ドッキリ

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ドッキリとはバラエティ番組の表現手法のひとつ。番組進行を知らない、または虚偽の進行だけ知らされている出演者をだましたりイタズラを仕掛けたりして、出演者の反応を楽しむという手法。

語源は「ドッキリする」という心臓の鼓動が高まるほど驚く様子を表す言葉である。(後述の元祖どっきりカメラの影響)。 最後にネタばらしを行うが、ネタばらしは仕掛け人と呼ばれる進行役が番組名や「ドッキリ」と書かれたプラカードを持って登場する方式が多い。

歴史

1969年日本テレビで放送された番組「なんでもやりまショー」の1コーナー「どっきりカメラ」が日本におけるその元祖といわれる。その後、同コーナーは「元祖どっきりカメラ」として独立した番組となり人気を博す。同番組終了後は単発番組あるいはレギュラー番組内の単発企画として他局の番組でも頻繁に放送されるようになり、さまざまなドッキリの手法が考案された。ドッキリの普及によって近年は芸能人(特にお笑いタレント)側がドッキリに対して耐性があり状況を察して警戒してしまう傾向にあるため、ドッキリは逆ドッキリ(後述)や数週間や数か月と長期に渡って仕掛ける方式が増加している。

かつては一般人をターゲットにしたドッキリ番組もあったが、手法によっては自身のPRになる芸能人と異なり、一般人はターゲットにされれば一方的に全国に自分の恥を晒され、視聴者の笑い者にされる結果になるため、その場でターゲットを激怒させ、仕掛け人が殴打されるなど予想外の報復を受けたケースもある。

また、ターゲットの心情を著しく害した場合、名誉毀損罪侮辱罪などで告訴され刑事事件になったり、損害賠償請求訴訟を起こされる恐れもある。また、ここ近年の日本では放送倫理の厳格化が進み、放送局や番組の運営上も世論による厳しい非難が予想され、番組の打ち切りや放送局経営陣が辞任または解任に追い込まれる危険性が予想されることから、市民に対しては後述のインタビュードッキリを除き、行われるケースはない。

タレントを相手にしたドッキリ企画にしても、これがきっかけとなって仕掛けられたタレントと企画を受けた所属事務所の関係が悪化してしまうケースもあるなど、芸能事務所側にとってのリスクも小さくないことから、事務所側もこの種の企画に対して消極的になり、結果として、一部のお笑いタレントを例外とすれば行われることは少なくなっている。また、現在では行われるものにしてもお笑いバラエティ番組が中心であり、ターゲットもお笑いタレントやバラエティで自らが笑いの対象にされることを許容している芸能人が大半であるため、果たしてターゲットを本気で驚かせるドッキリの企画なのか、それともドッキリ番組の体裁を利用したパロディとして脚本の下で制作されている計算づくの企画なのか、判別の付かない様な内容のものも多い。さらに言えば、ターゲットとしていわゆるリアクション芸人ばかりを並べるなど、ドッキリの体裁を利用して芸人のリアクションで笑わせるパロディであることを事実上最初から明示しているような企画も珍しくはない。

日本国外におけるドッキリ番組

日本国外でもヨーロッパカナダなどで一般人や有名人をターゲットにしたドッキリ番組が放送されており、日本でも「世界まる見え!テレビ特捜部」(日本テレビ)などにおいてこれらの番組が放送されている。

一般人をひっかけるさまを隠しカメラなどで描く番組の始まりは、1948年8月10日にアメリカのABCテレビで放送開始された『テンプレート:仮リンク』(Candid Camera)にさかのぼる。プロデューサーのアレン・フント(Allen Funt)は同様のコンセプトのラジオ番組『キャンディード・マイクロフォン』(The Candid Microphone)を1947年6月28日よりABCラジオで始めており、映画化の後、テレビに進出した。『キャンディード・カメラ』は放送局を替えたり他の番組のワンコーナーになったりを繰り返しながら1970年代末まで放送され、以後も断続的にスペシャル番組などの形で放送されている。

『キャンディード・カメラ』は1960年代のイギリスなどでも現地版が制作された。またアメリカでのドッキリ番組は1980年代末から他の制作者によっても企画されるようになり、2000年代にかけてさまざまなドッキリ番組が放送されている。

