マメンチサウルス

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テンプレート:生物分類表 マメンチサウルス(ラテン語風の発音に基づき"マメンキサウルス"とされることも多い[1])は、中国大陸に生息していた最大級の竜脚類。体長20mから35m。発見地・中国四川省の「馬門溪」(ピンイン:Mǎménqī; マーメンチー)に因みこの名がある。

概要

極端に長い首をもつ竜脚類。マメンチサウルス属はやや不確実なものを含めると計7種記載されており、種によっては全長の半分以上を首が占める。アジア最大の恐竜の一つに数えられる。竜脚類頸椎は15個以下が普通であるがマメンチサウルスの頸椎は19個に達し、近縁のチュアンジェサウルスとともに竜脚類の中でも最多である。頸椎が16個を超える、とりわけ首が長いタイプの竜脚類化石中国に集中して産出する。古環境の研究から、当時東南アジアでは高木の森林が発達していたと言われ、首の長大化もこうした樹木の葉を食べることへの対応とみなす意見もあった。しかし頸椎の構造はマメンチサウルスがそれほど頭を高くもち上げられなかったことを示している。長い首は高所の葉を食べるためではなく、食物を探して歩き回るエネルギーのロスを極力減らすため、首を動かしてえさを探す方向に進化した結果かもしれない。

竜脚類には大型化と並行して首と尾も伸長する傾向が見られる。ただし尾は獣脚類鳥脚類にも長く発達した例があり、竜脚類だけの特徴とは言えない。また極端に長い尾の持ち主は竜脚類中でもディプロドクス類に限られる。だが、やはり首の長さではマメンチサウルスは比類がない。首の伸長を進化ととらえれば、シュノサウルスのように小型で原始的な竜脚類の首が短いことは納得しやすい。しかしディクラエオサウルス科は進化段階が高いにもかかわらず、首は比較的短い。後期ジュラ紀アルゼンチンに生息したブラキトラケロパンは、体に対する首の比率がディクラエオサウルス科の他種よりさらに40%近くも短く、どうにか地面に届く程度である。対して中期~後期ジュラ紀中国では、系統上の関係にかかわらず極度に首の長い竜脚類が集中的に分布していた。竜脚類の首には冷却器官としての役目もあるが、当時中国だけが突出して暑かった証拠はない。樹木の高さによるものではなかったにせよ、やはり首の長短には何らかの植生の違いが影響していると考えるべきであろう。

マメンチサウルスは以前ディプロドクス科に分類されていたことがある。これはほぼ一般的な特徴を備えた竜脚類であることと、実は頭骨が見つかっていなかったことにある。しかし近年頭骨のそろった骨格が見つかり、そのオメイサウルスカマラサウルスにも似た前後に短いという特徴から、新たに分類しなおされることになった。近年の研究ではディプロドクスカマラサウルスといった北米の有名な竜脚類(新竜脚類)の祖先と早い段階で分岐した原始的な系統の一員であると見なされている。

出典・脚注

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関連項目

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  1. 学名の読み方は研究者によってもラテン語読みや英語読みなど複数の発音が混在していることが多く、日本語に転写するときには混乱しやすい。学名は本来ラテン語で付けられるのだから、古典ラテン語読みを正式とする研究者も少なからず存在するが、実際には正しい読み方というのは現時点で定義できない。ちなみにMamenchisaurusはラテン語風に読めば"マメンキサウルス"だが、英語音を敢えて転写すると"マメンチソーラス"となる。"マメンチサウルス"の呼称は日本語独特のものであると考えられる。