性同一性障害
テンプレート:Portal LGBT 性同一性障害(せいどういつせいしょうがい、Gender Identity Disorder, GID)は、『生物学的性別(sex)と性の自己意識(gender identity、性自認)とが一致しないために、自らの生物学的性別に持続的な違和感を持ち、自己意識に一致する性を求め、時には生物学的性別を己れの性の自己意識に近づけるために性の適合を望むことさえある状態』[1]をいう医学的な疾患名。やや簡潔に『性の自己意識(心の性)と生物学的性別(身体の性、解剖学的性別)が一致しない状態』とも説明されている。
その病状を持つ者は性同一性障害者(せいどういつせいしょうがいしゃ)、GID当事者などと呼ばれる。また日本などにおける診断名のみならず、身体的な性別と性自認が一致しない人に対する幅広い表現としてトランスジェンダーという言葉がある。なお、体の性の変異に関わる性分化疾患、性的指向に因る同性愛や性自認に因るものではない異性装とは根本的に事象が異なる(後述参照)。
日本精神神経学会のDSM‒5病名・用語翻訳ガイドラインでは性別違和に名称変更した[2]。
性同一性障害のデータ | |
ICD-10 | F64 |
DSM-IV-TR | 302.85 |
統計 | |
世界の患者数 | 不明 |
日本の患者数 | 不明 |
学会 | |
日本 | GID学会 |
世界 | WPATH |
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目次
概念
概要
人は、『自身がどの性別に属するかという感覚、男性または女性であることの自己の認識』を持っており、これを性同一性(性の同一性、性別のアイデンティティー)という。大多数の人々は、身体的性別と性同一性を有するが、稀に、自身の身体の性別を十分に理解しているものの、自身の性同一性に一致しない人々もいる。そうした著しい性別の不連続性(Disorder)を抱える状態を医学的に性同一性障害という。
一般に、性別は身体や染色体によって決まるもの、身体の性と性同一性は一体のものと考えられてきたが、生まれつき染色体、生殖腺、もしくは解剖学的に性の発達が先天的に非定型的である状態にある性分化疾患の症例を研究するうち、性分化疾患の場合、身体の性と性同一性はそれぞれ必ずしも一致しない場合があることがわかった[3]。性同一性障害は、何らかの原因で、生まれつき身体的性別と、性同一性に関わる脳の一部とが、それぞれ一致しない状態で出生したと考えられている[4][5]。
このため、性同一性障害を抱える者は、自身とは反対にある身体の性別に違和感や嫌悪感を持ち、生活上のあらゆる状況においてその性別で扱われることに精神的な苦痛を受けることが多いとされる。そうした、終生まで絶え間なく続く苦痛の無い、普通の生活を送るために治療を要し、時に身体や生活上において、自身と一致する性別への移行をすることがある。
日本では、こうした性同一性障害を抱える人々への治療の効果を高め、社会生活上のさまざまな問題を解消するために、平成15年7月16日に性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律を公布し、翌年に施行している。この法律により、定められた要件を満たす性同一性障害者は、戸籍上の性別を変更できるようになった。日本国外では、多くのヨーロッパ諸国、アメリカやカナダのほとんどの州で、性同一性障害者のために、1970年代から1980年代より立法や判例によって法的な性別の訂正を認めている[6]。日本を含めこれらの国の法律は、性別適合手術を受けていることを要件としているが、新たに21世紀において立法したイギリスとスペインでは、性別適合手術を受けていることを要件とせずに法的な性別の訂正を認める法律を定めた[7]。
定義
性同一性障害は、Gender Identity Disorder (gender [性] - identity [同一性] - disorder [障害]) の訳語であり、医学的な疾患名である[8]。国際的な診断基準として、世界保健機関が定めた国際疾患分類 ICD-10、米国精神医学会が定めた診断基準 DSM-IV-TR があり、医師の診察においてこのいずれかの診断基準を満たすとき、性同一性障害と診断する[9]。
日本の性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律[10]では、同法における「性同一性障害者」の定義を、
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としている。
日本における性同一性障害の診断と治療の指針である日本精神神経学会「性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン (第3版)」[11]において、
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とある。
- FtM と MtF
- 生物学的性別が女性で、性の自己意識が男性である事例を「FtM」(エフティーエム、Female-to-Male)、生物学的性別が男性で、性の自己意識が女性である事例を「MtF」(エムティーエフ、Male-to-Female)と表記する用語がある。
性同一性
性同一性とは
「性同一性」(性の同一性、性別のアイデンティティー)とは、医学界における “Gender Identity” (gender [性] - identity [同一性])[12] への伝統的な訳語であり[13]、『男性または女性としての自己の統一性、一貫性、持続性[14]』『自身がどの性別に属するかという感覚、男性または女性であることの自己の認識[15][16]』という意味をもつ。
その他の訳語として「性の自己意識」「性の自己認知」「自己の性意識」「性自認」、カタカナ表記として「ジェンダー・アイデンティティ」があり、いずれもほぼ同義である[17]。より一般的でわかりやすい表現として「心の性」がある。
人々のうち大多数の者の性同一性は、生物学的性別と一致する。身体が男性で性同一性は男性、身体が女性で性同一性は女性である。人々のうち性同一性障害を抱える者の性同一性は、生物学的性別と一致しない。身体が男性で性同一性は女性、身体が女性で性同一性は男性である。この『同一』とは、「心の性と身体の性が同一」という一致不一致の意味ではなく、アイデンティティー(同一性)、「環境や時間にかかわらず等しく変わらない」という意味においての『同一』である[18]。性同一性障害は、性同一性そのものに異常や障害があるわけではなく、また性同一性が“無い”わけでもない。性同一性障害を抱える者も、そうでない大多数の者も、一様に人はそれぞれに性同一性を持っており、いずれも概して正常である。大多数の者は性同一性と身体の性とが一致し、生来からそれを疑うことなく意識しないほどに至極当然であるため、自身の性同一性を客観的に実感したり認識したりすることが難しい。
性同一性は、性的指向(恋愛の対象とする性別)とは切り離すことのできる概念であり、性同一性がどちらの性別であるかに関して、性的指向はその基軸にはならない。性的指向は相手がいることで成り立つが、性同一性はあくまで自分一人の問題[19]、自己の感覚や認識である。人は物心ついた頃から、おおむね幼年期や児童期頃には(身体的性別とは別に)自己としての性を認識するが、その多くは他者に恋愛感情を持つことで初めて認識するわけではない。
性同一性は、単なる(社会的・文化的な)「男らしさ、女らしさ」とも別である。たとえば女性的な男性がすなわち性同一性が女性というものではない。「自分は男らしくない男性」と自覚していても、自己としての性の意識が男性であれば、性同一性は男性である[20]。
性同一性の存在
性同一性(性の自己意識・自己認知)の概念は、性分化疾患(生殖器や性染色体などの身体的性別が非典型的な状態)の事例を解釈するため提唱されたことに始まる[21]。多くの性分化疾患の当事者を長期に渡って見守るうち、身体とは別個にある「性の意識」、いわば「その人自身の真の性別」とも言えるその存在を認めるより他ない事例がいくつも生じたのである。
