シェー
シェーは、赤塚不二夫の漫画作品、『おそ松くん』の登場人物イヤミが行うギャグ。一般に、とても驚いた時に下記のポーズを取りながら「シェー」と叫ぶ。
ポーズ
右腕または左腕を垂直に上げ、手首を直角に曲げる。反対側の腕は肘を曲げ、ひじから先を床と平行とする。同時に左脚または右脚を上げて膝を曲げ、膝から先を床と平行として、反対側の片脚で立つ。垂直に上げる腕と膝を曲げる脚は、反対側でも同じ側でもよい。漫画では、上げた足の靴は脱げ、靴下がずり下がった状態が多い。
なお、「シェー」と叫ぶだけでポーズを取らないこともあり、「シェー」とは言わずにポーズだけ取ることもある[1]。
流行と影響
このギャグは1960年代に日本全国を席捲した。当時、『おそ松くん』を連載していた「週刊少年サンデー」では、企画として読売ジャイアンツの王貞治選手など、各界の有名人に「シェー」をさせたグラビアを掲載した。1966年に来日したビートルズも「シェー」を行い、1970年には当時10歳であった徳仁親王(現在の皇太子)が大阪万博三菱未来館を訪れた際に「シェー」を行っている[2][3]。『おそ松くん』アニメ第1作放映時には、「ビルダー・シェー」という商品名の足が半円状になった踏み台が売り出され、その上に立ってバランスを取りつつ「シェー」をする遊び方が推奨された。
1965年に公開されたゴジラシリーズの『怪獣大戦争』の中で、ゴジラが「シェー」をするシーンがある。また、『怪獣大戦争』では、出演者の宝田明、沢井桂子、ニック・アダムス、水野久美がゴジラと並んで「シェー」をしている宣伝スチールも作成されている。さらに『怪獣大戦争』と同時上映された『エレキの若大将』でも田中邦衛が劇中で「シェー」をするシーンがあった。
同年の大映映画『鉄砲犬』でも、田宮二郎がシェーをしてヤクザ達を煙に巻くシーンがある。さらに、1966年の日活映画『大空に乾杯』では、和泉雅子がシェーを行なっている。
カナダのロックバンド、メン・ウィズアウト・ハッツが1982年にリリースしたセーフティ・ダンス (SAFETY DANCE) のミュージック・ビデオの中にも「シェー」のポーズが映し出されている。
『ゲゲゲの鬼太郎』に登場する妖怪いやみは、たまたま同じ読みなだけで「おそ松くん」のイヤミとは直接関係ないが、アニメ第3,4作に登場した際に(第4作は厳密にはいやみに憑かれていた男)シェーをする場面がある。
1993年には、F1ドライバーのアイルトン・セナが、日本テレビのバラエティ番組内で石橋貴明、定岡正二と共にシェーをしている。
2000年12月31日に放送された日本テレビの特別番組『いけ年こい年世紀越えスペシャル2000〜2001』で、「20世紀を代表するギャグ」としてシェーを2001連発するという、「2シェー1年 シェー2001発」という企画が行われた。
また、赤塚不二夫漫画家稼業50周年企画として展示会「赤塚不二夫 サンシェーッイン ギャラリー」が2006年7月22日から9月3日にわたりサンシャイン60展望台スカイギャラリーにおいて開催された。ここでは「シェー」そのものがテーマとされ、赤塚のキャラクター全員が「シェー」のポーズをしているパネルが入口に展示されていた。
2009年8月26日から9月7日まで行われていた「追悼赤塚不二夫展」では、様々な漫画家が自作のキャラクターにシェーをさせたものや、著名人がシェーをした写真で壁面を埋め尽くす「シェーッ!オンパレード」と題した企画が行われた。展示されたイラストやスナップショットの一部は期間限定で追悼展公式HP内の「今日のシェーッ!」コーナーで閲覧することが出来た(閉会した現在も一部の画像が閲覧可能)。
語源・由来
「シェー」という発音は、本来、「ヒェー」と叫ぶつもりなのに、イヤミの前歯は大変なすき歯であるため、空気が漏れて「シェー」となってしまったとされる。他にも、イヤミのフランスかぶれ的なキャラクターから転じて、フランス語のスラングchier(シエー=糞ったれ)から来たとする説もある。ただし一般的にこのフランス語のスラングはchier一単語ではなく、faire(する)を組み合わせてfait chier(フェシエー=糞しやがれ)と言うことが多い。また星新一は、赤塚不二夫が満州からの引揚者である事実に着眼し、中国語の「謝謝」の発音が幼児期の赤塚に刷り込まれた可能性を指摘している(イヤミならびに「シェー」の考案者である高井研一郎も上海からの引揚者である)。
またアニメでのイヤミの発音は、第1作は高音の裏声で「シェー」。第2作は地声ベースの「シエー」となっている。