トゥーフェイス

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トゥーフェイス(Two-Face)は、アメリカンコミック『バットマン』に登場する悪役の一人。本名はハーヴェイ・デント(Harvey Dent)。

人物

原作コミック

1942年にコミックに登場した息の長いキャラクターで、バットマンの代表的な敵の一人である。
ゴッサムの有能な地方検事であったハーヴェイはその整った容姿から「アポロ」とも呼ばれていた。バットマンの行動に理解を示し、ゴードン警部(当時)のバットマン追求から彼を守ったこともあった(『バットマン・イヤーワン』)。だが法廷でマフィアのボス、サル・マローニに硫酸を浴びせられ、顔の左半分と、左手に大きな損傷を受けた。それを契機に内に秘めた狂気が解き放たれ、トゥーフェイス(二つの顔)と名乗るようになった。
服装は常に右と左で柄の違うスーツである。近年は殆ど右が白、左が黒のスーツ。マローニの持ち物であった、片方を傷つけた1922年鋳造の1ドル銀貨を持つ。そのコイントスが彼の全ての行動を決定する。傷の付いた方が出た場合は悪事を働き、たとえ容易い悪事であっても、傷の無い方が出た場合はそれを中止する。犯す犯罪は「2」にまつわるものが多い。
二代目ロビンであるジェイソン・トッドの父親(トゥーフェイスの部下のチンピラだった)を殺害している。
元妻であるギルダを未だに愛している。また一時期ゴッサム市警の刑事レニー・モントーヤに好意を抱いていた。
ハーヴェイはゴードン市警本部長、バットマン(表の顔であるブルースも)の友人だったため、彼らはトゥーフェイスの犯罪に胸を痛めている。
整形手術によって何度か顔面を復元されて人格を取り戻しているが、その都度また元通りになってしまう。近年はバットマンの一年の不在の間、乞われて自警団員として務めていたが、やり過ぎた私刑行為からマフィアの連続殺害事件の犯人としてバットマンにまで疑われ、再び自ら顔面を傷つけトゥーフェイスに戻った。
『アーカム・アサイラム』では二者択一の強迫観念を克服するため、コインの代わりにまずサイコロ、次にタロットカードを与えられることで選択肢を増やすという精神治療を受けている。
1996年の『The Long Halloween』でその出自が若干変更され、コインの持ち主は彼の父となった。また、ハーヴェイは幼少の頃から父に虐待を受けており、心の中に暴力性を秘めた不安定な人格の持ち主として再設定された。それまでフィアンセとして描かれていたギルダはこの作品で妻として登場した。

実写映画

『バットマン』

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新任の地方検事補ハーヴェイ・デントが登場する。街を牛耳るギャング団撲滅を宣言する、彼の記者会見がジョーカー誕生の物語につながる。また、この作品では最後までデントのままである。
演じたのは『スター・ウォーズ』シリーズに出演したビリー・ディー・ウィリアムズ。細かい設定まで決められたアメリカンコミックの実写版で、黒人のウィリアムズが、白人であるハーヴェイに起用されたのは異例のことと言える。

『バットマン・フォーエヴァー』

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初めてバットマンと出会ったころ、ハーヴェイはまだ前途を有望視されていた新任の地方検事補で、ギャング団との対立に手を焼いていた。しかし裁判中、彼に恨みを持った暗黒街の顔役マローニに硫酸の入った小瓶を投げつけられ、左半身が醜く焼け爛れてしまう。硫酸を浴びたショックにより、デントは精神に変調をきたし、常に物事を裏表の両面で捉える二重人格になってしまった。この裁判を行っていたとき、バットマンが廷内にいたにも関わらず自分を救ってくれなかった(厳密には救おうとしたが間に合わなかった)ことから、彼はバットマンに恨みを抱くようになった。
バットマンに捕まってから2年目にアーカム収容所を脱走し、2年前と同じゴッサム第2銀行を襲撃した。また、彼が扱う銃は二連装、ダブルノック式である。シュガーとスパイスという、トゥーフェイスの二面性を表現している二人の娼婦を常に傍にはべらせている。その隠れ家は、半分は醜く荒らされていて、もう半分は美しい調度品によって満たされている(そこで用意された食事も、上等のシャンパンやレモンスフレと、子イノシシの丸焼きやロバの生肉など両極端である)。第2銀行襲撃後、同じくバットマンを狙うリドラーの持ちかけた同盟の申し出を受け、共同戦線を張りウェイン邸を襲撃しバットマンを追い詰めるも、最期はバットマンの仕組んだコインの雨作戦にのり転落死した。
傷ついた面が出るまで、何度もコイントスを繰り返すという、原作ファンが戸惑うシーンがあった。ハイテンションな演技もあいまって、ジョーカーのような性格を製作側は想定したものと思われる。ちなみに、原語ではもっぱら「Harvey Two-Face」と呼ばれている(エンドロールのクレジットも同じ)。
多くの作品でアクの強い役を演じる演技派俳優トミー・リー・ジョーンズがこれを演じた。

