ドラゴンクエスト

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テンプレート:Otheruseslist テンプレート:Pathnav テンプレート:Infoboxドラゴンクエスト』(テンプレート:Lang-en)は、1986年昭和61年)5月27日エニックス(現: スクウェア・エニックス)より発売されたファミリーコンピュータ(ファミコン、FC)用ロールプレイングゲーム。通称は『ドラゴンクエストI』(ドラゴンクエストワン)(概要を参照)。

日本では同年内にMSX、MSX2にも移植された。その後、リメイク版としてスーパーファミコン(以下SFC)用ソフト『ドラゴンクエストI・II』、ゲームボーイ(以下GB)用ソフト『ゲームボーイ ドラゴンクエストI・II』に収録されている。2000年代以降にはフィーチャーフォン用アプリ(iアプリEZアプリS!アプリ)、スマートフォンアプリ(AndroidiOS)としての配信も行われるようになった。2011年平成23年)9月15日に発売されたWii用ゲームソフト『ドラゴンクエスト25周年記念 ファミコン&スーパーファミコン ドラゴンクエストI・II・III』に、FC版がSFC版『I・II』などと共に収録されている。

北米では、1989年5月[1]NESで『Dragon Warrior』として任天堂から発売され、後にGB版『Dragon Warrior I & II』にも収録されている。

以降、特記がない限りはオリジナルのファミリーコンピュータ版について述べる。

概要

家庭用ゲーム機では初となるオリジナルタイトルのロールプレイングゲーム[注 1]。のちに続編が次々と発売され、『ドラゴンクエストシリーズ』と呼ばれるようになった。本作の正式タイトルは『ドラゴンクエスト』であるが、続編が発売されて以降、本作はシリーズ第1作であることから便宜上『ドラゴンクエストI』(ドラゴンクエストワン)と呼ばれることもある(リメイク版では正式に『ドラゴンクエストI』の呼称が使用されている)。キャッチコピーは「今、新しい伝説が生まれようとしている」。

疑似マルチウィンドウ型のメニューパソコン用RPG『ウルティマ』に代表される二次元マップのカーソル移動を基盤としたキャラクターの移動、同じくパソコン用RPG『ウィザードリィ』に代表される対話式の戦闘モードなどといったスタイルを、当時の技術レベルでの512kbit(64KB)という、2000年代ごろにおけるフィーチャーフォンの待受画像1枚分相当のROM容量の中で実現させた作品である[2][注 2]

シナリオ・ゲームデザインは当時集英社の『週刊少年ジャンプ』(以下『ジャンプ』)にファミコン関連の記事を執筆していた堀井雄二、キャラクターデザインは同じく『ジャンプ』で『ドラゴンボール』を連載していた鳥山明、ゲームミュージック作曲は当時CM音楽などを主に手がけていたすぎやまこういちが担当した。タイトルロゴデザインは、『ジャンプ』の読者コーナー「ジャンプ放送局」のレイアウト担当であった榎本一夫が手がけた。開発期間は約5か月であった[2][3]

当初、本作は単発作品であったため、詳しい人物設定や背景像などはなかったが、ゲームのシリーズ化に伴い、後続作品との関連性を持たせるため、後からさまざまな公式設定が追加されている。後に発売される『ドラゴンクエストII 悪霊の神々』『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』は、本作との関連が深く、この3作は合わせて「勇者ロトの伝説シリーズ」と呼ばれるようになった。

社会現象を巻き起こした『ドラゴンクエストIII』の発売後には、本作『ドラゴンクエスト』の小説化やゲームブック化、ドラマCD(CDシアター)化も行われている(『小説ドラゴンクエスト』、『ゲームブックドラゴンクエスト』、『CDシアター ドラゴンクエスト』を参照)。

また、2003年平成15年)に発売された体感ゲーム機『剣神ドラゴンクエスト 甦りし伝説の剣』は、本作のストーリーをアレンジし、キャラクターデザインを一新させたゲーム内容となっている。

