Solaris

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Solarisソラリス)はサン・マイクロシステムズ(サン)によって開発され、UNIXとして認証を受けたオペレーティングシステム (OS) である。2010年1月27日のオラクルによるサン買収に伴い、現在の開発は同社が担っている。

プロプライエタリ・ソフトウェアであるが、かつてコア部分(ONという:OS+NETの略)はOpenSolarisとしてオープンソース化されたが、2010年8月以降、ONのソースコードの公開はされていない。

なお、公開されていたONのソースコードは、有志の手によってIllumosプロジェクトとしてオープンソース化されたまま更新が続けられている。Illumosプロジェクトではオラクルがソースコード公開をしたら追従するSpork(先割れスプーン)と宣言しているが、Illumos側は他のオープンソースOSの様々な部分を取り入れており、事実上ONの最終稿下位バージョンであるバージョンsnv_147からのForkとなっている。詳しくはIllumosの項を参照。

また一方で、最新版のSolaris11にも時流に合わせて様々な機能(仮想化機能、ファイルシステム強化、パッケージシステム強化等)が追加されており、最新の技術潮流に合わせて強化が進められている。

そのため、同じ根をもつOracle SolarisとIllumosは、徐々に差を開きつつあるといえる。

歴史

1990年代初頭、サンはBSDベースだったSunOS 4UNIX System V Release 4 (SVR4) ベースのものに置き換えた(SVR4はAT&Tとサンが共同で開発した)。 元々の名称はSunOS 5.0であったが、 Solaris 2という市場用の製品名もついていた。 遡ってSunOS 4.1.xSolaris 1と呼ばれるようになったが、 ほとんどの場合Solarisという名前はSVR4ベースのSunOS 5.0以降のものにしか使われない。

SolarisはSunOSオペレーティングシステムに グラフィカル環境(デスクトップ環境を参照)や ONC+などのコンポーネントを加えたものとされている。 Solarisのリリース名にはSunOSのマイナーバージョン名が含まれていて、 例えばSolaris 2.4のコアにはSunOS 5.4が含まれている。 Solaris 2.6以降は"2."の部分がなくなっており、 Solaris 7はSunOS 5.7を、 最新のSolaris 11はSunOS 5.11をそれぞれコアとしている。

商業的な歴史についてはUNIX戦争を参照。

サポートされているアーキテクチャ

SolarisはSPARCアーキテクチャとx86アーキテクチャ(AMD64/EM64Tを含む)をサポートし、 両アーキテクチャで共通のコードベースを使用している。バージョン2.5.1ではPowerPCアーキテクチャ(PRePプラットフォーム)にも移植されたが、それ以降はリリースされていない。Itaniumのサポートは一度は計画されたが、市場導入には至っていない。x86システムでLinuxの実行ファイルをネイティブに実行できるようにするため、Solaris 10にLinux ABIを実装することが計画されている。

Solarisは多数のCPUを搭載したSMPマシンに適していると評されることが多い。またSolaris 7以降は一貫して64ビット SPARCアプリケーションをサポートしている。SolarisはサンのSPARCハードウェアと密接に統合されており、両者は互いに組み合わせで設計・販売されてきた。これにより信頼性の高いシステムを構築することができたが、PCハードウェアによるシステム(x86システム)に比較すると非常に高コストであった。とはいえ、x86システムもSolaris 2.1以降は一貫してサポートされてきており、また、Solaris 10からはAMD64を中心に設計されているため、AMD64アーキテクチャベースの64ビット CPUマシンを利用することもできる。

2009年の時点では、サンはハイエンドではSPARCサーバを中心としながら、ローエンドでは2〜16コアのAMD64ベースのワークステーションサーバの販売にも重点をおいていた。

2012年の時点では、オラクルはハイエンドではSPARCサーバを中心としながら、Intel Xeonのサーバも販売されている。

デスクトップ環境

最初のSolarisのデスクトップ環境はOpenWindowsだったが、 Solaris2.5でCDEが採用され、 Solaris 10ではGNOMEベースのJava Desktop Systemとなっている。 Solaris 11では、OpenSolarisと同様、通常のGNOMEデスクトップが採用された。 また、有料版だけでなく無料版にも、ATOKやリコーフォント等の商用ソフトウェアが入っている。

