ベレッタM92

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テンプレート:出典の明記 テンプレート:Redirect テンプレート:Infobox ベレッタ92:Beretta 92)[1]は、イタリアピエトロ・ベレッタ社が生産・販売している自動拳銃

1985年から『M9』の名称でアメリカ軍に正式採用されており、2006年には45万丁が追加調達されるなど、2014年現在も現役にある。


概要

世界中の警察軍隊で幅広く使われており、現在はコルト・ガバメントに代わりアメリカ軍の制式採用拳銃になっている。なお、米軍では「M9」のモデル名で呼ばれている[2]

正式名称はピエトロ・ベレッタ92。より詳細には、92S・92SB・92SB-F(92F)・92FS など複数のモデルが存在する。米軍のM9は採用当初は92SB-Fであったが、今は92FSに切り替わっている。現在最も一般的なモデルは92FSで、後述のように外見上の違いがほとんどないことから、これが92Fと呼ばれることも多い[3]

特徴

ワルサーP38の流れを汲むプロップアップ式ショートリコイル機構を持ち、複列弾倉(ダブルカラムマガジン)に15発の9x19mmパラベラム弾を装填する。

同社の拳銃の特徴である遊底(スライド)の上面を大きく切り取ったデザインは、イタリアの銃器デザインのひとつの到達点とも呼ばれ、見た目の美しさから映画TVドラマアニメなどでも主人公などの使う拳銃として、よく登場する。 作動方式には前作のベレッタM1951で採用したワルサーP38を参考にしたプロップアップ式ショートリコイル機構を採用しているが、これはこの特徴的なスライド形状により他の方式を取れなかったという面もある。しかしこのスライドは、上部を切り取ったことにより軽量になり、スライド後退時の衝撃を和らげ、排莢口の拡大によりジャム(弾詰まり)を防ぐ効果もある。この形状により耐久性があまり無さそうに見えるが、適切な熱処理を施すことで十分な強度を持たせることができる(ただし、本銃のスライド破損事故が3件発生している。下記参照)。 また、使用弾薬が9mmパラベラム弾のため比較的反動が小さく、アンビ・セーフティや左右差し換え可能なマガジン・キャッチなどの利き手を問わない装備によって、開発当時としては格段に扱いやすい銃であった。

歴史

ベレッタ92は、ベレッタM1951の後継機として1970年に開発がスタートした。

当時の西側は政治テロが頻発しており、市場のニーズが多弾装・ダブルアクションにあると睨んだベレッタ社は、資本提携を結んでいたベルギーFN社からダブルカラムマガジンのノウハウを学び、1975年9mmパラベラムで装弾数15発、ダブルアクションのベレッタ92を発表した。

また、ベレッタ92は、1978年から始まり長期に渡る米軍制式採用トライアルをくぐり抜け、1985年SIG SAUER P226を破って米軍制式採用の座を射止めることとなる。この際に米軍から「M9ピストル」の制式採用名が与えられた。これにより一気に人気が高くなり、各国の軍や警察組織、民間市場でも一躍人気銃となる。また、このトライアルの際に出された改善要求を逐一クリアしたことによって、ベレッタ92はより優れた拳銃へと進化した。

しかし、米兵の射撃訓練中に、スライド後部が千切れ、それが射手を直撃する(スライド上のフロントサイトとリアサイトを目標に重ねるようにして狙いを定めるという拳銃の性質上、射手の頭部など)という事故が発生した(後述)この事故を受け、ハンマーピンの頭を大型化し、ストッパーの役割を持たせることで、万一スライドが千切れても後方に飛んで行かないよう対策が施された。これが現在の92FSである。

現在でもベレッタ92は自動拳銃のスタンダードとされており、コピー品が多数存在する。しかし、1990年代に開発されたポリマーフレームのピストルと比べると、92のスチールスライド+アルミフレームという構造が時代遅れであるという事実は否定できず、最近では他のポリマーフレームのピストルに気圧されつつある。

なお、ベレッタ社自体もポリマーフレームの新機種としてM8000の後継となる「Px4 storm」、ポリマーフレーム以外では92の直系の後継となる「90-Two」を発売している。

トライアル

ファイル:DM-SD-07-16602.JPG
ホールドオープンしたM9

次期米軍制式採用拳銃のトライアルで、NATO標準の9x19mmパラベラム弾を使用する拳銃が必要になったアメリカ軍が、往年の名銃M1911(コルト・ガバメント)に替わる十分な性能を持った拳銃を選抜するために行った試験。これに合格するということは「米軍御用達となる」ということであり、商業的価値も大きいといえる。実際にベレッタはM9として米軍に321,260丁もの数を納入し、その後フランス軍と110,000丁ものライセンス契約も結んでいる(PAMAS-G1)。この他にも各国の軍や警察関係での採用も多い。