スタッフ

ゲームシステム

移植・リメイク版については移植・リメイクの節を参照。

ゲームの目的

プレイヤーの目的は、伝説の勇者「ロト」の血を引く勇者として、「竜王」にさらわれた姫を救い出し、そして竜王を倒すことである。その目的を達成するためには、敵キャラクターであるモンスター(魔物)を倒して経験値とゴールド(このゲームの世界の通貨)を稼ぎ、レベルを上げ強い武器防具を購入してプレイヤーキャラクターを強くし、探索範囲を徐々に広げていき、また、町の人々から情報を得て、それをヒントに重要アイテムを手に入れて謎を解く必要がある。

主人公

ゲームスタート時に主人公の名前を決定する。この主人公は説明書などのテキストにおいて「あなた」という呼び方が何度も使用されている。また、このとき決めた名前により初期ステータスとレベルアップ時のステータス上昇パターンが変化する。このシステムは『ドラゴンクエストシリーズ』では本作にのみ見られる。

主人公にはHPMP・力・素早さ・経験値・ゴールド・攻撃力・守備力のパラメータが存在する。経験値が一定値に達するとレベルが上がり、ステータスが上昇したり呪文を覚えたりする。最高レベルは30。ゴールドはこの世界の通貨で、後述のさまざまな店で使用する。

主人公の装備品は攻撃力を上げる「武器」と守備力を上げる「鎧」「盾」の3種類で、入手した武器や防具は自動的に装備され、それまで装備していたものがその場で売却または破棄されるシステムになっている。

本作で主人公がMPを消費して使用できる魔法の呪文は全10種類で、最初は一つも覚えていないが、レベルが上がると1種類ずつ順に覚えていく。道具の代用になるもの(その効果は道具と若干異なる)や、回復呪文、敵の行動を封じる補助呪文、攻撃呪文などが存在する。これらは敵モンスターが使用してくる場合もある。

主人公はアイテム(道具)を持つことができ、道具にはHPを回復する「やくそう」、暗い洞窟内を照らす「たいまつ」、敵モンスターとのエンカウントを回避する「せいすい」、守備力を上昇させる「りゅうのうろこ」、ラダトーム城へ帰還する「キメラのつばさ」、扉を開く「かぎ」などがある。アイテムは基本的に使い捨てで、このうち、「やくそう」「かぎ」は道具とは別個で、それぞれ6つまで所持できる。

移動画面

フィールドマップには町やダンジョンなどのオブジェクトが散在しており、そこへ主人公を移動させると自動的に町やダンジョンに入場する。逆に町やダンジョンから外へ出た場合には自動的にフィールドマップへ移動する。フィールドマップには平地や森、砂漠などさまざまな地形が存在し、移動しにくい(移動時に若干のウェイトが生じる)山や、岩山や海など移動できない地形、入るだけで主人公のHPにダメージを与える毒の沼も存在する。

本作のみのシステムとして、ダンジョン(洞窟)の内部は完全な暗闇であり、何もしていない場合は主人公のいるブロックしか画面に表示されず、道具「たいまつ」または「レミーラ」の呪文を使わなければ周囲の地形が見えない。このように可視範囲が限定されるシステムは『ウィザードリィ』など当時の多くのRPGに見られたが、難易度を不要に上げるだけのものとなっていたため、次回作以降は最初から部屋を見渡せるよう変更されている。

コマンド

移動画面ではメニューコマンドウィンドウを開き、以下の8つからコマンドを選択できる。

はなす
町の住民などの話を聞く。本作ではキャラクターの向きの概念がないため、「はなす」コマンドを選んだ後に、話したい相手のいる方角を東西南北の中から選ぶ必要がある。店を利用する際にもカウンターごしにこのコマンドを使うことで利用できる。
つよさ
主人公のパラメータを確認する。
かいだん
階段を昇降する。階段の上で使用する。
とびら
持っている魔法の鍵(「かぎ」)を1個消費して扉を開ける。「かぎ」は鍵屋で購入することで補充する。
じゅもん
覚えている呪文を使用する。本作では戦闘時に敵に対して使う呪文を移動中に唱えることもできるが、唱えてもMPを消費するのみで効果はない。
どうぐ
持っているアイテムを使用する。
しらべる
自分のいる位置を調べる。
とる
宝箱を開ける。宝箱の上に乗って使用する。

以上のコマンド形態は、「かいだん」や「とびら」コマンドの自動化、「とる」を「しらべる」に統合、『V』以降の「べんりボタン」の導入など、続編を経るたびに一つのコマンドにさまざまな役割を持たせるなどして整理[注 3]されていき、整理されたシステムを採用した続編以降に発売されたリメイク版においては本作のコマンドシステムは用いられなくなっている。

