ホンダ・インサイト

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

インサイト(Insight)は、かつて本田技研工業が生産、販売したハッチバック型のハイブリッドカーである。

2006年7月に一度生産・販売を終了したが、約2年7か月後の2009年2月に、コンセプトを大幅に変更し新型ハイブリッド戦略車として復活したが、2014年3月に生産・販売を終了した。

初代 ZE1型(1999 - 2006年)

テンプレート:Infobox 自動車のスペック表

概要

1997年東京モーターショーで発表されたコンセプトカーJ-VX」を市販車にアレンジし登場した「インサイト」は、世界最高水準の低燃費を目指し、かつてのCR-X(特に2代目)を彷彿させるコンパクトなハッチバッククーペ型の2人乗りで、特徴的な外観であるレーシングカーさながらのリアホイールスカート[1]を採用するなど、徹底した空気抵抗低減のためのデザインが施され、Cd値は0.25を誇っていた[2]。このようなデザインは後に発表されるハイブリッドカーに大きな影響を与えた。

車体は、NSXの技術をさらに進化させたアルミフレーム[3]で、フロントフェンダー等には初代CR-Xと同様に樹脂材が採用されている[4]

搭載される原動機は、ECA型 995cc 直列3気筒 SOHC VTECエンジンとアシスト用薄型DCブラシレスモーターで、ホンダはこのシステムにIMAという名前をつけている。走行時には必ずエンジンが動作しているという点が、広義の「パラレル型(構造的にはシリアル(直列接続)ではある)」ハイブリッドシステムである。トランスミッションは、5速MTCVTが用意される。

歴史

  • 1999年
    • 9月6日 - 発表された(発売は11月1日)。燃費は当時の量産ガソリン車として世界最高の35km/L(10・15モード)だった[5]。税制の面でも優遇される。
  • 2003年
  • 2004年
    • 10月14日 - 2度目のマイナーチェンジが行われた。IMAシステムの効率が向上し、MT車は空力特性を改善させるアンダーカバー類が装着されるとともに、タイヤ空気圧が240kPaから260kPaに変更された結果、燃費が36km/L(10・15モード)に向上した[6]
  • 2006年
    • 7月 - 生産を終了した。販売台数は世界全体で約1万7,000台で、うち日本国内は約2,300台であった[7]。その後、2代目インサイトが発売される2009年までの間、日本で販売されるホンダのハイブリッドカーは、シビックハイブリッドのみとなっていた。

テンプレート:-

2代目 ZE2/3型(2009年 - 2014年)

テンプレート:Infobox 自動車のスペック表

概要

先代とは、ハッチバックの形状やリアのエクストラウィンドウなどは共通だが、5人乗り5ドアであることやリアホイールスカートが無いなどの点が異なる。先代の生産終了から多少ブランクが空いているとは言え、同一車名でのフルモデルチェンジでボディ形状まで大幅に変化した稀なケースである。当初は別の車名を付ける予定であったが、北米や欧州の現地法人の意見や現地での「インサイト」という言葉から受けるイメージを考慮し、「インサイト」としたという経緯がある。 スタイルはライバルの「トヨタ・プリウス」に対抗するために5ドアハッチバックになった。プリウスが3ナンバーなのに対し、こちらは5ナンバーに留まった。

[8]。コストダウンのため初代のアルミフレームボディを採用せず、既存のフィットなどのコンポーネントをベースに極限まで軽量化を施した。同社他機種と部品をおよそ1万点共通化し、ニッケル水素バッテリーは初代の20本(7.2V×20本=144V)、2代目シビックハイブリッドの11本(14.4V×11本=158V)に対し、性能を向上させた結果7本(14.4V×7本=100V)までに削減するなど徹底した効率化を図った。その結果、価格は北米市場でベースモデルで2万ドル、日本市場でベースグレードとなる「G」はオーディオ・レスながら車体価格180万円(消費税込189万円)で発売された。

信号待ちなどで停車する時にアイドリングを自動で停止する「オートアイドルストップ」を含むホンダIMAを駆動システムの基本とし、実用燃費の向上を目指してエコアシスト(エコロジカル・ドライブ・アシスト・システム)が全車に標準装備されている。これは、既に4代目オデッセイ等で採用されているECONモード[9]に加え、アクセルやブレーキの操作でスピードメータの背景色であるアンビエントメーターの色が変化してリアルタイムに燃料消費状況を意識させることで低燃費運転に寄与する「コーチング機能」と、メーター内のマルチインフォメーション・ディスプレイ画面内で燃費運転をリアルタイムで採点し、リーフのアイコンでその日のエコドライブ度やその日までの累計のステージ表示を知らせる「ティーチング機能」を備えている。この「ティーチング機能」は、オプションの「Honda HDDインターナビシステム」と組み合わせることで、より詳しい情報を知ることもできる。

