ローランド

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ローランド株式会社テンプレート:Lang-en-short)は、日本の大手電子楽器メーカー。自らが創業したエース電子工業を退社した梯郁太郎が、1972年昭和47年)に大阪市で創業。長らく、本社・広報機能を大阪に、製造・研究開発拠点を静岡県浜松市に置いていたが、2005年平成17年)に、本社を浜松に移転した。

概要

初期には、電気楽器エレキギターエレキベース)の演奏時に音色を加工する機器「エフェクター」や演奏用スピーカーアンプ(ジャズ・コーラス JCシリーズ JC-120など)、音響ミキサーの製造を行っている。1973年(昭和48年)からはシンセサイザー電子ピアノなどの製造も手がけるようになった。1970年代後半には、富士弦楽器(現・フジゲン)との合弁で「富士ローランド」を設立し、ギターシンセサイザーの製造を開始した。

また、シーケンサー・マイクロコンポーザーMC-8(1977年発売)を発表して以来、コンピュータと電子楽器の連携に注力している企業であり、ヤマハシーケンシャル・サーキット等と共にMIDI規格を提唱した。同規格が制定された後、MT-32等DTMの製品を開発、鍵盤を持たないシンセサイザーである音源モジュールなどの機器を使用し、生演奏ではなくコンピュータにデータを入力することで楽器を演奏する手法が広まった。1990年代にはDTM向けに特化した音源モジュールとしてGS音源SCシリーズを発売した。

時代がデジタル主流になると、プロやハイアマチュア向けに拡張ボードで波形を供給できる音源モジュールJVシリーズXVシリーズを発表した。その後2,000年代に入ってからは、ライブ向けの軽量シンセサイザー、シーケンサー搭載のワークステーション型シンセサイザーなどの製品を展開している。

レコーディング機器としては、ハードディスクに演奏を記憶して楽曲作成ができるVS-880を発表した。その後関係会社のボスも、ギタリスト向け仕様のハードディスク/メモリーレコーダーを発売している。また90年代後半頃から10年間ほどは、クラブ/ダンスミュージック向けのハードウエア製品(MC-303/505系やSPシリーズのサンプラーなど)にも注力していた。2014年には同分野に再参入する形で、新製品 (AIRA シリーズ)を発表している。

この他楽器系では、電子ドラム(V-Drumsシリーズ)や家庭用電子ピアノなどの分野でも主なメーカーのひとつとして事業展開している。また楽器関連分野のほか、デジタルミキサーなどの業務音響機器やビデオ編集・配信関連機器の開発・製造、音楽教室の経営や音楽振興財団の運営なども行っている。

社名は、中世ヨーロッパの叙事詩であるローランの歌の主人公、ローランからとられている [1]。梯は、ローランド創業時に日本国外への展開を考え、どの国の言葉で発音してもよく聞こえるような2音節からなる響きのよい名前を探した。まず、梯は「R」から始まる社名にすることを決めた。これは、ローランド創業当時の電子楽器業界ではRから始まる社名があまり使われておらず、イニシャル1文字で社名を書いたときに都合がよいからであるという。そして、梯はこれらの条件にあてはまる単語として「ローランド」を選んだ[2]

2014年、アメリカの投資ファンド・タイヨウファンドと三木純一社長によるMBOを発表。これに対し、筆頭株主のローランド芸術文化振興財団がMBOのための株式売却に応じず[3]、ローランドの株主総会では創業者の梯と三木社長がMBOの是非を巡り激しく応酬する場面も見られた[4]が、最終的に発行株式の約82%を集めてMBOは成功となった。

ブランド

ローランドは、製品分野別にブランドを設ける「マルチブランド」展開をしている。

現行ブランド

Roland
メインとなるブランド。楽器全般(電子ピアノ/オルガン、シンセサイザー、電子打楽器、楽器用アンプなど)に広く使用。2010年(平成22年)9月以降は、レコーダー、業務音響機器、映像関連機器、コンピュータミュージック関連ハードウエアも使われている。
BOSS
各種エフェクター、ギター・ベース周辺機器、チューナーなどのブランド。
RODGERS (ロジャース)
大型デジタルクラシックオルガンのブランド。

