街路樹 (アルバム)

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街路樹』(がいろじゅ)は、日本のミュージシャンである尾崎豊の4作目のオリジナルアルバム。英題は『TREES LINING A STREET』(ツリーズ・ライニング・ア・ストリート)。


背景

コンサートツアー「LAST TEENAGE APPEARANCE TOUR」終了後、無期限活動休止宣言の後1986年5月に渡米し、翌1987年1月に尾崎は帰国した。本人不在にも拘わらず、日本ではフィルムコンサート「625DAYS」が公開され、約20万人を動員するなど依然として人気は高まっていた[1]

帰国直後の1987年2月10日、それまで在籍したCBSソニーを離れ、所属事務所「マザーエンタープライズ」が設立した新レーベル「マザーアンドチルドレン[注釈 1]へ移籍。前作までの3作は、ソニー専属のプロデューサーである須藤晃によって制作されていたが、レコード会社の移籍に伴って尾崎自身もかなり親和していた彼とは離れる事になってしまう[2]

その後、レコーディングを開始したものの、歌うべき事が見つからず、上手く作品を作れない事で苦悩し、アルバムを完成できぬまま「TREES LINING A STREET」ツアーを7月より開始する。スタッフは半年後にはアルバムが完成すると思っており、その合間を縫う形でレコーディングは続けられたが、完成には至らなかった[2]。本来は1987年4月リリースを予定していた本作だが、リリース予定は7月に延期され、さらに9月になってもリリースされなかった[1]

8月5日にはライブイベント「広島平和コンサート『ALIVE HIROSHIMA '87』」に参加、親友である岡村靖幸との共演を果たし、6日には出演予定はなかったものの飛び入りで数曲を演奏、8月22日にはライブイベント「熊本BEAT-CHILD」に参加、豪雨の中で全7曲を歌い上げるなど活動は順調に見えた。しかし、9月24日の豊橋勤労福祉会館での公演中に倒れ、立っていることもままならない状況となりライブは中断、28日の新潟県民会館での公演前に再び倒れ、以降ツアーは残り半分以上を残したまま中止が決定される。体調不良の原因は極度の肉体疲労であるが、間接的には酒、睡眠薬などの多量摂取だと言われており、その原因は曲が作れない事と、所属事務所は自分を商品としてしか見ていないとの思い込みによる人間不信にから来るものであった[2]

アルバムリリースは無期延期となり、代わりに初期のライブから「反核」のタイトルで演奏されていた「核 (CORE)」が10月1日に移籍第1弾シングルとしてリリースされる[1]。しかし、その後の12月22日覚せい剤取締法違反により逮捕されてしまい、アルバムの制作は暗礁に乗り上げる。

1988年2月22日執行猶予により釈放され暫く謹慎生活を送った後、5月に一般女性と結婚。これにより、精神の安定を得た尾崎は曲作りに励むようになる[2]

6月22日、初めてテレビの歌番組『夜のヒットスタジオDELUXE』に出演し、前日に発表したばかりの復活シングル「太陽の破片」を生放送で歌う[注釈 2]

その後、本作のリリースが決定した。

録音

レコーディングは1987年より断続的に行われ、尾崎のアルバムの中では最も長期間に及んでおり、また使用したスタジオは、AVACO CREATIVE STUDIOソニー六本木スタジオ、ゴールドラッシュスタジオ、スタジオスカイ、セディック・スタジオ、テイクワンスタジオと最も多くなっている。

プロデュースは吉野金次が担当している。吉野は元々レコーディングエンジニアとして活動していた人物であり、過去に担当したミュージシャンは浅川マキ井上陽水大瀧詠一佐野元春細野晴臣矢沢永吉矢野顕子中島みゆきなど多岐に渡り、様々なミュージシャンをプロデュースしている。

レコーディングが中断した事に関して吉野は当時「彼の中に流れる時間を待つことなのだろう」語っている[3]

音楽性

前作とは制作スタッフが大きく変わり、西本明が担当した「理由」を除いて編曲者も交替し、一聴してサウンドの印象が変わっている[4]

ギターシンセやエレクトリック・パーカッション、デジタル・シンセサイザー等の1980年代的な記号性をもったサウンドが完全に後退し、1970年代的とも言える、よりオーソドックスな音色で全編埋め尽くされている[4]

リリース

1988年9月1日にマザーアンドチルドレンよりLPレコードCDカセットテープの3形態でリリースされた。

2007年ソニー・ミュージックレコーズより発売されたCD-BOX『71/71』には上述の「太陽の破片」を含む2曲のアルバム未収録曲を追加したリイシュー盤『街路樹+2』が収められ、さらに2009年にプロデューサー吉野金次によりリマスタリングされた『街路樹 (2枚組スペシャルエディション)』には4曲のアルバム未収録曲が追加され、2枚組となって発売されている。