この「性同一性」の概念が提唱された際、たとえ性分化疾患とはいえ、どこかに性別を客観的に判定し得る基準があるはずと考えられてもきたが、同じ性染色体の構成や内外性器の形態であっても、単純にファルスの長さだけでは性の判定はできない。当事者の性の意識は性染色体や内外性器からも独立していることがわかり、けっきょく性別は本人の自己意識によって決定するほかない。性分化疾患を患った乳幼児に対する手術にいち早く警鐘を鳴らした学者らは、「脳も、性に関わる器官と認めなければならない」「人間の脳は男女差のある性的二形のものであり、乳幼児の性別を決めるという重大な決定がその後の本人に幸せをもたらすかは予測できない」と勧告した[22]。
以上の事例や経緯によって、「性同一性(性の自己意識)」の存在、そして「身体の性」と「性同一性(性の自己意識)」はそれぞれ別個であり[23]、ひとえに「身体」が人の性別を決定づける根拠とはならないことが明らかとなった。
性同一性の起源
性同一性障害を有さない大多数の者においても、もし出生してまもなく反対の性に手術を施され、戸籍も扱いもその性別にされた場合、性別の不一致による苦悩や困難に直面する可能性が高いといえる。一つの例え話として、もし仮に人生半ばで何らかによって自身の身体の外観を失い、性別を外から判定できず、家族や知り合いもいない、戸籍などの証明書も消失した場合、周囲に対してどのように自身の性別を認めてもらうか。「自分は男性・女性だ」と自己の性の意識にしたがって訴え、それを何とか受け入れてもらうしかない。その〈男性〉としての、〈女性〉としての認識や感覚、そして自身がそれを信ずる確信は、はたしてどこからやってきて、どこに起源があろうか。
人の性同一性の形成は、環境要因による後天的なものか、生物学的な要因による先天的なものかは長く論じられてきた。この論争において有名な症例として「ジョン/ジョアン症例 The “John/Joan” case」がある。性同一性の形成の決定的な要因は明らかとなっていないものの、この症例によって、生まれる前の生物学的な要因が関わっていることは確かであるといえる。また、脳には胎児期の性分化によって生じる構造的な男女の差があり、その一部には性同一性との関連が示唆され、性同一性は胎児期の性分化においてほぼ形成される先天的なものとみられている。
性同一性との不一致
胎児期における性分化(男性型・女性型への分化)の機序は極めて複雑かつ数多くの段階を辿る。その過程は、一つでもうまく働かないと異常を起こし得る至妙な均衡のうえに成り立っており、性分化疾患の多様な事例など、人の性は必ずしも想定される状態に性分化、発達するとは限らない。胎児の性分化では、性腺や内性器、外性器など、身体のさまざまな部位の性別が決定された後、脳にも構造的な男女の差を引き起こす[24]。男女差が認められるいくつかの細胞群のなかには、性同一性に関わっていると推定できる箇所がある[25]。もし、性分化疾患とは違って身体は典型的な状態に発育する一方、脳が部分的にその身体とは一致しない性への性分化を起こしていたと仮定すると、出生時には難なく身体によって性の判定がなされ、身体も典型的に成長し、家庭や社会においても疑いなくその性別として扱われることになるが、おそらく本人の性の自己意識はそれとは別の性となる。
性同一性障害は、性の自己意識と生物学的性別とが一致しない状態である。生物学的な要因が推測されており、何らかの原因によって、脳と身体とがそれぞれ一致しない性別へ性分化し発達したものと考えられている。このため、自身の身体の性への違和感や嫌悪感、性の自己意識に一致する性への一体感や同一感を、強く持続的に抱くこととなる。
性同一性障害を有する者は、(例えば MtF に対して)「本当は男性」「実は男性」等といった、身体の性別、出生時に判定された性別を基準とする言われ方に対して嫌忌することが多い[26]。性同一性障害を抱える者は、もし生来から自身の性同一性と同じ性別の身体で生まれてさえいれば、何ら違和感を持つこともなく普通にその性としての人生を過ごしてきたはずであり、人格や自己の性が“途中で変わった”わけではない。当事者は(心身ともに)「異性になりたい」のではなく、「本当は女性(男性)なのになぜ身体が男性(女性)か」という極めて率直な感覚を胸中に持っていることも多く、当事者自身にとっての「本当の性別」とは、まさしく自分を自分たらしめる自己意識にしたがった性別である。FtM にとっての「本当の性別」は男性であり、MtF にとっての「本当の性別」は女性であり、だからこそ現にその性別としての人生を過ごしているといえる[27]。
他の概念との別
- 「同性愛」(ホモセクシュアル、ゲイ、レズビアン)
- しばしば同性愛(ホモセクシュアル、ゲイ、レズビアン)と混同されることがあるが、これらは概念が異なり、両者には根本的な相違がある。同性愛は「恋愛の対象がどちらの性別であるか」の性的指向に関する概念であり、性同一性障害は「自己の性の意識はどちらの性別であるか」の性同一性に関する概念である[28]。
- 同性愛は、男性が“男性として”男性を愛する、または女性が“女性として”女性を愛するものであり、自身の性別に違和感を持っているわけではなく、反対の性になりたいわけでもない[29]。性同一性障害は、恋愛の対象がどちらの性別であれ、その人自身が、性の自己意識と身体の性との不一致により、自身の生物学的性別への違和感、身体とは反対の性への一体感を持つ。たとえば、男性同性愛者の性同一性は男性であり、自分が男性であることにも、男性として扱われることにも違和感がなく、“男性として”男性を愛している。性同一性障害当事者 (MtF) の性同一性は女性であり、自分の身体が男性であること、男性として扱われてしまうことに違和感をもつ。誰を好きであるから性別に違和感を持つという表面的な程度ではなく、根源的に「身体の性別が違う」という感覚を有している。
- 同性を愛することは、異性を愛することと同じく、その人自身の恋愛の自然なあり方であって、何らかの疾患、たとえば性同一性障害が原因などというものではない。同性愛は疾患ではなく、同性愛者は何らの医学的治療を必要としないが、性同一性障害は疾患であり、その当事者の多くは医学的治療を必要とする。
- 性同一性障害において「心の性」「心は男性・女性」といった表現があるが、他方で、性的指向を基準とした「心の性」の記述、たとえば男性同性愛者を指して時に「心が女性」という形容や認識がなされ得る。この言葉上の混同により、当事者による「自分は性同一性障害で心の性が女性」との説明に、他者にはあるいは「男性が好きということか。つまり同性愛」と受け取られかねない。性同一性障害における「心の性」とはあくまで「性同一性 gender identity」という用語を便宜的に平たく表現したものであり、そして男性同性愛者は性同一性が女性であるから恋愛の対象が男性というわけではない。
- 性的指向と性同一性とは別の概念であり、別個に捉える必要がある。性同一性がどちらの性別であるかに関して、性的指向はその基軸にはならない。性同一性障害を有する有さないに限らず、異性愛、同性愛は存在する。性的指向は相手がいることで成り立つが、性同一性はあくまで自分一人の問題である[30]。たとえば「ある女性が、女性を愛する(同性愛)。すなわち性同一性(心の性)が男性ということであり、その女性同性愛者は性同一性障害である」という理解は全くの誤りである。もしその女性自身に性の自己意識と身体の性との不一致を抱えていたとしたら性同一性障害であり、抱えていないとしたら性同一性障害ではない。このとき、その女性がどちらの性別を恋愛の対象としているかは別の事柄である。
- ちなみに、性同一性障害の当事者のうち、FtM の恋愛対象は女性、MtF の恋愛対象は男性である場合が多く[31]、これらは同性愛ではなく異性愛となる。