町には、戦闘で使う武器・鎧・盾を扱う武器と防具の店、「やくそう」などのアイテムを扱う道具屋、「せいすい」のみを扱う聖水屋、前述の「かぎ」を扱う鍵屋などの店がある。これらの店では、入手したいアイテムに対応する価格分のゴールドを払うことにより、その武器・防具やアイテムを入手する(買う)ことができる。不要なアイテムを道具屋で売り、ゴールドに替えることもできる。

ほかに、宿屋では、宿泊してHPとMPを最大値まで回復することができる。また、宿泊料金は町により異なる。

戦闘

フィールド上、ダンジョン(ロトの洞窟を除く)、廃墟の町など、敵のいる場所を歩いていると、突然画面が切り替わり、敵モンスターとの戦闘になる(ランダムエンカウント)。戦闘が発生した場合は戦闘ウィンドウが開き、モンスターのグラフィックが表示され、戦闘用の効果音が流れ、地上の場合のみ戦闘背景も表示される。

本作での戦闘は常に主人公と1体のモンスターによる1対1である。これは本作がRPG初心者に向けたゲームとして設計されているためである。

自分の行動を選択できる状態になるとコマンド入力待ちとなり、武器で攻撃して相手のHPを減らす「たたかう」、呪文を使用する「じゅもん」、アイテムを使用する「どうぐ」、敵から逃げ出す(必ず逃げられるわけではない)「にげる」の中から自分の行動を選択して戦闘を行う。

本作ではプレイヤーや敵のステータスに関係なく、各ターンで基本的にまず主人公が先手となり行動し、続いて敵が後手となり行動する形で、どちらかが倒れる(HPが0になる)まで主人公と相手が交互に行動を繰り返していく。ただし、戦闘開始後、主人公が身構えるより早く敵が襲ってくる場合があり、そのときはターン開始前に一度敵の攻撃を受けてから各ターンを繰り返す。呪文「ラリホー」の効果で眠っている状態だと行動はできず、目が覚めるまで相手側が一方的に攻撃する。行動の結果は常にメッセージウィンドウに表示され、どのように戦闘が進んでいるか確認できる。

敵のHPを0にできればその敵を倒したことになり、その敵に応じた経験値とゴールドを入手できる。逆に主人公のHPを0にされた場合は敗北となるが、ゲームオーバーとはならず、スタート地点であるラダトーム城まで戻される。所持金が半分になるが、経験値やアイテムはそのままの状態で継続できる。

復活の呪文

本作はRPGという性質上、ゲームを始めてからエンディングを迎えるまでに時間がかかるが、バッテリーバックアップなどの記録機能を実装していないため、一度ゲームを中断して電源を切ったあと、パスワードを入力することで次回にその続きからプレイできるようになっている。

中断するときは、ラダトーム王に話しかけることによって画面に表示される「復活の呪文」と呼ばれるひらがな20文字のパスワードを書き留め、次回ゲームを開始するときに画面にパスワードを正しく入力すれば、中断したところから冒険を再開することができる。ただしパスワードを1字でも間違えるとゲームを再開することはできない。

復活の呪文は次作『ドラゴンクエストII』でも登場する。なお、復活の呪文には現在のHP・MPの値や、宝箱のアイテム取得済みのフラグなどといった詳細な情報は記録されず、復活の呪文を入力してゲームを再開した場合はHP・MPは必ず最大値となる。宝箱の中身は、ダンジョンから一度出て、また入り直すと自動的に復活する。そのため、宝箱の中身を何度でも取ることができる。

制作時の工夫

容量削減

本作で使用されたROMの容量は512kbit(64KB)と小さいため、主にゲーム中使用されるテキスト部分においてデータ量の削減のためにさまざまな工夫が行われている。カタカナは50音すべてが搭載されておらず、文字種を限定した上でモンスター名や地名などをつけていた(『ポートピア連続殺人事件』制作時に文字を選定)[注 4]。また、テキストに関しても本来のものから文字数を減らした文章にすることでデータ量を削減している。

