二家本辰巳

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

二家本 辰巳(にかもと たつみ、1953年[1] - )は、日本殺陣師、俳優スーツアクター。アクションをこなせる役者集団アーバンアクターズ代表。山口県周南市出身[1]

経歴

中学卒業後、徳山技能専門校(現:山口県立東部高等産業技術学校)でブロック建築を学び就職したものの、アクションスターを目指し1971年に上京、ジャパンアクションクラブに入門した[1]

アクションを得意とする俳優(またはスタントマン)として数々の作品に端役や斬られ役として出演したが、『ウルトラマンレオ』でレオのスーツアクターとして披露した華麗なアクションが名高い。

各種映画や『探偵物語』で共演するなどして交友のあった松田優作の監督作『ア・ホーマンス』からもっぱら殺陣師・アクション監督として活動するようになり、1989年に『アーバンアクターズ』を設立した。『メカゴジラの逆襲』では怪獣チタノザウルス役で登場。

北野武の作品は『座頭市』をはじめとして殺陣・アクションの担当は全て二家本が担当しており、他に舞台等でも活躍するアクションコーディネーターの1人である。

逸話

  • JAC加入のきっかけは『キイハンター』での千葉真一のアクションに魅せられたからだと語る。
  • 殺陣師への転向のきっかけは、彼のアクション面を高く評価して「いい殺陣師になれる」と言った松田優作の言葉だったという。また松田の演技は俳優として、殺陣師としての二家本に大きな影響を与えていることを語っている。
  • 座頭市』における北野武の殺陣を「今、あれだけ早く正確に斬れる方はおられないじゃないでしょうか」と評している。

『ウルトラマンレオ』での逸話

  • 格闘技の達人で高い身体能力を持つ、というレオの設定から、レオのアクションにはそれまでのウルトラマンが巨大感に合わせたアクションを行っていたのと一転して、バク転やバク宙などを筆頭に、柔道や空手、合気道などの各種武道・格闘技からアクロバティックな動きが取り入れられた(ファイティングポーズにも空手や柔道の影響が見られる)。それまでなかった歯切れのよいスピーディな動きをこなした二家本の演技はウルトラアクション最高作とファンから絶賛されている。しかし二家本の回想によれば、レオはその頭の角が邪魔で、バク転などの動きの際は苦労したという。
  • そもそも当初レオをレギュラーで演じる予定ではなく、第1話ではレオではなくてセブンを演じていた。しかしスタッフはこの時レオを演じた川口和則のアクションに満足できず、ゲストだったはずの二家本がレオをレギュラーで演じることとなったという。セブンを希望した理由はセブンが好きだった事とアイスラッガーを投げてみたかったからだそうである。(実際、劇中では跳ね返されたが二家本が担当したセブンはアイスラッガーを使っている。)
  • レオは当初のストーリー設定では、人間体のレオが、その未熟さと地球を愛する正義心の強さから、すぐに変身して戦い、敗れたのち、特訓してリターンマッチというパターンが常であった。この設定は第1話から10話代前半まで続いたため、撮影日程が通常の倍になり、全『ウルトラシリーズ』のアクターで最も過酷なスケジュールで撮影に挑まなくてはならなくなった。また、序盤1、2話は水中戦闘ばかりであったにもかかわらず、スーツのマスクに水のはけ口がなく、水がスーツの中に溜まり喉元まで達した為、死の危険を感じ思わずマスクを破壊してしまった事もあったという。このためか、第2話冒頭の、スローモーションで流されるレオの格闘シーンでは、耳の下あたりに水抜き穴があるのがうかがえることからわかるように、若干の改良がほどこされている(余談だが、このとき格闘した相手のマグマ星人は、そもそも口にマスクがないため窒息する危険がなかった)。2話では水を張ったセットで連続バック転をしており、監督の真船禎は「とにかく二家本さんって凄いよね。ぬいぐるみ着たまま、水を張ったステージでも連続バック転やるんだから。CGなしであんなこと出来るなんて信じられないよ。」と絶賛していた[2]
  • マスクの目の穴から火薬(ミサイルの表現につかわれる曳光弾)が飛び込み、マスクの中で燃え始めたり、レオのスーツの火薬発火用の電線が誤って配線され電流を直接浴びる等現在では考えられない危険なアクシデントが続発していた。その後も全ピアノ線操演の円盤生物相手の演技に悪戦苦闘する等後々まで苦労は耐えなかった。二家本曰く「当時の円谷プロ作品では『スーツアクター』の待遇はよくなかった。円谷で1年やれれば他社なら10年持つと言われていました」。
    • 実際、疲労は相当なものであったようで、放送回数によっては、動きに全くキレがないということもあった。
  • それまでのウルトラシリーズでは、各回登場の怪獣と、青空のもと、ロケで撮影することはしばしばあったが、宙を舞うなどの映像は、初めにまとめ撮りしてそれを使いまわすのが常であった。しかしレオにおいては、回ごとに鍛えられより新しい技を身につけていくという設定から、屋外で撮影される空中を舞うなどのシーンが、毎回新撮されている。
    • 第9話のギロ星獣との回では、泡にまみれながらハイジャンプを披露する映像が外で行われたが、話の展開に合わせて、その都度体につく泡の量を加減するなどの細かい演出を加えての撮影や、第2話から出るレオキックにしても、回によっては、同じ映像を繰り返すのではなく、3~4回ほどキックの映像を撮影し、毎回違う映像で効果的にキックを演出しようとするなど、フィルムと時間が大変費やされていることがうかがわれる。
  • 撮影時のスタッフとの思い出として、演技に対して厳しかった監督の東條昭平からは、二家本が満足できない演技をするとよくドロップキックを受けていたと語っている。
  • 素顔でもスポーツセンターの空手担当者として登場し、第1話冒頭で変身前のレオ=ゲン役の真夏竜とのアクションシーンもある(ゲンが空手の組手をするシーン、4カット目でゲンに正拳突きを入れようとしてかわされ、後ろ回し蹴りで倒されるメンバーで登場[3]。以上の話題に関する本人のインタビューは、ビデオ版『ウルトラマンレオ』の特典映像で観ることができる)。
  • 2006年に放送された『ウルトラマンメビウス』でかつて自身が演じたレオが登場した回(第34話)でレオのアクターを担当した山本諭にレオのアクションを指導したとのこと。

出演作品

映画

テレビドラマ

擬斗指導

脚注

  1. 1.0 1.1 1.2 デジタルウルトラプロジェクト『DVDウルトラマンレオ』Vol.12 解説書。
  2. DVD『ウルトラマンレオ』(デジタルウルトラプロジェクト)Vol.4解説書より。
  3. 第11話でも同様の役柄で出演している。
  4. 『バトルホーク大図鑑』 WILD GEEKS p.15

外部リンク