モービッド・エンジェル
テンプレート:Infobox Musician モービッド・エンジェル (Morbid Angel) は、1983年に結成された、アメリカ・フロリダ州・タンパ出身のデスメタルバンド。当該ジャンルの草創期から活動を続ける大御所的存在である。
トレイ自身は「モービッド・エンジェルはライブバンドである」と公言しており、数多くのライブをこなしている。しかしながら、メンバーに関しては1990年代に入ってからもトレイとピート以外のラインナップは安定せず、しばしばメンバー交代が行われてきた。
日本ではライナーノーツでは、「デスメタルの魔王」とも表現されている。
デス、オビチュアリー、ディーサイドらと共にフロリダを中心に活動を行い、カンニバル・コープス、サフォケイション、マルヴォレント・クリエイションらニューヨーク勢と共に、1990年代初頭のアメリカデスメタルシーンの創生期を支え、世界中のデスメタルバンドに影響を与えた。
イギリスの音楽雑誌『Terrorizor』における「デスメタルアルバムベスト40」では彼等のアルバム2枚がランクインし、その内「Alters of Madness」は1位に輝いた。また同じく音楽雑誌である『Decibel』においては、トレイが「デスメタルのギタリスト」で1位にランクインしている。
彼らがレコーディングに使用したフロリダ州タンパのモリサウンドとそこを拠点に活躍していたプロデューサーのスコット・バーンスが作り出すサウンドは世界中のデスメタルバンドの憧れになり、世界中から次々とデスメタルバンドがレコーディングに訪れるようになった。
略歴
- 1983年 トレイ・アザトース(ギター)をリーダーとし、マイク・ブラウニング(ドラム)、ダラス・ウォード(ベース)の三人で結成される。メンバーを入れ替えながら活動を続ける。ヴォーカルが不在の場合にはマイクがヴォーカルを兼任することもあった。
- 1985年 リチャード・ブルーネル(ギター)が加入。
- 1986年 デヴィッド・ヴィンセントのプロデュースにより『Abominations of Desolation』を録音し、デヴィッドがオーナーのレコード会社よりリリースする予定であったが、完成度に満足していなかったことに加え、録音後にメンバーが交代したため、結局1991年までリリースせずお蔵入りとなる(ただしそのうちの数曲はリメイクされ、後のアルバムに収録されることとなる)。その後、デヴィッドがバンドに加入する。
- 1988年 7月4日にロサンゼルスのバンドテロライザーのピート・サンドヴァルが加入する。以降、トレイとピートのみが固定メンバーとなる。
- 1989年 1stアルバム『Altars of Madness』(邦題:狂える聖壇)をリリース。
- 1991年7月 「病める者は幸いなるかな」を意味するタイトルを冠した2ndアルバム『Blessed are the Sick』(邦題:病魔を崇めよ)をリリース。
- 同年9月 1986年に録音していたアルバム『Abominations of Desolation』をリリース。メンバー曰く「音質の悪い海賊盤(Scream Forth Blasphemies)が出回っていたのを見かねて公式にリリースをした」とのことで、メンバーは公式の1stアルバムではないと否定している。
- 1993年 3rdアルバム『Covenant』をリリース。
- 1995年 セカンドギタリストとしてRipping Corpseで活動していたエリック・ルータンを加え、4人編成で4thアルバム『Domination』をリリース。
- 1996年 ライブアルバム『Entangled in Chaos』をリリース。デヴィッドが脱退。
- 1997年 後任としてスティーヴ・タッカー(ヴォーカル、ベース)が加入。
- 1998年 5thアルバム『Formulas Fatal to the Flesh』をリリース。セカンドギタリストは一時的に再加入したリチャード・ブルーネル。
- 2000年 6thアルバム『Gateways to Annihilation』をリリース。セカンドギタリストはエリック・ルータン。
- 2001年 日本のラウドロックフェスティバルBEAST FEAST 2001に出演。スティーブ・タッカーが脱退し、ジャレッド・アンダーソンが加入。
- 2002年 ジャレッドとエリックがHate Eternalでの活動に専念するために脱退。
- 2003年 スティーブ・タッカーを呼び戻し、そのまま3人編成で7thアルバム『Heretic』をリリース。ライブではトニー・ノーマンがヘルプとして参加。長らくセカンドギタリストが不在となる。
- 2004年 スティーヴが再び脱退。デヴィッド・ヴィンセントが8年ぶりにバンドに復帰する。
