サイカチ

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テンプレート:生物分類表 テンプレート:Sister テンプレート:Sister サイカチ(皁莢、学名:Gleditsia japonica)はマメ科ジャケツイバラ亜科[1]サイカチ属の落葉高木。別名、カワラフジノキ。漢字では皁莢と表記するが、本来「皁莢」はシナサイカチを指す。日本の固有種で本州、四国、九州の山野や川原に自生する。また、実などを利用するために栽培されることも多い。

樹齢数百年というような巨木もあり、群馬県吾妻郡中之条町の「市城のサイカチ」や、山梨県北杜市(旧長坂町)の「鳥久保のサイカチ」のように県の天然記念物に指定されている木もある。

特徴

幹はまっすぐに延び、樹高は15mほどになる。幹や枝にはするどい棘が多数ある。葉は互生する。1回または2回の偶数羽状複葉で長さ20-30cm。長さ2cmほどの長楕円形の小葉を6-12対もつ。花は雌雄別で初夏、5-6月に咲く。長さ10-20cmほどの総状花序。花弁は4枚、黄緑色で楕円形をしている。秋には長さ20-30cmで曲がりくねった灰色の豆果をつけ、10月に熟す。鞘の中には数個の種子ができる。種子の大きさは1cmほど。

利用

木材は建築、家具、器具、薪炭用として用いる。

豆果は皁莢(「さいかち」または「そうきょう」と読む)という生薬で去痰薬、利尿薬として用いる。

またサポニンを多く含むため古くから洗剤として使われている。莢(さや)を水につけて手で揉むと、ぬめりと泡が出るので、かつてはこれを石鹸の代わりに利用した。石鹸が簡単に手に入るようになっても、石鹸のアルカリで傷む絹の着物の洗濯などに利用されていたようである(煮出して使う)。

棘は漢方では皂角刺といい、腫れ物やリウマチに効くとされる。

豆はおはじきなど子供の玩具としても利用される。

若芽、若葉を食用とすることもある。

昆虫との関係

サイカチの種子にはサイカチマメゾウムシという日本最大のマメゾウムシ科の甲虫の幼虫が寄生する。マメゾウムシ科はその名前と違って、ゾウムシの仲間ではなく、ハムシ科に近く、ハムシ科の亜科のひとつとして扱うこともある。サイカチの種子は硬実種子であり、種皮が傷つくまではほとんど吸水できず、親木から落下した果実からはそのままでは何年たっても発芽が起こらない。サイカチマメゾウムシが果実に産卵し、幼虫が種皮を食い破って内部に食い入ったときにまとまった雨が降ると、幼虫は溺れ死に、種子は吸水して発芽する。一方、幼虫が内部に食い入ったときにまとまった雨が降らなければ幼虫は種子の内部を食いつくし、蛹を経て成虫が羽化してくることが知られている。

サイカチの幹からはクヌギコナラと同様に、樹液の漏出がよく起きる。この樹液はクヌギやコナラの樹液と同様に樹液食の昆虫の好適な餌となり、カブトムシクワガタムシがよく集まる。そのため、カブトムシを「サイカチムシ」と呼ぶ地域もある。クヌギやコナラの樹液の多くはボクトウガによるものであるという研究結果が近年出ているが、サイカチの樹液を作り出している昆虫はまだ十分研究されていない。

文学

3855 菎莢爾 延於保登礼流 糞(尿)葛 絶事無 宮将為

    • かわらふじに 延ひおほとれる屎葛(くそかづら) 絶ゆることなく宮仕えせむ(高宮王

脚注

  1. クロンキスト体系ではジャケツイバラ科とする。