- 分界条床核(人間の性に深い関わりがあるとされる神経細胞群で、男性のものは女性よりも有意に大きい)の体積を測定したある調査[32]では、男性、女性、男性同性愛者、性同一性障害 (MtF) のそれぞれ複数名が被験者となったが、当事者 (MtF) は女性とほぼ等しく、男性同性愛者は男性とほぼ同じ傾向を示した(性的指向と分界条床核の大きさとの関連は見られなかった)[33]。
- 「異性装」(男装、女装)
- 性同一性障害の当事者は、大多数の人々と同じく、あくまで性の自己意識に基づく服装をしているのみであり、男装や女装などの異性装とは異なる[34]。
- 人が異性の装いをする理由はさまざまにあると見られるが、服装の好みによるもの、性的嗜好によるもの、サブカルチャーにおける服飾などであり、いずれも性の自己意識に基づく装いが由来ではない。どのような様態であれ、身体の性とは反対の性別の装いである事由が、性の自己意識と生物学的性別との不一致によるもの以外のあらゆる事例は性同一性障害と見ることはできない。
- また異性装者は、純粋にそれを楽しむためや、あくまで趣味と捉えていることが多い。性同一性障害を抱える者は、家族や親類との関係や仕事への就業と雇用、外科的手術、戸籍上の名や性別の変更など、まさに一つの人生そのものの問題であり、とても趣味や楽しみと呼べるものではない。加えて、「男装」「女装」という言葉は、「女性(男性)が、男(女)の装いをする」という、つねに身体的性別を前提および明示とする表現であるため、性同一性障害の当事者は、他者から「男装」「女装」との誤解や呼称をされることを嫌悪する場合がある[35]。
- 「ニューハーフ」
- ニューハーフとは、身体的には男性であることを明示した上で女性性を体現し接客業や芸能業などに従事する者をいうある種の職業名であり、疾患名である性同一性障害と同義ではない[36]。
- ニューハーフと呼ばれる人のなかには、性別に違和感を持たない男性(近年は女装家と呼び、ニューハーフとは分けるようになっている)もおり、またその一方で、性同一性障害を抱える者もいる。他方、多くの性同一性障害の当事者はごく一般的な仕事に就いており、職業的な意味合いのニューハーフではない。また、ニューハーフは自ずと身体的性別が公にあることを前提とする職業となり、当事者の多くはそうした特殊な環境を希望しない。
- 性同一性障害を抱えることと、個人としていずれか特定の職業に対する適性の有無とも全く関連はない。とくに性同一性障害が広く知られていなかった過去において、性同一性障害が理由で一般的な仕事に就くことができない、あるいはこうした仕事にしか就けないものと思い込んで、「ニューハーフ」に従事する当事者も多くいたが、適性が無いと感じて悩む事例もまた多くあった[37]。
- 但し近年は職業名としてというより、外見的・社会的・身体的・内面的に女性として生きたい人を指す総称であると認知されるようになってきている。一例として、「IT系企業のニューハーフ社長」などと紹介されることがある。
- 「おかま」
- 「おかま」とは「肛門」[38]の別名で、転じて男性同性愛者を指すものとなった俗語である[39]。性同一性障害 (MtF) は男性同性愛者と同じではない。また、本来この言葉は性的な意味合い(肛門による性行為の意)があり、かつ同性愛者に対する侮蔑の意図を含むため、もとより他者への呼称に使われるべきものとは言えない。
- 性同一性障害を抱える者の大多数は、性の自己意識に基づく性別での平静な一般生活をしており、またはそれを希望している一人の個人である。そして対外的な性別を移行するにあたり、「親や友人から拒絶されるかもしれない」「仕事を解雇されるかもしれない」「たとえ移行できたとしても、その性別の姿容を得られるのか、仕事をみつけることはできるのか」など、甚大な不安や苦悩を抱えながら試みるものである。多くの努力と犠牲を経て、ようやく障壁を乗り越えた者に対し、一般に侮蔑の意味を含む(かつ誤用である)「おかま」と呼ぶことは、なんら適切ではない[40]。
- また、世間では「おかま」の本来の意味合いを知らないまま混同し、「女っぽい男」「男を好きな男」「女の格好をした男」など、いわば「一般の男性像とかけ離れた者」に対して、なんとなくうやむやに使いつづけられているのが現状である。ただ、「女っぽい男」はその人の性格であり、「男を好きな男」は同性愛であり、「女の格好をした男」は女装であり、それぞれは全て別々で異なる概念である[41]。
- 性同一性障害の当事者はごく普通の一般人であり、また身体的性別の公表も望まないため、テレビなどのメディアに登場することは滅多に無い。おもにバラエティ番組において「おかま」を自称したり芸風とするタレントが、ことさらに女言葉を用いたり、過剰に女性的なしぐさをしたり、性に開放的で男性に惚れやすい等のステレオタイプな「おかま」のキャラクターを演じているが、性同一性障害の当事者でこのような性格を持つ者は極めて稀といえる。また、それは個人としての性格であり、性同一性障害とは関連しない。メディアに登場するタレントは一般とは違う突出した個性や才能を持つがゆえにタレントであり、そのごく一部の特殊な少数を見て全体を解することは誤謬を招く。テレビ番組は常にインパクトを求める商業活動であること、また『バラエティ番組の撮影』という日常とはかけ離れた状況での演出や表現、ということにも留意を要する。
- 「性差の撤廃」
- 社会や文化における男女の扱いの差を無くしたとするならば、性同一性障害を有する者の苦悩も無くなり「治る」のかといえば、それは決してない。もし仮に撤廃が実現したところで、現実的、物理的に当事者自身の身体は確然と存在し、身体的性別に対する違和感、嫌悪感を取り払うことにはならない。またなにより、それらの苦悩は単なる好き嫌いや損得ではなく、その人自身の持つ性の自己意識が基底にある。性同一性障害当事者の抱える問題のその根幹は『身体の性の不一致』であり、社会的文化的な性差の撤廃とは根本的な相違がある。
- 「精神病」
- 「精神疾患 mental disorder」と「精神病 psychosis」は別である。精神疾患は、脳の機能的障害や器質的障害によって引き起こされる疾患の総称。精神病とは、統合失調症など重度の精神疾患をいう。性同一性障害は精神疾患に分類されるが、性同一性障害において妄想や幻覚および人格の解体は無く、精神病ではない[42]。
- 性同一性障害の診断において、統合失調症は除外診断の対象となる。
- 「性嗜好」
- 性同一性障害は、大多数の人々と同じくあくまで性の自己意識に基づいた服装をしているものであり、性的快感を求めるための手段や性的欲望を満たす目的として異性装をおこなう等の性嗜好ではない[43]。
- 性同一性障害の診断において、身体的性別とは反対の性の服装をする事由がもっぱら性嗜好によるものは除外診断の対象となる。
性同一性障害の当事者の一部には、上記の概念のうち主として「同性愛」あるいは「ニューハーフ」と重なることはあるが、これらはその個人としてのありかたの一つであり、多くの当事者は上記の全ての概念と重ならない。諸々の概念はそれぞれとしての事象であり、それぞれとして明確に区別して考える必要がある。
性同一性障害を抱える者は、性の自己意識と身体の性とが一致しない以外は一般の人々となんら変わりはない[44]。そして多くの当事者は、性の自己意識に基づく性別での普通の生活をすることを第一義としている。身体的性別も公にしたがらないため、いたずらに自身が性同一性障害の当事者であることをわざわざ周囲の人に告げることも無い。とくに、戸籍上の性別の変更をすでに終えた当事者の場合、自身が性同一性障害であったことすら意識せず平静な日々を送っていることも多い。性同一性障害の当事者が世に表立つことはほとんど無いため、大多数の人々は性同一性障害の実際を目にする機会は少ないといえる。