搭載されるIMAを構成するエンジン部分はLDA型 1,339cc 直列4気筒 SOHC i-VTEC i-DSIエンジンで、シビックハイブリッドと同型式であるが、i-VTECは可変シリンダーシステム(VCM)としてのみ機能する。VCMにより全気筒を休止させ、2代目シビックハイブリッドと同様に、モーター動力のみによる走行も多少可能になった。組み合されるトランスミッションは、初代とは異なりCVTのみである。カリフォルニア大気資源局(CARB)が認定するAT-PZEV(Advanced Technology - Partial Credit Zero Emission Vehicle:ゼロ排出ガス車として部分換算される先進技術搭載車)の条件を満たすためにはモーター出力が10kW以上でなければならないために、バッテリは7本で電圧は100.8Vとされている。

グレードは標準モデル「G」、プロジェクタータイプのHIDヘッドランプ、本革巻ステアリングホイール、リアセンターアームレストなどを装備した上級仕様の「L」、7スピードモード付ホンダマルチマティックS[10]やアルミホイール、VSAを装備したスポーティモデル「LS」の3グレードが用意された。また、インサイトには高級車で採用された静粛性の優れたガラスが採用された。Cd値は0.28である[11]

2008年以降発売される地球環境を意識した車両を、ホンダでは「Honda Green Machine」と称し、インサイトは「グリーンマシーン1号」である。[12]Honda Green Machine Special Siteには、筧昌也が監督したショートムービーが公開されている。2008年12月11日から12月13日までの3日間、東京ビッグサイトで開催されたエコプロダクツ2008に出展され、2008年12月22日から2009年1月19日までホンダ本社で行なわれるHonda Green Machine企画展には、CR-Z コンセプトFCXクラリティと共に展示された。

