ランボルギーニ・ムルシエラゴ

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テンプレート:Infobox 自動車のスペック表 ムルシエラゴMurciélago )は、イタリアの自動車メーカーランボルギーニが2001年から2010年にかけて製造したスーパーカー。「ムルシエラゴ」はスペイン語で「コウモリ」の意味。イタリア語での発音は「ムルチェラゴ」に近い。

概要

ムルシエラゴは、ランボルギーニがアウディ傘下に入った後に発売された最初の車種であり、ディアブロの後継車種となるフラッグシップスポーツカーである。2001年フランクフルトモーターショーで発表され、同年秋から市販化された。車名の由来は、過去のランボルギーニ車の伝統にならい、19世紀に実在した伝説的な闘牛の名前から取られている。スタイリングは当時ランボルギーニのデザイン部長であったルク・ドンカーヴォルケが担当した。

歴史

2004年3月、ジュネーヴモーターショーにてムルシエラゴ・ロードスターを発表[1]

2006年3月、ジュネーヴモーターショーにてムルシエラゴ LP640を発表し[2]、翌月から予約を開始[3]。また、同月に生産2,000台を達成[4]。同年11月のロサンゼルス・オートショーにはLP640のロードスターバージョンも発表[5]

2010年2月に生産4,000台を達成[6]。同年11月に生産終了[7]。総生産台数は4,099台。後継車種はアヴェンタドール

解説

基本構造

後に発表された「ガヤルド」に比べ、親会社であるアウディ社の影響が少ないモデルとの評価がある。例えばガヤルドはアルミ製スペースフレームに、アウディの設備を利用して設計されたエンジンを搭載する仕様であるが、本車種はアウディに買収される以前に設計したディアブロの構造的特徴の多くを受け継いでいる。

ボディは角断面を持つ鋼管スペースフレームによって組まれ、外部からの応力をほぼ全てシャシーによって負担する構造を持っている。シャシーの大部分はスチール製だが、フロアパネルと一部の補強用補助構造体などはカーボンファイバーが使用されている。また、ボディパネルにもカーボンファイバーを用いられているが、ルーフと左右のドアにはスチール素材を使っている。これらの最先端素材を多用したことで、ディアブロより全長が約100mm延長されているにも関わらず、乾燥重量はほぼ同水準の1,650kgとなっている[8]

車名をあらわすエンブレムは装着されていない代わりに、ドアのサイドシル部分に"MURCIELAGO"のロゴが刻まれている。ドアの開口部はガルウイングドアの上昇量が増やされ、開口部も広く取られた事により、ディアブロに比べ乗降性が向上している。

エンジン

搭載エンジンは新規設計されたものではなく、ディアブロから引継ぎとなるアルミダイキャスト、60°バンクを持つ水冷V型12気筒DOHCエンジンの発展型を搭載する。このエンジンはカウンタックからディアブロを経てムルシエラゴまで基本構造を受け継ぐ設計であり[9]、ディアブロの最終生産型である6.0SEのものに基本ストロークを延長し、排気量は6.2Lとしている。またディアブロのエンジンと比較して、素材見直しによるムービングパーツの軽量化も行われている。出力は580hp(約588PS)、トルク66.3kg·mとされている。このエンジンの感触について福野礼一郎は「古典的なエンジン」「いかにも内燃機らしい豪快な回り方」と評している[9]

パワートレインの配置と構造

パワートレインの配置はカウンタックからディアブロを経て受け継いだもので、運転席と助手席の後ろに置かれたエンジンの出力は、運転席と助手席の間のセンタートンネルに置かれたトランスミッションを経由した上で後輪に伝えられている。しかし、ディアブロ以前にはオイルパンを貫通していたドライブシャフトをディファレンシャルギアごと車体右側にずらして設置し、潤滑方式をドライサンプにすることによって、エンジンの搭載位置を50mm下げている。また、トランスミッションも従来の5速から6速に変更され、後に「e-gear」と呼ばれるセミオートマチックトランスミッションが追加された。

駆動輪

ディアブロが後輪駆動四輪駆動の二つのグレードが用意されていたことに対して、ムルシエラゴは四輪駆動のみの設定となっている。

ムルシエラゴの四輪駆動は比較的簡易な構造を持つビスカス式センターデフを持つものであり、動作制御もディアブロが姿勢を崩した時に効果を発揮する的な仕様に対し、通常でも前輪にも積極的に駆動力を配分するものに変更されている。