グラフィックに関しても、容量を考慮した仕様が目立つ。主人公をはじめとするキャラクターには横や後ろを向いたパターンが用意されておらず、前向きのグラフィックのみである。このため、プレイヤーから見ると横方向に歩くときも前を向いたまま歩いているように見え、当時は俗に「カニ歩き」と呼ばれた。ほとんどのキャラクターが反転表示で2コマのアニメーションを行っていたが、王様、姫、竜王は完全な左右対称・静止画であった。

RPG初心者への配慮

本作が出る前のファミコンのゲームソフトは、前年に発売された『スーパーマリオブラザーズ』に代表されるようなアクションゲームが主流であった。開発当時『週刊少年ジャンプ』でライターを勤めていた堀井雄二は、同誌の主な読者層であった子供たちにRPGの面白さを伝えるという目的で本作を開発した。そのため本作では、RPGに馴染みの無い子供たちにゲームのやり方を理解してもらうための工夫がなされている。

小学生を集めたテストプレイ時には、主人公はラダトームの町とラダトームの城の中間地点のフィールド上からのスタート位置であったが、町や城に入らずフィールド上をさまよい、主人公がすぐにモンスターにやられてしまうという子供が続出した。想定外の事態に開発者は悩まされたが、あえて開始時にラダトーム王の王室に閉じ込めるアイデアが採用された。鍵の掛かった扉が階段の手前にあり、宝箱から鍵を手に入れないと王の部屋を出られないようになっているが、これは「とる」を使って宝箱を開ける、「とびら」で扉を開ける、「かいだん」で階段を降りるといった基本操作を学習させたり[2]、「はなす」で王や兵士たちの話を聞き、主人公がこれからどうすれば良いのか目的を理解させるためである。

レベルが1から2になるのに必要な経験値は開発当初は「20」に設定されていたが、レベルアップの爽快感を味わってもらおうという目的で「7」に引き下げられた経緯がある[2][4](このサブセクション出典として)[3]

また先述のようにHPが0になってしまってもゲームオーバーにはならず、ゴールドを半額失うだけで経験値と所持品はそのままの状態で再スタートが可能であるが、この方式はそれまでのRPGにおける戦闘敗北のリスクがあまりに高いと思われたため導入されたもので、所持金が半分になっても経験値やアイテムが残っていればRPG初心者でも何とかゲームを進めていけるという考えから採用された[5]。この方式はその後のドラゴンクエストシリーズにも受け継がれ、他のRPG作品でも多く採用されている。

「つよさ」によるステータス画面も、当時のファミコンユーザー(すなわちRPG初心者)に配慮して開発された。一般にRPGはプレイと共に主人公の強さが変化するが、当時のPCゲームでは実際にプレイすることでプレイヤーが主人公の強さを体感できれば、開発するほうとしては詳細な情報を表示せずとも十分だった。しかし家庭用ゲーム機で遊ばれる状況を想定した場合、友達や兄弟などの観戦者を伴って迷路や謎解きを話し合いながら協力して進めていくというプレイスタイルが予想されたことから、プレイヤー以外の初心者にも主人公の強さを知ってもらうために詳細な「つよさ」画面を作ることにしたという。

移植・リメイク

MSX版・MSX2版

ファミコン版とほぼ同じであり、復活の呪文も互換性があるが、エンディングで王と共に勇者を迎える兵士達がこのシーンのみのオリジナルデザインであったりするなど、グラフィックやサウンド面において若干の相違点がある。

北米版(NES版)

北米版『Dragon Warrior』では、日本の『ドラゴンクエストII』以降と同様にキャラクターが横や後ろを向くことができるようになり、フィールドの白い海岸線のグラフィックが追加されるなどビジュアル面も多少変更されている。このほかに日本版『ドラゴンクエストIII』以降と同様にバッテリーバックアップが搭載された。なお、これ以外のゲームシステムやシナリオは日本版と変わらない。ローカライズは、当時HAL研究所に所属していた岩田聡(現任天堂社長)が担当した[1]

スーパーファミコン版

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FC版のストーリーを基に、操作性やグラフィック面など多くの点を改良したリメイク作品。FC版発売から7年後の1993年に『ドラゴンクエストII』と合わせて1本のソフト『ドラゴンクエストI・II』として発売された。町の人の台詞なども一部が変更・追加された。

