人民

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テンプレート:単一の出典 人民(じんみん)は、法学政治学の用語で、一定領域において特別な政治的権限を持たないただの人のことをいう。

「人民」という用語法の歴史

「人民」は、日本語の文献においては、古くは8世紀の古事記日本書紀の中に現れている。当時は、「おおみたから(大御宝)=天皇の宝」という和訓が当てられていた。

明治期に入ると、「人民」という言葉は英語の「people」の翻訳語として広く使用されるようになる[1]。明治初期には、官吏と軍人を除く一般人を指す法律・政治用語という以上の含意はなかったが、自由民権運動が、人民の権利と議会開設を求めたことから、「人民」は政治議論の中心概念になった。民権運動の思想は、天皇の権威を拠り所にする政府に容れられなかった。政府側が起草して1889年に発布された大日本帝国憲法は、かわりに「臣民」という語を持ち込み、ただの人ではなく、臣下の人に対して権利を与える形式をとった。こうして法文上の用語から外された「人民」は、権力者に支配される状態は不当だという語感をまとうようになった。1901年に発行され、ベストセラーとなった竹越與三郎の『人民讀本』には、当時のそうした「人民」の含意が反映されている[1]

英語では日本語の「国民」についてはpeopleとnationの区別がなされるが、「人々」「人民」「民衆」は「people」か同義の単語にのみ対応する。日本の第二次世界大戦敗戦後、GHQ主導で大日本帝国憲法が改正されることになったがGHQの改憲案では、「臣民」に代わり"people""person"が使われ、日本語訳は「人民」「自然人」の語が充てられた。この場合の「人民」は、「日本に住む全ての人」を指した。しかし、日本側の反対に譲歩し、施行された日本国憲法では、国民に変更された。こうした経緯から、日本国憲法に規定された権利や義務は、国民、つまり日本国籍を持つ者だけを対象とし、それ以外(在日外国人無国籍者)は含まないという主張が生まれた。

「人民」と「国民」

「人民」と「国民」は、意味が区別される。国籍と無関係な概念が「人民」、ある国の国籍を持つ者が「国民」である。

エイブラハム・リンカーンが1863年に行った「ゲティスバーグ演説」に民主主義の本質を語ったものとして世界的に知られる「人民の人民による人民のための政治(government of the people, by the people, for the people)」という有名な一節があるように、本来「人民」の語は民主主義の主体を示す用語として用いられた。20世紀前半以降、共産主義運動や共産諸国家では、国際共産主義の立場から「国民」(nation)よりも「人民」(people)を好んで用い、そのため本来の語義を離れて「人民」という言葉に、共産主義のイメージが感じ取られる場合が多くなった。特に毛沢東時代の中国共産党において人民とは、国民から漢奸や反革命分子を除いたを指すやや狭い概念であった。そこには黒五類や臭九類などと呼ばれた、反革命階級出身者(成分)への敵視があった。

日本の左翼勢力は、戦前から「人民」の語を用いていたが、おおむね1930年代前半まではさほど頻繁にではなかった。しかし、1930年代、特に後半となると、それぞれ封建主義ファシズムの含みもある「臣民」・「国民」の概念を脱却するべく「人民」の呼称を積極的に用いた[1]。また、終戦後にそれまで弾圧されていた左翼勢力が解放されると、「人民共和政府」「人民大衆」「人民闘争」など左翼的・階級的な「人民」を含む表現が多用されるようになった[1]。しかし暴力闘争路線が市民多数派に敬遠されるようになると、議会主義路線の左翼政党は極左的な印象を避けるべく人民という言葉の使用を控えるようになった。

上の経緯から現代日本では通常は「人民」という言い方は避けられ、「国民」という言葉が用いられる。日本の政党政治団体で、少なくとも国会に議席を有するものでは、人民を党名にかぶせたり、政策に人民という語を使うことはほとんど無い(日本人民党沖縄人民党が議席を獲得した希少な例である。ただし、日本人民党右翼政党であり、二重の意味で希有と言える)。また、国民新党の英語名称はThe People's New Partyであり、直訳すれば「人民新党」となる。しかし、日本語名称で「人民」は使っていない。

名称に人民と付く国家・組織・集団

「人民共和国」やこれに類する表現(「民主」が前後に付けられることもある)は、共産主義国に独特の国名となっている。

日本語訳が「人民」

出典・脚注

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関連項目

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