インターネットによる情報収集の際にも、言うまでもなく信頼性のある資料に当たることが大切である。インターネットは玉石混淆のメディアであり、医療機関や専門医、当事者有志による適正な解説もある一方、専門医でも当事者でもない者が、性同一性障害の実際を知らぬまま、誤解を基盤とした差別や偏見、狭く限られた個人的な体験による私感や私情等を根源とする言葉が存在することもあり得る。性同一性障害を専門の一つとするある医師は、インターネット上での性同一性障害に関する情報において、なかには誤謬のあるものや、悪質な嘘偽りも多く存在する、との旨を記している[45]。また、インターネットの匿名性においては、実際に性同一性障害との医学的な診断を受けたわけでもなく「自分は性同一性障害」と自称することも容易である。
現在「性同一性障害」という、名こそ広く知られているが、その反面、この疾患名を知る人々の全てが、必ずしもこの疾患概念を正しく把握しているとも限らない。とくに同性愛や男装、女装との混同など、いまだ正しい認識があまねく浸透しているとは言えない。そのような状況にあって、ある者が「性同一性障害」という言葉を用いた時、もしくはある者が「自分は性同一性障害」と自称した時、その者が、同性愛や趣味による男装や女装のことを性同一性障害だと誤認して用いている場合もあり得る[46]。
分類
医療者において、性別違和を主訴とする症例を「primary」と「secondary」(「一次性」と「二次性」)にわける分類がある。また、日本では「中核群」と「周辺群」(Core & Periphery groups) という分類もある。この二つの分類法は、内容は一見すると似ているが、それぞれの概念や発祥、経緯等が別々で、同一にはできない。
医師によって分類の定義がやや異なることがあり、かつ過去において定義の変遷を経ているが、おおむね以下のような分類となる。
- Primary & Secondary (一次性と二次性) [47][48][49]
- Primary(一次性)
- これまでどの時期においても、性の自己意識に揺らぎがない。身体的性別への違和感を持つ時期が幼児期や児童期など比較的早く、性指向が異性愛(FtM は女性、MtF は男性に対して)。
- Secondary(二次性)
- 性の自己意識に揺らぎがあり、身体的性別への違和感をもつ時期が比較的遅く、性指向が同性愛(FtM は男性、MtF は女性に対して)または両性愛。
- 中核群と周辺群 (Core & Periphery groups) [50][51]
- 中核群 (Core groups)
- 性同一性障害の典型例。性の自己意識に揺らぎがなく、身体的性別への持続的な嫌悪感、身体とは反対の性への持続的な同一感があり、一貫してホルモン療法や性別適合手術などの医学的治療を強く求める。
- 周辺群 (Periphery groups)
- 自身の身体的性別への違和感を持っているが、性の自己意識に揺らぎがあったり、ホルモン療法や性別適合手術などの医学的治療を自ら望まない、あるいは迷いがある。
原因
原因は解明されていないが、『身体的性別とは一致しない性別への脳の性分化』が有力で、これが主たる原因と考えられている[52]。
人の胎児における体の性分化(男性化・女性化)の機序は極めて複雑であり、数多くの段階を辿る。その過程は、一つでもうまく働かないと異常を起こし得る至妙な均衡のうえに成り立っており、多くの胎児では正常に性分化し発達する一方、性分化疾患におけるさまざまな事例など、人の体の性は必ずしも想定される状態に性分化、発達するとは限らない。胎児期の性分化では、性腺や内性器、外性器などの性別が決定された後、脳の中枢神経系にも同様に性分化を起こし、脳の構造的な性差が生じる[53]。この脳の性差が生ずる際、通常は脳も身体的性別と一致するが、何らかによって身体的性別とは一致しない脳を部分的に持つことにより、性同一性障害を発現したものと考えられる[54]。
男女の脳の差が明らかになるにつれ、この生物学的な要因を根拠づけるいくつかの報告がある[55]。ヒトの脳のうち、男女の差が認められる細胞群はいくつか存在し、そのうちの分界条床核と間質核の第1核とが、人の性同一性(性の自己意識・自己認知)に関連しているとみられる示唆がある。分界条床核と間質核の第1核は、女性のものより男性のものが有意に大きいが、生物学的男性の性同一性障害当事者 (MtF) における分界条床核や間質核の第1核の大きさを調査した結果、女性のものと一致していた[56][57]。
また、性ホルモンに関わる遺伝子に特徴が示されている研究結果もある。
- 分界条床核
- 性に関わりの深い分界条床核 (BNST) は、男性のものは女性よりも1.4倍ほど有意に大きい。特に分界条床核の神経細胞のうち、ソマトスタチン陽性神経細胞の数が男性のものは女性より多い[58]。脳の研究をおこなっているオランダの学者スワーブ Dick F. Swaab らによる調査[59]では、性同一性障害の当事者 (MtF) 6名の脳を死後に解剖した結果、分界条床核の大きさは、男性のものより有意に小さく、女性のものとほぼ同じであった[60][61]。ソマトスタチン陽性神経細胞の数も明らかに少ない[62]。この6名の当事者は、性別適合手術(精巣摘出)を受けており、エストロゲンを投与していたが、分界条床核の大きさは成人における性ホルモンの影響を受けない。前立腺がんの治療のためにエストロゲンの投与を受けた男性における分界条床核の大きさの減少はみられず、また副腎皮質腫瘍によるアンドロゲン産生や閉経後のためにエストロゲンが低下している女性において、分界条床核の大きさに平均値との差は認められない[63]。当事者における分界条床核の大きさは成人後の性ホルモンが原因ではないことがわかる[64](当事者 (MtF) 6名の性的指向は、うち3名が女性、2名が男性、1名が両方に対して。また、この調査において男性同性愛者の分界条床核の大きさは男性異性愛者と等しく、有意な差はみられなかった。性的指向との関連はみられず、性同一性との関連の示唆がある)。
- 間質核の第1核
- 性ホルモン関連の遺伝子
症状
- 自身の生物学的性別に対する嫌悪や忌避
- ジェンダー・アイデンティティと反する生物学的性別を持っていることに違和感、嫌悪感を持つ。間違った性別の身体で生まれたと確信する。陰茎や精巣、月経や乳房に嫌悪を抱いたり、取り除くことを希望する。
- 生物学的性別とは反対の性への持続的な同一感
- 生物学的性別と反対の性、自身のジェンダー・アイデンティティと一致する性への、強く持続的な一体感、同一感。
- 生物学的性別とは反対の性役割
- 日常生活や社会においても、生物学的性別とは反対の性役割をおこなう。
性同一性障害の症状のその原因は、『性の自己意識と身体の性との不一致』による。単に性別違和を感じることがすなわち性同一性障害ではない。単に、性格が「女っぽい」「男っぽい」から性同一性障害、個人の性分として「男らしいこと」「女らしいこと」が嫌いだから性同一性障害、といったものでもない。
性同一性障害の診察や診断は、その知識を持つ医師によっておこなわれる。上記の症状や診断基準の一覧を用いて、たとえば自分で一つずつ照合するだけでの医学的な診断はできない。また、ほんの僅かでも自身の性別に違和感があったり、少しでも性役割に抵抗を感じたりすることをもって、ただちに「自分は性同一性障害」と断定したり思い込むのは的確ではない。周囲の者が知識もなく安易に「それは性同一性障害」と仕向けることも適切ではない。思春期におけるさまざまな変化や、何らかのきっかけによって、一時的に性の意識が混乱する場合もあり得る。いずれにしても、性別違和とその苦悩が強く持続的である場合は、専門医療機関による診察を受けることが適切といえる。
実際に性同一性障害を有する者は、幼児期や児童期の頃からすでに何らかの性別の違和感を覚えることが多い[70]。
性同一性障害を抱える者それぞれに個々の境遇や心境などがあるため、さまざまな経緯や状態がある。
- 生来から常に身体的性別としての扱いや役割を求められる環境にあったため、その身体的性別に応じた男性性または女性性の一部を身につけている場合がある。
- より社会へ適応するため、あるいは違和感や嫌悪感から逃れるために性の自己意識を抑え込み、身体的性別に応じた過剰な男性性または女性性の行動様式を取ろうとする場合もある。