- 2008年 デストラクター(元ザイクロン、ミルスコグ)がツアー時のセカンドギタリストとしてメンバーに加入[1]。
- 2010年 ピート・サンドヴァルが長年わずらっていた腰の手術を受けるためバンドから一時離脱。セッションメンバーとしてティム・イェング(元ヘイト・エターナル)を加え、新作のレコーディングを行う[1]。また、これ以降、ティムがツアーにおいてもセッションドラマーを務める[1]。
- 2011年 8thアルバム『Illud Divinum Insanus』をリリース。10年ぶりの来日も果たす。
- 2012年 11月初旬から年末にかけて、クリーターらとともに欧州ツアーを行う。
- 2013年 デヴィッド・ヴィンセントへのインタビューで、ピート・サンドヴァルが脱退したことが判明する[2]。
メンバー
現在のメンバー
- トレイ・アザトース Trey Azagthoth - ギター (1983- )
- 本名、ジョージ・エマニュエル・3世(George Emmanuel III)。正確にはアツィグトートと発音する[1]。
- 1965年3月26日生まれ。MORBID ANGELのリーダー。既婚者。
- アルバムではシンセサイザーも操り、ギターシンセ(ローランドのGK-2A)なども導入していることが写真から確認できる。アイバニーズやジャクソンのギターも使用しているが、B.C.リッチ(真紅のアイアンバード)の愛用者として知られる。ギターテクニックはタッピングに加え、アーミングやワウペダルの使用を得意とする。これらのテクニックはヴァン・ヘイレンやジミ・ヘンドリクスに影響を受けているとのこと。また、メロディにおいてはモーツァルトからの影響を受けている。
- この業界では珍しく、有能なギタリストながらMORBID ANGEL以外での活動を一切行っていない。
- アザトース(Azagthoth) の名は、1977年にハードバックが出版された「サイモン・ネクロノミコン(Simon Necronomicon)ISBN 0380751925」 に由来し、一部の曲の歌詞はこの本に由来する。モービッド・エンジェルがクトゥルフ神話から直接的影響を受けているというのは間違い。
- 日本のアニメファンで、セーラームーンやガンダムを好んでいる。特にらんま1/2はお気に入りらしくアルバムのサンクスリストに入っている。好きなテレビゲームは「ストリートファイター」や「デビルメイクライ」、「メタルギアソリッド」など。
- デヴィッド・ヴィンセント David Vincent - ヴォーカル、ベース (1986-1996, 2004- )
- 1965年4月22日生まれ。4thアルバム『Domination』収録後に脱退し、インダストリアル・メタルバンド「ジェニトーチャーズ」にてEvil Dの名義でベーシストとして活動していたが、2004年に再びモービッド・エンジェルに再加入した。テロライザーの1stアルバム『World Downfall』でもベースを担当していた。
元メンバー
- ダラス・ウォード Dallas Ward - ボーカル、ベース (1983-1985)
- テリー・サミュエルズ Terri Samuels - ボーカル (1984)
- ケニー・バンバー Kenny Bamber - ボーカル (1985)
- マイケル・マンソン Michael Manson - ボーカル (1986)
- スティーヴ・タッカー Steve Tucker - ボーカル、ベース (1997-2001, 2003-2004)
- 元Ceremony。
- ジャレッド・アンダーソン Jared Anderson - ボーカル、ベース (2001-2002)
- リチャード・ブルーネル Richard Brunelle - ギター (1985-1992)
- PATHS OF POSSESSIONでも活動していたが、既に脱退している。
- エリック・ルータン Erik Rutan - ギター (1993-1996, 1999-2002)
- モービッド・エンジェル加入以前はRIPPING CORPSEで活動。現在はALAS、ヘイト・エターナルでの活動のほか、フロリダに自分のスタジオMana Recording Studiosを持ち、インターナル・サファリング 、カンニバル・コープス、ゴートホアなどのアルバムのプロデュースを行っている。モービッド・エンジェルの2006年のヨーロッパ・ツアーでは2ndギタリストとして、ライブ・サポートを務めた。
- ジョン・オルテガ John Ortega - ベース (1985-1986)
- スターリング・フォン・スキャボロウ Sterling "Von" Scarborough - ベース (1986)
