金剛薩た

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金剛薩埵(こんごうさった)、梵名ヴァジュラサットヴァ (वज्रसत्त्व [vajrasattva])は、中期密教においては大日如来の教えを受けた菩薩で、密教の第二祖とされた。後期密教においては、(法身普賢普賢王如来)、金剛総持と並んで)本初仏へと昇格した。金剛(ダイヤモンド)のように堅固な菩提心を持つと称される。

三昧耶形金剛杵(金剛界曼荼羅では五鈷杵、胎蔵曼荼羅では三鈷杵)。種子(種字)は金剛界ではアク(aH)、は胎蔵曼荼羅ではウーン(huuM)。

金剛薩埵と金剛手の起源と成立

金剛薩埵は金剛手秘密主菩薩(ヴァジュラパーニ・グヒヤパティ)ともいい、また金剛手は、またの名を散那(Sandah、サンダ)ともいう。その由来は、ギリシャとインドの文化が融合したガンダーラ美術にしばしば登場する、ブッダを守る棍棒を持つ神=執金剛神ヴァジュラパーニにさかのぼることができる。チベットでは「ヴァジュラサットヴァ」として知られる。ヴァジュラパーニは「仏母大孔雀明王経」においては、大薬叉王のひとりとされるが、古い仏伝では、阿含経、サッチャカ小経、アンバッタ経などで異教徒や悪龍アバラーラの降伏憚のヴァジュラパーニヤクシャが見られる。ここでのヴァジュラパーニは、インド古来の伝統的な姿の見えない夜叉、グヒヤカ(guhyaka)、跡が見えないもの、密迹と意訳されたようである。そして、「密迹金剛力士経」では如来の智識を開説するという大役を担うこととなる。

ファイル:Buddha-Vajrapani-Herakles.JPG
ヘラクレスの姿形を取ったヴァジュラパーニ(左は仏陀。大英博物館

この神は、同じヴァジュラパーニであるインドラ神(帝釈天)とは違い、本来はヤクシャ(夜叉)あるいはグヒヤカ(密迹、みっしゃく)とも呼ばれる下級の鬼神である。日本の密迹金剛力士はこの時点で派生した神である。ちなみに那羅延金剛力士は、ヴィシュヌ神の化身、ナーラーヤナのことである。

鬼神ヴァジュラパーニのインドでの姿形

この鬼神の像は、肥満形のヤクシャ系のほかに、ギリシャ系では裸形に腰布を巻くもの、ワンピースを着るもの、髪がカールであったり、ざんばらであったり、老人のような顎鬚があったり、童子形であったり、筋肉隆々であったり様々だが、いずれにしても、腰にひねりをいれて、ヴァジュラを持ち、右手を頭にかざす姿が共通している。右手に五鈷杵、左手に五鈷鈴を持する例が多い。

仏のガードマンから菩薩の最高位まで

美術で好まれるこの神の役目は、単なるゴータマ・ブッダのガードマンにすぎなかった。しかし、密教では地位が上がり、金剛手菩薩、さらには金剛薩埵へと派生していった。これは、ヴァジュラ(金剛)が、砕破されないもの=智慧として解釈されたために、それを持つ者として尊格が上昇していったものと言える。

後世に到っては、金剛手の名のつく尊格は様々に存在することとなり、それぞれがまったくの別の存在であるが、元来ブッダに付き従っていた鬼神が、最高位の菩薩に変遷していった流れは極めて興味深い。

関連項目

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