プロモーション

9月1日に本作をリリースし完全復活を期するも、やはり望んでいた完成度のアルバムは作れず、後に尾崎自身が「作りたくないアルバムを作らされた」「失敗作」と語っている。なお、ヒットした「太陽の破片」を敢えて収録しなかったのは、本作が意に反して売れるのを避けるためだと言われている。

ツアー

本作をタイトルにしたツアー「TREES LINING A STREET TOUR」は、本作リリース前に行われており、1987年7月1日茨城県民文化センターを皮切りに行われていたが、尾崎本人が急病のため9月24日の豊橋勤労福祉会館を最後に中断されている。

また、本作リリース直後の9月12日、東京ドームで一夜限りの復活ライブ「LIVE CORE」を敢行した尾崎は、これを置き土産に古巣であるソニーへの復帰を考えていた。しかし、問題は根深く、裁判にまで発展することとなる。 結局、「マザーアンドチルドレン」から発表したアルバムは本作のみである[注釈 3]

批評

音楽評論家の松井巧は「"時代の匂い"という観点からすれば、(前作よりも)本作の方がある種匿名性が高い作品と言える」、「張りのある低音を出そうとしてそのたびにはねつけられてしまうボーカルの悪戦苦闘ぶりも耳につくが、そこがまた彼の個性なのだろう」と述べている[4]

詩人の和合亮一は「冒頭の3曲『核 (CORE)』、『・ISM』、『LIFE』は、恐らく大都市で立ち迷う孤独感が連作されており、尾崎の心の葛藤や結論が呼応し合うかのように鮮やかに描かれている」、「4曲目の『時』では、"大人"という自分にとってのアンチテーゼに対し、自分なりの方法で歩み寄ろうとしており、表現精神の変革が感じられる」と述べている[5]

評論家の北小路隆志は「尾崎自身が描いた絵画、ニューヨークへの思いを綴る文章が添えられ、アルバム全体としてのトータルなコンセプトへの執着が芽生え始めたかのようだ」と述べている[6]

フリーライターの河田拓也は、「ロック原理主義の風潮がシーンを覆っていた当時、正当に評価されにくかったけれど、ラスト2曲は、吉野金次のエンジニアリングによる透徹した音像もジャストにはまり、彼のこうした資質が確かに楽曲へと昇華した金字塔だと思う」と評している[1]

収録曲

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『街路樹+2』(2007年盤)

テンプレート:Tracklist

街路樹 2枚組スペシャルエディション(2009年盤)

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曲解説

A面

  1. 核 (CORE)
    詳細は「核 (CORE)」の項を参照。
  2. ・ISM
  3. LIFE

B面

  1. COLD WIND
  2. 紙切れとバイブル
    レベッカで、RED WARRIORS木暮武彦がギタリストとして参加している。本来はこの楽曲のタイトルがこのアルバムのタイトルとなるはずであった。
  3. 遠い空
    シングル「太陽の破片」のカップリング曲。但し、終盤に女性コーラスが被さる等、シングルとはミックスが若干異なる。
  4. 理由
  5. 街路樹
    エンディングはオーケストラアレンジになっている。

ボーナストラック

  1. 核(CORE) single version
  2. 街角の風の中 - TWILIGHT WIND
    シングル「核 (CORE)」のカップリング曲。
  3. 太陽の破片
    詳細は「太陽の破片」の項を参照。
  4. 遠い空 single version
    シングル「太陽の破片」のカップリングバージョン。

スタッフ・クレジット

参加ミュージシャン

スタッフ

リリース履歴

No. 日付 レーベル 規格 規格品番 最高順位 備考
1 1988年9月1日 マザーアンドチルドレン LP
CD
CT
MCR-1004
MCD-1004
MCT-1004
2位
2 1990年3月10日 MMG INC. CD
CT
AMCX-4061
AMTX-4061
14位
3 1996年8月20日 イーストウエスト・ジャパン CD AMCM-5048 - 廉価版
4 2007年4月25日 ソニー・ミュージックレコーズ CD SRCL6534 80位 CD-BOX71/71』収録
5 2009年4月22日 ワーナーミュージック・ジャパン ブルースペックCD WPCL-10676 156位 24ビット・デジタル・リマスタリング(限定生産品)
2枚組スペシャル・エディション

脚注

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注釈

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出典

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  1. 1.0 1.1 1.2 1.3 テンプレート:Cite book
  2. 2.0 2.1 2.2 2.3 テンプレート:Cite book
  3. テンプレート:Cite book
  4. 4.0 4.1 4.2 テンプレート:Cite book
  5. テンプレート:Cite book
  6. テンプレート:Cite book


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