サポニン

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サポニン (saponin) は、サポゲニンから構成される配糖体の総称である。サボンソウをはじめとするさまざまな植物で見られ、一部の棘皮動物ヒトデナマコ)の体内にも含まれる。白色の無定形粉末で、両親媒性を持つため、に混ぜると溶解し、振り混ぜると石鹸のように泡が立つなどの界面活性作用を示す。

毒性

界面活性作用があるため細胞膜を破壊する性質があり、血液に入った場合には赤血球を破壊(溶血作用)したり、水に溶かすと水生動物のの表面を傷つけたりすることから魚毒性を発揮するものもある。サポニンはヒトの食物中で必要な高比重リポタンパクつまりコレステロールの吸収を阻害する。こうした生理活性を持つ物質の常で作用の強いものにはしばしば経口毒性があり、蕁麻疹や多型浸出性紅斑を起こす。特に毒性の強いものはサポトキシンと呼ばれる。構造の類似した物質でも、強心配糖体(ジギタリスジギトキシンジゴキシンなど)や植物ステロール配糖体は普通サポニンには含めない。血液に対する溶血性を調べる実験においては、陽性対照薬として使用されることがある。

存在

サポニンが含まれる植物には次のようなものがある。

用途

サポニンを高濃度で含む植物は昔は石鹸代わりに洗濯などに用い(ムクロジ、サイカチの果実など)、現在でも国によってはシャンプーなどに用いている。魚毒性のあるもの(エゴノキの果皮など)は魚の捕獲に用いたといわれる。日本で昔からこの用途に使われたと伝承されているエゴノキの果皮を使った実験では、即効性の魚毒性は案外低く、即効的な麻痺効果のあるサンショウと比べて毒流し漁にはそれほど適さないとする実験報告もある。

またダイズ、種子、エンジュなどのサポニンが食品添加物乳化剤)として用いられている。

医学的用途

漢方薬などの生薬にはサポニンを含むものが多い。特に界面活性作用を利用した去痰薬(キキョウ、ハンゲ、セネガなど)がよく知られるが、ほかに補気作用(ニンジン、オウギ、ナマコ)など、様々な薬理作用を示すものが知られている。

サポニンの一部には血糖値上昇抑制活性を有するものがある。膵臓β細胞に障害を与えたアロキサン糖尿病モデル(1型糖尿病に相当)に対してタラノメ抽出物を投与したが改善効果は認められなかった。一方、ラットへのブドウ糖ショ糖の負荷投与に際して血糖値上昇が7 - 8割も抑制された。このことから、タラノメは糖尿病の治療というよりも予防や悪化防止に効果があると考えられる。タラノメのエラトシド(elatoside)類、トンブリのスコパリアノシド(scoparianoside)類とコチアノシド(kochianoside)類、サトウダイコンのベータブルガロシド(betavulgaroside)類、アカザ科植物のホウレンソウ(Spinaciaoleracea)やツルムラサキ(Basellarubra)のスピナコシド(spinacoside)類とバセラサポニン(basellasaponin)類、トチノキ種子のエスチン(escin)類、イソエスチン(isoescin)類、チャの葉や種子のテアサポニン(theasaponin)類、アッサムサポニン(assamsaponin)類、ツバキ種子のカメリアサポニン(camelliasaponin)類、ギムネマ葉のギムネモシド(gymnemoside)類、セネガ根のセネガサポニン(senegasaponin)類の構造の類似したサポニンに同様に血糖値上昇抑制活性が認められた。これらのサポニンにはマルトースをグルコースに分解するα-グルコシダーゼの阻害活性は認められなかった。また、アロキサン糖尿病モデルにはいずれも無効であったため、末梢での糖代謝促進作用はなく、インスリン分泌の促進やインスリン様の作用もないことが判明し、小腸でのグルコースの吸収抑制等によるものであった[1]

雄の2型糖尿病マウスに大豆サポニンAグループと大豆サポニンBグループを別々に投与したところ大豆サポニンBグループに血糖値上昇抑制作用は認められたが大豆サポニンAグループにはその作用は認められなかった[2]

脚注

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関連項目

外部リンク

テンプレート:Commons category

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  1. 薬用食物の糖尿病予防成分、吉川雅之、化学と生物Vol.40、No.3、2002
  2. ソヤサポニンBの血糖上昇抑制効果、田中 真実ほか、日本未病システム学会雑誌、Vol.12 (2006) No.1