1978~1980年のトライアル

このトライアルはアメリカ空軍限定のものであり、アメリカ全軍のトライアルではなかった。しかし、時期的に軍首脳部の注目が集まったのは言うまでもない。このトライアルでは、参加各社から提出された8モデルのうちベレッタ92が最も優秀であるとの結論が1980年に下された。しかし、このトライアルはアメリカ全軍へのトライアルとして拡大されることになり、先の決定は白紙に戻ってしまう。

1981年のトライアル

このトライアルでは新たに軍が要求するスペックが提示され、その難易度の高さに参加を取りやめるメーカーも少なからず存在した。結局期日までに提出できたのは2社(ベレッタ社・S&W社)のみであり、期日は延期されることとなる。

二回目の期日では4社が提出し、SIG社からは最後までベレッタ92と争うことになるP226が提出された。しかし、このトライアルの結果は「先の要求を満たすものは存在しない」というものであった。

1984~1985年のトライアル

ファイル:Flashlight carry.jpg
フラッシュライトとの併用方法(アメリカ海兵隊

1984年に再開されたトライアルにはベレッタ92とSIG SAUER P226を含む7モデルが提出され、最終的に92とP226の一騎打ちとなったが、裁定は再び92に下った。このトライアルをもって今回の米軍制式採用拳銃は決定し、92はその栄誉を受けることとなる。

なお、このトライアルにおいてテストが不公平であるとした数社が裁判を起こしたが、いずれも公平なテストであったとの裁定が下っている。しかし、自国外の銃器メーカーに対する風当たりは強く、92より割高だが性能と操作性で勝っていたとされるP226が敗退したこともあって「92は政治的理由によって勝ち残ったに過ぎない(SIG社のあるスイスNATO加盟国ではなく、ベレッタ社のあるイタリアはNATO加盟国であり米軍基地を作る計画が進行していた)」とする説も根強く残っている。

なお、基本的に92もP226も米軍の要求をパスしており、「より良いものがあるならばそちらを採る」のか、「要求は満たしているのだから安いほうを採る」のかは、一般人の間では今でも議論になる。ただ、軍用銃というのはコストパフォーマンスが第一であり(使用機会の少ないサイドアームである拳銃はなおさら)、米軍が92を選択したのは妥当な判断ということもできる。

また、92はP226に比べて、安全措置を多く用意している。例えば、シングルアクションでも比較的遊びの多いトリガーや、グリップを握った際の親指から離れた位置にあるアンビ・セーフティなどがそれである。これらはP226のように、最初からセイフティを廃してデコッキングレバーのみにしたり、シングルアクションでのトリガープルを可能な限り軽くしている銃に比べると、迅速な射撃の妨げになるが、逆に不注意で事故を起こす可能性は減少する。

故にアメリカ軍では、拳銃の射撃訓練の時間を十分に割ける特殊部隊ではP226(Navy SEALsでの制式採用名MK24)及び小型バージョンであるP228(制式採用名M11)を、拳銃を重要視しない一般兵士や基地警護兵には92を支給するなど、ある程度住み分けを行っている。

スライド破損事故

1987年9月1988年1月2月に一件ずつ、合計3件発生した「スライドが破損して破損部分が射手の顔面に当たる」という事故である。事故の被害者がいずれも海軍特殊戦グループ(特殊部隊Navy SEALs)のメンバーであったため、「強装弾(通常より火薬量を増やした弾)の使用など、わざと過酷な条件下において壊した」とする説[4]も出されたが、一方「もとから欠陥があった」とする説もあった(後述のブリガディアスライドの誕生がその証拠とも言える)事故を重く見た米軍は調査を進め、使用弾はNATO標準弾であったことと、何らかの理由でスライドの製造過程において強度が足りないまま出荷されてしまったことを発表した。

