ヤマハ・KXシリーズ

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KXシリーズ(ケーエックス・シリーズ)はヤマハマスターキーボードの型番・商品名。

概要

このシリーズは本体に音源を内蔵せず、MIDI信号を発するための鍵盤とスイッチのみが装備される。従って本体のみでは楽器として発音させることはできない。外部に接続するMIDI対応音源モジュールから発音させる仕組みになっている。

シリーズのモデル

KX1
1983年発売。標準鍵盤で44鍵を備えるショルダーキーボード。イニシャルタッチ(鍵盤押下時の強さ検知)・アフタータッチ付。発売時の定価は200,000円。赤と白のカラーバリエーションがある。海外ではジョージ・デュークジェフ・ローバーが使用。日本では向谷実カシオペアのツアーで使用したり、小室哲哉TM NETWORK結成当初のテレビ出演で使用していた。
KX5
1984年発売。37鍵を備えるショルダーキーボード。イニシャル・アフタータッチ付き。リボンコントローラでピッチベンドを操作可能。色はシルバーとブラックの2種類。発売から15年以上経って絶版となったロングセラーである。
小室哲哉用のカスタマイズモデルとして、外板全体が銀色の鏡面仕上げのものも作られた。
浅倉大介もカスタマイズモデルを使用しており、黒鍵が金色、白鍵が銀色に塗装されているものである。
坂本龍一は1986年に初のソロツアーをスタートさせる際に、ラジオ番組で「ショルダーキーボードだけは絶対に使いたくない」という旨の発言をしたが、いざツアーが始まってみるとアンコールでKX5を弾きまくり、ファンが苦笑したというエピソードもある。
チック・コリアは1985年のエレクトリック・バンド結成時より長きに渡り使用。他に海外アーティストではハワード・ジョーンズトーマス・ドルビー ヤン・ハマーなどが使用していた。
軽量モデルのため女性奏者の使用も多く、古くはCOSMOS土居慶子、最近では桃井はるこが使用している。
KX88
1984年発売。88鍵ピアノタッチ鍵盤のマスターキーボード。イニシャル・アフタータッチ付き。KX76と同様、外観は一般的なシンセサイザーだが音源は内蔵されず、外部音源へのMIDI信号送信用のキーボードである。小田和正オフコース時代からソロ活動の初期(1990年代中頃)まで使用していた。
向谷実(元カシオペア)も長きに渡り(1985年から2001年頃まで)、メインで使用していた。他に海外ではチック・コリアレイ・チャールズデヴィッド・ペイチTOTO)、スティーヴ・ポーカロTOTO)、マイク・リンダップLevel42)、ラッセル・フェランテイエロージャケッツ)なども使用していた。
KX76
1985年発売。76鍵のマスターキーボード。イニシャル・アフタータッチ付き。外観は一般的なシンセサイザーだが音源は内蔵されず、TX816などの外部音源と接続して演奏するキーボードである。上下2オクターブの移調が可能。
向谷実(元カシオペア)は1986年からヤマハEX5を使用する1998年頃まで使用。他にはTHE SQUARE在籍時の和泉宏隆イエス在籍時のトニー・ケイデヴィッド・ペイチTOTO)、スティーヴ・ポーカロTOTO)、チック・コリアも使用していた。
1986年TM NETWORKのコンサートで小室哲哉は、3段積みのKX76をメインキーボードとして使用していた。

USBキーボードスタジオ シリーズ

KX25/KX49/KX61 (25鍵/49鍵/61鍵)
2008年2月1日発売。MIDI接続以外にUSBバス接続にも対応している(USBバスパワー対応のため、USB接続の際に電源アダプターが不要である)。Cubase AI4、Cubase AI5が添付されており、様々なDAWソフト上のVSTi音源も使用可能である。
KX8
2008年8月1日発売(日本国内)。88鍵・GHS(グレードハンマースタンダード)鍵盤。鍵盤以外では上記のKXシリーズと基本機能は同じである。