- 自身が反対の性の容貌や外性器を持っているという確然たる事実や、当然のように身体的性別で扱われる環境にあって、姿形の見えない性の自己意識はそれだけでは不安定であるため、その自認する性に基づく男性性または女性性の行動様式を過剰に取ろうとする場合もある。
- 性の自己意識に基づく性別の実生活経験が無かった故に、性別移行の始めは不慣れであったり不自然であったりする場合がある。
- 性の自己意識に揺らぎがある場合もある。当初は本人自身も同性愛と混同したり、異性装と認識してその後に性の自己意識が明瞭となることもある。
性同一性障害は、自身の身体への強い嫌悪感、日常において常に反対の性役割を強いられる等の精神的苦痛から、うつ病、摂食障害、アルコール依存症、不眠症などの合併症を患うことがある。また、過去に自殺企図や自傷行為の既往があることが多く、性別の不一致の苦悩が甚だ深刻なものであるといえる[71]。
診断
国際的な診断基準として、世界保健機関が定めた国際疾患分類 ICD-10、米国精神医学会が定めた診断基準 DSM-IV-TR がある。
診断と治療のガイドラインとして、国際的な組織である Harry Benjamin International Gender Dysphoria Association による『Standards of Care for Gender Identity Disorders, sixth version』。日本では、日本精神神経学会による『性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン (第3版)』がある。
日本精神神経学会『性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン』では、診断はおよそ次のようにおこなわれる。
- 生活歴の聴取
- 性別違和の実態を明らかする。
- 自らの性別に対する継続的な違和感・不快感
- 反対の性に対する強く持続的な一体感
- 反対の性役割を求める
- 身体的性別の判定
- 染色体、ホルモン、内性器、外性器の診察・検査
- 除外診断
- 統合失調症などの精神障害によって、本来のジェンダー・アイデンティティを否認したり、性別適合手術を求めたりするものではないこと。
- 文化的社会的理由による性役割の忌避や、もっぱら職業的又は社会的利得のために反対の性別を求めるものではないこと。
- 診断の確定
- 以上の点を総合して、身体的性別とジェンダー・アイデンティティが一致しないことが明らかであれば、これを「性同一性障害」と診断する。
- 性分化疾患、性染色体異常などが認められるケースであっても、身体的性別とジェンダー・アイデンティティが一致していない場合、これらを広く「性同一性障害」の一部として認める。
- 性同一性障害に十分な理解をもつ精神科医が診断にあたることが望ましい。2人の精神科医が一致して「性同一性障害」と診断することで診断は確定する。2人の精神科医の意見が一致しない場合は、さらに経験豊富な精神科医の診察結果を受けて改めて検討する。
性同一性障害の診察や診断には、そのことに関する正確な知識、充分な理解を持つことが望まれる。また治療者は受容的かつ共感的な態度が要求される。治療者側が、性同一性障害についての心性を理解できず、陰性感情を抱き、受容的共感的な態度が保持できない場合は、性同一性障害に対する治療者として不適切であり、治療をおこなうべきではない[72]。
性別違和が一時的なものではなく、持続的なものであるかを確認するため、ある程度の一定の期間をかけて診察をおこなう必要がある。
性別違和や性別移行の願望などを訴えるものが必ずしも性同一性障害とは限らない。他の精神疾患や関連しない性のありよう等によって、類似の症状、訴え、外観を持つことがあり、正確な診断をおこなうために慎重な鑑別が必要である。鑑別すべき疾患として『統合失調症』『気分障害』『発達障害』『Transvestic fetishism』等、鑑別すべき性のありようとして『同性愛』『異性装』等がある[73][74]。
治療
性同一性障害の診断と治療の指針である日本精神神経学会「性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン (第3版)」では、社会への適応のサポートを中心とする精神科領域の治療と、身体的特徴をジェンダー・アイデンティティと適合する性別へ近づけるための身体的治療(ホルモン療法、乳房切除、性別適合手術)で構成される。性同一性障害に対する診断と治療への理解と関心、充分な知識と経験を持った医師らによる医療チーム(診療科はおもに精神科、形成外科、泌尿器科、産婦人科など)が診断と治療をおこなう。
性同一性障害の診療の始めが精神科領域の治療であるのは、おもに精神的サポートや助言、当事者の「人生をどのように生きるか」などの希望を明らかにするため、除外診断をおこなう等のためにある。身体的治療は、精神科領域の治療の後も性別の不一致による苦悩が続き、本人自らが身体的治療を希望する場合において、医療者による適応の判定を経て、本人の自己責任と自己決定のもとに選択する。身体的治療への移行は、精神科領域の治療と性同一性障害の診断の確定を省くことはできない。
なお、性同一性障害に対し、「心のほうを身体の性に一致させる」という治療は、以下の経験的、現実的、倫理的な理由によりおこなわれない。
- 性同一性障害の典型例では、過去の治療においてジェンダー・アイデンティティの変更に成功した例がなく[75]、そのような治療は不可能だと判明している。性同一性障害に対する治療は、とくに日本国外において長い歴史があり、過去に幾度もジェンダー・アイデンティティを身体に合わせようとさまざまな療法が試みられてきたが、いずれもジェンダー・アイデンティティを変えることはできなかった[76]。性同一性障害の典型例では生物学的な要因が推測され、ジェンダー・アイデンティティの変更は不可能と考えられている。
- 性同一性障害の当事者自身はジェンダー・アイデンティティの変更を望まないことが多いので、治療の継続が困難である。また、すでに当事者自身が、その身体の性別としての扱いに応えるべく努力し生きてきたという事実もある。いかに厳然と反対の性の身体で生まれようとも、いかに周りから常にその性別として扱われようとも、ついに最後まで屈することのなかった「性同一性」である。当事者自身も、さんざん悩み抜いた末に性別の移行を決断し医療機関を訪れている[77]。
- ジェンダー・アイデンティティは人格の基礎の多くを占めており、人に対する人格の否定につながる。人格と身体を比較したとき、人格を優先することこそ、人の倫理に沿う考えであるといえる[78]。性同一性障害の原因は、身体とは反対の性への脳の性分化が推測されているが、たとえば「脳を身体の性別に一致させる」という脳に対する外科手術は現在の医療水準では不可能であり[79]、またたとえ仮に可能であったとしても倫理的に大きな問題がある。
精神科領域の治療
精神科領域の治療としては、当事者のQOL(生活の質)の向上を目的として次のようなことを行う。
- 非寛容によりもたらされがちな自己評価の低さを改善させる。
- ジェンダー・アイデンティティやそれに基づく自己同一性を再確認させ、「自分は何者であるか」を明確にさせる。
- 社会生活上に生じうる様々な困難を想定し、その対処法を検討させる。
- 実生活経験(リアルライフ・エクスペリエンス、real life experience, RLE)を通じて、それに伴う困難も体験させた上で対処法を検討する。
- 抑うつなどの精神症状を伴っている場合には、その治療を優先して行なう。
- 最終的に、今後どのような治療を希望するかを冷静に決定させる。
これらの診療は性同一性障害かどうかの診断と重なる部分もあるので、平行して行われることも多い。
身体的治療
身体的治療にはホルモン療法、乳房切除、性別適合手術がある。
ホルモン療法
