ウミネコ
ウミネコ(海猫[1]、Larus crassirostris)は、動物界脊索動物門鳥綱チドリ目カモメ科カモメ属に分類される鳥類。
分布
冬季になると中華人民共和国東部などへ南下し越冬するか、ロシア南東部や朝鮮半島では周年生息する[2][3][4][5][6][7]。日本では周年生息(留鳥)するが[7][8]、冬季になると北海道や本州北部で繁殖する個体群は南下する個体が多い[3]。
形態
全長44-48センチメートル[5]。翼開張120-128センチメートル[2][4][7]。体重0.5-0.6キログラム[5]。頭部や体下面の羽衣は白、体上面の羽衣は黒灰色[4][7]。尾羽も白いが内側尾羽10枚の先端付近が黒く[3][4][5][7]、英名(black-tailed=黒い尾をした)の由来になっている[1]。翼上面は黒灰色[7]。初列風切先端は黒く、先端に白い斑紋が入る個体もいる[6][7]。
嘴は太く頑丈[1]。種小名crassirostrisは「太い嘴の」の意[1]。嘴の色彩は黄色で、先端が赤くその内側に黒い斑紋が入る[3][4][5]。後肢の色彩は黄色[4][5][7]。
幼鳥は全身が黒褐色の羽毛で被われ、肩を被う羽毛や翼上面の外縁(羽縁)が淡褐色[7]。虹彩は黒い[4]。嘴や後肢の色彩はピンク色を帯びた淡褐色で、嘴の先端は黒い[7]。
夏季は後頭が白(夏羽)、冬季は後頭に灰褐色の斑紋が入る(冬羽)[2][4][7]。
生態
沿岸部や河口、干潟などに生息する[6][7]。近年、東北地方の内陸部での記録も増えている。減農薬の水田が増えたからと考えられている[9]。和名は鳴き声がネコに似ていることが由来とされる[1][3]。
食性は雑食で、魚類、両生類、昆虫、動物の死骸などを食べる[2][5][8]。他の鳥類が捕らえた獲物を奪う事もある[8]。
繁殖形態は卵生。集団繁殖地(コロニー)を形成する[5]。沿岸部の岩礁や草原などに木の枝や枯草、海藻などを組み合わせた皿状の巣を作り、日本では4-5月に1回に2-3個の卵を産む[2][3][5]。2011年6月、東京都台東区上野のビルの屋上で、20から30つがいが営巣しているのが確認され、複数の幼鳥も確認された[9]。他の鳥類、カイツブリやカルガモ・コアジサシ・スズメなどを捕食する可能性が懸念されている[9]。雌雄交代で抱卵し、抱卵期間は24-25日[5]。雛は孵化してから約40日で巣立つ[2][5]。生後3年で性成熟すると考えられ[5]、生後3-4年で成鳥羽に生え換わる[7]。
人間との関係
日本では1922年(大正11年)に八戸市の蕪島と出雲市の経島がそれぞれ「蕪島ウミネコ繁殖地」「経島ウミネコ繁殖地」、1933年(昭和8年)に陸前高田市の椿島(岩手県)が「椿島ウミネコ繁殖地」、1934年(昭和9年)に女川町の江ノ島が「陸前江ノ島のウミネコおよびウトウ繁殖地」、1938年(昭和13年)に酒田市の飛島が「飛島ウミネコ繁殖地」として繁殖地が国の天然記念物に指定されている[2][5]。
日本鳥類保護連盟の神崎高歩によると、ウミネコは小魚などを巣に運ぶときに、飛翔中に吐き出してしまうことがあるという。小魚などが路上などに散乱している光景は海沿いに居住する人々にとってはごく普通の光景であるが、このような光景を初めて見る人にとっては非常に不思議なことであり、しばしば騒動になって新聞などで報道されることがある[注釈 1]。
画像
- Larus crassirostris - Kabushima Shrine 3.jpg
幼鳥
- Black-tailed Gull Kclama.jpg
冬羽
脚注
参考文献
関連項目
外部リンク
テンプレート:Bird-stub- ↑ 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4 安部直哉 『山溪名前図鑑 野鳥の名前』、山と溪谷社、2008年、64-65頁。
- ↑ 2.0 2.1 2.2 2.3 2.4 2.5 2.6 加藤陸奥雄、沼田眞、渡辺景隆、畑正憲監修 『日本の天然記念物』、講談社、1995年、784-789頁。
- ↑ 3.0 3.1 3.2 3.3 3.4 3.5 環境庁 『日本産鳥類の繁殖分布』、大蔵省印刷局、1981年。
- ↑ 4.0 4.1 4.2 4.3 4.4 4.5 4.6 4.7 桐原政志 『日本の鳥550 水辺の鳥』、文一総合出版、2000年、282-283頁。
- ↑ 5.00 5.01 5.02 5.03 5.04 5.05 5.06 5.07 5.08 5.09 5.10 5.11 5.12 黒田長久監修 C.M.ペリンズ、A.L.A.ミドルトン編 『動物大百科8 鳥類II』、平凡社、1986年、157頁。
- ↑ 6.0 6.1 6.2 高野伸二 『フィールドガイド 日本の野鳥 増補改訂版』、日本野鳥の会、2007年、86-87頁。
- ↑ 7.00 7.01 7.02 7.03 7.04 7.05 7.06 7.07 7.08 7.09 7.10 7.11 7.12 真木広造、大西敏一 『日本の野鳥590』、平凡社、2000年、305頁。
- ↑ 8.0 8.1 8.2 『小学館の図鑑NEO 鳥』、小学館、2002年、65頁。
- ↑ 9.0 9.1 9.2 朝日新聞 大阪本社版 13版、2011年7月21日、37頁
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