ボール (ガンダムシリーズ)

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ボールは、アニメ機動戦士ガンダム』をはじめとするガンダムシリーズのうち、宇宙世紀を舞台とする作品に登場する架空の兵器(型式番号:RB-79)。

ボール

テンプレート:機動兵器

テンプレート:機動兵器

開発・投入時期
宇宙用作業ポッドSP-W003を改修し、180mm低反動砲を1門装備した戦闘用ポッド[1]。カラーリングは明るいラベンダー。一年戦争時は、ジムの火力支援用として大量に投入された。ボール部隊のみでの単独投入や、サラミス級巡洋艦に搭載されてパトロール艦隊を形成することも多かった[2]。開発時期はGMより早く、一部ゲームではザニーと同時期に完成している。
後述の水中用ボール「フィッシュアイ」の実戦投入時期は0079年8月下旬、先行量産型ボールはガルマ・ザビ戦死直後の10月上旬、OVA機動戦士ガンダム MS IGLOO -1年戦争秘録-』第3話では10月24日の戦闘がボールの初登場となる。
燃料電池駆動
機体の大きさも12.8mと、標準的なMSの約18mと比べると小ぶりで3分の2ほどしかない。一方、コア・ファイターなど核融合炉を持ちビーム兵器も装備する戦闘機と比べれば大型である。マジックハンド(マニピュレーター)は燃料電池で駆動され、オッゴと格闘戦を行ったこともある。熱核反応炉を持たないため帰還後の冷却が必要なく、モビルスーツ (MS) 搭載設備のない艦での運用が可能なのも利点であった。ただし熱核融合炉を持たない分、推進剤噴射速度が劣り(推進剤を高温で燃焼できないため)推力低下で機動性が低いことや比推力低下で推進剤の燃費が悪い。
核融合炉でないため、出力不足で稼動肢を激しく動かせないこと[3]と、電力不足(燃料電池の充電容量の限界)で電池を使いきってしまう(核融合炉は完全に無限ではないが、戦闘時の消費電力としてはほぼ無限と言えるだけの電力を確保できる)ので、AMBACもできないとされている。
だが、航宙戦闘機のセイバーフィッシュやトリアーエズではできない後退もできるので、ジム完成までの連邦軍の戦術の幅を大きく広げることに貢献した。
アウトレンジ攻撃
ただし、センサー系に関しては元が作業用ポッドであり、ガンタンクのキャノン砲を流用しているだけあって、ザクとは比べ物にならないほど長く取られている。センサー有効半径はGMと同等以上、最低でもガンキャノンと同程度またはガンタンクと同程度は取られているようである。これはミノフスキー粒子散布下を前提としつつもザクにアウトレンジ攻撃を加え、さらにザクの奥にいる敵艦艇をも攻撃できる利点でもある。作業用ポッドは宇宙のコロニー修理(故障箇所発見、デブリを回避、細かい修理作業など)などで望遠など光学系センサーが重要であることが求められるので、それの流れを汲んでいるだけのことはある。
戦闘ではこの長い射程と強力なキャノン砲を生かして、GM1機にボール3機を基本編制としてGMがシールドを構えながら前衛を担当し、ボールがその後ろから火力で支援するという役割分担が考えられていた。
棺桶と呼ばれる所以
MSとして人型を成しているジムに比べて、眼球に似た球体の左右下部に2本の作業用アームと、天頂部に唯一の武装である180mm低反動砲を付けたその姿と低い戦闘力から、テンプレート:要出典範囲、別名「丸い棺桶」[4]
設定の変化
現在と昔とではその設定が大きく変化しており、1990年代以前は、製造に手間とコストのかかるジムを支援するべく、数で押すために大量生産された低性能安物MSというものだった。プラモデルの商品名においても「1/144地球連邦軍量産型モビルスーツ ボール」と明記されている。同時に、備砲はガンタンクの「タンクキャノン砲」の流用であり、火力だけなら決して周囲のMSにひけをとらない強力な機体とされていた[5]。テレビ版第36話では、ボールのパイロットが「後はリック・ドムザクしかいない、やるぞ」と、ジオン軍のMSを軽視した発言をしている。OVA『機動戦士ガンダム MS IGLOO -黙示録0079-』第2話では、ジオン軍のモビルポッド「オッゴ」と交戦したボールパイロット達が、敵がMSではないことを知って「助かった」と安堵している。
機体の区分をめぐっては他にも解説されており、『機動戦士ガンダム ギレンの野望』などのゲーム作品では「モビルアーマー (MA)」とされることがある。OVA『MS IGLOO -黙示録0079-』では、当機やジオン軍のオッゴを「モビルポッド」と呼称している。プラモデル「HGUCボールツインセット」では「戦闘ポッドであり、簡易型MS」と記述されている。「機動戦士ガンダム 連邦VSジオンDX(PS2版)」においてはミッションモードのジオン軍サイドで連邦軍のボールを撃破するとMAとしてカウントされ、連邦軍サイドでジオン軍が鹵獲運用しているボールを撃破するとMSとしてカウントされる。連邦軍サイドでは受領するときにレビル将軍が「モビルスーツと言うほどの物ではないが、我々はこれでこの戦争に勝つつもりだ」と言っているが、連邦軍はMSとして扱っていたようである。