当事者の身体的性別とは反対の性ホルモンを投与することで、身体的特徴を本来の性(性の自己意識)に近づける治療。ジェンダー・アイデンティティに一致する性別での社会生活を容易にするとともに、身体の性の不一致による苦悩を軽減する効果が認められている。
性ホルモンの投与によって、身体的変化のほか、副作用をともない、また身体的変化には不可逆的な変化も起こり得る。ホルモン療法の開始にあたっては、性同一性障害の診断の確定のうえ、性ホルモンの効果や限界、副作用を充分に理解していることや、新たな生活へ必要充分な検討ができていること、身体の診察や検査、18歳以上であること等のいくつかの条件がある。
FtM に対してはアンドロゲン製剤を、MtF に対してはエストロゲン製剤などを用いる。
投与形態は注射剤、経口剤、添付薬があるが、日本においては注射剤が一般的に使われる。添付薬に次いで注射剤が副作用が少ないが、長期にわたる注射のために、注射部位(多くは三角筋あるいは大臀筋)の筋肉の萎縮を引き起こすことがある。
生物学的女性へのアンドロゲン製剤、および生物学的男性へのエストロゲン製剤の投与をおこなった場合、次のような変化が起こり得る。なかには不可逆的な変化もあり得る。(※ 特に、生物学的男性における精巣萎縮と造精機能喪失[80]。生物学的女性における声帯の変化[81]) テンプレート:-
生物学的女性へのアンドロゲン製剤 | 生物学的男性へのエストロゲン製剤 |
---|---|
作用
副作用 |
作用
副作用 |
医学的対処を求めて受診する性同一性障害患者の中には、早急なホルモン療法の適用を望む者も多いが、ガイドラインにそった治療においては、精神科領域の治療と性同一性障害の診断、ホルモン療法の適応判定を省くことはできない。他方で、男性化した身体は不可逆的であることから、せめて女性化を促すのではなく単に男性化を一時的に停止させる抗男性ホルモン剤の使用はより広く特に未成年者に認められるべきであるとする見解もある。
乳房切除
FtMの場合、アンドロゲンを投与しても乳房の縮小はほとんど起こらないので乳房切除術が必要となる場合がある。
乳房が小さい場合には乳輪の周囲を切開して乳腺など内部組織を掻き出し、余剰皮膚を切り取る方式をとる。これは瘢痕が目立たない。
乳房が大きい場合や(乳房を不快に思って圧迫するなどにより)下垂している場合には、乳房の下溝に沿って皮膚を切開する方式を用いる。乳頭は一度遊離させて適切な位置に移植する必要がある。瘢痕が目立つことも多い。
性別適合手術
外科的手法によって本来の性(性の自己意識)に合わせて形態を変更する手術療法のうち、内性器と外性器に関する手術を「性別適合手術」(sex reassignment surgery, SRS) という。
FtM に対しては、子宮卵巣摘出術、膣粘膜切除・膣閉鎖術、尿道延長術、陰茎形成術がある。MtF に対しては、精巣摘出術、陰茎切除術、造膣術、陰核形成術、外陰部形成術がある。
FtM では子宮卵巣摘出、MtF では精巣摘出によって、生殖能力(子供をつくる能力)は永久的に失われる[85]。これは不可逆で、もとに戻すことはできない。男性または女性としての新たな生殖能力も得られない。また、骨粗鬆症などの可能性から、ホルモン療法は生涯にわたって継続すべきものとなる[86]。
現状
日本においては、法律に定められた要件を満たせば戸籍の性別変更が可能だが、そのために必要なホルモン療法や性別適合手術には健康保険の適用がなされていない。ただし、ホルモン療法については戸籍変更後であればホルモン補充療法という形で健康保険の適用を受けることができる。また、性別適合手術においては経済的な負担を理由に健康保険の適用を求める当事者がいる一方、すでに相当数の当事者が自己負担で手術を受けて終えていることも性同一性障害特例法による性別の取扱いの変更数(2012年末現在で3584名)[87]などから確認できる。
統計
- 日本精神神経学会・性同一性障害に関する委員会の調査速報値
- 2007年度末までの全国統計
- 全国の主要専門医療機関受診者総数7177名
- FtM:4146名
- MtF:3031名
- 調査対象は、岡山大や埼玉医大、大阪医大、関西医大など全国9つのジェンダークリニック。一人の患者が複数の機関で受診しているケースも含まれている。
- 2008年度GID学会での報告
- 岡山大学病院 FtM:572人 MtF:345名(1998〜2008.2 総受診者のうち、GIDが疑われた総数)
- 札幌医科大学附属病院 FtM:197名 MtF:83名(GID外来開設〜2007.12、総受診者数)
- 大分大学医学部附属病院 FtM:27名 MtF:7名(2003〜2008.2 総受診者のうち、GID診断総数)
- 長崎大学病院 FtM:64% MtF:36%(2004〜2007.12における初診症例数の構成比)
- あべメンタルクリニック FtM:1013名 MtF:993名(1996.3〜2008.2。相談件数)
- 川崎メンタルクリニック FtM:401名 MtF:292名(2000〜2007 総受診者のうち、GID診断総数)
- Harry Benjamin International Gender Dysphoria Association『Standards of Care for Gender Identity Disorders, sixth version』(2001年)の統計
- アメリカでは、FtM は107,000人に1人、MtF は37,000人に1人
- オランダでは、FtM は30,400人に1人、MtF は11,900人に1人
法律
日本
日本では、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律第2条において、「性同一性障害者」が同法第3条第1項各号に該当する場合、請求による家庭裁判所の性別の取扱いの変更の審判によって、民法をはじめとする各法令手続き上の性別が変更されたものとみなされる。一般的には、戸籍法における「男女の別」の変更を示している。
第三条の定める要件は以下のとおり。 テンプレート:Quotation
日本国外
先進国の多くでは、法律によって性同一性障害者の法的な性別の訂正または変更を認めている。
- ヨーロッパ
- イギリスでは2004年に法律 “Gender Recognition Act 2004” を制定[88]、スペインでは2007年に法律 “Ley de identidad de género” を制定[89]、ドイツでは1980年に法律 “Gesetz über die Änderung der Vornamen und die Feststellung der Geschlechtszugehörigkeit in besonderen Fällen” (Transsexuellengesetz - TSG) を制定[90]、イタリアでは1982年に法律を制定[90]、スウェーデンでは1972年に法律を制定[90]、オランダでは1985年に民法典に規定[90]、トルコでは1988年に民法典に規定[90]。
歴史
- 日本
- 1969年、ブルーボーイ事件。十分な診断をせずに安易に性別再判定手術を行なった医師が優生保護法違反により逮捕された。
- 1997年5月28日、日本精神神経学会が「性同一性障害に関する答申と提言」を答申。
- 1998年10月、埼玉医科大学が FtM の患者に対して、日本国内初の公式な性別再判定手術をおこなった。
- 2001年10月11日−2002年3月28日、ドラマ『3年B組金八先生』第6シリーズにおいて、主人公の一人に性同一性障害を抱える者として描かれた。当時この番組で初めて性同一性障害を知ったという人も多く[94]、一般に広く知られるきっかけとなった。
- 2003年4月、東京都世田谷区議会議員選挙において、性同一性障害の当事者がそのことを明かしたうえで立候補を表明し当選した。立候補の際、世田谷区選挙管理委員会に対して戸籍上の記載とは異なる性別での届け出をし受理された。当選後の特別区議会議長会が発行する議員名簿にも申し出どおりの性別で掲載された。
