強襲揚陸艦

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タラワ級強襲揚陸艦3番艦「ベロー・ウッド」。艦後方からLCUがウェルドックに進入しようとしている。

強襲揚陸艦(きょうしゅうようりくかん、Amphibious assault ship)とは、揚陸艦のうち、輸送ヘリコプター及びエア・クッション型揚陸艇を始めとした各種上陸用舟艇を搭載・運用する能力を持つ艦のことである。特徴としては、大規模なヘリコプター運用能力と全通飛行甲板が挙げられる。また大半は垂直離着陸機(STOVL機)を搭載・運用することによる揚陸支援攻撃能力をも持つ。

広義にはヘリコプターのみを搭載運用し、揚陸能力をヘリコプターのみに依存しているヘリコプター揚陸艦も強襲揚陸艦と呼び、狭義には船体内にウェルドックを持ち、上陸用舟艇の搭載・発進機能とヘリコプターによる空輸上陸機能を併せ持つ軍艦のことを指す。

歴史

世界初の強襲揚陸艦 

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1938年、船尾ハッチよりドック内の大発動艇を続々と発進させる「神州丸」。船橋部分に2箇所の搭載機射出口を有す
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1944年、船団護衛用の対潜護衛空母の機能を兼ねるため、航空艤装が一部改装された後の「あきつ丸」。揚陸艦の機能は残されている

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かねてより上陸戦に対して理解のあった日本陸軍陸軍運輸部陸軍船舶部隊)が、1930年代初期に特種船として開発した「神州丸」は、当時世界的にも先進的なドック型揚陸艦の機能(ウェルドック)を持ち上陸兵員最大約2,000名を収容可能な大型の揚陸艦(上陸用舟艇母船)であるとともに、艦載機として搭載した戦闘機偵察爆撃機カタパルトで発進させ、友軍上陸部隊に対し航空支援を行える航空機運用能力も有していた。

その「神州丸」の上陸戦遂行能力を維持しつつ、航空機運用能力を更に発展させた新型揚陸艦(丙型特種船)として1930年代後期から1940年代初期にかけて開発された「あきつ丸」は、カタパルトではなく全通飛行甲板を有す航空母艦様式の揚陸艦であった。

「神州丸」・「あきつ丸」(および準姉妹船「熊野丸」)ともに、(友軍上陸部隊に対する航空支援のための)航空機運用能力は計画段階よりあったもので、あくまで上陸部隊の輸送はドック等に搭載した上陸用舟艇のみによって行われるものの、これら日本陸軍の揚陸艦(特種船)は今日の強襲揚陸艦の先駆け的存在であった。 テンプレート:-

空母から発展した強襲揚陸艦

ヘリコプターの実用第1号は1939年アメリカ合衆国で初飛行した、シコルスキー社製のVS-300である。アメリカ海軍はすぐにヘリコプターを対潜哨戒や捜索・救難に使用した。第二次世界大戦後ヘリコプターが発達し搭載力が増大するにつれ、太平洋戦争で大規模な上陸戦を何度も経験したアメリカ海軍はヘリコプターを使用した迅速な揚陸作戦の検討を開始した。

この案に沿って朝鮮戦争後の1955年に、余剰になっている護衛空母セティス・ベイ」を強襲ヘリコプター航空母艦(CVHA)に改装することが行なわれた。更に1959年から正規空母エセックス級3隻(「ボクサー」、「プリンストン」、「ヴァリー・フォージ」)の固定翼機運用能力を撤去してボクサー級強襲揚陸艦として改装した。この3隻は満載排水量30,000トンに達し、ヘリコプター30機とアメリカ海兵隊の兵員約1,500名を収容でき、ヘリコプター揚陸艦(LPH)と呼ばれるようになった(1959年に「セティス・ベイ」もLPHに類別変更)。

同様にイギリス海軍においても軽空母コロッサス級2隻(「オーシャン」、「シーシュース」)を空母の類別のまま第二次中東戦争においてヘリコプター揚陸任務に用いて成功をおさめ、この成果を基に余剰となったセントー級3隻(「アルビオン」、「ブルワーク」、「ハーミーズ」)をコマンド母艦(commando carrier・イギリス海軍でのLPHに相当)に改装して運用した。

この能力や飛行甲板・艦橋配置などの外観は、その後、アメリカで新造されたイオー・ジマ級7隻(1961年、満載排水量18,000トン)、タラワ級5隻(1976年、満載排水量39,000トン、LHA)、ワスプ級7隻(1989年、満載排水量40,000トン、LHD)、アメリカ級2012年、満載排水量45,000トン、LHA)に引き継がれている。そしてイオー・ジマ級からは垂直離着陸機の運用も可能となった。

空母からの改装ヘリコプター揚陸艦やイオー・ジマ級は、実戦に投入するとヘリコプターの離着艦が困難な悪天候下では揚陸作戦が行えないという弱点が明らかになった。この弱点を克服するため、タラワ級以降ではドック型揚陸艦の機能も併せ持つこととなり、ここに狭義の強襲揚陸艦が誕生した。 テンプレート:-

上陸作戦の主要機能を単艦で保有

タラワ級とワスプ級では、ヘリコプターと垂直/短距離離着陸機(S/VTOL機)の運用能力だけでなく、エア・クッション型揚陸艇や上陸用舟艇を運用できるウェルドックも有することで主力戦車も揚陸でき、また、揚陸指揮艦の機能を備える他、補給物資の搭載能力を大きく備えることによって給兵艦としての能力もある程度付与されているなど、単艦で空海2つのルートから自己完結した敵前上陸作戦が行なえるようになっている。

21世紀に入ると、フランスミストラル級韓国独島級揚陸艦スペインの「フアン・カルロス1世」など、タラワ級と同様に全通甲板とウェルドックを共に持つ艦が各国で建造されるようになった。

主な強襲揚陸艦

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アポロ13号の司令船「オデッセイ」を回収するイオー・ジマ。艦名は硫黄島の戦いに因んで付けられている。

テンプレート:Flagicon アメリカ合衆国 アメリカ海軍式の艦種分類記号では下記の記号が当てられる。

  • LPH(Landing Platform, Helicopter )ヘリコプターによる人員の輸送・揚陸を主体とするヘリコプター揚陸艦
  • LHA(Landing Helicopter Assault )LPHに艦内ドックを装備、揚陸艇による重装備の揚陸も可能に、狭義の強襲揚陸艦。
  • LHD(Landing Helicopter Dock )LHAのドック容積を拡大し、揚陸艇運用能力を強化したもの。狭義の強襲揚陸艦。

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テンプレート:UK

テンプレート:Flagicon イタリア

テンプレート:Flagicon オーストラリア

テンプレート:Flagicon スペイン

テンプレート:Flagicon 韓国

テンプレート:Flagicon フランス

フランス海軍では「Bâtiment de Projection et de Commandement」と呼んでおり、BPCと略されることが多い。日本語に直訳すると「指揮・戦力投入艦」という意味になる。

テンプレート:Flagicon ロシア

  • ミストラル級強襲揚陸艦準同型艦
フランスから2隻の購入を契約し、2隻の自国ライセンス生産を計画している。2012年2月1日に1番艦の建造が開始された。ロシアは本級に攻撃・防衛用の対空対艦対潜ミサイルの搭載を希望しており、フランス海軍のものとは武装や船体構造が異なる準同型艦となる予定である。

関連項目

テンプレート:空母関連項目