ライセンス

Solaris 11においては、Oracle Technology Network Developer Licenseを参照。

ソースコードは非公開。

ただし、OpenSolarisプロジェクトから派生したIllumosプロジェクトでは、Common Development and Distribution License (CDDL) の下オープンソースとして公開されている。CDDLはOSIが承認したライセンスで、公開されているソースコードは、使用料が無料であり、無保証で非独占的な利用が可能である。頒布にあたって、ソフトウェアを実行可能なコード形式で提供する場合は、CDDLに従ってソースコードの提供が義務づけられており、CDDLのコピーを添付しなくてはならない。ただし、Free Software FoundationGPLと似ている部分があるが、互換ではないと考えられている。

OpenSolarisは2005年6月14日にSolarisの開発コードから誕生し、 バイナリ版とソースコード版を無料でダウンロードできるようになった。 すでにXenサポート等の新しい機能が OpenSolarisプロジェクトに追加されており、 サンは将来のSolarisはOpenSolarisから派生したものをリリースすると表明しており、実際にそうなった。

OS本体を無料化する一方でパッチのダウンロードは一部が有料化されていた。

オラクルによるサン買収後の2010年4月に、90日の試用後は商用利用では有償のサポート契約が必須、個人利用、開発用途では無料。[1]

2010年8月以降、ソースコードをオープンにしながらの開発をやめ、snv_147というバージョン以降のソースコードの公開は停止している。 同時期にCDDLで公開されているSolarisのソースコードの一部をベースにある程度の互換性をもつコミュニティベースでオープンソースのIllumos Projectが派生している。このライセンスはCDDLを中心にBSDLで配布されているモジュールも含む。

バージョン

Solarisのバージョンは以下の通りである:

Solarisのバージョン SunOSのバージョン リリース日 主な特徴
Solaris 11 SunOS 5.11 2011年11月9日 IPS(新パッケージマネージャ)、COMSTAR(iSCSIターゲット)、Crossbow(ネットワーク仮想化)、ZFSの強化(重複排除機能、暗号化など)、Solaris Containersの強化(リソースの仮想化機能や、制限機能の強化)、その他 (snv175)
Solaris 10 SunOS 5.10 2005年1月31日 x64(AMD64/EM64T)サポート, DTrace (Dynamic Tracing), Solaris Containers, Service Management Facility (SMF), NFSv4, 最小特権セキュリティモデルの追加。sun4mアーキテクチャとクロックが200MHz以下のUltraSPARC Iプロセッサのサポート終了。EISAデバイス/EISAベースPCのサポート終了。Java Desktop System(GNOMEベース)をデフォルトのデスクトップとして採用。Solaris 10 1/06では、ブートローダとしてGRUBを採用(x86)、iSCSIサポート追加。Solaris 10 6/06ではZettabyte File System(ZFS)追加。
Solaris 9 SunOS 5.9 2002年5月28日(SPARC), 2003年2月6日(x86) iPlanet Directory Server, Resource Manager, Solaris Volume Manager, 拡張ファイル属性, Linux互換性サポートを追加。OpenWindowsの削除。sun4dアーキテクチャのサポート終了。最終リリースはSolaris 9 9/05。
Solaris 8 SunOS 5.8 2000年2月 マルチパスI/O、IPv6、IPsec。ロールベースアクセス制御(RBAC)を追加。sun4cアーキテクチャのサポート終了。最終リリースはSolaris 8 2/04。
Solaris 7 SunOS 5.7 1998年11月 64-bit UltraSPARCのサポート。メタデータのロギング機能(UFS logging)追加。MCAサポートの終了(Intelプラットフォーム)。
Solaris 2.6 SunOS 5.6 1997年7月 Kerberos 5, PAM, TrueType fonts, WebNFS, 大規模ファイルサポート。
Solaris 2.5.1 SunOS 5.5.1 1996年5月 PowerPCプラットフォームをサポートする唯一のリリース。Ultra Enterpriseサポート追加。ユーザID・グループID(uid_t, gid_t)の32ビット化。
Solaris 2.5 SunOS 5.5 1995年11月 最初のUltraSPARCのサポート。CDE, NFSv3, NFS/TCPのサポート。sun4(VME)のサポート削除。
Solaris 2.4 SunOS 5.4 1994年11月 SPARC/x86の最初の統合リリース。OSF/Motifランタイムをサポート。
Solaris 2.3 SunOS 5.3 1993年11月 OpenWindows 3.3がNeWSからDisplay PostScriptへ変更。SunViewサポートの削除(SPARCのみ)。
Solaris 2.2 SunOS 5.2 1993年5月 sun4dアーキテクチャのサポート追加。
Solaris 2.1 SunOS 5.1 1992年12月(SPARC), 1993年5月(x86) sun4/sun4mアーキテクチャのサポート追加。最初のx86版のリリース。
Solaris 2.0 SunOS 5.0 1992年6月 準備的なリリース。sun4cアーキテクチャしかサポートしなかった。

