有気音

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
有気から転送)
移動先: 案内検索

有気音(ゆうきおん)は、閉鎖音破裂音破擦音)を開放するとき、気音(きおん)を伴うもの。対義語無気音に比べて、強い息の流れを伴う子音で、帯気音(たいきおん)とも称される。調音器官の開放より少し遅れて母音声帯振動が始まるという特徴も持つ。国際音声字母では[ʰ]X-SAMPAでは[_h]であらわされる。

概要

特徴と表し方

  • ヒンディー語などで有声の有気音もあるのを除いて、通常は無声音である。
  • 破裂から声帯振動まで、無気音は14ms、有気音は100ms程度という差がある。
  • ラテン文字表記ではhや'(アポストロフィ)で表される。
    • 例:タイ→Thai、平壌→P'yŏngyang
  • 音声表記で「‘」を用いる例もあるが、[ʰ]の代用である。
  • ハングルでは有気音(激音)の字は、無気音(平音)の字に1画加えるものが多い。
    • 例:無気音 다 [ta], 有気音 타 [tʰa]

各言語における特徴と例

シナ・チベット語族など

中国語朝鮮語などでは、有気音と無気音とが弁別的な対立をなしている。中国語では有気音を「送气音 sòngqìyīn」、無気音を「不送气音 búsòngqìyīn」と称する。朝鮮語の有気音を日本語では激音と称するが、朝鮮語では激音の朝鮮語読み「격음」はあまり使われず、普通は固有語で「거센소리」(コセンスリ、「激しい音」)といわれる。

  • 中国語の例
    有気音: 踏 tà [tʰa]
    無気音: 大 dà [ta]

表記に関して、中国語や朝鮮語のように有声音と無声音の区別が無い言語の場合、無気音をb,d,gなどの有声子音を表すローマ字で、有気音をp,t,kなどの無声子音を表すローマ字で表す方式を用いる場合もある。中国語の漢語拼音、朝鮮語の文化観光部2000年式なども参照。

朝鮮語の場合、無気音の子音は母音に夾まれると有声化するが、有気音は有声化しない。

例:바다 [pa] + [ta][pada],바타 [pa] + [tʰa][patʰa]

また、中国語の有気音は朝鮮語の激音、無気音は平音におおむね相当するが、漢字音も対応する場合が多いが、例外も多く、必ずしも一致しない。

  • 中国語では有気音、朝鮮語では平音で読む漢字
例: 朴(piáo bak)、同(tóng dong)、場(chǎng jang)、、区( gu)
  • 中国語で無気音、朝鮮語で激音で読む漢字
例: 覇( pay)、打( ta)、卓(zhuō tak)

同様に、中国語でも方言によっては普通話(北京語)の有気音と無気音が異なって読まれる例外的、または特徴的な字音もある。

  • 北京語で有気音、潮州語で無気音で読む漢字
例:同(tóng、dang5・tong5)、場(chǎng、dion5)
  • 北京語で無気音、台湾語で有気音で読む漢字
例: 覇(、pa3)、打(、tan2)、卓(zhuō、tah4)

中国語では、無気音は直前に声門破裂音を伴うことがある。同様に、日本語で促音に続く破裂音は無気音で発音されることが多い。

タイ語では無声有気音、無声無気音、有声音の3種が弁別的に用いられており、文字も異なる。

例:
無声有気音 [tʰ]: ถ ถุง (tho thung) : トホー・トゥフン (袋のトホー)
無声無気音 [t]: ต เต่า (to tao) トー・タウ (亀のトー)
有声音 [d]: ด เด็ก (do dek) : ドー・デッ (子供のドー)
印欧語族

ヒンディー語ウルドゥー語など、インド系の多くの言語では、有気音と無気音の対立に加え、有声音と無声音の対立を組み合わせて、同一調音部位で4つの子音を弁別的に用いている。

例:ヒンディー語の軟口蓋音 [ka], [kʰa], [ga], [gʰa]

古典ギリシア語にも無気音との区別が存在したが、現在では摩擦音になっている。

フランス語で、リエゾンエリジオンを起こさないh aspiréを、「有気(音)の h」と訳す場合がある。ただし、「有音のh」と呼ぶのが普通である。辞書ではダガー(†)などの記号で示される。

英語では強勢のある音節頭位の無声破裂音(s に続く場合を除く)が、ドイツ語では無声破裂音すべてが、帯気している。

現代アイスランド語は、前気音(ぜんきおん)を有する。

テンプレート:子音テンプレート:Language-stub