蒲島郁夫

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テンプレート:政治家 蒲島 郁夫(かばしま いくお、1947年1月28日 - )は、日本政治家熊本県知事政治学者東京大学名誉教授。政治学者としての専門は、政治過程論計量政治学Ph.D.ハーバード大学、1979年)。熊本県鹿本郡稲田村(現・山鹿市鹿本町)生まれ。

人物

高校時代は「220人中200位」の劣等生だったが、政治家、小説家、牧場主のいずれかになることを夢見ていたという[1]。卒業後は自動車販売会社に勤めたが3週間で辞め、地元の農協に就職した。農業研修で渡米したことが転機となり、途中で学問の道に転身。ネブラスカ大学畜産学を修めた後、政治学に転向し、サミュエル・P・ハンティントンシドニー・ヴァーバの指導を受け、ハーバード大学大学院で博士号(政治経済学)を取得。筑波大学講師・助教授・教授を経て1997年に東京大学教授。異色の経歴が話題になることもしばしばで、東大就任時には「農協職員から東大法学部教授に」となどとマスコミを賑わせた。

政治学者としては、投票行動の実証的研究や、政治参加に関する政治発展理論において業績をあげた。特に戦後日本における投票行動について、「有権者は自民党の政権担当能力を信頼し、自民党が政権を担当することを基本的に支持しているが、国民への応答性を求めるために政局は与野党伯仲をよいと考え、自民党政治の腐敗、独走が生じた際には警戒した投票行動をとる」としたバッファー・プレイヤー説が有名。また、東大・蒲島ゼミ生による研究書を木鐸社から発行するという画期的な試みも行った。

1991年熊本県知事選挙に、現職の細川護熙が3選を目指さず勇退したことから、ポスト細川の後継知事候補として出馬要請を受けたが、この時は辞退した(尚、この選挙での当選者は福島譲二であった)。

2008年3月5日、東京大学を退職し、翌3月6日熊本県知事選挙への立候補を届け出た。無所属での立候補で、「幅広く支持を求めたい」として政党からの推薦も受けなかったが、自民党の実質的な支援を受けて選挙を戦った。3月23日の投開票の結果、対立候補に大差をつけて初当選した。のちに中央公論に、自分の選挙を自分で分析した論文[2]を発表した。

知事就任の1年目に過去の不適正経理の発覚の責任をとって自身の受ける給料を月額100万減額し[3]、2年目も財政再建分の3割と合わせて5割を減額している[4]

九州新幹線 (鹿児島ルート)全通にあたっては、“くまモン”を活用した観光キャンペーンを先頭に立って積極的に展開している。吉本興業グループとの連携にも乗り出し、くまモンやスザンヌと出演した吉本新喜劇では“お約束”のズッコケを何のためらいもなくやるなど、県のイメージアップのため体を張っている。

2012年熊本県知事選挙に2期目を目指して出馬を表明。3月25日に施行された選挙では自由民主党などの組織の支援を受けて対立候補を大差で下して2期目の当選を果たした[5]

略歴

学歴

職歴

学外における役職

門下生

他にタレントの楠城華子も東大蒲島ゼミの出身である。

著書

単著

  • 『政治参加』(東京大学出版会, 1988年)
  • 『政権交代と有権者の態度変容』(木鐸社 1998年)
  • 『戦後政治の軌跡――自民党システムの形成と変容』(岩波書店 2004年)
  • 『運命――農奴から東大教授までの物語』(三笠書房 2004年)
  • 『逆境の中にこそ夢がある』(講談社 2008年)

共著

  • 綿貫譲治三宅一郎)『平等をめぐるエリートと対抗エリート』(創文社, 1985年)
  • (綿貫譲治・三宅一郎・猪口孝)『日本人の選挙行動』(東京大学出版会, 1986年)
  • 竹中佳彦)『現代日本人のイデオロギー』(東京大学出版会, 1996年)
  • 竹下俊郎芹川洋一)『メディアと政治』(有斐閣, 2007年)
  • (阿部博人・小沢一彦・永久寿夫真渕勝)『はじめての政治――政治に関心を持とう 社会参加しよう』(栄光, 2008年)

共編著

  • Political System and Change: a World Politics Reader, co-edited with Lynn T. White III, (Princeton University Press, 1986).
  • サミュエル・ポプキン谷口将紀)『政治空間の変容と政策革新(5)メディアが変える政治』(東京大学出版会, 2008年)

訳書

  • S・ヴァーバほか『政治参加と平等――比較政治学的分析』(東京大学出版会, 1981年)

脚注

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関連項目

外部リンク

テンプレート:都道府県知事

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  1. 私が学問に目覚めた時 2014年8月8日閲覧。なお、「くまモンの秘密」(幻冬舎・2013年)によれば「230番中200番」(第3部「くまモントップ戦略の秘密-熊本県知事・蒲島郁夫」)
  2. 蒲島郁夫「選挙研究の第一人者、自らの熊本県知事選圧勝を分析 自民党の推薦を固辞した『理論』」中央公論 123(6), pp.102-109, 2008年。
  3. 熊本県知事等の給与の特例に関する条例(平成19年12月21日条例第70号)、蒲島郁夫・御厨貴「菅さんは官僚をパートナーとして愛しなさい」『週刊朝日』2010年6月18日号121頁。なお、前年度収入に対し税金がかかったため、実質手取りは14万円であったとのこと(「くまモンの秘密」)
  4. 100分の30を熊本県知事等の給与の特例に関する条例(平成21年3月27日条例第11号)で、100分の20を熊本県知事等の給料の減額に関する条例(平成21年3月31日条例第35号)で減額。また、前掲『週刊朝日』を参照。
  5. 熊本知事に蒲島氏再選 投票率は過去最低 西日本新聞 2012年3月26日閲覧