Adobe Illustrator

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ファイル:Adobe Illustrator CS5 icon.svg
Adobe Illustrator CS5のアイコン

Adobe Illustrator(アドビ イラストレーター)は、アドビシステムズが販売するベクターイメージ編集ソフトウェアドローソフト)である。

概要

イラスト制作は勿論のこと、ロゴタイプ図面広告パッケージなどをデザインする描画ツールソフトとして、印刷業界などあらゆる分野で使用されている。特にDTP業界においては印刷物(チラシや小冊子)制作ソフトとしてはデファクトスタンダードとなっていて、デザイナーAdobe Photoshopと併せて使用する場合も多い。また、プラグインを追加することで、CAD3DCG機能などを拡張することもできるので、様々な分野のクリエイターが使用している。

歴史

もとはアドビシステムズ社内用のフォント制作・PostScript編集ソフトウェアであったが、1986年12月にMacintosh版が一般向けに開発され、1987年1月に出荷された。1988年には、多くの新しい機能を導入したIllustrator 88(バージョン 1.6)がリリースされた。日本語版も発売されたが、88としての記述はなかった。

1989年に、バージョン 2.0 Windows版をリリース。 1992年に、バージョン 4.0 Windows 版をリリース。この2つのバージョンはWindows定番のCorelDRAWの影に潜む結果になった。

Macintosh版はバージョン 3.0、5.0、5.5、6.0と順調に販売された。 バージョン 7.0からはMacintosh版、Windows版両方販売した。

2000年バージョン 9.0をリリース。アピアランスの要素や効果の機能が付き大幅にパワーアップした。

2001年バージョン 10.0をリリース。このバージョンはシリーズ中で唯一、Mac OS9とXの双方に対応している。

2003年10月、CS(バージョン 11)をリリース。このバージョンからMac OS版のバージョンがMac OS X以上でないと使用できなくなり、Mac OS 9以前のユーザーは今でも8.0などのバージョンを使用している。PostScriptによる3Dモデリング機能が追加された。

2005年4月、CS2(バージョン 12)をリリース。ビットマップ画像をベクトル画像に変換する「ライブトレース」機能などが追加された。このバージョンから不正利用を防止する目的でアクティベーション(認証)が導入された。


2007年4月、CS3(バージョン 13)をリリース。「ライブカラー」や「消しゴムツール」、アンカーポイントを強調表示する機能などが追加された。

2008年10月、CS4(バージョン 14)をリリース。複数のアートボード、タブウィンドウが使えるようになった。

2010年5月、CS5(バージョン 15)をリリース。「遠近グリッド」や「絵筆ブラシ」などの機能を追加した。

2012年4月23日、CS6(バージョン 16)をリリース。64bitに対応、線にグラデーションが付けられるようになった[1]。他にもユーザーインターフェース、レイヤーパネル、RGBコードなどが新しくなっている。 64bit対応により、システムの根幹から構造が見直され数々の基礎的で重要なツールが改善しているが、InDesignでは既に数バージョン前から実現しているバックアップ機能がないなど前時代的な設計も未だに数多く見受けられる。

アドビ社の新戦略であるテンプレート:仮リンクの導入に伴い、Illustrator CCがリリースされた。バージョン17にあたるCCは、他のCreative Suiteに属していたソフト群と同様、サブスクリプションによるサービスモデルのみよって販売されるようになった初めてのバージョンである。カラーやフォント、プログラムの設定の同期、クラウドへのドキュメント保存、テンプレート:仮リンクとの連携を始めとして、タッチ入力に対応したTouch Type Toolの導入、イメージを利用したブラシ、CSS書き出し、ファイルのパッケージングなどが新たに実装された。

ブランディング

バージョン1からバージョン10まではテンプレート:仮リンクサンドロ・ボッティチェッリヴィーナスの誕生」をモチーフにパッケージデザインとソフト起動時の画面がデザインされていた。 アドビシステムズの共同設立者であるジョン・ワーノックによると、ルネサンスのイメージがPostScriptによる出版の再生(ルネサンス)と重なることを意図していたという。最初期のIllustratorのマーケティングの責任者Luanne Seymour Cohenは、ビーナスの流れるような髪の房が、なめらかな曲線を描けるというIllustratorの強みを表現する格好のモチーフであると考えた。バージョンが上がるにつれ、新バージョンで実装された機能を反映した新たなビーナスがパッケージとスプラッシュスクリーンに採用された。