試作モデル

KX3
1989年試作。KX5の後継モデルとして企画され試作段階まで進んだが、発売されなかった。デザインはKX5より同社のヤマハ・ショルキーシリーズを髣髴とさせるが、鍵盤の手前側に音色切替えボタンを配置するなど演奏者の立場に立った仕様変更がされている。[1]

特注モデル

Tetsuya's Mind Control

上記KX5をベースとして小室哲哉用に開発された。正式名称は不明ながらTetsuya's Mind Controlと通称される[2]モデルである。このモデルは上記KX5の項目で触れられているような塗色変更や鍵盤色変更のみに留まるカスタマイズモデルとは異なり、ライブパフォーマンスで利用する上での様々な仕様変更や設計変更などが行われており、カスタマイズモデルというよりも再設計モデルと呼んだ方が正しいともいえるものである。 また、クラムボンの「super☆star」のPVで、このモデルが使用されている。


Tetsuya's Mind Controlは今までに計3モデルが小室のために製作されたが、それぞれ細部が異なっている。

初代

小室のソロツアーDigitalian is eating breakfast用に作られた初代Tetsuya's Mind Controlは、KX5からプログラム(音色)バンク選択ボタン、プログラム番号選択ボタン、ポルタメントタイム設定ツマミなどの鍵盤上部に設置されていたボタン類を取り去ってボディを小型化し、その代わりとして握り部分にプログラムUP/DOWNキー(左/右向き三角のボタンとなっていた)を設置、KX5ではリボンセンサーを使用していたピッチベンダーをホイールに変更、オクターブUP/DOWNボタンとオクターブ表示LEDを設置しているなど、各種のコントローラを握り部分に集中させ、左手一本でコントロール可能なように設計し直したものである。

その他にも「ボリューム表示用赤色LEDを追加してボリュームが一目で分かるようにする」「ボタン類周囲、ボリューム、ピッチベンダーなどのホイール類のセンターにある表示ラインがバックライトで照らし出されるようになっている」「プログラム番号1桁の数字が赤色LEDで表示されるようになっている」など暗いステージ上での使用を考慮した各種の配慮がされている。

重量はKX5の3.7kgから小型化などにより3kg未満と軽量化されているが、筐体は鉄板を成型したものである。ステージ上のパフォーマンスでの動きを考慮して、筐体裏側にはクッションが貼りつけられている。

色はチャコールグレー、筐体前面に"Tetsuya's Mind Control"の文字と、同"Digitalian~"ツアー時に小室が使用していたマークが印字されている。鍵盤色は通常の黒鍵/白鍵のものと、白鍵が本体とほぼ同色のチャコールグレーのものの2つが存在することが各種の写真、映像などから明らかになっているが、これらが同一の本体の鍵盤を途中から交換したものか、それぞれ別の本体があるのかは定かではない。

2代目

2代目のTetsuya's Mind ControlはTMNのツアーEXPOから使用された。初代とコントロール部分は同じであると思われるが小室の軽量化を望むリクエストに応え、筐体の素材をバルサ材にアクリル塗装したものに変更し、更なる軽量化を図ったものとなっている。これにより重量は2kgを切る程度まで軽量化された。色はピアノブラックに非常に近い艶ありの黒。"Tetsuya's Mind Control"の文字はなくなった。白鍵はチャコールグレー。

3代目

3代目のTetsuya's Mind Controlは1995年頃より使用され始めた。2代目の本体色が赤になり、ネック部のコントローラーの増加により若干長くなったもので、鍵盤色は通常の黒鍵/白鍵である。その他の仕様はこれまでのものとほぼ同じだと思われるが、詳細は不明。

globeなど、TKプロデュース時代に入ってからの小室が使用していたため、最も多くの人々の記憶に残っているモデルだと思われる。なお、この当時発売されていたローランド社製のショルダーキーボードAX-1に赤色のラインアップがあったため、当時の小室が同機を使用していたと誤解されることがあるが、AX-1を小室が使用したことはない。

脚注

  1. http://www.yamaha.co.jp/design/pro_1980_09.html 4ページ目を参照
  2. TETSU MIND CONTROL、TETSUYA KOMURO MIND CONTROLなどとも呼ばれる。

関連項目

外部リンク