『バットマン & ロビン Mr.フリーズの逆襲』

本人は登場しないが、彼のスーツがリドラーのスーツと共にアーカム・アサイラムの囚人の私物保管所に保管されているシーンが登場する。

『ダークナイト』

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正義感と熱血さあふれる新任の地方検事ハービー・デントとして登場。「闇の騎士(Dark knight)」と呼ばれるバットマンとは対照的に「光の騎士(White knight)」として市民に尊敬されている。内務調査部に務めていた頃は「ハービー・トゥーフェイス(Harvey Two Face)」と呼ばれていた。常に父親の形見のコインを持ち歩いており、パフォーマンスとしてコイントスをする事が多い。
レイチェルと交際しておりブルースにとっては恋敵であったが、職を汚さず、堂々と法によって悪に制裁を加えることができるハービーをブルースは高く評価しており、悪をもって悪を制するバットマンは存在する必要がなくなると引退を考えるほどであった。またジョーカーによって悪へと堕落させられた時も、バットマンは「三人の中でハービーが最も高潔であったから」狙われたと発言しており、その高潔さを最後まで評価していた。一方、ハービーはブルースの人脈によって市長選の選挙資金の支援などの面では評価しているが、浮世離れして見える表向きのブルースに対しては軽蔑しており、バットマンとしての活動についても当初はあまり芳しくない評価をしていたが、共闘してゆく中でジョーカーの凶行や世間からのバッシングから庇うなど評価を改めている。バットマンとゴードンの関係をすぐさま見抜き、バットマンと一時共闘を結んでマフィアの資金を断つ作戦では一端の成功を遂げている。
しかし、実際のハービーは、ブルースが高く評価する程高潔で清廉潔白な人物ではなかった。ハービーを動かしていたのは、「正義」ではなく悪に対する復讐心にも近い「憎しみ」であり、表向きは誠実そうなそぶりを見せるも、捜査が思うように進まないと、人気の無い場所で拘束した犯罪者に対して、実際にはその気がなくともコイントスによる脅しで自白させようとするなど、目的のためには手段を選ばない一面がある。また、パフォーマンスのコイントスに使っているコインも、実は両面が表のエラーコインであり、「表向きは『公平』を主張しながら、内心では次の行動は『表の決定』以外に無い」という、ハービーの「独善」とも言える心理を物語っている。それを象徴するかのように彼の愛用するスーツは濃い灰色、(悪にあらずも正義では無いグレーゾーン)ネクタイも明るめの赤と濃紺ニ色のストライプと両極端である。これらのハービーの隠された内面を見抜いていたジョーカーは、レイチェルを死に追いやり、更には重傷を負ったハービーの前に現れて自らの無計画性、混沌の本質が公平さであることを説く事で、これまで信じてきた正義よりも「運」の力の方が強く、そして平等であるという強迫に目覚めせた。
熱血漢ともいえる行動でジョーカーの出現に勇敢に立ち向かい、自らを囮にすることで見事ジョーカーの確保に成功するが、自分自身を囮にする同じ方法で逆襲され、ガソリンを満載した倉庫に閉じ込められてしまう。バットマンによって辛うじて助けられるものの、かぶってしまったガソリンに倉庫が爆発した際に飛び散った炎が引火し、顔の左半面に重度のやけどを負ってしまい、それと同時に、ジョーカー(直接的にはマフィアに通じていた汚職警官)に拉致され、自分と同じ状況下にあったレイチェルは爆発に巻き込まれて死亡。更に病院にて姿を現したジョーカーによって心理的に追い詰められたハービーは、憎悪に支配された処刑人・トゥーフェイスと化してしまう。最初はジョーカーに対する怒りが強かったものの、レイチェルが殺されたショックもあり精神に変調をきたしてしまった結果、彼をどん底まで陥れた汚職警官たちとマフィアへ私刑行為を下すようになる。
トゥーフェイスとなった後は、愛用していたコインの片面が黒く潰れた事で、専らコイントスで相手を殺すかどうかを決定するようになり、「運だけが物事を公平に決められるもの」だとバットマンやゴードンに語っていたが、マロー二の命を狙って彼の車に乗り込みコイントスを行った際に、『表』の決定、つまりは「マローニを殺さない」という答えが出ていながら、再度コイントスで裏を出すと「彼に同乗していた無関係な運転手を射殺した事で、結局はマローニを殺している」点や、自らの本心では無く脅迫されて止むをえず悪事を行った刑事はコイントスのみを行い解放するなど、その決定はやはり自分に都合の良いアンフェアなものであり、独善的で目的の為に手段を選ばないという本質に関しては、あまり変わっていないとも言える。
最終的に愛する者を失う悲しみを理解させると言う名目でゴードンの家族を人質にするが現れたバットマンに隙を見せた瞬間、体当たりを受けそのまま転落死した。死後、バットマンが彼の死を含めた罪を被ることで「光の騎士」としての名誉は守られた。
リアル指向の本作において、彼の傷ついた顔はCGによるモンスター染みたデザインとなっている。このデザインは上記の原作コミック『The Long Halloween』をイメージしたものと言われている。スーツも、上述の爆発で左半分が真っ黒に焼け焦げたものをそのまま着用している。
過去の作品においては完全な悪役であったのとは違い、本作では悲劇的な悪役として描かれると共に、人間の内なる二面性を象徴する哲学的なキャラクターとなっている。
ジョーカーの登場が大きく取り上げられている本作では、トゥーフェイス関係の情報は映画公開まで伏せられたため、サプライズ的な登場となった(ポスターや予告編ではトゥーフェイスの登場を予感させる場面がある)。
演者は『エリン・ブロコビッチ』や『サンキュー・スモーキング』に出演したアーロン・エッカート