なお、米軍に納入されるベレッタ92は全てベレッタUSAで生産したものとされていたが、品不足のためイタリアから納入されたものもあった。

ベレッタ社はこれに対し、破損箇所に適切な熱処理を確実に加えることによって対応した。これにより同様の破損事故は以降発生していない。

なお、事故が発生したSEALsでは、上記の通り事故以降はSIG SAUER P226シリーズをMK24として主に使用している。

第四のトライアル

1988年、先のトライアルを再度実施するとした名目のトライアルが行われた。しかし、既に性能的に合格しているベレッタSIGは提出を拒否し、結局先のトライアルで敗退したS&Wと前回の提出に間に合わなかったスターム・ルガーが参加した。ベレッタ92に関しては既に米軍内にあったため、これを無作為に抽出してテストを行った。その結果、ベレッタ92はまたしても最優秀とされ、S&Wのモデルはトラブルを起こして敗退、スターム・ルガーは性能的には合格したが、今更変えるほどの価値は無いと判断されたテンプレート:要出典。これにより、ベレッタUSAは57,000丁の追加注文を受けた。なお、このトライアルにより「標準スライドが10万発の使用に耐える」という決定的な評価を与えられたが、未だにスライドに不安があるというイメージは払拭しきれていない。

92のバリエーション

92

92シリーズの最初のモデル。写真の92FSとの違いは、安全装置がフレームについていること、マガジンキャッチがグリップ底部についていること、トリガーガード前方に指掛けがないこと、マガジン底が薄いことである。

92S

92の安全装置をスライドに移したモデル。

92SB

92Sのマガジンキャッチを、グリップのトリガーガード付け根に移したモデル。米軍の初期トライアルに提出され、高い評価を得た。いくつかのタイプが米国などで市販されている。

92F

92SBのトリガーガード前方に指掛けを追加し、マガジン底を分厚くしたのが、92SB-F、すなわち92Fである。M9として米軍制式拳銃として採用される。

92FS/92FS Inox

92、92S、92SB(92S1)、92SB-F(92F)と続いたベレッタ92の強化型である。外観上は従来タイプとほとんど変わらないが、ハンマーピンの頭を大型化し、それにともないスライドの加工形状も少し変更されている。万が一前記のようなスライド折損事故が起こったとしても、スライド後半が後方へ脱落しようとした際に、ハンマーピンの頭が食い止める構造になっている。現在はM9もFS型に切り替わっている。

なお、Inoxとはイタリア語ステンレスのこと。

92FS Vertec/92FS Vertec Inox

92FSの特殊部隊・法執行官モデル。主な変更点は以下の通り。

  • グリップ後部のふくらみが無くなり、握りやすくなった。
  • 92でスライドから出ていたバレル先端が切り取られ、全長の短縮が行われた。
  • フレーム前方下部に20mmマウントレールが設置され、フラッシュライトなどのオプションを装備できるようになった。
  • 日本国内では、警視庁大阪府警察特殊犯捜査係(通称SIT、MAAT)などが使用している。

92A1

92FSのフレームをアンダーマウント付きにしたモデル。トリガーガードがSBのように丸くなっている。.40S&W弾仕様のM96A1と9x21mm IMI弾仕様のM98A1も存在する。

92 Elite

  • ブリガディアスライド(後述)を装備している。
  • 92でスライドから出ていたバレル先端が切り取られたことでホルスターから抜きやすくなった。また、銃身がステンレス製となった。
  • グリップ上部を窪ませ、グリップしやすい形状になった。
  • ロックタイムの短縮を狙ったスケルトンハンマーの使用。ハンマーを肉抜きし軽量化した。
  • ノバックサイトの採用。
  • マガジン底にマグバンパーを追加。

92 Elite II

92FSをより使いやすいように改良を施したモデル。主な変更点は以下の通り。

  • ブリガディアスライド(後述)をステンレス製とした。これにより、耐久力が向上した(Brigadier Inoxと同等)。

他は92 Eliteとほぼ同じ。

92 Elite IA

2002年のショットショーで登場したM9を更に使いやすくした改良モデル。上記のElliteIIとは兄弟分に当たるといって良い。M9との主な変更点は以下の通り。

  • グリップ後部のストレート化(グリップ後部の膨らみ(バックストラップ部分)をマガジンに沿うような形状に変更)。
  • ブリガディアスライド(ステンレス、後述)を装備。
  • スケルトンハンマー(内側がハンマーにそって刳り貫かれたようなもの)装備。
  • ノバック社製の楔形サイト(照準器)の採用。
  • レーザーやライトを装備出来るアンダーマウントレール付きフレームになっている。

