海難事故

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
2014年6月22日 (日) 19:46時点における天然ガス (トーク)による版 (関連項目)
(差分) ← 古い版 | 最新版 (差分) | 新しい版 → (差分)
移動先: 案内検索

テンプレート:Redirect

ファイル:座礁事故.jpg
2006年10月に鹿島灘で発生した香港船籍の貨物船「オーシャン・ヴィクトリー」の座礁事故
当該船は鹿島港に入港していたが、荒天のために港外に避難したのち、操船不能に陥って座礁した。座礁後しばらくは引き出しが試みられたが、荒天が続いたため作業は難航、引き出せないでいるうちに船体が破断した。積荷は鉄鉱石であり、1/3強が避難出航までに荷下ろしが間に合わず搭載されたままになっていたが、幸いオイルタンカーではなかったため重大な汚染は発生しなかった。
ファイル:積丹半島の沈船P7030029.JPG
積丹半島 西の河原に残骸となって今なお残る難破船。積丹半島は、船の難所であった。

海難事故(かいなんじこ)は、船舶の構造・設備・運用に関連する事故のこと。難破(なんぱ)とも言う。

より広義には文字通りで起こる事故全般を意味し、例えば磯場の釣り人が天候の急変によって帰路につくことができなくなり磯場に取り残され孤立してしまう「孤立海難」のような用語もある[1]。この意味の類義語として「水難事故」があり船舶以外の海水浴での事故などについて使うことも多い。しかし、本項「海難事故」では船舶に関する事故を中心に述べる。で起こるものも含む。

日本の海難審判法2条に定義される「海難」も以下のように船舶に関連するものとなっている。

  1. 船舶の運用に関連した船舶又は船舶以外の施設の損傷(海難審判法2条1号)
  2. 船舶の構造、設備又は運用に関連した人の死傷(海難審判法2条2号)
  3. 船舶の安全又は運航の阻害(海難審判法2条3号)

一般的に、戦争に起因する被害は海難事故に含まれないことが多い。

海難事故の種類

海難事故の原因要素

海難事故の原因となるものには、以下のようなものがある(例示)。

  • 船員操船技術に関連するもの
    操縦のミスによるもの。
  • 船員の操船判断に関連するもの
    気象・海象に対する不注意、天候の読み違えによるもの、海上法規(海事法)や慣行の解釈ミス・誤解によるもの、見張り不十分による他船・桟橋氷山との接触・衝突など。
  • 船舶の堪航能力に関連するもの
    設計ミス、材質の強度不足、構造欠陥などによるもの。小規模な船体損傷から船体折損などの重大なものまで、さまざまなものがある。改造・当初予定とは別の用途への転用などの結果、問題点が顕在化するケースなどもある(運用の問題とも関係する)。
  • 船舶の搭載機関・搭載機器の性能・整備・運用に関連するもの
    故障や火災など施設の管理問題に由来するもの。老朽化に由来するもの。積載重量オーバーテンプレート:仮リンクなど運用管理に由来するもの。
  • 故意によるもの
    戦争・海賊行為・ハイジャック・船内での騒擾などによるもの。

海難事故の様式種別

海難事故の様式としては、以下のようなものがある(例示)。

  • 沈没
    船体が水面下に沈んでしまうもの。潜水船の浮上不能も含む。浅海で沈没(着底)した場合、船の上部構造物が海面上に出ていることがあるが、座礁とは異なる。
  • 転覆
    船体がなんらかの理由(復原性の不足、気象・海象など)で上下逆になるもの。横倒しになるとたいてい沈没するが、さかさまになってしまうと案外沈まない。
  • 座礁・触底・乗揚げ
    船底が海底・川底と接触し操船が不能になるもの。船の多くは、液体の水の上に浮くことで全体で分散して重量を負担する設計となっているため、固体の海底などに接触しそこに重量が集中すると、容易に船体断裂などの損壊を引き起こす。潮の満ち引きなどの影響で結果として同等になる場合はあるが、座礁・触底は「通常の喫水で航行中に浅くなっているところに乗り上げる」ものであり、沈没とは異なる。
  • 機関故障・推進器故障・かじ故障などによる漂流
    なんらかの理由で航行できなくなり、海上を漂うもの。
  • 落水
    船上から乗組員・乗客・積荷が転落するもの。
  • その他
    火災や浸水

海難事故の影響

引き起こされる結果としては、以下のようなものがある(例示)。

  • 人的損害
    死亡怪我など。
  • 物的損害
    船体の喪失・荷物の流失・港湾施設の損壊など。
  • 自然損害
    燃料・輸送物の漏洩・散乱による海洋汚染など。オイルタンカーの海難事故の場合には特に大きな被害の発生が報告されている。

海難事故の複合的様態

海難事故は、個々に様態が異なり、またさまざまな複合的要素を持つ。たとえば「荒天による操船不能→座礁→船体断裂→燃料流出」など。また、関係者が生還しないケースも少なくなく、原因の解析が困難なことも珍しくない。

海難事故の法的扱い

海難事故は、船という陸上での経験があまり通用しない交通機関にかかわるものであること、独特の法的規制や慣習があることなどに鑑み、法的に特殊な扱いがなされる場合がある。

日本における海難事故の法的扱い

日本では、一般に事故をめぐる責任の追及については民事上の責任や刑事上の責任が問題となり、海難事故に関しても同様であるが、海難事故の場合には特に将来的な海難の防止という観点から、運輸安全委員会による海難事故の究明(運輸安全委員会設置法1条)がなされ、故意・過失によって海難を発生させた船員に対しては海難審判所海難審判による懲戒がなされる(海難審判法1条)。なお、海難事故の究明や海難審判について以前は海難審判庁が担っていたが、2008年10月の法改正により海難審判庁は廃止され現行の体制に移行した。

海難事故の損害賠償枠組み

テンプレート:節stub

一般的な海難事故の損害賠償については、通常の損害賠償保険によって扱われる。

しかしながら海難事故の場合、特にオイルタンカーの事故などの際には、その汚染規模が大きく、被害額・除染費用などが巨額に上ることが少なくなく、補償の実効性には疑問が持たれるケースも少なからず存在した。そのため、1967年テンプレート:仮リンク号事故を契機として1969年には「油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約」が作られ、以下幾度か改定されている。

この条約では、タンカー事故などについて、ほとんど無過失責任であるといえるレベルの損害賠償責任を負わせている。また、現実的な被害救済のために、一定量以上の荷主に拠出を義務付けるなどして国際基金を整備し、確実に補償がなされるような枠組みを作っている。

日本国内では、この条約に基づいて船舶油濁損害賠償保障法が制定されている。また、保険未加入船舶については入港を拒否するといった方法で、補償が期待できないような被害の発生を防止している。

海難事故に関する作品一覧

映画

タイタニック沈没を扱った作品群についてはタイタニック (映画)を参照。

ノンフィクション

  • 沈んだ船を探り出せ
アメリカの小説家、クライブ・カッスラーが稼いだ印税を使って沈船の探索を行なった記録。

アニメ

コンピューターゲーム

絵画

クラシック音楽

脚注

テンプレート:Reflist

関連項目

テンプレート:Sister テンプレート:Wikinewscat テンプレート:Portal box テンプレート:ウィキプロジェクトリンク

外部リンク

  • テンプレート:Cite web