劇中での活躍

ソロモン攻防戦で、ソーラ・システムによる突破口へ、ジムとともに大量に投入された。アニメ本編ではMAビグ・ザムのビームで蒸発したり、ザクIIに蹴飛ばされてジムと衝突して共に撃破されるなど、主にやられ役として描写される。

小説版『機動戦士ガンダム』では形状はアニメ版と変わらないが、マジックハンドにビームライフルビームサーベルを携帯しており、兵士らから「ミスター・ボール(ボールさん)」という愛称で呼ばれている。

OVA『機動戦士ガンダム MS IGLOO -1年戦争秘録-』では、ルナツーパトロール艦隊所属のオハイオ小隊が使用する凶悪なシャークトゥースペイント(ゲーム『SDガンダムGジェネレーション スピリッツ』では「シャークマウスボール」と呼称)を施している機体がパプア級補給艦艦隊を襲撃する。また、オデッサの敗退により、宇宙に脱出してくるジオン軍地上部隊のHLVを、ジムと共同で次々に血祭りにあげていくボール部隊が登場。特に前者はこれまでの映像作品にはなかった機敏な動きをみせつけた。しかし、善戦むなしく全滅している。

漫画『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』では、ソロモン戦でパブリク突撃艇と共に活躍し、ハヤト・コバヤシ兵長もパイロットとして搭乗、ザクレロ相手に戦うが、デミトリーの猛攻に遭い緒戦では中破、帰艦している。また、ハヤトはキャノン砲でなく、二連機関砲を備えた機体で再出撃するが、カイ軍曹に棺桶と馬鹿にされる。

一年戦争後も連邦軍で運用されていたが、全ての機体がグリプス戦役前に一線を退いている。また、一部の機体は武装を外されて民間に払い下げられている[6]

原型

スペースポッド

モビルスーツバリエーション (MSV)』から(形式番号:SP-W03)。

スペースコロニーでの作業用に用いられた作業機であり、特に武装はしていない。作業員より少し大きい程度の小型機であり、これをMSとの戦闘に見合うようスケールアップし、武装したものがボールである。

試作機

『MSV』での設定(形式番号:RX-76)。

ディテールはTV版のものと変わらない(むしろこの資料では大河原邦男によるディテールアップ版をRB-79と呼んでいる)。

バリエーション

ボールK型

OVA『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』に登場(型式番号:RB-79K)。

第1話でテリー・サンダースJr.の乗る先行量産型ジムの救援のために、シロー・アマダが志願してこの機体で出撃した。 無謀な出撃と思われたが、シローは中破したジムを下がらせ、装備を生かして敵機の宇宙用高機動試験型ザク1機と相打ちにまで持ち込んだ。

この時の機体は上部に連装フィフティーンキャリバー(弾頭口径不明)やウィンチ・ワイヤーを装備し、マニピュレーターを4本に増やしたオレンジ色の仕様であった。フィフティーンキャリバーの代わりに連装180mmキャノン砲を装備した機体もある。

近接戦闘型ボール

OVA『機動戦士ガンダム MS IGLOO -黙示録0079-』に登場した、キャノン砲の代わりに連装機関砲を装備したボール。

終戦も間近となった宇宙世紀0079年12月30日、月面基地グラナダ上空の宙域では標準型の他、本機体が第603技術試験隊の駆逐ポッド「オッゴ」と交戦している。また続くア・バオア・クーでの決戦ではMAビグ・ラングと交戦、アームに捕えられた1機が投げ飛ばされ僚機2機と衝突、一気に3機が失われた。これ以外にも少なくとも3機がビグ・ラングにより撃破されている。

