沼津方式

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

沼津方式(ぬまづほうしき)とは、ごみを燃えるごみ・埋め立てごみ・資源ごみの三種類に分別収集する方法のこと。1975年(昭和50)4月、静岡県沼津市で初めて実施されたことからこう呼ばれる。ごみ収集の減量と、処分コスト低減が期待できる他、資源リサイクルを行いやすい。

概要

同方式以前は、ごみの捨て方に無頓着で、収集されたごみの多くは燃えるごみ・燃えないごみ・資源ごみが同じ袋に入れられて出されていた。これらのごみは集積場に集められた後、自治体の処分場で手作業で分類されていた。このため人件費設備費は膨大な物となり、高度経済成長期日本にあっては、年々増大するごみの量に、遅かれ早かれ自治体のごみ収集業務破綻が危惧される事態となった。

多くの自治体が同種の問題で悩む中、沼津市では既に組織化されていた市に属する住民自治会の啓蒙活動を行った上で、市民参加によるごみの分別収集方式を開始した。当初は幾分の混乱もあったとされるが、同市の住民自治会が、特定の企業に属する工場従業員や同業種にと比較的偏りがあった事から、住民間の結束も強く、比較的スムーズに受け入れられたという話もある。

また分別収集においては、埋め立てごみと資源ごみにおいて、集積場の分別指導に住民自治会の総代をボランティアとして動員するなどして、住民自身の管理に任せた事もあり、住民の分別する意識を高めた事も、成功の要因として挙げられる。今日ではリサイクル資源の種類や、ごみの処分方法の多様化に併せて、資源ごみと埋め立てごみ、更には燃えないごみに関しても、細かい分類基準を設けて、ごみの分別を進めると共に、ごみを出す際の意識を高め、ごみの減量に貢献している。

方法

基本的に分別収集の一種で、生ごみや紙くず(紙資源としてリサイクルし難いもの)などの「燃えるごみ」とビニール袋やプラスチック容器・発泡スチロールなど「燃えない(燃やせない)ごみ」は街角のごみ集積場に集められ、燃えるごみが週2回・燃えないごみが週1回回収されるが、ごみを出す日(曜日)は決められている。

これ以外の日に出すと回収されないばかりではなく持ち帰るよう注意を呼びかけるシールが添付され、原則として所定回収日以外の区分のごみを出すことは禁じられている。取り立てて罰則こそ無いが、こういった違反ごみを出すと近隣住民間で文句を言われたりなど地域コミュニティで「悪い意味で目立ってしまう」という社会的ペナルティが暗に存在しているが、2000年代では目立って住民間トラブルとなったなどの話は聞かれない。

また「資源ごみ」や以下に詳しく述べる「埋め立てごみ」などは、月に一回程度の回収日が定められており、これらは地域の回覧でごみの出せる日を記したカレンダーが配付されている。ごみ収集センターへの請求や市役所などで直接貰うこともできる。ただしインターネット上では特に電子ドキュメントなどは用意されていない。同市のウェブサイトに拠れば、市外の無関係なものが便乗してごみを捨てに来たりするなどのトラブルを避けるためだという。

月一回の資源ごみの日と埋め立てごみの日には、普段の路地にあるごみ集積場では無く、公園の一角や幅の広い歩道の一部が充てられている町ごとに各々の地域にある専用の集積場に集められるが、町内会による市民ボランティアが分別の手伝いや自動車などで持ってきた者の手伝い、また分別区分の案内を行っている。ごみに出せる種類に関する情報は、これら市民ボランティアが詳しく案内してくれる所がほとんどである。ただし深夜には市民ボランティアがあまりいないこともあり、違反ごみが出されるなどのトラブルも見られる。こういった違反ごみはやはり回収されず、持ち帰りを求めるシールが張られ放置される。

こうして収集されたごみは各々市の処分場に輸送されたり、市の委託した業者に引き渡される。ちなみに沼津市では資源ごみの売却益の一部は市から各町へ還付され、町内会の活動資金として運用され、町内会館の維持や設備費・催し物の際に利用されている。

分類

2010年現在、細分化された沼津市のごみ分類は概ね以下の通りである。

なお2005年に若干改定され、食品のパッケージでも洗いにくい合成樹脂製品(調味料のチューブなど)や食品用ラップフィルムは、洗わないで燃えるごみ(生ゴミ扱い)として廃棄して良いこととなっている。これは燃えないごみとして出した場合に、食品の匂いが残っていたり、あるいは洗わないで食品が付着したままの物を出す人がいて、カラス野良猫ネズミなどにゴミが食い荒らされる事も多かったためである。この辺りには、一部レトルト食品のパッケージなども含まれるようだ。

問題点

同方式は、分別収集することで、ごみの減量化と処分コスト低減に繋がる訳だが、あまりに細分化し過ぎると混乱を招く事が多い。特に分類が細分化された地域では、同方式未実施地域や分別基準が緩やかな地域からの転入者に解り辛いという問題が挙がっている。特に同沼津市を含む地方町村では、1990年代以降、急速に外国籍の居住者が増えいった事情もあり、言葉の壁もあって、分別方法が伝え難い等のトラブルも発生している。

なお同市では、新しい転入者に図入りのパンフレットを配布して分別の徹底を呼び掛け、また町内自治体の協力者がごみ集積場にて分別方法の相談を受け付け、その場で分類を手伝う等して対応しているが、中には深夜に未分別の物や家電リサイクル法の施行で回収されないテレビ冷蔵庫といった「不当なごみ」を放置して行く住人は、個人の地元帰属意識やモラルの低下に伴って、年々増加傾向にある。その一方で、地元自治会の参加者に高齢化が押し寄せ、ボランティア頼みな末端の集積場では、満足な対応や管理が難しくなって来ているのも、同問題を複雑な物としている要因として挙げられる。

また分類済みの資源ごみは、しかるべきところに持ち込むと現金で買い取られるために、しばしば一儲けを目論んで深夜にトラックで乗り付け、資源ごみを持ち去る者もあり、中には買い取り額の高い資源だけを物色して、集積場を荒らすケースも多い事から、東京都世田谷区では2003年12月より、資源ごみの持ち去り行為に罰金を科す地域条例を施行した。本来は地元自治体の行っているごみ収集事業の貴重な収入源であるため、そのような行為は窃盗罪が成立する。

関連項目

外部リンク

テンプレート:Env-stub