- INCUBUS、USURPERでベース兼ヴォーカルとして活動していたが、どちらも既に解散している。
- マイク・ブラウニング Mike Browning - ドラムス、ボーカル (1983-1986)
- モービッド・エンジェル脱退後、ノクターナスを結成しイヤーエイク・レコードより2枚のアルバムをリリースしたが後に脱退している。現在はインディーズにてノクターナスのメンバーとともにデスメタルバンドAFTER DEATHを結成、ヴォーカル兼ドラムとして活動中。
- ウェイン・ハートセル Wayne Hartsell - ドラムス (1986-1988)
- ピート・サンドヴァル Pete Sandoval - ドラムス (1988-2013)
- 1965年5月21日生まれ。南米エルサルバドルのサンタアナ出身。テロライザーを経てモービッド・エンジェルに加入。ドラムは18歳の時に初めて触れ、ツーバスはモービッド・エンジェルに加入してから練習したという(テロライザー時代はワンバスでブラストを叩いていた)。粒揃い、正確さ、スピードなどで圧倒的なテクニックを持ち、デスメタル界を代表するドラマーである。その凄まじいドラムテクニックから、『The Commando』や『Pete the Feet』などの異名を付けられている(最も多い記述はPete“Commando”Sandoval)。その一方で、モービッド・エンジェルでは叙情的なインストも数曲書いている。
- 6th Album「Gateways to Annihilation」以降、作曲者がDTMで書いたドラムパートを忠実に演奏している。特にその切っ掛けとなった6thアルバムではシンバルの細かなタイミングに至るまで作曲者の意向を尊重した演奏を行ったとされる。来日時のインタビューで「ドラムマシーンだって超えたいよ」と発言している。2010年、腰の手術のため一時離脱。その後、脱退した[2]。
セッションメンバー
- トニー・ノーマン Tony Norman - ギター (2002-2006)
- ライブでのヘルプギタリスト。元MONSTROSITY。現在はBELLIGERENT、LOVER OF SIN在籍。再結成したテロライザーにも参加した。
- デストラクター Thor Anders "Destructhor" Myhren - ギター (2008- )
- ティム・イェング Tim Yeung - ドラムス(2010-)
- ピートの代理としてセッションメンバーとして参加。元ヘイト・エターナルのメンバーとしても知られる他、Decrepit Birth、ディヴァイン・ヘレシー、ペスティレンスなどで活動歴がある。
アルバム
1989年から2003年までは、イヤーエイク・レコードに所属していた。北米などでは、ジャイアント・レコードからリリースされたこともある。その後、シーズン・オブ・ミストに移籍した。日本盤は初期はトイズファクトリー、それ以降はビクターエンタテインメントより発売されている。
また彼等のアルバムの売り上げは非常に高く、2003年の時点でカンニバル・コープス、ディーサイドに次いでアメリカだけでも(CD,DVDを含め)総合445,147枚を売り上げている。
アルバム単体で言えば、『Covenant』がデスメタルアルバムとしては最も売れている(2003年の時点で127,154枚)。
- 1989年 Altars of Madness (邦題:狂える聖壇) (1st Album、2003年・2006年に再発)
- 1991年 Blessed are the Sick (邦題:病魔を崇めよ)(2nd Album、2003年に再発)
- 1993年 Covenant (3rd Album)
- 1995年 Domination (4th Album)
- 1996年 Entangled in Chaos (ライブアルバム)
- 1998年 Formulas Fatal to the Flesh (5th Album)
- 2000年 Gateways to Annihilation (6th Album)
- 2003年 Heretic (7th Album)
- 2011年 Illud Divinum Insanus (邦題:狂える神々) (8th Album)
- 1986年 Abominations of Desolation (1986年録音、1991年リリース)
意図的に、アルバム名の最初の文字がリリース毎に、「A」からはじまり順に「Z」へ向かっている。なお、1991年リリースの『Abominations of Desolation』は『Blessed are the Sick』リリース後に発売された、ピート加入前のデモ音源のリマスターである。本人たちは正式なアルバムとして認めていない。