トウキ

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トウキ(当帰、Angelica acutiloba)は、セリ科シシウド属多年草漢方薬として用いられる。

特徴

は多く枝を分け、高さは20-80cmになる。茎と葉柄は赤紫色を帯び、茎、ともに毛は無く、葉の表面は濃緑色で光沢がある。葉は互生し、2-3回3出羽状複葉で、小葉は切れ込み、縁にはとがった鋸歯がある。葉柄の基部は鞘状に膨らみ茎を抱く。

花期は6-8月。枝先に複散形花序をつける。は白い5弁花で、花弁は内側に曲がり、歯片は無い。花序の下にある総苞片は無いか、あっても1個、小花序の下にある小総苞片は線形で数個ある。果実は長楕円形、分果の油管は表面側の各背溝下に3-5個、分果が接しあう合生面に8-10個ある。

本州中部地方以北の山地の岩の間などに自生し、栽培もされる。全草に強いセロリに似た芳香を持つ。

歴史

本来、中国の漢方で使われるトウキはカラトウキと呼ばれる品種であり、日本で使用されるトウキとは外見や成分、香りなどが僅かだが異なる。

江戸時代、全国各地域の藩により、特産品・製薬材料の商業品種として栽培が推奨された。その産地により、大和当帰、越後当帰、伊吹当帰、常陸当帰、仙台当帰などと呼ばれたが、徳川幕府8代将軍徳川吉宗の、薬種業の振興政策により全国各所に派遣された幕府奥御庭方で本草学者の植村左平次(植村政勝)および随行の大和国で代々続く吉野葛生産者で本草学者の森野藤助(森野通貞)らに大和国奈良県)で見出され、森野により栽培加工法が確立された「大和当帰」(主な生産地・宇陀郡)が優れた品種であるとされ、中でも奈良県五條市大深、和歌山県高野町富貴で生産される「大深当帰」が最高の品である、とされた。

現在同地方での栽培・生産はほぼ絶滅状態であり、製薬材料の代用として、大和当帰の製造法で国内外を問わずに生産されるトウキと、ホッカイトウキが主に使用されている。

利用

薬用植物として栽培もされる。は血液循環を高める作用があり、充血によって生じる痛みの緩和に有効。膿を出し、肉芽形成作用があるとされている。日本薬局方では「生薬トウキ」の基原植物は、トウキおよびホッカイトウキとされる。四物湯当帰芍薬散当帰建中湯補中益気湯紫雲膏当帰湯などの漢方方剤に使われる。

和名のトウキ(当帰)は、中国原産のカラトウキ (Angelica sinensis) の漢名、zh:当帰からとったものであるが、それとは別種である。本種の漢名はzh:東当帰という。

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脚注および参考文献

関連項目

外部リンク

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