また、エリートIAはブラックボディが特徴的であるが、シルバーモデルも存在する。

92DS/92D

92のダブルアクションオンリーモデルで、デホーンド・ハンマーとなっている。また、92Dにはスライド後部のセイフティが無い。

92 Compact L

ファイル:Beretta 92 Compact L PDRM.jpg
マレーシア警察に配備されているベレッタ92コンパクト

92のコンパクトモデルで、装弾数10+1発。このモデルも92でスライドから出ていたバレル先端が切り取られ、全長の短縮が行われている。

92FS Brigadier/92FS Brigadier Inox

後述のブリガディアスライドを装備した、強装弾対応モデル。

M9A1

M9のフレームを、アンダーマウント付きにしたモデル。グリップ前方、後方の滑り止めの形状も異なる。 M9ピストルを2006年米海兵隊の要請で改良したものがM9A1となる。 大きな改良点としては、ウェポンライトなどを装着できるアンダーマウントレールを装備、グリップ前後面にチェッカリングが施され、リアサイトはホワイトドットに変更された。

90-Two

92の後継発展型として設計・製作されたピストルテンプレート:Main

96FS

ベレッタ92の.40S&W弾使用モデルで、装弾数は10+1発。基本的なサイズは92FSと変わっていないが、弾の口径が大きくなったぶん装弾数は減っている。また、エジェクションポート大型化に従い、チャンバーとスライドの肉厚が薄くなっている。

96にも92と同じバリエーションが存在するが、96コンパクトだけは無い。

98FS

ベレッタ92FSの9x21mm IMI弾モデル。装弾数は92と変わらない15+1発である。

ライセンス生産

92のライセンス生産品。

ブリガディア(ブリガデール)スライド

92は、そのスライドのデザイン上ロッキングブロック(スライドとの結合を解く部品、ショートリコイル参照)周辺の強度が一番低いのであるが、そうなると強装弾を使用した場合、弾丸の発射に伴う燃焼ガスの移動・加速による反動及びガス圧などで、スライドがこれらに耐えられず破損してしまう問題があった(上記のスライド破損事故もこの類である)。そのため、Elliteシリーズ(2001年-)及び92FS Brigadier/92FS Brigadier Inox(1993-)と言った強装弾に対応したモデルは、ロッキングブロック付近が盛り上がったデザインになった「ブリガディア(ブリガデール)スライド」を採用している。

なお、このブリガディア系統のモデルは2006年に販売を終了している。

登場作品

米軍制式拳銃であり、法執行機関でも制式採用しているところが多いことから、現代の戦争や警察を題材としたジャンルでは最もよく登場する拳銃のひとつとなっている。また、92はマニュアルのセイフティが左右両側についており、更に容易にマガジンキャッチ・ボタンの向きを左右に変更可能なので左利きの人にも対応できる。このためダイ・ハードシリーズのジョン・マクレーンのように左利きの人が多く使用しているのも特徴である。マガジンキャッチはグリップを外すことで左右を入れ替えることができる。そのほかのジャンルにおいても、デザイン面から使用される事の多い銃である。また、映画監督のカート・ウィマーは排莢の方向を変えやすいと、リベリオンのDVDのオーディオコメンタリーで発言している。

テンプレート:Main

ベレッタ92の遊戯銃

テンプレート:Main ベレッタの商標使用権は、日本遊戯銃メーカーウエスタンアームズによって独占されており、ウエスタンアームズ、及び同社とライセンス契約を結んだメーカー(SIISや以前のマルシン工業など)以外は本体の刻印を忠実に再現した遊戯銃を販売することができなかったが、玩具・模型での商標模倣はベレッタ社に損害を与えるものでは無いとしてKSCの製品は新規金型で刻印が復活している。また、軍用銃であるために商標登録されていないことから、92FS、92FSの軍用モデル(M9、92Fミリタリーモデル、PAMAS-G1など)を製品ラインアップに加えているメーカーが多い。

ウエスタンアームズ製の遊戯銃は伊ベレッタ社のミュージアムルームに展示されている。


参考文献・脚注

テンプレート:脚注ヘルプ テンプレート:Reflist

関連項目

外部リンク

テンプレート:Sister

  • Beretta USAのカタログにはM92というモデルは存在しないし一般通称としても使われない。一般呼称も正式名も『Beretta 92FS』(頭にMが付かない)であり、近年軍用モデルのレプリカ『M9(M92ではない)』が一般市販され始めた。『M92(F、FS)』という名称はエアガンの名称ではないかと思われる。Beretta社および英語Wikiの『Beretta M9』および『Beretta 92』も参照の事。Beretta M92という名称の銃は存在しないと思われる(エアガン以外)
  • M9と92FSは別なモデルである
  • 92FSのフレームには、MOD.92FSと刻印されているが、イタリア語のMODはModello(モデル:型名)の事であり、名称の一部ではない。対してM9はフレームにM9(軍用のM)と刻印されている
  • 床井雅美 『オールカラー軍用銃事典』 並木書房、2005年