空力パーツ

高速域での安定性を確保するため、電動可動式ウイング、サイドインテークが装着されている。

燃費

アメリカ環境保護局とエネルギー省が毎年発表する燃費ワーストランキング2010年では、本車種のMT仕様が市街地燃費3.4、高速燃費5.53とワースト1位に選ばれている。またAT仕様も3位に選ばれている。[10]なお、ランボルギーニは4年連続1位となった。

バリエーション

ロードスター

ムルシエラゴ発売の約2年後の2004年に発表された。ロードスターは、ルーフをカットし、ソフトトップの幌を付加したオープンモデルである。ソフトトップは悪天候時の非常用として位置づけられており、高速走行時はオープンの状態で走ることが推奨されている。ルーフをカットしたことによる剛性低下を補うためシャシーが補強されており、またエンジンルーム上部には、クロスメンバー状の補強フレーム(オプション設定で、スチールからカーボンファイバー製に変更可能)が装着されている。

レヴェントン

ムルシエラゴをベースに開発され、20台が限定生産された超高性能スポーツカーである。詳細はレヴェントン参照。

LP640

2006年3月に発表された。ベースとなる本車種よりハイパワーなエンジンを搭載し、エクステリア、ギヤボックス、トランスミッション、電子系にも改良が施されたモデル。LP640における「LP」はエンジンの後方搭載を意味する「Longitudinale Posteriore (後方縦置き)」の略で、「640」は最高出力(640PS)と発表されている。

2006年10月にはジャンニ・ヴェルサーチとのコラボレーション企画として、ヴェルサーチのデザイナー陣が各種インテリアを手掛けたモデル「LP640ヴェルサーチ」を発表した[11]

LP670-4スーパーヴェローチェ

2009年3月に発表された仕様で350台限定。[12]。LP640をベースにさらに改良したものであり、公開スペックはレヴェントンを上回る。LP640よりも約100kg軽量化され、車重は1,565kg。エンジンは6.5L V型12気筒で、670PSを発生する。0-100km/h加速は3.2秒、パワーウエイトレシオは2.3kg/PSと発表されている。ブレーキには標準でカーボンセラミックディスクブレーキが採用され、さらにボディ全体の空力の見直しが図られた。最高速度は342km/hと発表された。

R-GT

2004年にデビューしたレース仕様。FIA GT選手権へ参戦するために製作したモデルで、レギュレーションにより構造体そのものを大幅に改修するような改造は施されておらず、オールカーボンのボディ、強力なダウンフォースを生む空力パーツなどが装着されているものの、基本的には市販車の仕様に準拠している。FIA GT選手権では、デビューレースの第1戦(バレンシア)で表彰台に上るなどの戦績を残している。その一方、全日本GT選手権への参戦時は、目立った活躍はなくシーズン途中で撤退した。

RG-1

ファイル:JLOC murcielago superGT-2005.jpg
JLOCムルシエラゴRG-1(2005年バージョン)

ランボルギーニが全日本GT選手権(現・SUPER GT)に参戦するJLOCに製作した車両。2004年の第2戦から登場。ベースはR-GTであるが、多くの部品が特注品で構成されている。2005年途中からGT300クラスに移り、2006年の第1戦で優勝。JLOCはこれが初優勝であり、ムルシエラゴ自身も世界でのレース活動において初優勝である。その後も毎年表彰台に上がるなどコンスタントに成績を残している。2010年からはガヤルドRG-3に変更された。

R-SV

2010,2011年にFIA GT1世界選手権に投入した車両。2010年の第5戦スパで初優勝、2011年は第2戦ベルギー(ゾルダー)と第6戦スペイン(ナバラ)での2勝を挙げた。

脚注

  1. テンプレート:Cite web
  2. テンプレート:Cite web
  3. テンプレート:Cite web
  4. テンプレート:Cite web
  5. テンプレート:Cite web
  6. テンプレート:Cite web
  7. テンプレート:Cite web
  8. 乾燥重量とはオイル、冷却水、ガソリンなどを一切入れない状態での重量のこと。日本国で登録されたムルシエラゴの車検証記載車重は1,870kg。(福野礼一郎『福野礼一郎スーパーカーファイル』双葉社、2008年、p.40-41)
  9. 9.0 9.1 福野前掲書、46-47ページ
  10. 2位はブガッティ・ヴェイロン。こちらは市街地燃費3.4、高速燃費5.95となっている。
  11. テンプレート:Cite web
  12. テンプレート:Cite web

関連項目

外部リンク

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