『ダークナイト ライジング』

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直接の登場はしないが、ゴッサムの治安に影響を与えた存在として序盤から中盤にかけて随所でキーパーソンとなる。
前作で彼の罪をバットマンが被ったことで生前の名誉は保たれ、組織犯罪と戦い、街に平和をもたらした英雄とされている。また、デント法と呼ばれる新法によりゴッサムの犯罪検挙率は格段に上がっており、その存続が現市長のマニフェストにもなっている。
しかし、ベインによってジム・ゴードンの告白を綴った原稿が大衆の面前で読み上げられる形で真実が暴露されると、8年間の平和が偽りの上に成り立っていたものであることが明るみになり、ベインに扇動された貧困層を主とする市民たちの警察および支配層への疑心・不満を爆発させるきっかけとなってしまう。さらにデント法で捕らえられたブラックゲート刑務所の囚人たちも全て解放され、彼の業績は名声と共に消えてしまった。ただし、これらによって、結果的にバットマンが被っていた「光の騎士を殺した殺人者」という汚名が濯がれたのも、また事実である。

テレビアニメ

『バットマン』シリーズ

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地方検事選再選を目指すストレスからか、自身の凶暴な人格ビッグ・バッド・ハーブを抑えきれなくなっていたハーヴェイは、精神科医レスリーの診察を受けていた。それをマフィアのボス、ルパート・ソーンにかぎつけられ、公表すると脅された彼は、ビッグ・バッド・ハーブが発現して大暴れする。バットマンの静止も聞かず、逃げ出したソーンを追う彼は工場の爆発に巻き込まれ、顔の半分を傷つけられてしまった。
最終エピソードではアニメオリジナルキャラクタージャッジとして、ゴッサムの悪役を次々と叩きのめしていた。それはハーヴェイもトゥーフェイスも知らない新たな人格によるものだった。ジャッジの声はマラチ・スローンが担当。
担当声優はリチャード・モール。日本語版は大塚明夫
本作の日本語版では彼のファーストネームは「ハービー」と発音されている。

『バットマン・ザ・フューチャー』

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40年後の近未来を描いたシリーズ。OVA『蘇ったジョーカー』の冒頭にバッタランで首を切り裂かれるトゥーフェイスの人形が登場するはずだったが、アメリカの規制によりキャンセルされてしまった。そのためこのシーンは若干、老ブルースの目線などが不自然である。

担当声優

アニメ・ゲーム作品

日本語版

実写作品

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