歴史

  • 2007年
    • 7月18日 - 年央社長会見で新型ハイブリッド専用車を2009年に発売すると発表した。
  • 2008年
  • 2009年
    • 1月11日 - 「2009年北米国際自動車ショー」では、市販仕様が世界初公開された。
    • 2月5日 - 発表された(発売は翌2月6日)。月間目標販売台数は5,000台と発表されている。
    • 3月24日 - 北米地域でも発売を開始。価格は19,800ドルからとなる。
    • 5月11日 - 2009年4月度の登録車販売台数が2月と3月の合計台数を上回る1万481台となり、主力車種であるフィットを抜き、ハイブリッド車では初の首位を獲得した。ちなみに、フィットも同月で2位をつけたため、登録車販売台数の1位と2位をホンダ車が独占したのも初めてのことである[15]
    • 10月1日 - 仕様変更がおこなわれた。ボディカラーに新色が2色 追加され、10月中旬の生産より適用された。
  • 2010年
    • 4月5日 - 標準モデル「G」をベースに「リンクアップフリー」対応Honda HDDインターナビシステム、コンフォートビューパッケージ、プロジェクタータイプHIDヘッドランプ、ETC車載器、アームレスト付センターコンソールボックス等を装備した特別仕様車「HDDナビ スペシャルエディション」が発売された。ボディカラーはオプションカラーは専用色を含む全3色が設定された。
    • 警察庁では2009年度予算で20台の白黒パトカーを全国数か所の警察に警らパトカーとして導入した。さらに、私服用無線車(捜査用覆面パトカー)として500台程度が全国の都道府県警察に導入された。
    • 10月8日 - 一部改良がおこなわれた。サスペンション特性の見直しを行い、操縦安定性と乗り心地を向上したほか、エアコンアウトレットとドアライニングにシルバー加飾を施し、センターパネルのデザインを変更した。また、「G」にはマップランプとアームレスト付センターコンソールボックスを、「L」にはクルーズコントロール(照明付ステアリングスイッチ付)とウォッシャー付間欠リアワイパー(リバース連動)を、「LS」には「L」の追加装備に加え、本革巻きセレクトレバーをそれぞれ追加装備した。なお、「LS」はタイヤサイズを16インチから15インチに変更して燃費を30.0km/L(10・15モード燃費)に向上したほか、本革シート&専用インテリアのオプション設定を追加した。
    • 10月19日 - ホンダコリアを介して韓国市場で発表された(発売は翌11月5日)。[16]。グレードはベースモデルである「インサイト」とアルミホイールやドアミラーウインカー等を装備した「インサイト プラス」の2種。前者は日本仕様の「G」と「L」の中間、後者は「LS」に相当するが、レンズサイド前後にリフレクターが入ったり、オーディオが標準装備(国内仕様は全車オーディオレス)になるなど細かい点で異なる。
  • 2011年
    • 10月27日 - 同年10月1日よりティーザーサイトにて予告していたマイナーチェンジが正式発表された(発売は11月11日)。エンジン及びIMAの改良により、力強い走りはそのままに、燃費を向上(JC08モード走行で27.2km/L)するとともに、吸音・遮音性能が向上されたことで高い静粛性も実現した。バンパーも、燃費性能の寄与とワイド感を演出するデザインに改良された。サスペンション特性の見直しとVSAの標準装備により操舵安定性も高められ、リアシート形状等が見直されたことで後席の快適性や後方視界の改善が図られた。併せて、CR-Zに搭載されている力強い加速性能や高速走行時のゆとりある走りを実現するLEA型 1.5L 直4 SOHC i-VTECエンジンを搭載した「エクスクルーシブ」を追加した。本グレードでは、LEDアクセサリーランプを内蔵したフロントグリルや専用フロントバンパー、黒木目や高輝度シルバーラインを備えた高級感ある専用インテリアなども採用した。また、ステアリング操作で7速のシフトチェンジが行えるパドルシフトを備えている。最上級グレードの「XLインターナビセレクト」ではHondaインターナビと専用機器でのデータ通信が無料になるリンクアップフリーも標準装備されている。なお、グレード体系が一部見直され、1.3Lモデルは「G」「L」の2種(「LS」は廃止)、1.5Lモデル「エクスクルーシブ」は「XG」「XL」「XLインターナビセレクト」の3種となった。この1.5Lモデル追加により、ハイブリッド専用車としては史上初めて複数のパワートレーンを持つ車種となった。
  • 2012年
    • 中国国内においても発売される予定である[17]
    • 12月 - 韓国での販売を終了した。
  • 2013年
    • 5月16日 - 一部改良が行われた。全タイプにウォッシャー付間欠リアワイパー(リバース連動)を標準装備するとともに、「L」・「XL」・「XL・インターナビセレクト」はHondaスマートキーシステム用キーを1個追加。Hondaインターナビ(「XL・インターナビセレクト」に標準装備、左記以外の全タイプはメーカーオプション)にUSBジャックを装備した。さらに、「エクスクルーシブ」はフロントグリル、サイドシルガーニッシュ、リアライセンスガーニッシュをスモークメッキ化し、インテリアは高輝度ダークシルバー塗装などで色調を統一した。併せて、「XL・インターナビセレクト」を除く全タイプにはリアカメラやETC車載器など6つの装備をひとまとめにし、ディーラーオプションのHonda純正ナビを手軽に装着できる「ナビ装着用スペシャルパッケージ」を新たに設定した。ボディカラーには新色が追加された。
  • 2014年
    • 2月26日 - 搭載しているHVシステムが旧型化し、販売台数が低迷したとして2月末で生産を終了することが発表された。
    • 4月1日 - 3月で販売を終了したことが公式サイト上でアナウンスされ、同サイトのラインアップからも消滅(「今までに販売したクルマ(中古車カタログ)」に移動)。

グレード

1.3Lモデルは「G」と「L」、1.5Lモデルの「エクスクルーシブ」は「XG」、「XL」、「XL・インターナビセレクト」が設定されている。

インサイト

G
1.3Lのベースグレード。セキュリティーアラーム、マルチ・インフォメーション・ディスプレイ、電波式キーレス・エントリー、フルオート・エアコン・ディショナー、オーディオレス(2スピーカー)、プロジェクタータイプ・ハロゲンヘッドライト、VSA、前席エアバッグ等が標準装備されている。価格は193万円
L
「G」に、HONDAスマートキーシステム、クルーズコントロール、プロジェクタータイプ・ディスチャージヘッドライト、ウォッシャー付間欠リヤワイパー、LEDドアミラーウインカー、本革巻ステアリング・ホイール、リッド付フロントコンソールボックス、照明付パワードアロック・スイッチ、ラゲッジ・ルーム・ランプ、ハーフ・シェイド・フロント・ウィンドゥ、などの装備が追加された上級グレード。価格は213万円