ゲームボーイ版

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1999年に発売。SFC版と同様、『II』とセットで1本のソフトとなり、ナンバリングタイトル初の携帯ゲーム機用ソフトでもある。SFC版に準拠した移植だが、GB版ではオープニングと、その場でゲームを中断する「中断の書」機能が追加されている。

フィーチャーフォン版

2004年から配信を開始したフィーチャーフォンアプリゲーム。

SFC版・GB版での変更点が反映されているほか、呪文を覚えるレベル・次のレベルアップまでの必要経験値・レベルの上限(他機種はレベル30までだが、フィーチャーフォン版はレベル50まで上がる)の変更が行われている。また、移動中に「メッセージスピード変更」や「たびのこころえ」などのあるウィンドウを開くことができるようになった。

グラフィックやシステムは『スーパーファミコン ドラゴンクエストIII』をベースとしており、SFC版『I・II』よりもさらにグラフィックの質が向上している。

プレイヤーキャラに限り一部の用語が変更され、「キズ」が「体力」に、HPを回復させた時は回復した後の値がメッセージに表示され、完全に回復した場合は「全快した」と表示される。敵モンスターの場合は他の作品と表記は変わらない。

Wii版

テンプレート:Main 2011年9月に発売。FC版の『II』・『III』、SFC版の『I・II』・『III』とセットで収録。中断機能が追加されている。

スマートフォン版

2013年11月28日にAndoridおよびiOS向けに配信開始したアプリケーション『ドラゴンクエスト ポータルアプリ』から購入[注 5]・起動する方式。グラフィックはフィーチャーフォン版をベースに縦長画面対応させたもので、タッチパネル上の仮想コントローラにより移動や指示を出す。BGMはオーケストラ版。当初は半マス単位での移動など2010年代の感覚では難のある操作性だったが、2014年2月15日のアップデートで1マス単位での移動になるといった改善がされている[6]

物語内容

プロローグ

本作の舞台であるアレフガルドは、かつて大魔王の手によって闇に閉ざされていたが、大魔王は伝説の勇者ロトによって倒され、魔物たちも光の玉によって封印された。それ以来アレフガルドは平和が続いていた。

月日は流れ、ラダトームの王であるラルス16世がアレフガルドを治める時代に、アレフガルドに再び邪悪な者が現れた。その名は竜王。竜王はラダトームから光の玉とローラ姫を奪い、アレフガルドは再び魔物の徘徊する世界となった。竜王に戦いを挑んでいった者はいたが、生きて帰ってきた者は一人もいなかった。そして、ローラ姫もどこかに監禁された。

そんな中、ある予言者が、勇者ロトの血を引く者が竜王を滅ぼすであろうと予言した。そして予言どおり、ロトの血を引く勇者が現れた。彼こそが本作の主人公=プレイヤーである。

世界設定

アレフガルドと呼ばれる国が舞台となっている。アレフガルドの「アレフ」はギリシャ数字のアルファのことで、総じて「始まりの国」を意味する[7]。なお、「ファミコン神拳」で本作の製作が発表された段階では、「アレフランド」という名称であった。

