電子ボルト

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電子ボルト(でんしボルト、テンプレート:Lang-en-short、記号:eV)は、エネルギー単位を言う。エレクトロンボルトとも読まれる[1]素粒子の質量の単位としても使われる[2]

概要

自由空間内で電子一つが 1V の電圧で加速されるときのエネルギーを1電子ボルト(electron volt)またはエレクトロンボルトと呼び、1eV と書く[3]。これは、電子の電荷 -e が約 -1.60×10-19C なので、

1[eV] ≒ 1.60×10-19[C]×1[V] = 1.60×10-19[J]

となり[4][5]、非常に小さなエネルギーの単位であることがわかる。なお、これを質量に換算する[6]と 1.782 661 845(39)テンプレート:E kgとなる。また、1 eVの平均運動エネルギーをもつ気体の温度は11 604 Kとなる。

物性物理学から素粒子物理学、あるいは化学半導体工学などの幅広い分野で使用されるエネルギーの単位である(*)。分野によって使用される桁数が大きく異なる。物性分野では数 meV - 数 eV(もっと大きい場合もある)のオーダー(1 meVが約10 Kに相当)である。素粒子分野では数 MeV - 数 GeV(あるいはそれ以上)のオーダーでの議論がなされる。電子質量は約0.5MeV、陽子質量は約1GeVに相当する。

主な利用場面

電子ボルトは日常生活ではあまり用いられない単位と言えるが、巨視的な物質や現象を素粒子1個単位から記述するのに便利である。このため学問や産業の現場において、光子電子原子などの持つエネルギーを表す際に広く利用される。以下、代表的な例を幾つか挙げる。

  • 物質中の電子の持つエネルギーを表現する際に用いられる。例えば外部から与えた電界によって全体の電位が1V変化すると、中の電子のポテンシャルエネルギーが1eV変化することになるため、計算上都合が良い。
  • 可視光域での光子1個のエネルギーは数eV単位となり、物質との相互作用の取り扱いに便利である。

符号位置

記号 Unicode JIS X 0213 文字参照 名称

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脚注

テンプレート:脚注ヘルプ

  1. 日本語では活字での正式な表記の際には「電子ボルト」を用いることが多いが、発表・会話などではほとんどの場合「エレクトロンボルト」と読む。単に「イーヴィー」と読まれることもある。日本の高エネルギー(素粒子)分野では、MeV、GeV、TeVなどをそれぞれ、“メブ”、“ジェブ”、“テブ”などと発声する場合がある。
  2. 国際単位系(SI)及びその使い方」によると、“特殊な分野に限り併用してよい単位”となっている。
  3. 近角(2013) p.453
  4. 1 eV の2010年CODATA推奨値は 1.602 176 565(35)テンプレート:E J(括弧内は拡張不確かさ)である[1]
  5. 他参考
    エネルギーの単位
    ジュール キロワット時 電子ボルト 重量キログラムメートル カロリー
    1 J = 1 kg·m²/s² ≈0.278×10−6 ≈6.241×1018 ≈0.102 ≈0.239
    1 kWh = 3.6×106 = 1 ≈22.5×1024 ≈0.367×106 ≈0.860×106
    1 eV ≈0.1602×10−18 ≈44.5×10−27 = 1 ≈16.3×10−21 ≈38.3×10−21
    1 kgf·m = 9.80665 ≈2.72×10−6 ≈0.613×1018 = 1 ≈2.34
    1 calIT = 4.1868 ≈1.163×10−6 ≈0.261×1020 ≈0.427 = 1

  6. 質量とエネルギーの等価性(E=mc2)によると、エネルギーと質量の単位は、互いに変換することができる。

関連項目

参考文献

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