大学基金

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大学基金(だいがくききん、英: University endowment)とは、大学基盤の整備、企業・社会との連携、研究成果の活用支援、学生のための厚生施設整備、各種学生支援などを推進するために設けられた基金である。

国内の国立大学法人においても、法人化に伴い、各大学法人に基金が設置され、個人や法人から寄付金(エンダウメント endowment)を集め始めた。個人や法人からの大学基金に対する寄附については、所得税法上の寄附金控除の対象となる特定寄附金(所得税法第78条第2項第2号)、と法人税法上の全額損金算入を認められる寄附金(法人税法37条第4項第2号)がある。

国内においては、私立大学では以前から基金が設立されており、例として慶應義塾大学の基金は、300億円程度(2010年度)[1]の規模を有している。国立大学では、東京大学の場合でも400億円程度(2010年度)[2]であり、寄付金も31億円(2010年度)[3]に留まっている。同大は2020年までに基金の規模を2000億円に拡大させることを目標にしている。一方で、これらの基金の規模は米国の有名大学と比べると極めて小さい。世界一かつ全米トップのハーバード大学の大学基金は、しばしば“金満”と揶揄される慶應義塾大学の100倍近い2兆5000億円もの規模に達する。年間の寄付金は、800億円程度である。ハーバード大学は、この基金の運用で年間15%の収益(3500億円)を出している。米国においては、各大学が大学基金の拡大にしのぎを削っており、これが米国の大学の豊かさと柔軟性の原動力になっている。近年、ハーバード大学だけでなく、イェール大学プリンストン大学など有力な私立大学は、軒並み記録的な収益を得ている。ただ、財テクとなってしまった米国の大学の基金の拡大と運用については批判もある。ハーバード大学では、基金の運用を担当する責任者数人の年収が数十億円に達したと言われる。本来、学生や大学のための基金で、一部の個人が驚愕すべき高額給与を得ているとの批判のなか、その運用技術を自らの目的に活用するため辞職した(2005年)。

日本においても、国立大学法人化に伴い、各大学に柔軟な運営と豊かさを与え、各大学の特徴や可能性を広げることができる基金の重要性が飛躍的に高まっていくことが予想される。しかし、現時点ではその概念の確立に努力が注がれている段階である。また、教育機関への寄付行為が社会に根付くのかという問題も残されている。法人化に伴って、多くの大学で同窓会組織が作られたのは、基金への寄付金を増加させるのが大きな理由である。

関連項目

出典

  1. [1]
  2. [2]
  3. [3]