登場人物

勇者
本作の主人公である「ロトの血を引く者」。その過去・素性についてはまったく明かされない。小説版、CDシアター版での名前は「アレフ」。なお、「ロト」とは、後作の『ドラゴンクエストIII』の勇者のことである。ラルス16世の導きに応じ、アレフガルドにやってきた。角付きの兜がある甲冑を身につけている。後のシリーズに照らし合わせれば戦士タイプで、さらに攻撃・回復・戦闘補助の呪文を一通り覚えることができる。小説版では滅ぼされる前のドムドーラの町にいたことが記されている。
『IX』では装備がコスプレアイテムとして登場した。
剣神ドラゴンクエスト』で大幅にデザインが変更され、その姿のまま『ドラゴンクエスト モンスターバトルロード』にも登場した(特定のカードイラストには旧作の姿で描かれている)。Wii版『バトルロードビクトリー』では、『剣神』の服装の上から今作の鎧・兜を身に着ける演出がある。
ドラゴンクエストシリーズの主人公では珍しく、セリフを喋るシーンが一つだけ存在する(エンディング前で国王から統治の話を断る場面)。
ローラ姫
アレフガルド王家の王女で、ラルス16世の一人娘。物語開始時点の半年前には既に竜王にさらわれ、とある洞窟に監禁されている。竜王は世界征服後、彼女を妻にする予定だったらしい。勇者に助け出された後、彼の助けとなるアイテム「王女の愛」を渡す。全てが終わった後に勇者と旅立ち、まだ見ぬ新天地を見つけ、ともに新たな王国を建設する。
ゲームを進めていく中で勇者が救出することになるが、彼女を救出することはゲームの最終目的ではなく、中盤のイベントとなっている。コミック「ドラゴンクエストへの道」によると、「“敵の大ボスを倒してから姫を救出する”のは既にありふれていたので、救出は中盤に持ってきた」とのこと。
救出すると、主人公のグラフィックがいわゆる「お姫様だっこ」をしたポーズに変化し、ラダトームまで一緒に旅をすることになる。道中で町に立ち寄り宿に泊まると、翌朝に宿の主人が「ゆうべはおたのしみでしたね」と意味深なメッセージを投げかけてくる。
リメイク版ではローラ姫を抱きかかえたまま竜王に話しかけると、竜王の台詞が追加されたり、エンディング前の演出も一部変更されるようになっている。
ラルス16世
アレフガルド国王。Wii版の設定資料にある企画書では「サウト16世」とも呼ばれていた。竜王に対抗できる「ロトの血を引く者」を召喚する。FC版では「復活の呪文」発行、リメイク版では「冒険の書」の記録を行う。
ガライ
いにしえの時代に活躍した伝説の吟遊詩人。彼の残した竪琴は、モンスターも魅了する音色を持つ。
よしりーん
マイラの村からリムルダールに移り住んできた老人。キーアイテム『妖精の笛』の在り処を知っている。リメイク版には登場しない。
ゆきのふ
竜王に滅ぼされたドムドーラで武器屋を営んでいた老人。既に亡くなっているためか、劇中には登場しない。店の裏の木の根元にある強力な鎧を隠したらしい。
竜王
本作の最終ボス。光の玉を奪い、世界を闇に包んだ張本人。ラダトームの城とは目と鼻の先にある竜王の城に住む。普段の魔法使いのような姿と、竜としての真の姿がある。後に多くのRPGで当たり前になった、最終ボスの形態変化と雰囲気を盛り上げるための専用BGMは、本作の竜王で用いられたのが、FCオリジナル作品としては最初テンプレート:要出典である(他機種やアーケードからの移植としては『ドルアーガの塔』などの先例がある)。勇者と戦闘直前に「自分の部下になれば世界の半分をやろう」と交渉を持ちかけてくる。詳細は当該項目参照。

城・町・洞窟

ラダトーム城
アレフガルドの中心となる城であり、冒険のスタート地点でもある。国王より復活の呪文を授かる城でもある。城1階の東側半分は鍵がないと入れない。宝物庫やMPを回復してくれる老人も存在する。また、某所には地下室の入口もある。HPがゼロになると、この城から始まる。
ラダトームの町
ラダトーム城の城下町。武器防具屋、道具屋、宿屋、聖水屋といった一通りの施設が揃う。
ロトの洞窟
ラダトームの北北西にある2層構造の洞窟。勇者ロトの残したメッセージを読むことができる。魔物は出現しない。
ガライの町
ラダトームの北西にあるガライヤ半島に存在する町。吟遊詩人ガライによって作られた。町の北側には大きな屋根に覆われた建物があり、さらにその裏には、ガライの遺した楽器の眠る迷宮「ガライの墓」の入口がある。
岩山の洞窟
ラダトームの南西にある2層構造の洞窟。重要なアイテムは無い。リメイク版では構造が変更されている。
マイラ
ラダトームから東方にあるマイラの森にある村。リウマチに効くといわれる温泉がある。この温泉はある秘密のヒントになっている。
沼地の洞窟
マイラの南とリムルダールの北とを結ぶ海底トンネル。ローラが捕らえられている部屋があり、ドラゴンがそれを守っている。
リムルダール
マイラの南、リムルダール島の中心の湖に囲まれた町。鍵を売る店や予言所がある。道具屋が無いが、リメイク版では追加されている。
ドムドーラ
ガライの町のはるか南、ドムドーラ砂漠にあった町。魔物に滅ぼされ廃墟と化している。町の東側にロトの鎧が埋められているが、悪魔の騎士によって守られている。本作より昔のアレフガルドが登場する『ドラゴンクエストIII』では、魔物に滅ぼされておらず活気のある町である。
メルキド
アレフガルド南部のメルキド高原にある城塞都市。人間の作った怪物ゴーレムによって守られている。多くの店があり、高価な武具も売られている。
竜王の城
ラダトームの対岸の島にある敵の本拠地。地上1階、地下7階の全8層からなる巨大かつ複雑なダンジョン。隠された階段があり、この階段を見つけなければ、竜王のいる最下層にはたどり着けない。リメイク版では地下迷宮の構造が変更されている。