ボール改修型

OVA『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』に登場(型式番号:RB-79C)した、後期生産型のボール。

物語後半、コロニーが地球への落下軌道をとり、これを阻止するべくコロニーの予想軌道上にソーラ・システムIIが展開されるが、その作業と警備のため使用されていたと思われる。作業用アームにサブアームの増設や、姿勢制御用スラスターの追加などの改造が施されている。

本来は雑誌企画『ガンダム・センチネル0079』に登場したボールをアニメ作画用に線情報の整理をしたもので、本機デザインはボールK型や近接戦闘型ボールなど後発作品のボールに影響を与えた。

フィッシュアイ

テンプレート:機動兵器

漫画『機動戦士ガンダム MS IGLOO 603』に登場。地球連邦軍の水中用戦闘ポッド。

一年戦争勃発後、ジオン公国軍による地球侵攻作戦の緒戦で大敗を喫した地球連邦軍にとって、地球上の約7割を占める海洋における制海権の奪回は、制空権の確保をも凌ぐ重要課題であった。その戦局を打破すべく、地球連邦軍は新たな水中戦力として支援兵器を送り出すことを決定する。そこで地上での戦闘ポッド「ボール」の生産ラインを急遽変更し、一時的に生産されたのが本機である[7]

本体はボールをそのまま流用しており、水中推進システムとして後部に大型ダクト型式の強力な推進器を装着、機体下部に大型クロー・アームを装備する[8]。ビーム兵器の使用が海中では困難であることから本来キャノン砲を装備する頭頂部にリニア式のロング・スピアを装備し、巨大なクロー・アームは本体を凌駕する程の質量を持つ[8]。フィッシュアイは機動性と静穏性に優れた水中用兵器として戦場に登場したが、航続距離には恵まれず、母艦となる海洋艦または潜水艦を必要とする機体であった[9]

本体部に大掛かりな改装は行われていないが推進器と巨大なアーム・クローにより、ジオン公国軍のMAにも似たシルエットとなっている。カラーリングは明るいラベンダー。

劇中での活躍
漫画『機動戦士ガンダム MS IGLOO 603』の第6話「南海に竜は潜む(たたずむ)」に登場する。時期は0079年8月22日[10]。ジオン公国軍の新兵器、試作水中ビーム砲・エーギルの試験中に試験部隊を襲撃する。

ボールF型

メカニックデザイン企画『MSV-R』に登場(型式番号:RB-79F)。

ボールの実戦参加機の高い損耗率を軽減するため、連邦首脳部の改修要請により装甲を強化したボール。そのため、ボール増加装甲タイプとも呼ばれた。

コクピット全面をはじめとする機体各所に装甲板が追加され、後方にはプロペラントタンクとスラスターを装備したブースターパックが増設されるなど防御・機動性能の向上が図られている。

本機は、ボールの生産ラインを活かした生産性の高さや、配備済みの機体への改修作業の容易さが利点であり、実戦において予想をされた性能を示したため、パイロットからの評判も良かった。

ボールG型

劇場アトラクション『ガンダムクライシス』に登場(型式番号:RB-79G)。

武装であるキャノン砲を廃し巨大なクレーンアームを装備、作業用アームにはサブアームが増設されるなど、より作業用としての性能を高めた緑色のボールで、一年戦争末期に開発された。主に工事現場で重宝された。

漫画『GUNDAM LEGACY』では、宇宙世紀0084年にジオン残党が開発した、惑星間巡航用核パルス推進ブースター「シルバー・ランス」に乗り付けて内部から起動停止させるため、アンカーを装備した当機が使用された。

ボールM型(ボール機雷散布ポッド装備タイプ)

メカニックデザイン企画『MSV-R』に登場[11](型式番号:RB-79M)。

連邦軍は当初、ボールの大量配備とアウトレンジからの長射程の弾幕によって公国軍MSに対抗しようとしたが、公国軍MSの運動性と機動性には通用せず、貧弱な防御力と運動性で被害は一方的だった。本機は連邦軍の運用変更の一環として産み出された機体である。

背面から左右に伸びたロッカーに片側24基・両方で48基のMMB-05浮遊機雷を装填し、上部の砲塔は機雷コントロールユニットに換装されている。機雷ロッカーは移動時には後方にたたむ事が可能で、マニピュレーターも通常型に比べて小型化されている。その形状から「ロッカー付き」「ランチボックス」の愛称で呼ばれていた。

