キビヤック

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

キビヤックキビャック(kiviakやgiviakと音写されることが多い)とは、グリーンランドカラーリット民族やカナダイヌイット民族、アラスカ州エスキモー民族が作る伝統的な漬物の一種、発酵食品である。海鳥(ウミスズメ類)をアザラシの中に詰めこみ、地中に長期間埋めて作る。

材料

ファイル:Auks - Alle alle.jpg
ヒメウミスズメ
キビヤックの材料となるのは、現地でアパリアス(グリーンランド語:Appaliarsuk)と呼ばれる海鳥[1]の一種とアザラシである。北極圏の短い夏の間、飛来したアパリアスの群れを捕虫網のような道具で捕獲する。

製法

  1. 捕獲したアパリアスを直射日光の当たらない涼しい場所に1日ほど放置して冷やす(内臓が早く傷まないようにするため)。
  2. アザラシの腹を裂き、皮下脂肪のみ残して内臓をすべて取り出す(但し、皮下脂肪は残さないという説もある[2])。
  3. 袋状の空になったアザラシの内部にアパリアスを(羽などをむしらず)そのままの形で数十羽程詰め込み(資料によれば700羽とする記述もある)、アザラシの腹を縫い合わせる。縫合口にハエが卵を産み付けるのを防ぐために、日干ししたアザラシの脂(プヤ)を塗ったりもする。
  4. これを地面に掘った穴に埋め、空気抜きとキツネなどに食べられないようにするため上に石を置いて2ヶ月から数年間放置・熟成する。
  5. アザラシを掘り出し、中からアパリアスを取り出して賞味する。

賞味法

食べるときはアパリアスの尾羽を除去した後、総排出口に口をつけて発酵して液状になった内臓をすする。肉も、皮を引き裂きながらそのまま食べる。歯で頭蓋骨を割り中身の脳味噌も食する。

また、液状になった内臓を調味料として焼いた肉などにつけて食べることもある。発酵により生成されたビタミンを豊富に含むため加熱調理で酸化・分解してしまった生肉中のビタミンを補う機能があるとされ、かつては極北地域において貴重なビタミン源の一つであった。

誕生日、クリスマス結婚式成人式などの祝宴の席でよく供される。

強い臭気

美味だが非常に強い臭気があるとされシュールストレミングくさやホンオフェと並び世界の異臭料理として有名である。

臭い食べ物の代表例

テンプレート:臭い食べ物

補注

テンプレート:脚注ヘルプ テンプレート:Reflist

参考文献

  • 『発酵食品礼賛』小泉武夫(1999、文藝春秋) ISBN 4-16-660076-1
  • 『植村直己の冒険学校』植村直己(1986、文藝春秋) ISBN 4163407804
  • 『エスキモーになった日本人』大島育雄(1989、文藝春秋) ISBN 4-1634-3500-X

関連項目

テンプレート:Food-stub
  1. アパリアスをウミツバメ類としている資料もあるが誤りである。正しくは「ウミスズメ類」であり、グリーンランドではその中でもヒメウミスズメ(学名:Alle alle)がよく使われるという("en:The Wilson Bulletin" vol.106, en:Wilson Ornithological Society(1919) - 原文資料(英文)要約解説(和文))。和文文献(監修/成瀬宇平他 『食材図典2』 小学館、2001年、ISBN 4095260831) - 抜粋解説)。なおウミツバメ類はミズナギドリ目、ウミスズメ類はチドリ目であり名称は似ているが別の系統の鳥である。
  2. 皮下脂肪を残すという説は植村直己の著書に見られる。残さないという説は小泉武夫の著書に見られる。