道具

作品中に登場する重要な道具を挙げる。

たいまつ
本作品のみにある道具、洞窟内を1歩先まで照らすことができる。
妖精の笛
アレフガルドに住んでいた妖精の作った笛[8]。ある魔物を眠らせる効力を持つ。
銀の竪琴
ガライの町を築いた吟遊詩人ガライが愛用していた竪琴で、彼の墓に保存されている。奏でると魔物を呼び寄せる。
王女の愛
ローラ姫の愛がこめられたペンダント。自分がラダトーム城から見てどこにいるか教えてくれる。
太陽の石、雨雲の杖
勇者ロトが集めていた聖なる道具。アレフガルドに広まる「太陽と雨」の言い伝えに関連する道具であり、2つの道具が合わさることで、虹の橋を架ける能力を持つ「虹のしずく」が得られる。竜王の島に渡るために必要である。
ロトのしるし
勇者ロトの血を引く勇者の証。剣・鎧同様に、鳥を模ったロトの紋章が刻まれている[9]
ロトの剣、ロトの鎧
勇者ロトの残した剣と鎧であり、それぞれ本作最強の武器・鎧である。鎧は毒沼・バリアーからのダメージを無効化し、歩くごとにHPが回復する能力を持つ。なおロトの盾とロトの兜は本作には登場しない。

その他

  • 本作の洞窟のBGMは、下の階層に行くほど音程が低くスローテンポになり、恐怖を演出している。次作以降では階層にかかわらず同じBGMが用いられている。
  • アレフガルドの町に住む住民の中には、『週刊少年ジャンプ』のゲーム紹介コーナー「ファミコン神拳110番」のスタッフでもあった「ゆうてい」(堀井雄二)、「みやおう」(宮岡寛)、「キムこう」(木村初)がアレフガルドの各町に登場している。メルキドでは『ポートピア連続殺人事件』を宣伝する台詞も登場していた。エンディングスタッフロールのスペシャルサンクスにクレジットされているKAZUHIKO TORISHIMAは当時週刊少年ジャンプ編集者の鳥嶋和彦である。

バッドエンディング

本作は、シリーズで唯一のバッドエンディング(事実上のゲームオーバー)が存在し、特定のイベントにおいて「はい・いいえ」の選択を誤ると、文字が赤くなり、マップが真っ暗となって画面が完全に停止し、ゲームの続行が不可能となる。その寸前に復活の呪文を教えてもらえるが、この復活の呪文を入力すると、レベル1、経験値・ゴールドが0で武器防具・道具をまったく持っていない状態でスタートする。

スーパーファミコン版以降のリメイク作においては、当該イベントで選択を誤った場合のみすべてが夢の中での出来事ということになり、リムルダールの街の宿屋に強制的に戻されるように変更されている。手持ちの武器を手放す文章と選択肢が追加されており、さらに「夕べは随分とうなされていた」と宿屋の主人にも心配されるが、主人公のステータスや所持している道具はイベントを行った時点から一切巻き戻されず、武器が実際に失われることもない。

ちなみにこのバッドエンディングについて、音楽を担当したすぎやまこういちは近年、雑誌のインタビューで「分かりやすく言えば、あそこで「はい」と答えてしまうようなズルい政治家を生み出してはいけないんです。」と、反保守層が政権を握ることに警鐘を鳴らすことで、当該イベントでの選択がプレイヤーに対し“祖国愛”を確かめるものだったと再評価している。[10]