主なドッキリの手法

  • 寝起きドッキリ - 出演者(主に女性アイドルやお笑い芸人)が宿泊しているホテルの客室へマスターキーを用いて早朝に忍び込み、コンサートやライブ明けで疲れ切って熟睡しているところを起こす。ドッキリの前に使用済みの備品や飲食物を物色する。冒頭に「おはようございます」と小声であいさつするのが慣例となっている。最後に相手を起こしてその反応を窺うが普通に起こす場合もあれば、“早朝バズーカ”を鳴らすなど派手な起こし方もある。視聴者が女性アイドルのすっぴん顔を見ることのできる数少ない機会。
  • ブーブークッション - 出演者が座るイスにブーブークッションを仕掛ける。「スターどっきり」以降、番組内で使われた「マンボNo.5のBGMにあわせてリアクション部分を何度も繰り返す」という演出がひとつのフォーマットとして(ほかのドッキリでも)使われるケースがある。ただし、地味なことから単体ではなく、「ビリビリペン」も触らせるなど複数の仕込みの一つとして行う場合が多い。
  • インタビュードッキリ - 素人へ街頭インタビューを行い、ある有名人に関連した質問をいくつか行なった後、後ろのワゴン車や物陰からその本人が突然登場する。特に有名人に対して否定的な意見が出たところに本人が登場する場面が見所となっている。人権上の問題から、現在の番組制作において一般人を使用できる唯一のドッキリ手法ともいえるが、この手法は有名すぎて誰もが知っているため使われにくい。それを逆手に取って美形芸能人についてインタビューを行い、本人が登場すると見せかけてそっくり芸のお笑い芸人が登場するというパターンもある。
  • 強盗、暴力団、高額な品物の破損事故など(もちろんウソの演技)のトラブルに巻き込まれた出演者の反応を窺う。110番通報されると虚偽申告(軽犯罪法第1条第16項違反)に発展してしまうので、その前にネタばらしがされる。
  • クイズ番組宝くじなどで一時的に大金持ちにさせる(もちろんウソ)。
  • グラビアアイドルなどの美女が仕事の休憩時や合コンの場で出演者(近年の日本のテレビ番組では主に男性お笑いタレントが対象となる)に対してハニートラップを仕掛け、ウソの電話番号やメールアドレスを教えたり(スタッフが前もって用意した)部屋に上がらせたりし、出演者の反応を窺う。出演者が調子に乗ったところでお仕置きを与えるケースも多い。
  • いわゆる大物・ベテラン有名人(主に和田アキ子江守徹など)が機嫌を損ねて激怒し(もちろん演技で本気ではない)、出演者の反応を窺う。
  • ターゲットの周辺でさまざまな心霊現象を人工的に起こし、出演者の反応を窺う。
  • 逆ドッキリ - ドッキリの進行役となるはずの仕掛け人が逆にターゲットとなる出演者にだまされる(例:脅かした相手がチンピラを思わせる怖い風貌だった、驚かすはずの相手に驚かされたなど)。いつもはターゲットにされる人物が「仕掛け人として別の人物にドッキリを仕掛ける」という場合に、実はターゲットとされていた人物は仕掛け人で本当のターゲットはやはり自分だった、という逆ドッキリのパターンも存在する。
  • やらせドッキリ - 事前にターゲットの出演者に仕掛けや段取りを説明し、ターゲットには知らずに引っかかったかの様な演技をやらせる。これは他のドッキリと異なり、自然に見えるように意識しすぎて返って不自然な言動やぎこちない演技を面白おかしく取り上げる場合は、最後のネタばらしで「視聴者にはやらせであることを説明してから放送する」と言う旨を伝える。また、これとは異なり視聴者にやらせだと説明した上で放送することをターゲットにも事前に伝え、ターゲットがアドリブでどれだけ非常識で面白い状況を用意できるかを試す場合もある。
  • 指令ドッキリ - ドッキリの変型版。芸能人に無茶な指令(例:若い女性にふんどしを売りつけろ、アイドルに変な踊りを踊らせろなど)を出し、その実行を見て窺う。事前に打ち合わせをするだけでなく、無線を用いて相手の反応に対し臨機応変に指示を出すものもある。
  • 解散ドッキリ - 仲が良いと言われている漫才コンビの一方が相方との距離をはかるため、一方的に解散の申し出を行う(もちろん演技)。その際に両者が感極まって涙してしまうことも多く、絆の強さをうかがうことができる。バリエーションとして、司会をしているバラエティ番組で突然の降板を表明し、出演者達がショックで涙したところでネタばらし、というパターンもある。
  • イス落ち - パイプ椅子に座った瞬間、体重で座面が外れて尻もちを突く(そのように仕掛けられている)。また、バランスが崩れるとひっくり返る。
  • 最近ではドッキリを仕掛ける前にあらかじめターゲットにネタばらしを行うものもあるが、その場合は大抵「仕掛けられたドッキリに対しどれだけ冷静さを保てるか」をターゲット達で競わせるゲーム要素を盛り込んだものである。

ドッキリ企画を行う代表的な番組