- 2003年7月10日、「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」(性同一性障害特例法)が成立。
- 2004年7月16日、「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」が施行。
- 2006年5月、兵庫県の小学校低学年の男児が「女児として」学校生活を送っている例が紹介された。
- 2007年12月31日、第58回NHK紅白歌合戦において、性同一性障害を抱える歌手が、戸籍上の性別の記載は男性であったが、女性陣の紅組として出場した。
- 2014年3月31日、中古車販売会社に勤務していた女性が自殺したのは、性同一性障害を理由に退職強要されたことが原因であるとして、女性の遺族が岩国労働基準監督署を相手取り、労働災害であることを認定した上で遺族補償年金が受けられるよう求め、広島地方裁判所に訴訟を起こす[95]。
- 日本国外
- 2004年、イギリスにおいて、性別適合手術を受けなくとも当事者の法的性別の変更を認める「Gender Recognition Act 2004」(性別承認法)が成立した。
- 2006年、スペインにおいて、性別適合手術を受けなくとも当事者の法的性別の変更を認める「Ley de identidad de género」が成立した。
- 2009年2月27日、オーストリアの行政高等裁判所において、仕事と家庭の事情で性別適合手術を受けられない当事者の法的な性別変更が承認された。
- 【法律】性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律
- 名古屋高裁決昭和54・11・8及び東京高裁決平成12・2・9における戸籍訂正に関する抗告事件等を受けて、2000年9月、自由民主党は性同一性障害に関する勉強会を発足し、本法案を含む性同一性障害の法律的扱いについて検討してきた。2002年、民主党、公明党においても同様の勉強会がおこなわれた。
- 2003年7月1日、自由民主党のプロジェクトチームが参議院法務委員会へ法案を提出(提案者:南野知惠子参議院議員)、2003年7月2日の参議院本会議及び7月10日の衆議院本会議において「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」が成立、2003年7月16日公布、2004年7月16日に施行した。これにより、同法の定める要件を満たすとき、家庭裁判所の審判により、性同一性障害者の戸籍上の性別の変更ができるようになった。
- 2008年6月10日、改正案が衆参両院本会議で全会一致で可決、成立し、一部の要件が緩和された。
- 【判例】性同一性障害者解雇事件
- 性同一性障害に伴うトラブルなどを理由にして行われた懲戒解雇が解雇権の濫用にあたるとされた裁判例がある。それが2002年の性同一性障害者解雇無効事件(懲戒処分禁止等仮処分申立事件、東京地方裁判所平成14年(ヨ)第21038号、東京地裁平成14年6月20日決定 労働判例830号13頁掲載)である。この事件は、男性として雇用された被用者(原告)が女性装での就労を禁止する服務命令に違反したことを理由の一つ(ほかにも4つの理由が挙げられている)として懲戒解雇されたことに対し、従業員としての地位保全および賃金・賞与の仮払請求の仮処分を申し立てたものである。東京地裁は、性同一性障害である被用者が女性の服装・化粧をすることや女性として扱って欲しいなどの申し出をすることは理由があることだとした。そして、使用者側(被告)は被用者(原告)からのこうした申し出を受けた後も善後策を講じなかったことや、女性の格好をしていては就労に著しい支障を来すということの証明がないことを指摘して懲戒解雇を権利の濫用であるとして無効とし、賃金の支払いを命じた。[96][97][98][99]
性別移行者(性同一性障害者)が登場する主な作品
性別移行者(性同一性障害者)ないし、トランスジェンダーの人物が登場する作品。「性同一性障害」という概念が生まれる前の作品も含む。製作に当事者が直接関わっていない作品が大半の為、実際の性同一性障害者とは状態が異なる。(同性を愛しすぎたゆえに異性になる事を決意したり恋愛対象によって性自認が再形成されるかの様な誤表現、同性愛と性同一性障害の混同、さらに異性を演じる職務にある人物や女装趣味嗜好のある人物、「ごっこ遊び」的感覚を持つ同性愛者が性同一性障害であるかの様に扱われたり、「ニューハーフ」「オカマ」等の言葉が「性同一性障害者」と同義語であるかの様に使用される等の誤用がある)
TVドラマ
- 29歳の憂うつ パラダイスサーティー (2000年、テレビ朝日)
- 3年B組金八先生 第6シリーズ (2001年、TBS)
- 相棒 season3 (2005年、テレビ朝日)
- 私が私であるために (2006年、日本テレビ)
- アグリー・ベティ (2006年テンプレート:~、ABC/NHK)
- ラスト・フレンズ (2008年、フジテレビ) - 作品中では性別違和症候群とする説明もある。
- ママはニューハーフ (2009年、テレビ東京)
- ママは昔パパだった (2009年、WOWOW)
- マジすか学園 (2010年、テレビ東京)
- 夜のせんせい (2014年、TBS)
映画
- << Female to Male >>
- ボーイズ・ドント・クライ / Boys Don't Cry (1999)…(米)
- ロバート・イーズ / Southern Comfort (2001)…(米)
- << Drag Queen >>
- ロッキー・ホラー・ショー / ROCKY HORROR PICTURE SHOW (1975)…(英)
- プリシラ / The Adventures of Priscilla, Queen of the Desert (1994)…(濠)
- キンキーブーツ / KinkyBoots (2005)…(英)
- << Male to Female >>
- 極道記者2 / 日本において1990年代初期に性同一性障害の問題に真っ正面から向き合った作品。奥田瑛二演じる新聞記者が性同一性障害者と恋愛関係を結ぶストーリーである。
- 薔薇の葬列 / Funeral Parade of Roses (1969)…(邦)
- ガープの世界 / The World According to Garp (1982)…(米)
- クライング・ゲーム / The Crying Game (1992)…(英)
- ぼくのバラ色の人生 / Ma Vie En Rose :my Life In Pink (1997)…(仏)
- 愛する者よ、列車に乗れ / Ceux qui m'aiment prendront le train (1998)…(仏)
- オール・アバウト・マイ・マザー / All About My Mother , Todo sobre mi madre (1999)…(西)
- ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ / Hedwig and the Angry Inch (2001)…(米)
- アグネスと彼の兄弟 / AGNES UND SEINE BRUDER :Agnes and His Brothers (2004)…(独)
- トランスアメリカ / Transamerica (2005)…(米)
- プルートで朝食を / Breakfast on Pluto (2005)…(愛/英)
- わたしはロランス / Laurence Anyways (2012)…(仏/加)
小説
- 海辺のカフカ (村上春樹)
- 片想い (東野圭吾)
- 彼が彼女になったわけ (デイヴィッド・トーマス)
- プリンセス・トヨトミ (万城目学)
- インディゴの夜 (加藤実秋)
- この恋と、その未来。 (森橋ビンゴ)
- 赤×ピンク (桜庭一樹)
漫画・アニメ・ゲームetc.
