中性子線

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中性子線(ちゅうせいしせん、Neutron beam)とは中性子粒子線のこと。 ここでは主に中性子線(粒子線)そのものについて述べる。 テンプレート:See also

概要

中性子は電荷を持たないが、スピンを持つので、中性子線は、これを使った結晶構造解析、特に磁気構造の解析に有用である。

ファイル:Alfa beta gamma neutron radiation M1.PNG
放射線の透過能力:中性子線は他の放射線に比べ透過力が強く、やコンクリートなどの厚い壁に含まれる水素原子によってはじめて減速され遮蔽される。

中性子線を物質に当てると、中性子は物質内の原子原子核と衝突を繰り返すうちにエネルギーを失って行く。やがて、周りの原子(分子)の熱運動と熱平衡状態に達し、その熱運動と同程度のエネルギー状態(kBT程度、kBボルツマン定数、Tは絶対温度)となる。この状態になった中性子のことを、熱中性子と言う。常温での値(=kBTでT = 300Kとして)は、およそ0.025eVである。

放射化

テンプレート:See also テンプレート:See also 中性子線は照射された物質を放射化する事がある。これは中性子が電荷を持たず、物質中の原子核に容易に吸収されやすい為である。中性子捕獲といい、粒子線中の中性子が原子核に吸収され、照射された物質中の元素が別の放射性同位元素に変化する。


ヒト血漿中に含まれる23Naが中性子捕獲によって24Naに変化すると、半減期約15時間でガンマ線を放つため、中性子線による急性被曝の検査に使われる。

遮蔽

中性子線のエネルギーは中性子と同程度の質量を持つ物、すなわち出来るだけ軽い原子核との衝突で効率的に吸収される。よって中性子線を止めるためには水素原子を多量に含む水(巨大な水槽に沈める)やコンクリートなど厚い壁が必要である。重元素による遮蔽は有効ではない。ホウ素カドミウムと言った核反応により中性子線を吸収してしまう物もあるが、反応を起こす中性子線のエネルギー幅は限られる上に壁材料として適当ではない

これは、ピンポン球(=中性子)を、同じピンポン球(=水素)が並んでいる空間に投げ込む(=入射する)場合と、ビリヤードの玉(=重元素)が並んでいる空間に投げ込む場合を想像すれば直感的にイメージできる。それぞれ実際には熱振動をしている訳だが、前者ではピンポン球同士がお互いにはじき飛ばし合って速度(=エネルギー)が均一になり熱振動に紛れてしまうのに対し、後者ではピンポン球が一方的にはじき飛ばされるばかりでほとんど速度は落ちない(=減速されない)だろう

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