Solaris 9までのバージョンはすでに出荷されていない。 Solaris 8以前のバージョンはサポートが終了している(Solaris 7は2008年8月まで、Solaris 8は2012年3月までサポートされていた)。 Solaris 9については2014年10月末までサポートされる予定である。

各バージョンの詳細は[2](英文)を参照。 リリース履歴はSolaris 2 FAQ[3](英文)にも記載がある。 サポート終了日は[4](英文)を参照。

現行のSolarisの特徴的な機能として、 DTrace・Doors・Service Management Facility・Solaris Containers ・Solaris Multiplexed I/O・Solaris Volume ManagerZFSが挙げられる。

Solaris 10以降のアップデート履歴

アップデート名 リリース日 主な変更・追加点
Solaris 10 3/05 2005年3月 Java Desktop System、Unicode Version 4.0 サポートの追加、x86 システムにおける64 ビットのサポート及びSunVTS のサポートの追加
Solaris 10 1/06 2006年1月 x86システムにおいてGrub ベースのブートへの変更、Sun Update Connectionの追加
Solaris 10 6/06 2006年6月 ZFSの統合、PostgreSQL・RealPlayer等の標準添付、PDAサポートの追加。
Solaris 10 11/06 2006年11月
Solaris 10 8/07 2007年8月
Solaris 10 5/08 2008年5月
Solaris 10 10/08 2008年10月
Solaris 10 05/09 2009年5月
Solaris 10 10/09 2009年10月
Solaris 10 9/10 2010年9月
Solaris 10 8/11 2011年9月 Oracle Solaris 10 8/11 としてリリース。
Solaris 10 1/13 2013年2月

この他、開発・早期評価版であるSolaris Expressでのリリースを区切りとして追加または変更されている機能が多数ある。各リリースの詳細な概要説明は Solaris 10の概要 を参照されたい。

Solaris 11以降のアップデート履歴

アップデート名 リリース日 主な変更・追加点
Solaris 11.1 2012年10月

開発リリース

Solarisのコードベースは1980年代後半に開発が開始されて以来、 絶え間ない改良が加えられてきた。 Solaris 10といった各々のバージョンは そのリリースの前後にメインの開発コードから切り放され、 リリース以降は派生プロジェクトとしてメンテナンスされる。 派生したプロジェクトに対する更新は 次の公式なメジャーリリースがあるまで年に数回行なわれる。

2006年現在では、開発版のSolarisはOpenSolarisから派生しており Nevadaと名付けられている。

2003年に新しいSolarisの開発プロセスが導入され、 Solaris Expressという名前で 開発版の月ごとのスナップショットをダウンロードできるようになった。 これによりだれでも新しい機能を試したり、 OSの品質・安定性をテストできるようになり、 次期の公式Solarisリリースを促進させることとなった。

Solaris ExpressはOpenSolarisプロジェクトよりも前に開始されたため、 もともとはバイナリのみを提供するプログラムであったが、 現在ではOpenSolaris開発者向けのSolaris Express: Community Releaseと呼ばれるバージョンが存在した(現在は配布をしていない)。

Solaris 11の機能先出し版として、2010年11月に、Solaris 11 Expressがリリースされている。

脚注

  1. Solaris、ライセンス変更とSystem Z移植の中止
  2. テンプレート:Cite web
  3. テンプレート:Cite web
  4. テンプレート:Cite web

外部リンク

テンプレート:Sun Microsystems テンプレート:Unix-like