販売終了ブランド

EDIROL by Roland
レコーダーなどに使われた旧ブランド。時期によりコンピュータミュージック関連ハードウェアや映像関連機器にも使用された。2010年(平成22年)9月、Rolandブランドに統合された。「EDIROL」は edit + Roland の合成語。
RSS by Roland
ライブミキサーなど業務音響機器の旧ブランド。2010年(平成22年)9月、Rolandブランドに統合された。RSSはRoland System Solutions の頭文字。同社の3次元音響処理技術「Roland Sound Space」もRSSと表記されるため混同されやすいが別語。
Cakewalk by Roland
コンピュータミュージック関連ソフトウエア商品のブランド。一時期は関連ハードウエア製品にも使用された。「by Roland」は、開発元の米Cakewalk社が、ローランドによる株式取得によりグループ会社となって以降付記されたもの。
2013年9月24日、ローランドはCakewalkをギブソンに売却することを発表。以降Cakewalk製品はギブソン傘下のティアック、TASCAMブランドで販売されている。

沿革

主要製品

アナログシンセサイザー

  • モジュラーシンセサイザー
    • System100
    • System100M
    • System700
  • Promars
  • SHシリーズ
  • Jupiterシリーズ
    • Jupiter-4
    • Jupiter-6
    • Jupiter-8
  • Junoシリーズ
    • Juno-6
    • Juno-60
    • Juno-106
    • Juno-106S
    • αJuno-1
    • αJuno-2
  • JXシリーズ
    • JX-3P
    • JX-8P
    • JX-10
  • ギターシンセサイザー音源ユニット
  • シーケンサー内蔵型シンセサイザー

デジタルシンセサイザー

他多数

リズムマシン

  • TRシリーズ
  • Rシリーズ
    • R-5
    • R-8
    • R-8M

ピアノ、オルガンなどの鍵盤楽器

打楽器、アコーディオン

  • Vドラム(電子ドラム)
  • Vアコーディオン(電子アコーディオン)

シーケンサー

  • アナログ出力デジタルミュージックシーケンサー
    • CSQ-100
    • CSQ-600
    • MC-8 マイクロコンポーザー
      同社初。1977年発売。8ch仕様で合計5400音記憶可能。定価1,200,000円。CPUはIntel 8080
    • MC-4
      FSKインターフェイスが追加されMTRとの同期レコーディングが可能となった。
      記憶媒体はカセットテープインターフェースを使用した。
  • デジタルキーボードレコーダーMSQシリーズ(MIDI系)
    • MSQ-100
    • MSQ-700
  • マイクロ・コンポーザーシリーズ(MIDI系)
    • MC-500
      1986年発売 MIDIシーケンサーである。入力2系統出力2系統。表示画面は20桁×2行のバックライト付きLCD液晶。シーケンスソフトはMRC、2DDフロッピーディスクから起動して使用する。リズムトラック+16ch×4トラック 四分音符あたりの分解能は96。CPUはZ80。後にMC-500からMC-500mkIIに基板交換する有料バージョンアップサービスが存在した。
    • MC-300
      1988年発売。定価98,000円。MC-500のローコスト版。入力1系統、出力2系統。
    • MC-500mkII
      1988年発売。定価180,000円。シーケンスソフトは大幅に改良されたSuper-MRC。リズムトラック+16ch×8トラック。CPUをZ80からHD64180Zに変更しメモリーを倍に増やしたモデル。
    • MC-50
      1990年発売。定価78,000円。MC-500mkIIのローコストモデル。このモデルからシーケンスソフトがROM化されている。内蔵しているROMはSuper-MRCとSuper-MRP。Super-MRCをROMで内蔵したため大幅に使い勝手はよくなったが、メモリーはMC-500mkIIより少ないためMC-500mkIIと同様に複数の曲をロードする場合問題がでるケースがある。
    • MC-50mkII
      1992年発売。MC-50にSMFの対応などしたマイナーチェンジ版。
    • MC-80
      1999年発売 定価99,800円 シーケンスソフトはSuper-MRCからシンセサイザーXP-60/XP-80にも搭載されているMRC-Proとなった。20桁X2行のLCD液晶から320×80フル・ドット画面に替わり機能が強化されたがリズムトラックの概念が廃止された。四分音符あたりの分解能は480。従来の2DDから2HDのサポート、HDDやZIPドライブの拡張や音源モジュールの内蔵が可能。
    • MC-80EX
      1999年発売。定価138,000円。EXはMC-80にSC-88PRO音源モジュールであるVE-GSProを内蔵したもの。