BSドラゴンクエストI

テンプレート:Infobox スーパーファミコン用衛星データ放送受信機「サテラビュー」の音声連動ゲームとして、1996年に日本国内でセント・ギガが放送した。データ放送を運営した任天堂による雑誌広告やチラシでは、行列を作るスライムの絵とともに「並んでもゼッタイ買えない、ドラクエ。」のキャッチコピーがアピールされ、サテラビューの普及を牽引するキラーソフトとしての期待が込められた。

放送日時は1996年2月4日から同年3月1日、土曜日を除く18:00-19:00の1時間。同年4月末から5月にかけても再放送された。1週間につき1話の物語が放送され、全4話で構成された。途中参加はできるが放送時間外にプレイすることはできなかった。

ゲームプログラムはSFC版『ドラゴンクエストI・II』をベースとし、新たに制限時間、同時放送されたラジオ音声と連動したイベントを追加した。ゲーム上ではラジオドラマに合わせ「フィールド上の天候が変化する」「洞窟内でたいまつが不要となる」「主人公のステータスが上昇する」など様々なイベントが発生した。プレイヤーは1時間弱の制限時間内に主人公のレベルアップを行い、各話ごとに設定された目標までシナリオを進めるとともに、「しあわせのメダル」を集めることが目的だった[11]

ラジオ番組冒頭では堀井雄二が登場し、ドラゴンクエストの開発秘話やシリーズに対する想いを語るインタビューシーンが放送された。本編のラジオドラマでは細川ふみえがローラ姫を演じた。彼女の起用は当時サテラビュー向けラジオ番組のパーソナリティを担当していたことによる。

ゲーム終了後には主人公のレベル、シナリオの進行状況、集めたアイテムなどの成績を暗号化したパスワードが表示され、ランキングイベントに参加する際はこれをはがきでセント・ギガへ郵送、またはファクシミリにて送信する。番組を終了しデータ放送受信メニューへ戻る際には前年12月に発売された『ドラゴンクエストVI 幻の大地』の広告が表示された。

関連商品

攻略本

  • ファミリーコンピュータ版
    • ファミコン神拳奥義大全書 ドラゴンクエスト(集英社、ISBN 978-4834210514)
    • ドラゴンクエスト 完全攻略本(徳間書店、ISBN 978-4197233274)
    • ドラゴンクエスト 公式ガイドブック(エニックス、ISBN 978-4900527010)
  • スーパーファミコン版
    • Vジャンプブックスゲームシリーズ ドラゴンクエストI・II(集英社)
    • ドラゴンクエストI・II 公式ガイドブック(エニックス、ISBN 978-4870257412)
  • ゲームボーイ版
    • Vジャンプブックスゲームシリーズ ゲームボーイ ドラゴンクエストI・II(集英社、ISBN 978-4087790368)
    • ゲームボーイ ドラゴンクエストI・II 公式ガイドブック 上巻 世界編(エニックス、ISBN 978-4757501157)
    • ゲームボーイ ドラゴンクエストI・II 公式ガイドブック 下巻 知識編(エニックス、ISBN 978-4757501164)

その他の書籍

CD

†は廃盤。

脚注

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出典

テンプレート:Reflist

注釈

テンプレート:Reflist

関連項目

外部リンク

テンプレート:Navboxテンプレート:Link GA
  1. 1.0 1.1 テンプレート:Cite web
  2. 2.0 2.1 2.2 2.3 テンプレート:Cite web
  3. 3.0 3.1 エニックス出版局 企画制作 『ドラゴンクエストへの道石ノ森章太郎監修、滝沢ひろゆき作画、エニックスガンガンコミックス〉、1991年、ISBN 9784870250031。
  4. 岡部麒仙『二大RPGの分岐点』 講談社出版サービスセンター、p.123
  5. HIPPON SUPER編集部・編『ドラゴンクエストIV MASTER'S CLUB』(JICC、1990年)pp.4-9 堀井雄二インタビュー
  6. テンプレート:Cite web
  7. 『ファミコン神拳奥義大全書ドラゴンクエスト』(集英社)
  8. SFC版『ドラゴンクエストI・II』公式ガイドブック p.77
  9. SFC版『ドラゴンクエストI・II』公式ガイドブック p.78
  10. 講談社フライデー2013年2月22日号より
  11. MICROGROUP:ゲーム批評:ゲームソフト批評 - マイクロマガジン社、2006年8月27日時点のページ(インターネット・アーカイブ


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