E電

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ファイル:E-den-kamata-20050309.jpg
蒲田駅に残存していた「E電」表記(現在は撤去、2005年撮影)

E電(イーでん)とは、1987年昭和62年)の日本国有鉄道(国鉄)分割民営化に伴い、「国鉄(近郊区間の)電車」の略称である「国電」に代わるものとして、東日本旅客鉄道(JR東日本)が決めた愛称英語表記の場合は「INTRA-CITY AND suburban TRAINS」(「都市近郊区間列車」の英訳)。

概要

経緯

当時、「国電」という言葉が広く使われていたが、国鉄民営化により"国鉄電車"でなくなったため、意味上のずれが生じることになった。そこで、「国電」に代わる新たな呼称が分割民営化直後の4月下旬に公募されることとなり、約5万通の応募の中から小林亜星らによる選考委員会によって、2位の「首都電」、9位の「JR電」、20位の「E電」の3つにしぼり込まれた。ちなみに1位は「民電」だった。

5月13日には「E電」と発表、翌14日には「E電」のヘッドマークを装着した列車も走りだした。なお他の候補が選ばれなかった理由として、1位の「民電」は「民営化されたことを示す名前で、その他の私鉄(民鉄)電車とも紛らわしく、長く定着するとは思えない」、2位の「首都電」は「『スト電』と揶揄(やゆ)される可能性があり、さらに言いにくい」、 3位の「東鉄」は「語感が堅く、国鉄時代の『東京鉄道管理局』の略称と同じで、新鮮味がない」などといったことがあったとされている。

上位には、「日電」、「民鉄」、「東電」、「都電」、「関電」などの応募もあったが、既に他企業の略称として使われていたために除外された。

語句の意味

「EにはEast、Electric、Enjoy、Energyなどの意味が込められている」と説明された。ローマ字で「Eden」と書けるので、「エデン」と呼ばれたこともある。

宣伝

当時のJR各電車内の中吊りでは、「ウィッキーさんのワンポイント英会話」(ズームイン!!朝!内の企画)で知られたアントン・ウィッキーを登用し、PR広告を行った。

普及の失敗

大々的にネーミングされたが、結局は普及せずにほとんど使われなくなった。「国鉄」の代替呼称である「JR」が、広く元の「国電」を含むものとして定着し、多くの人は「JR」または「JR線」を「E電」の代わりに使用するか、路線名(例:山手線)を直接呼ぶことで代替するようになった。不動産会社広告でも「E電○○駅下車徒歩何分」といった表現はほとんど使われなかった。JR以外の私鉄なども、乗換の案内や駅の表示でJRの路線をひとまとめにして「JR線」とするか、路線名を直接案内している。なお、「国電」という言葉が一般人の間で復活し、再度広く使用されるようになる事も無かったため、現在では元の「国電」に対応する一般的な呼称は無くなっているが、その事による利用上、案内上の問題は特に生じていない。そもそもどの範囲をE電とするか(電車特定区間か、東京近郊区間か、中距離電車を含めるか)が曖昧であった。

  • JR東日本による同種の命名失敗例としては、北陸新幹線における愛称の「長野行新幹線」があるが、これは北陸地方への配慮など様々な経緯が含まれている。詳しくは、長野新幹線の該当項目を参照。
  • 不評の原因のひとつの例として、例えば野球の場合「E」は「エラー」を表すなど、「E」という文字にマイナスのイメージがあったことが挙げられる。分割民営化後ダイヤ遅延が再び常態化、特に常磐線はダイヤはそれほど過密ではないのに常時遅れる状況だったため、実際に「E電」を「エラー電」と酷評した評論家もおり、マイナスイメージを助長した。
  • また、日本語と英語を混ぜ書きにした事に対する批判もあった。しかし、「JR線」「グリーン車」や、新幹線の「Max○○」のように、旅客案内において日本語と英語を混ぜ書きしている例は数多く、この批判はあまり的を射ているものではないとする意見もある。
  • 「E電」が定着しなかったことについては、ネーミングの失敗例としてしばしばテレビ番組や雑誌記事などに取り上げられた。なお小林亜星は、定着しなかった理由を「JR東日本が、定着させるための努力を怠ったからだ」とコメントしている。
  • 当時の日本ソフトバンクが発行していたパソコン雑誌の「Oh!X」1987年12月号p.40に「Oh!MZ」からの改題記念特別企画として掲載されていた記事「東京パソコン購入アドベンチャー」の中には「E電(なんて呼び名誰が使ってるのだろうか秋葉原駅を降りると…」という記述があり、このことから「E電」が半年ももたずに廃れていたことがわかる。

その他

ファイル:E-den on an information board.jpg
勝沼ぶどう郷駅にある「E電」の表記(2007年)
  • 関東関西で統一する」という案もあったが、「分割民営化したのだから各社に任せるべきだ」との声から実現しなかった。因みに関西ではその後「アーバンネットワーク」という名称が制定され(ただしこちらは電車特定区間以外の区間も含まれる)、こちらはそれなりに知名度もあるのは対照的である。
  • 死語となってしまった「E電」はほとんどの駅からも消えてしまった。蒲田駅東口にこの表記が残っており、貴重な現存例として知られていたが、駅ビル工事にともない撤去された。また、常磐快速線の駅・所要時間案内(右の画像と同様のもの)表でも快速電車について「E電快速」との表記がなされていたが、中距離普通列車との停車駅統一の頃(停車駅統一の2004年3月頃 - 呼称統一の10月頃)に取り替えられ、この表記はなくなった。現在「E電」範囲内では一般旅客用の表記としては、東京駅総武地下ホーム階段上部の壁面に、その壁の前に吊り下がる案内標の後ろで見えにくい形ではあるが現存している。また、部内用語としては現存しており、JR東日本管内の中央線を例に取ると東京 - 高尾間を「快速線」「急行線」「E電線」と、高尾以西を「列車線」「中央本線」と呼び分けられている。山梨県内の中央線では一般利用客も、東京方面から乗り入れてくる中央線快速(オレンジラインのE233系電車)をE電と呼ぶことがあり、現在でも路線図(駅の柱に掛けられている縦長のもの)に表記されている。
  • 「E電」区間駅のマイクアナウンス時に一部駅員が自発的に「E電山手線、池袋・上野方面行き・・・」などと用いることがある。
  • JR時刻表の「普通運賃の計算」ページには「東京の電車特定区間(E電)」の表記がある。
  • 上記の例を除き、死語となっていたが、2006年12月5日に発表された「テンプレート:PDFlink」というタイトルのJR東日本のプレスリリースにある東京エリアの電車特定区間の案内図に「東京の電車特定区間(E 電)」というタイトルが付記されており、これ以降のプレスリリースなどで時々表記されており、JR東日本内部では完全に消滅していないと推測される。
  • 指令業務分野において、ATOSの指令区分として「E電方面指令」という言葉が残っている。
  • 2013年5月13日日本テレビ朝の情報番組ZIP!」のコーナー「きょう検定グレート」において「1987年の今日(5月13日)の出来事」を当てるクイズとして出題された。しかし、1987年当時既に生まれていた人がいたにも関わらず、一人も正解できなかった(司会進行の桝太一「今日の問題は難しい」と前置きをしていた)。

関連項目