- ストップ!! ひばりくん!
- バーコードファイター
- ボンボン坂高校演劇部
- F.COMPO
- オッパイをとったカレシ。
- G.I.D - GENDER IDENTITY DISORDER
- こちら葛飾区亀有公園前派出所
- 無頼男 -ブレーメン-
- Paradise Kiss
- 逢魔がホラーショー
- ピンクとみずいろ
- 渋谷君友の会
- マリア様がみてる
- サウスパーク
- ダブルハッピネス
- ミッドナイトレストラン7to7
- アイレボ -Ice Revolution-
- 幻覚ピカソ
- ぼくは、おんなのこ
- 放浪息子
- ノノノノ
- 罪花罰
- 〜少女少年〜 GO!GO!ICHIGO
- 殲鬼戦記ももたま
- 曹操孟徳正伝
- 天の神話 地の永遠
- 玄椿
- 今際の国のアリス
- ぼくらのへんたい
- 幽麗塔
関連項目
- 医療
- 日本精神神経学会
- 原科孝雄
- 針間克己
- ミルトン・ダイアモンド
- 性別適合手術(SRS)
- 法律
- 性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律
- 大島俊之 - 上記特例法の基礎となるGID当事者の戸籍情報の変更に関する論文を発表。
- 概念
- 著名人
- 国際法
- その他
参考文献
- 日本精神神経学会 「性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン(第2版)」 2002年。
- 日本精神神経学会 「性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン(第3版)」 2006年。
- 山内俊雄 『性同一性障害の基礎と臨床』 新興医学出版社、2001年。ISBN 9784880024318
- 山内俊雄 『性同一性障害の基礎と臨床』 新興医学出版社、2004年(改訂版)。ISBN 9784880024738
- 山内俊雄編著 『Modern Physician 25-4 性同一性障害の診かたと治療』 新興医学出版社、2005年。
- 山内俊雄 『性の境界—からだの性とこころの性』 岩波書店、2000年。ISBN 9784000065740
- 大島俊之 『性同一性障害と法』 日本評論社、2002年。ISBN 9784535058125
- 大島俊之 「性同一性障害とオランダ法」『神戸学院法学第29巻第4号』 神戸学院大学法学会、2000年2月。
- 石原明・大島俊之編著ほか 『性同一性障害と法律—論説・資料・Q&A』 晃洋書房、2001年。ISBN 9784771012288
- 野宮亜紀ほか著 『性同一性障害って何?—一人一人の性のありようを大切にするために』 緑風出版、2003年。ISBN 9784846103101
- 野宮亜紀ほか著 『性同一性障害って何?—一人一人の性のありようを大切にするために』 緑風出版、2011年(増補改訂版)。ISBN 9784846111014(野宮ほか2011)
- 針間克己監修・相馬佐江子編著 『性同一性障害30人のカミングアウト』 双葉社、2004年。ISBN 9784575297225
- 山内兄人・新井康允編著 『脳の性分化』 裳華房、2006年。ISBN 9784785359133
- 新井康允 『脳の性差—男と女の心を探る』 共立出版、1999年。ISBN 9784320053939
- 中村美亜 『心に性別はあるのか?—性同一性障害のよりよい理解とケアのために』 医療文化社、2005年。ISBN 9784902122169
- 中村美亜 「新しいジェンダー・アイデンティティ理論の構築に向けて—生物・医学とジェンダー学の課題」『ジェンダー&セクシュアリティ』 国際基督教大学ジェンダー研究センタージャーナル、2006年12月31日。
- 石田仁編著 『性同一性障害—ジェンダー・医療・特例法』 御茶の水書房、2008年。ISBN 9784275008060
- 虎井まさ衛 『語り継ぐトランスジェンダー史—性同一性障害の現在・過去・未来』 十月舎 、2003年。ISBN 9784434033308
- 上川あや 『変えてゆく勇気—「性同一性障害」の私から』 岩波書店、2007年。ISBN 9784004310648
- 池田稔 『私の体は神様がイタズラで造ったの?—性同一性障害を超えて』 悠飛社、2001年。ISBN 9784946448966
- 米沢泉美編著 「トランスジェンダリズム宣言—性別の自己決定権と多様な性の肯定」 社会批評社、2003年。ISBN 9784916117557
- 「別冊ジュリストNo.183 医事法判例百選」 有斐閣、2006年。ISBN 9784641114838
- ジョン・コラピント 『ブレンダと呼ばれた少年—性が歪められた時、何が起きたのか』 村井智之訳、扶桑社、2005年。ISBN 9784594049584
- Hilleke E Hulshoff Pol, Peggy T Cohen-Kettenis, Neeltje E M Van Haren, Jiska S Peper, Rachel G H Brans, Wiepke Cahn, Hugo G Schnack, Louis J G Gooren and René S Kahn 'Changing your sex changes your brain: influences of testosterone and estrogen on adult human brain structure' 2006,European Journal of Endocrinology, Vol 155, suppl_1, S107-S114. DOI:10.1530/eje.1.02248
脚注
出典
外部リンク
- 学会
- 法令
- 国の機関
- 支援団体
- ↑ 山内俊雄 「性同一性障害とは—歴史と概要」『Modern Physician 25-4 性同一性障害の診かたと治療』 新興医学出版社、2005年(2005年4月15日発行)、365頁。
- ↑ テンプレート:Cite web
- ↑ 山内俊雄編著 『Modern Physician 25-4 性同一性障害の診かたと治療』 新興医学出版社、2005年(2005年4月15日発行)、368頁。
- ↑ 野宮ほか2011、40頁。
- ↑ 山内兄人・新井康允編著2006、342頁。
- ↑ 野宮ほか2011、197–200頁。
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- ↑ 野宮ほか2011、14–17頁。
- ↑ 性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(平成十五年七月十六日法律第百十一号)
- ↑ 日本精神神経学会 「性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン (第3版)」 2006年。
- ↑ “gender identity” という言葉を初めて用いたのは、アメリカの心理学者ジョン・マネー John Money。初出は1966年。
- ↑ 野宮ほか2011、20頁。
- ↑ 野宮ほか2011、20–22頁。
- ↑ テンプレート:Citation
- ↑ テンプレート:Citation
- ↑ 野宮ほか2011、20–21頁。
- ↑ 野宮ほか2011、22頁。
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- ↑ 性同一性障害:「退職強要」 遺族が提訴 毎日新聞 2014年4月1日
- ↑ 昭文社・性同一性障害を理由に社員解雇
- ↑ 「女性として働かせてほしい」 社員側の主張
- ↑ 「女装は職場の秩序を乱す」 昭文社側の言い分
- ↑ (関連)「大阪市・性同一性障害男性を女性職員として認可」