CS1(11)でビーナスのモチーフは廃止され花の図案に一新され、これはその次のCS2(12)まで続いた(イースターエッグにより表示させることもできたが、この機能もCS6で廃止された)。これは新しいCreative Suiteという横並びのソフトウェア群で共通の「自然」をモチーフにしたブランディングの一環である[2] 。 その後にリリースされたCS3(13)ではまたしてもアドビはブランディングの方向性を変え、シンプルな一色のボックスに二文字に短縮されたソフトウェア名が書かれるようになった。Illustratorの場合はやや例外的にAdobe Illustratorの略であるAiである(他の姉妹ソフト、例えばPhotoshopはPs,InDesignはIdとなっている)。これは原子記号や周期律表に似せている[3] 。ボックスの色はバージョン4.0からの伝統的なカラースキームであるオレンジに白字でAi。CS4でのアイコンはほとんどCS3のものと同一であるが、字形にわずかな変更が加えられており、また文字の色がダークグレイとなっている。CS5のアイコンもほぼ同じだが、3次元的な箱状の図案の上にそれよりも明るいオレンジの文字。CS6では縁取りがなされた。

類似ソフトと互換性

2005年にAdobeに買収されたために開発停止になったMacromedia FreeHand、Windows 定番のドローツールでAI形式にも対応しているCorelDRAW、Photoshopのような機能も併せ持ったCanvas、フリーソフトのInkscapeがある。 InkscapeのネイティブのフォーマットであるSVGはIllustratorで読み書きできるが、これら2つのソフトの互換性は100%ではない。Inkscapeではアドビ社の開発したPSEPS、そしてPDFで書き出せるが、これらもまたIllustratorで読み書きできる[4]

リリース履歴

バージョン プラットフォーム 発売日 コードネーム
1.0 Mac OS 1987年1月 Picasso
1.1 Mac OS 1987年3月 Inca
88 (1.6) Mac OS 1988年3月
2.0 Windows 1989年1月 Pinnacle
3 Mac OS、NeXT Step、他のUnix 1990年10月 Desert Moose
3.5 SGI 1991年
4 Windows 1992年5月 Kangaroose
3.5 Solaris 1993年
5 Mac OS 1993年6月 Saturn
5.5 Mac OS 1994年6月 Janus
4.1 Windows 1995年 Pavel
6 Mac OS 1996年2月 Popeye
7 Mac OS/Windows 1997年5月 Simba
8 Mac OS/Windows 1998年9月 Elvis
9 Mac OS/Windows 2000年6月 Matisse
10 Mac OS・Mac OS X/Windows 2001年11月 Paloma
CS(1) (11) Mac OS X/Windows 2003年10月 Pangaea/Sprinkles
CS2 (12) Mac OS X/Windows 2005年4月27日 Zodiac
CS3 (13) Mac OS X/Windows 2007年6月22日 Jason
CS4 (14) Mac OS X/Windows 2008年12月19日 Sonnet
CS5 (15) Mac OS X/Windows 2010年5月28日 Ajanta
CS6 Mac OS X/Windows 2012年5月7日 Ellora
CC (17) Mac/Windows 2013年6月 MoFo

プラグイン

Illustratorは、プラグインソフトの活用により機能性を向上させることができる。

脚注

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外部リンク

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テンプレート:Adobe CS

テンプレート:Vector graphics editors
  1. 宮本朱美"旧バージョンとの違いは?『Adobe Illustrator CS6』の新機能を大紹介"ASCII MEDIA WORKS、2012年5月2日(2012年6月16日閲覧。)
  2. テンプレート:Cite web
  3. テンプレート:Cite web
  4. Inkscape for Adobe Illustrator users, Inkscape.org