音楽制作関連機器

ミュージック・プロダクション・システム

  • MV-30「STUDIO M」
  • MV-8000

音楽制作ソフトウェア

2013年9月24日、ローランドは傘下にあった米Cakewalkをギブソンに売却することを発表。以降SONARはローランドから離れ、ギブソンが既に買収していたTEACのTASCAMブランド製品として展開されている[6]

音響関連機器

'RSS:業務用音響機器のブランド

音楽教室

1984年昭和59年)より「ローランドミュージックスタジオ」を運営し、2010年平成22年)に「ローランド・ミュージック・スクール」へ改称した。
2001年(平成13年)9月7日付けでテクニトーンを用いる日本ビクター松下電器産業の音楽教室部門 ビクター・テクニクス・ミュージック株式会社を買収し、社名をローランドミュージックスタジオへ改称の上「ローランドRMS音楽教室」へ再編。国内音楽教室業界においてヤマハカワイに次ぐ第3位の規模となる。[7]

国内8ヶ所でローランド直営センタースクールを運営し、2008年(平成20年)10月1日に「ローランド・サテラ」という直営スクールを開設した。それ以外は殆どが2001年(平成13年)にビクター・テクニクス・ミュージック(従前はビクトロンを用いたビクター音楽教室)から承継した、特約店が運営する教室である。

ローランド・ミュージック・スクール

開講科目

音楽教室主催イベント

オルガン・ミュージックフェスティバル
電子オルガンのコンクール。参加資格はローランド・ミュージック・スクール会員のみ。全国を6地区に分け、代表1名がファイナルへの出場権を得る。ファイナルは毎年10月ごろ、偶数年が東京、奇数年が大阪で開催されている。
ピアノ・ミュージックフェスティバル(旧称:ファンタスティック・ピアノコンクール)
ポピュラー曲中心のピアノコンクール。参加はローランド・ミュージック・スクール会員の他、一般も可能。全国を13地区に分け、代表1名がファイナルへの出場権を得る。ファイナルは毎年3月東京で開催されている。

ローランド・プロデュースショップ

ローランドがプロデュースする、楽器店内の専門コーナー。専門スタッフを配置し、ユーザーサポートの役割も担っている。

Planet
ローランド電子ドラム、シンセサイザー、コンピュータ関連機器を専門に展示・販売コーナー
Planet X
「Planet」をコンパクトにした展示・販売コーナー
Roland Foresta
ローランドのデジタルピアノを専門に展示・販売コーナー

主要工場・研究所

  • 本社工場(浜松市北区)
  • 都田工場(浜松市北区)
  • 伊左地工場(浜松市西区
  • 松本工場(長野県松本市
  • 浜松研究所(浜松市北区)

グループ会社

ボス株式会社(浜松市北区)
ギター、ベース用のエフェクターやレコーダーなどの開発。
ローランド ディー. ジー. 株式会社(浜松市北区)
大型カラープリンタ、3D、カッティング・マシン等のデジタル機器/コンピュータ周辺機器の製造販売。

海外ではヨーロッパ、南北アメリカ、アジア、オセアニアなど16の国と地域に生産・販売・物流の子会社を持つ。

ファイル:Roland Taiwan Electronic Music Corp. headquaters.jpg
Roland Taiwan Electronic Music Corp.(ローランド台湾子会社)

関連項目

脚注

テンプレート:脚注ヘルプ テンプレート:Reflist

外部リンク

テンプレート:Sister

テンプレート:大輪会
  1. ローランド社企業理念・スローガン
  2. 梯郁太郎『ライフワークは音楽 電子楽器の開発にかけた夢』ISBN 4276237718 音楽之友社、2001年、41頁。
  3. テンプレート:Cite news
  4. テンプレート:Cite web
  5. WAVE KIT Guitar Synthesizerが先行していた可能性もある。
  6. ローランド ニュースリリース
  7. 出典:2001年7月31日、ローランドニュースリリース