日産・FJエンジン

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FJエンジンは、日産自動車1980年代前半に製造したDOHC16バルブ直列4気筒ガソリンエンジンの名称。

概要

1981年にR30型スカイラインRS(DR30)用エンジンとして登場。翌1982年にはS110型シルビア&ガゼールにも搭載された。1986年のS12型シルビアのマイナーチェンジとガゼールのモデル終了とともに生産終了した。

開発の経緯

1980年代初頭、2リッタークラスの主力エンジンであったL20SOHC6気筒エンジンが旧態化しつつあり、次世代のRB型6気筒エンジンまでの繋ぎが求められていた。また競合他社から1気筒あたり4バルブのDOHC高速・高出力型エンジンが登場が予想されていたために対抗できるエンジンの開発も要求されていた。さらにセドリックタクシーH20型4気筒OHVエンジンを廃止としZ型SOHCエンジンに置換える計画もあったことから、H20型を製造する日産工機の生産設備も活用したスポーツ車用エンジンとして約5年間製造されたのが本エンジンである。

本エンジン搭載車は「RS(レーシングスポーツ)[1]」というグレード名称とされた。

構造

直列4気筒・ボアXストローク=89.0mmX80.0mm・排気量1,990cc・鋳鉄製シリンダーブロック・5クランクベアリング・シリンダー中心間距離100.0-106.0-100.0mm はベースとなったH20型と同じ。

カムシャフト駆動は2ステージローラーチェーンを採用し、シリンダーブロック内の旧カムシャフト位置にジャックシャフトを持つ。シリンダーヘッドはアルミ合金製鋳物で、IN/2・EX/2の4バルブ中心にペントルーフ型燃焼室を持つ。バルブ開閉はバケット式直動タイプで、吸気ポートはS20型エンジンに類似した形状となった。バルブ挟み角が大きく、それに伴いヘッドの幅が広い。

  • 国産DOHCエンジンとしては旧世代(1960年代 - 1970年代前半)と次世代(1980年代以降)の狭間に設計されたために両世代の特徴を備える。

制御系は日産製マネジメントシステムの第2世代に当たるECCSを採用。以前のEGIと比べドライバビリティの向上に貢献した[2]

主要諸元

FJ20EFJ20ETFJ20ET
インタークーラー付
FJ24
総排気量(cc)19902340
内径×行程(mm)89×8092×88
圧縮比9.18.08.511.0
最高出力(ps/rpm)150/6000190/6400205/6400240/7200
最大トルク(kg-m/rpm)18.5/480023.0/480025.0/440024.0/6000
数値はグロス[3]である。
スカイラインとシルビア&ガゼールでは一部スペックが異なる。
FJ24型には275PS仕様が存在する(詳細は後述)。

バリエーション

FJ20E

「E」はインジェクション付であることを示す。

DR30型スカイラインならびにUS110型・US12型前期モデルのシルビア&ガゼールに搭載。

FJ20ET

「T」はターボ付を示す。

DR30型スカイライン・US12型シルビア&ガゼール前期モデルに搭載。ただしインタークーラー付はDR30型後期モデルのみ。

  • US12型用はエンジンルームの関係上サージタンクそのものが小型化され、インテークマニホールドもDR30型用に比べ短くなっており、ボディ形状に合わせた為かカムカバーもスカイライン用と異なり、オイルフィラーキャップ部分がフラット化されている。搭載車両に合わせるための変更であったが、これらによりエンジンの体感的な出力特性はかなり過激なものとなった[4]

FJ24

1983年 - 1986年に製造された当時の世界ラリー選手権(WRC)グループB競技車でS110型シルビアをベースとした240RSの搭載エンジン。ミクニ製ソレックス44Φキャブレターを2基装着[5]した排気量2,340ccの本エンジンがレギュレーションに合わせて200数台分が生産された。

  • FJ20E型のボアアップ版という説があるがこれは誤りで、実際は構造が異なり驚くほど共通部品は少ない全く別設計の競技用エンジンである。
  • 標準車及びカスタマースペック車用FJ24型が240PS。
  • ワークスカー搭載のエボリューションモデル用FJ24改型が275PS。

その他

一般の量産エンジン製造ラインと異なり、熟練工がひとつひとつ手作業で組み上げており、各パーツはその製造公差により数種類のグループ[6]に分類されていた。

  • 例として任意のエンジンブロックにどのピストンを選ぶか?さらには嵌め込むピストンリングはどれを選ぶか?すべてが経験に裏打ちされた技術で組み上げていたため、市販車用エンジンであるにも関わらず非常に高い完成精度となった。しかし、それに伴う高コスト化もネックとなった。

本エンジン以降の日産自動車製エンジンでは弁機構がDOHCの場合エンジン型式にDの表記が付帯されるが、当時は日産社内で車両型式の見直しを行っている時期[7]であり、エンジン型式の表記についても、同様にこれ以降見直された。

過去にFJ20E型をボアアップして2,400cc化するチューニングパーツがOS技研から販売されていたが、既に終了しているため現在の入手は困難である。

また1997年頃まで、ニッサン・モータースポーツ・インターナショナルよりFJ24型オーバーホール用部品が供給・販売されていた[8]

2009年時点では、FJ20E型&ET型共に制御系の電子部品の老朽化や配線のカプラーなどの樹脂部品は経年による寿命を迎えており、さらに機械部分の損耗も重なるため、オリジナルのまま日常的に使用するには金銭的にも時間的にも多大な努力が必要とされる。そのため一部の専門ショップより販売されているコンバージョンキットを用いた HP10型プリメーラRNN14型パルサーECUのほか、アメリカ・オーストラリア・日本国内で市販されているフルコンへの換装も選択肢となる。ただし上述の異常がなければ機械的な信頼性は現在市販されているエンジンに劣るものではない。

  • さらに最新パーツでチューニングすることにより700PSを超えるパワーを得ることも可能である。これはSRエンジンよりもボアアップやブーストアップに耐える頑丈なブロックを使っているためで、雑誌optionでの最高速トライアル企画「小野ビット隊が行く!」3位の記録は750PSまでパワーアップされたスカイラインRSである。

脚注

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関連項目

  • スカイラインではKPGC110型GT-R以来のDOHCエンジンであったためにGT-Rの名称を求める声も多かったが、開発主管の桜井眞一郎により4気筒モデルである以上はGT-Rと命名できないという考えからRSのグレード名となった。
  • この当時のECCSは制御系に電子式+負圧を用いている事からそれらのデバイスがオイルミスト等で汚れた場合、正常な制御が不能になる弱点も持ち合わせている。
  • エンジン単体クランク軸出力。
  • 同時に旧プリンス自動車系エンジンと日産系シャシーの相性の悪さを露呈も示すもので、S20型エンジン時代のフェアレディZ432にも同様な事態があった。これは合併後も残っていた旧プリンスと日産との技術者同士の確執や遺恨が続いた理由のひとつとも言われている。
  • 240RSは元々海外での販売を見込んでおり、日本国内で販売する事を想定していなかったために、日本国内の自動車排出ガス規制クリアは考慮されていない。そのため日本車最後のスポーツキャブレター純正装着車となった。
  • 一般的な量産エンジンは、おおよそ3種類。
  • シルビアではS110からS12など3桁→2桁を実施。
  • ニスモパーツカタログで確認可能。