試験運用は宇宙世紀0079年10月頃に開始され、公国軍のパトロール艦隊の定期航路に対して機雷散布し、大きな戦果をあげていたが、連邦軍が攻勢に転じてからは通常型に戻されていった。

133式ボール

漫画『機動戦士クロスボーン・ガンダム』に登場。既にMSが兵器として確立してから半世紀以上経過している宇宙世紀0133年、マザー・バンガードが地球圏に到達した際に、これを迎え撃った地球連邦軍の戦力として登場した。この時の機体は外見から3連装の低反動砲を装備した機体と思われるが、作中ではあくまで背景のモブキャラであるため、戦闘能力が一年戦争時の物からどれほど上がっているかは不明である。

改造型ボール(Bガンダム)

漫画『機動戦士クロスボーン・ガンダム スカルハート』に収録されたエピソード「バカがボオルでやってくる!」に登場。

一年戦争時にウモン・サモンが搭乗し、巨大なガンダム顔に偽装されているのが特徴。制御OSが対応できていない上、重量の増加により大変バランスは悪かったが、ジオンのパイロットが「巨大なガンダム」に恐怖したことと、自称ニュータイプであった彼の能力により、リック・ドムを6機撃墜する戦果を挙げた。ただし、アムロ・レイの戦果があまりにも目覚しかったため、上層部に注目されることはなかった。一応、ガンダム顔の部分は強制排除が可能。

劇中では、ジオン側に当機がRX-78 ガンダムの頭部だとの誤解を与えたようで、機体の比率からガンダムの全長を40メートルと推測し対抗する為にジオング(厳密にはパーフェクト・ジオング)の建造が計画されたり、ソロモン攻防戦に参加したアナベル・ガトーは、「浮遊するガンダムの頭」の情報をガンダム撃墜と誤解して主戦場を大きく離れたために、アムロが搭乗する本物のガンダムが容易にソロモンに接近できたなど、戦局に少なからず影響を与える結果となったとされるが、これらはあくまで噂の範疇に過ぎない。

なお、当機は作者の長谷川裕一によって「機動戦士Bガンダム」と銘打たれている(ただし、万が一「Bガンダム」が登場したら改名するとのこと)。また、「ホビージャパン」「電撃ホビーマガジン」の模型誌で相次いで立体化され、「電撃ホビーマガジン」の模型作例は、長谷川に寄贈されている。また、カードゲーム「ガンダムウォー」では「機動戦士Bガンダム」というカードで登場。このカードの上からゴルフボールを転がし、ゴルフボールに触れた全てのカード(このカードも含む)を破壊する効果を持つ。ただしコラボレーションカードなので、公式大会では使用できない。

パロディ

トニーたけざきのガンダム漫画

シャア専用ボール(型式番号RB-79A12)が登場する。ギャグ漫画でありながら、シャア専用ボールはカトキハジメによる3DCGイラストが起こされている。また模型を使用した漫画だったため、MG「RB-79 ボール Ver.Ka」のキットから改造した立体も存在する。なお、ドズル、マ・クベ、ランバ・ラルの専用機もある。 テンプレート:Main

脚注

テンプレート:脚注ヘルプ テンプレート:Reflist

参考文献

関連項目

テンプレート:宇宙世紀
  1. #IGLOO完全設定資料集p.136
  2. #IGLOO完全設定資料集p.137
  3. OUT 9月号増刊 宇宙翔ける戦士達 GUNDAM CENTURY」』45ページより。
  4. ガンダムビルドファイターズ』第3話Aパート、ガンプラバーのマスターの話より。
  5. 『講談社ロボット百科[1]『機動戦士ガンダム』(1980)による。
  6. 『機動戦士ガンダム0083 ジオンの残光』の冒頭ではカラーリングがオレンジの機体が登場する。
  7. #IGLOO完全設定資料集p.138。ボールの生産ラインは宇宙・地上の双方にあったとされる。
  8. 8.0 8.1 #IGLOO完全設定資料集p.140
  9. #IGLOO完全設定資料集p.138
  10. #IGLOO完全設定資料集p.158
  11. 厳密には漫画『機動戦士ガンダム MSV-R ジョニー・ライデンの帰還』で先に登場している(2010年8月号)。『MSV-R』は2010年10月号。