バスク自治州

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バスク自治州テンプレート:Lang-euカスティーリャ語: País Vasco)は、スペイン自治州の一つである。州都はビトリア=ガステイステンプレート:Lang-eu、カスティーリャ語: Vitoria)。スペインの北部、ピレネー山脈の西側に位置し、北は大西洋ビスケー湾)に面している。

住民は歴史的にはいわゆるバスク人であり、スペイン内の他地域とは、文化的には差異が大きい。スペイン国内では経済先進地域であり、他地方からの移民も多く、そのため州公用語のバスク語は少数言語状態にあり、公営TVのETBはそのチャンネルでスペイン語放送もせざるを得ないのが現状である(カタルーニャ州ガリシア州では公営TVでは固有語による放送しか行っていない)。

名称

カスティーリャ語ではパイス・バスコ(País Vasco)またはバスク語起源の名称でエウスカディ (Euskadi) と呼ばれ、以前はカスティーリャ語ではプロビンシアス・バスコンガーダス (Provincias vascongadas) の名称もよく使われていた。アラバ、ビスカイア、ギブスコアの3県を指す。それを訳した形として、日本語でもバスク国バスク国自治州と訳される場合もある。バスク語に「エウスカル・エリア (Euskal Herria)」と「エウスカディ (Euskadi)」の二つの呼び方がある。前者は「バスク語の話されるくに」を意味する(「エウスカル(バスク語の)」+「エリア(くに)」)。後者は、19世紀のバスク・ナショナリズムの始祖サビノ・アラナの造語[1]

自治州の領域をバスク地方と呼ぶことがある。ただし、「バスク地方」と言った場合、バスク人の歴史的な居住地を指す概念もあるので注意が必要である。広義の「バスク地方」(テンプレート:Lang-eu)はスペイン・フランスにまたがって広がっており、バスク自治州の領域はその一部である。詳細はバスク国 (歴史的な領域) を参照。

歴史

テンプレート:See also バスク自治州政府は、1936年に成立した「バスク自治政府」に自らの起源を置いている。自治あるいは独立を目指したバスク民族運動の経緯はバスク民族主義党を参照のこと。

現在のバスク自治州は、1978年のスペイン憲法によってバスク3県(アラバ・ビスカヤ・ギプスコア)にバスク自治州が設定されたことにはじまる。自治州政府の行政機構を定めた地方自治憲章(ゲルニカ憲章)が1979年10月25日の国民投票で承認されたことにより、現在の自治州政府が確立している。

2003年には州政府の閣議で、さらに高度な自治を要求し、将来のスペインとの関係見直しも視野に含めたテンプレート:仮リンクを決定し、バスク州議会を通過させたが、マドリードの議会で否決されている。

政治

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バスク議会議事堂
ファイル:Ertzaintza Volkswagen Bilbao.jpg
州警察Ertzaintzaのパトカー

バスク自治州政府(バスク政府、テンプレート:Lang-euカスティーリャ語: Gobierno Vasco)がビトリア=ガステイスに置かれている。

「バスク政府」は1936年に成立した「バスク自治政府」をその起源に据えており、首長はレンダカリという称号で呼ばれている。日本語では「州首相」「州知事」「首長」と訳されるほか、「大統領」と訳されることがある(レンダカリに相当するカスティーリャ語はpresidenteだが、これはほかの自治州の首長も同様である)。

バスク自治州議会もビトリア=ガステイスに所在する。3つの県に25ずつの議席が割り当てられている。レンダカリは4年に一度、議会の選挙で選ばれる。1978年以後30年間にわたってレンダカリはバスク民族主義党から選出されてきたが、2009年5月の選挙でバスク社会党のフランシスコ・ハビエル・ロペス・アルバレス(愛称のパチ・ロペスで呼ばれることが多い)が、バスク民族主義者党以外からはじめてレンダカリに就任した。

なお、バスク自治憲章(ゲルニカ憲章)にはナバーラがバスク自治州に加わることを想定した文言がある。その場合には、州政府と州議会を現在のビトリア=ガステイスからナバーラのパンプローナに移すとしている。

自治州はラジオ・テレビ局やErtzaintzaと呼ばれる州警察を持っている。また、州政府は教育・保健政策を管掌している。これらの権限はバスク自治憲章に伴い、国会によって州に移譲された。

地理

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バスクの最高峰、Aitzkorri massif

バスク自治州は、北にビスケー湾に面しており、西にカンタブリア州ブルゴス県カスティーリャ・イ・レオン州)、南にラ・リオハ州、東にナバーラ州およびフランスに隣接する。

自治州は、東西に並行する2本の山脈によって3地域に分けることができる。ビスケー湾に面した北部の「大西洋岸」、地中海に流れ込むエブロ川流域にあたる南部の「エブロ谷」、両者の中間に当たる中部の高原地帯である。バスク自治州の最高峰はAitzkorri (1551 m) である。