インサイト エクスクルーシブ

XG
エクスクルーシブのベースグレード。装備は1.3L「G」とほぼ同じであるが、エクスクルーシブのみの装備として、パドルシフト、エクスクルーシブ専用インテリア、4スピーカー(オーディオレス)、ラゲッジルームランプ、エクスクルーシブ専用エクステリア、シャークフィンアンテナ、LEDドアミラーウインカー等が装着されている。価格は208万円
XL
「XG」にコンビシート&専用インテリア、本革巻ステアリングホイール、リアセンターアームレスト、バトル・シフト、クルーズコントロール、スマートキーシステム、15インチアルミホイール、ディスチャージヘッドライト、LEDアクセサリー・ランプ内蔵フロントグリル、ハーフシェイドフロントガラスなどを追加装備した標準グレード。価格は225万円
XL・インターナビセレクト
「XL」に、HONDAリンクフリー通信機付きインターナビ、トノカバー、本革巻セレクトレバー、16インチ・アルミホイール、フォグライト、親水ヒーテッドドアミラー、フロント・ドア撥水ガラス等の装備が追加された最上級グレード。価格は256万円

北米仕様

  • エンジンは日本仕様と異なり、1.3Lのみでエクスクルーシブの設定がない。
  • グレード構成にも違いがあり、Insightが「G」、LXが「L」、 EXが「XL」、EX・ナビゲーションが「XL インターナビ・セレクション」に相当する。
  • ボディーカラーは全部で8色。内装色は、Insightはグレーのみ、LX、EXは、グレーとブラックがある。

搭載エンジン

車名の由来

  • Insight:英語で「洞察力・見抜く力」を意味する。「ハイブリッドカーの本格的な普及という新しい時代の到来を洞察する車」という意味が込められている。

受賞歴

生産

初代はかつてNSX専用の生産工場として建設されたホンダ栃木製作所高根沢工場で、NSXやS2000とともに生産されていた。2004年4月にホンダの完成車一貫生産構想に基づき全3車種とも高根沢工場での生産を中止し、ホンダ鈴鹿製作所の少量車種専用ライン、TDラインへ生産を移管された。その後、2006年7月に生産を終了した。

2代目は鈴鹿製作所で生産される。

脚注

  1. (『90年代国産車のすべて』三栄書房、89頁参照)リアのホイールハウスを覆う部品で、後輪の上側半分がボディに隠れている。リアホイールスパッツという呼び方をすることもある。
  2. ボディ細部にわたる徹底的な空力処理 このデザインは、風の流れから生まれた
  3. アルミの特性を、どこまで活かせるか
  4. 軽量でありながら、高い曲げ剛性、ねじり剛性を実現
  5. 量産ガソリン車 世界最高燃費のパーソナルハイブリッドカー「インサイト」を11月より発売
  6. ハイブリッドカー「インサイト」の燃費を向上し発売
  7. Hondaハイブリッド車が世界累計販売30万台を達成
  8. テンプレート:Cite web
  9. エンジンやエアコンの燃費優先運転を行う。インサイトではこれに減速時の回生充電量を増加する機能を追加
  10. シフトパターンから「L」がなくなり、「S」は自動復帰しないパドルシフトのマニュアルモードになる。
  11. テンプレート:Cite web
  12. 「グリーンマシーン2号」は、2代目シビックハイブリッド。
  13. 10月2日から10月19日まで開催。
  14. 2009年に発売予定の新型ハイブリッド専用車「インサイト」のコンセプトモデルをパリモーターショーで発表
  15. テンプレート:Cite web
  16. ホンダのハイブリッド車「インサイト」、韓国で発売 WOW! Korea 2010年10月19日
  17. 2011年広州モーターショー出展概要
  18. テンプレート:Cite web
  19. 「インサイト」が2009-2010日本自動車殿堂カーオブザイヤーを受賞 Honda ニュースリリース 2009年10月29日
  20. 2009年最大のヒット商品は「プリウス&インサイト」―日経トレンディ誌が発表 - 日経トレンディネット 2009年11月2日
  21. インサイト、「2009年度グッドデザイン金賞」を受賞 Honda ニュースリリース 2009年11月6日
  22. 「インサイト」が2010年次 RJCカー オブ ザ イヤーを受賞 Honda ニュースリリース 2009年11月18日

関連項目

テンプレート:Sister

外部リンク

テンプレート:ホンダ車種年表 テンプレート:Honda テンプレート:自動車