、丸山ワクチンは資料が足りなかったため審議に時間が掛かった、両者の取り扱いに差を設けているわけではない、追加資料については指導しているとしている。
↑ 1981年、第94回国会衆議院社会労働委員会第20号にて、砂原茂一国立病院機構東京病院名誉院長は、クレスチン等はデータがそろっていたから承認が早かったが丸山ワクチンはデータがそろっていなかったから時間が掛かった、クレスチンやピシバニールの生存曲線では後になるほど開きが大きいが丸山ワクチンの生存曲線ではところどころで少し有意差になるだけとしている。
↑ 1982年、第96回国会予算委員会第三分科会第3号テンプレート:Cite webにて持永和見厚生省薬務局長は、丸山ワクチンもクレスチンもピシバニールも全く同じ認可基準を使っている、丸山ワクチンは単独使用での有効性が認められなかったので他剤との併用試験を追加で行うことになったとしている。同分科会にて小林進衆議院議員は、丸山ワクチンは1%から2%の効果があるかないかだとしている。
↑ 1982年、第96回国会予算委員会第三分科会第3号にて
↑ 薬事法第八十条の二第二項
↑ テンプレート:Cite web
↑ 第95回国会参議院社会労働委員会第3号での持永和見厚生省薬務局長の答弁によると、治験の対象症例が非常に多いため製造・供給元にかなりの経済的負担を伴うことを理由として治験薬は有償とし、治験実施機関を日本医大として、丸山ワクチンの使用を希望する医療機関は共同治験を可能したとしている。
↑ テンプレート:Cite web
↑ テンプレート:Cite web
↑ テンプレート:Cite web
↑ 16.0 16.1 テンプレート:Cite web
↑ 1973年には遠藤周作ががんのワクチンを開発する町医者を描いた小説『灯のうるむ頃』を書き、1974年には銀河テレビ小説として放送された。
↑ 丸山ワクチン・オフィシャルサイト