ニホンザリガニ

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ニホンザリガニテンプレート:Snamei)は、十脚目アメリカザリガニ科アジアザリガニ属に属する、ザリガニの1種である。単にザリガニ、あるいはヤマトザリガニとも呼ぶ。

日本固有種で、北海道北東北にのみ住む。日本に住む3種のザリガニのうち唯一の在来種であり、秋田県・大館市にある生息地が、国の天然記念物に指定されている。

成体の体長は50–60mmほど、稀に70mmに達するが、アメリカザリガニよりは小さい。体色は茶褐色で、アメリカザリガニに比べて体や脚が太く、ずんぐりしている。

分布

かつては北日本の山地の川に多く分布していたが、現在は北海道青森県岩手県及び秋田県の1道3県に少数が分布するのみである。

なお、秋田県・尾去沢の個体群にはウチダザリガニミミズ テンプレート:Snamei (テンプレート:AUY) が付着していたことから、同個体群のニホンザリガニは北海道から移入された可能性が指摘されている。また、大正時代に行われた人為移入の結果と考えられる個体群が、栃木県・日光市においても発見され[1]、ある一定の条件が整えば関東圏においても生息できることが証明された。

生態

川の上流域や山間の湖沼の、水温20℃以下の冷たくきれいな水に生息し、巣穴の中にひそむ。おもに広葉樹の落葉を食べる。

繁殖期は春で、メスは直径2–3mmほどの大粒の卵を30–60個ほど産卵する。メスは卵を腹脚に抱え、孵化するまで保護する。孵化した子どもはすでに親と同じ形をしており、しばらくはメスの腹脚につかまって過ごすが、やがて親から離れて単独生活を始める。体長4cmになるまで2-3年、繁殖を始めるまでに5年かかる。アメリカザリガニに比べて産卵数も少なく、成長も遅い。

脱皮の前には外骨格(体を覆う殻)の炭酸カルシウムを回収し、胃の中に胃石をつくる。脱皮後に胃石は溶けて、新しい外骨格に吸収される。

系統

伝統的な分類では、ニホンザリガニが属すアジアザリガニ属は、アメリカザリガニ科に含められている。しかし、アメリカザリガニ科が基本的に南北アメリカに産す中で、アジアザリガニ属は例外的にアジア産である。

近年の研究によると、アジアザリガニ属は他のアメリカザリガニ科とは別系統である[2][3]。アメリカザリガニ科とザリガニ科(ウチダザリガニなど)とで、上位分類群のザリガニ上科を構成するが、アジアザリガニ属はそのザリガニ上科の中で最初に分岐したか[4] 、あるいはザリガニ科の方により近縁である[5]

利用

20世紀前半までは数多く生息していた。食用や釣り餌などのほか、胃石が眼病や肺病などの民間療法の薬として使われていた。個体数が少ない現在ではほとんど食用としないが、モクズガニと同じく肺臓ジストマの1種のベルツ肺吸虫 テンプレート:Snamei (テンプレート:AUY) の中間宿主である。よって、食用にする際はよく加熱しなければならない。

河川環境の悪化、採集業者の乱獲などが重なって、次々に生息地を追われた。2000年には絶滅危惧II類(VU)環境省レッドリスト)に指定された。国際自然保護連合の評価は「データ不足 (DD)」である[6]

天然記念物の指定

秋田県・大館市の桜町南と池内道下にあるニホンザリガニ生息地は、日本における生息地(自然分布)の南限であり、その保存を図る必要があるとされ、1934年(昭和9年)に、「ザリガニ生息地」として国の天然記念物に指定された。

ところが、指定地の周辺は、昭和40年代に急速に宅地化が進展して、ニホンザリガニの生息環境は悪化した。2002~2003年の調査では、指定地内の1ヶ所で生息が確認され、その後も目撃情報はあったものの、2012年の調査では天然記念物指定地内での生息は確認されなかった。ただし、同年の調査では、市内の指定地以外の3ヶ所でニホンザリガニの生息が確認され、他の1ヶ所でも有力な目撃情報が得られている[7]

出典

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  1. 日光市で発見されたニホンザリガニ個体群の由来、および大正時代に北海道から本州に持込まれた個体に関する宮内庁公文書等に基づく情報 弘前大学教育学部紀要 101号 pp.31–40 ISSN:0439-1713
  2. テンプレート:Cite
  3. テンプレート:Cite
  4. テンプレート:Cite
  5. テンプレート:Cite
  6. テンプレート:IUCN2
  7. 2012年ニホンザリガニ及びアメリカザリガニ生息分布調査報告書 秋田県大館市教育委員会、2013年3月。