以下の3つの県より構成される。下記の表記は(カスティーリャ語 / バスク語)となっている。

経済

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ビルバオの商業地区

バスク州はスペインの中でももっとも豊かな地方で、一人当たりGDPはEUの平均よりも20.6%高く、30,680 USドルである(2004年)[1]

産業は伝統的に製鉄業造船業に集中していた。これは19世紀にビルバオ周辺で豊かな鉄鉱石が発見されたためで、19世紀から20世紀半ばにかけて、ビルバオはバスクの「産業革命」の中心となった。1970年代・80年代の経済危機の時代にこれらの伝統的な産業は停滞し、かわってサービス産業や新技術産業が成長している。

現在、バスク自治州の工業部門で大きな割合を占めているのは、ビスカヤ谷・ギプスコアの工作機械、ビトリア=ガステイスの航空機械工業、ビルバオのエネルギー業である。

バスク自治州に本拠を持つ大企業としては、金融業のビルバオ・ビスカヤ・アルヘンタリア銀行(BBVA、本社ビルバオ)、エネルギー業のイベルドローラ(本社ビルバオ)、鉄道車両のCAF(本社ギプスコア県ベアサイン)、風力発電機のテンプレート:仮リンク(本社ビトリア=ガステイス)が挙げられる。

交通

バスク地方は、スペイン中央部・北部とほかのヨーロッパを結ぶ交通の要衝となっている。

道路

道路交通の大動脈は、ビルバオからサンセバスティアンを経由してフランス国境までを結ぶAP-8テンプレート:Enlinkと、サンセバスティアンからビトリア=ガステイスを経由してスペイン中央部までを結ぶA1テンプレート:Enlinkである。このほか主要な高速道路には、ビルバオとサラゴサを結ぶAP-68テンプレート:Enlinkなどがある。

鉄道

バスク州政府所有の会社であるEusko Trenbide Sarea(バスク鉄道ネットワーク)が、バスク州における鉄道インフラの維持と新設にあたっている。

バスク州政府所有のバスク鉄道 (EuskoTren) は狭軌の鉄道会社であり、ビルバオとサン・セバスティアンの間の市内交通・都市間交通や、ビルバオとビトリア=ガステイス間の路線を運営している。また、ビルバオ都市圏にはメトロ・ビルバオがある。

ファイル:Euskal Y.PNG
高速鉄道・バスクY (Basque Y)

スペイン国鉄レンフェ (RENFE) の広軌路線が州内には2つあり、1路線はガステイスとサン・セバスティアンを、もう1路線はビルバオとスペイン中央部を結んでいる。レンフェはビルバオ(セルカニアス・ビルバオ)とサン・セバスティアンのセルカニアス(通勤鉄道網)も運営している。

おなじくスペイン政府所有のスペイン狭軌鉄道 (FEVE) は、ビルバオとバルマセダ間のコミューター路線のほか、ビルバオと州外の北部スペインを結ぶ路線を運営している。

また、「バスクY」と呼ばれる高速鉄道が建設中であり、2013年に完成予定である。地形的な条件から、路線では多くのトンネルが使用されている。アンダイエでフランスのTGVネットワークと接続する。

空港

州内には3つの空港がある。

3空港のうち最も規模が大きく、州の交通の軸となっているのはビルバオ空港である。国際線も発着するビルバオ空港には、2007年には420万人の利用者があった。

港湾

ビルバオ港とテンプレート:仮リンク港が重要な港湾である。このほか、ベルメオテンプレート:仮リンクなど中小規模の漁港がある。

ビルバオ港はバスク州・スペイン北部にとどまらず、スペイン国内で最も重要な港湾の一つである。ビルバオとイギリスのポーツマスとの間にはフェリーの路線がある。

社会

住民

ファイル:Bilbao Spain.jpg
最大の都市ビルバオ

テンプレート:See also

州人口の約半分は、ビルバオ都市圏に住む。人口上位の10都市のうち6都市までがビルバオの周縁都市(コナベーション)である。

  1. ビルバオ (354,145)
  2. ビトリア=ガステイス (226,490)
  3. ドノスティア=サン・セバスティアン (183,308)
  4. バラカルド (95,675)
  5. ゲチョ (83,000)
  6. イルン (59,557)
  7. ポルトゥガレテ (51,066)
  8. サントゥルツィ (47,320)
  9. バサウリ (45,045)
  10. エレンテリア (38,397)

言語

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バスク語とカスティーリャ語(スペイン語)がともに公用語である。

教育

バスク語で教育を行う学校として、イカストラがある。

文化

バスク人主体の地域であるため、スペイン国内のほかの地域とは異なる文化的特徴を持つ。ピンチョスに代表されるバスク料理でも知られている。

スポーツ

バスクのスポーツ

脚注

  1. 萩尾生「バスク地方とは」/ 萩尾生・吉田浩美編著『現代バスクを知るための50章』明石書店 2012年 24-28ページ

参考文献

関連項目

外部リンク

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