ガイガン

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ガイガン (Gigan) は特撮映画『地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン』、『ゴジラ対メガロ』、『ゴジラ FINAL WARS』などに登場する架空の怪獣である。別名は「未来怪獣[1]テンプレート:Sfn」「サイボーグ怪獣[2]テンプレート:Sfn」。

特徴

頭部に備えたゴーグルの様な単眼と大きな角、肘から先が大きな鉤爪状になっている両腕ハンマーハンド[3]が特徴。腹部の回転と額に埋め込まれた光線砲などが、サイボーグ怪獣という、ゴジラシリーズにおいて特異な存在である事の象徴となる。背中には翼状の鰭を3枚持ち、手足の付け根や胴部にプロテクターらしき物を備える。

キングギドラなど他の悪役怪獣とタッグを組むことが多い。その華麗な姿と残忍な闘いぶり、徹頭徹尾悪役として登場した独特の存在感[4][5]が特徴である。

『ゴジラ対ガイガン』が公開されると、派手なデザインのガイガンは子供たちから人気を集め[6]、翌年には次作『ゴジラ対メガロ』、さらにテレビ番組『流星人間ゾーン』(日本テレビ、東宝)にも登場する名敵役となった。樋口真嗣も気に入っていた。

検討用脚本『SOS日本! ゴジラ特攻作戦』ではタイタン星人に操られる怪獣として登場した。

デザイン

初代ガイガンのデザイナーは、かつて少年マガジンを中心に挿絵画家として活躍していたイラストレーターの水氣隆義である。ただし2008年末に水氣自身のWebサイト[7]で公表されるまで東宝でもその事実は知られておらず、漫画家水木しげるの原案、もしくは水木の妖怪おんもらきのイラストがデザインモチーフなどと推測された[8]。 水氣自身が公表するまで東宝関係者の間ですら「ガイガンは『講談社のミズキ』なる人物がデザインした」[9]ことしか知られておらず、当時該当するのが水氣と水木しかいなかったことが原因であった。水氣自身も、ガイガンのデザイナーが不明とされている事については知らず、ガレージキットについてネットサーフィンをしていた際に初めて知り、その後マーミットでの商品企画時に東宝と交渉して正式に認定された。

東宝から発売されていた資料では井口昭彦によるデザインだとされていたが、こちらは井口本人によって否定されている。

上述のような事情から、メインとなっているモチーフが鳥類恐竜である事までは推測されていたが何の鳥なのかまではわからず、水氣自身によりなど大型の鳥類をベースとして様々な武器や三角形を鋭利なイメージでまとめたものである事が公表された。デザインの方向性としては、成田亨によるウルトラ怪獣のような統一性のあるデザインを目指したという。

特徴的なサングラス状の目は「山と谷と雲に出演していた日活スター石原裕次郎」から着想を受けたもので、当初の構想ではサングラスの下に左右へ動く単眼が埋め込まれている設定であった。鉤爪状の両腕や一本爪だけの足はバルタン星人に影響されたもの。腹部の金のウロコは、スーツではキングギドラのそれと同様のものが使用されているが、水氣自身は黄色い鳥の羽毛をイメージしていたテンプレート:Sfn

名前の由来はナイスガイの「guy」と、メインモチーフである「雁」を合わせて水氣自身が命名したもの。目のデザイン同様、ナイスガイも石原のイメージに由来するものだったが、他社のスターがモチーフである事を当時は明言できず、周囲には「外敵であるから」という後付の理由で説明していたという。1971年11月25日付の東京新聞には「ガイガーカウンターに由来する」という記述もあった。

登場作品

公開順。

  1. 地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン(1972年)
  2. ゴジラ対メガロ(1973年)
  3. ゴジラ FINAL WARS(2004年)

ゴジラシリーズ(昭和)のガイガン

(各作品共通)

  • 身長:65メートル
  • 体重:2万5千トン
  • 飛行速度:マッハ3

『地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン』

M宇宙ハンター星雲人が宇宙恐竜をサイボーグ改造した怪獣で、地球侵攻のためキングギドラと共に宇宙から飛来する。宇宙空間を移送の際は青い水晶のような円盤の中に入っており、大気圏内では羽根を拡げず、畳んで飛行する。

M宇宙ハンター星雲人が設置した「ゴジラタワー」と言う司令基地から放たれる特殊な磁気テープの信号で操られ、キングギドラと共に大規模な破壊活動を展開する。その後、ゴジラアンギラスと対戦、激闘を繰り広げる。ハンター星雲人の支援もあってゴジラ達を追い詰めるも、地球人がゴジラタワーを破壊したため形勢を覆された上、誤って正面衝突したキングギドラと喧嘩してしまったことでゴジラとアンギラスの連携攻撃をまともに喰らってしまい、最後はキングギドラともども宇宙へ撤退する。額にあたる部分に光線砲が埋め込まれているが、一度も使うことはない[10]。劇中では戦闘機の編隊をわざわざ一機ずつハンマーハンドで叩き落とし、70式メーサー殺獣光線車の攻撃にはなす術もなく逃げ惑う。遠距離攻撃はキングギドラとゴジラタワーが担う[11]

造形
造形者は安丸信行。当初背中の翼の形状は半円に近い形で小さく、また首も若干長かったが、撮影中に改修されているテンプレート:Sfn。港のシーンは改修前に撮られたものでテンプレート:Sfn、この改修前のタイプは当時のソノシート写真などにも使われ、メディア露出も多かった。またこの着ぐるみのみ、腹のカッター部分に可動する仕掛けがあるが、これは電装モーターで上下に刃を高速動作させて回転機能を表現したものだったテンプレート:Sfn。画面では分かりづらいが、頭頂部の角に対応して、口内の上側に三角形の突起が造形されている。
フロンガスによるジェット噴射のギミックを仕込んだ1尺サイズの飛行モデルが作られた。
特技監督の中野から、「恐竜は極彩色だったのではないか」、「臨戦態勢で身体を大きく見せたい」との考えによるデザイン要求があり、色彩が派手にされ、また手を鎌状にして、両手を拡げた構図が「X」状になるよう工夫された。胸の意匠には、これも中野監督の意向で十二単が採り入れられた。

『ゴジラ対メガロ』

メガロを支援するため、シートピア海底人がM宇宙ハンター星雲人にガイガンによる応援を要請し、それによりM宇宙ハンター星から飛来する。メガロと共にジェットジャガーを2対1で追いつめるが、ゴジラが登場したために形勢が逆転。ジェットジャガーに右腕を圧し折られた後、空中高く投げられそこにゴジラの放射火炎を受け、地面に大きく叩きつけられ戦闘不能になり、メガロを残し宇宙へ退却する。

  • 『対ガイガン』でガイガンを演じた薩摩剣八郎本人は著書『ゴジラが見た北朝鮮』において、メガロを演じたと記述しており、『対メガロ』時のスーツアクターは不明。
  • 着ぐるみは新調されている。前作のものと同一個体とされているが、顔が縦長になり、前作にあった歯が本作ではかなり減った。

『ゴジラ FINAL WARS』のガイガン

  • 身長:120メートル
  • カマ(ブラッディ・トリガー)の長さ:45メートル
  • チェーンソー(ブラッディ・チェーンソー)の長さ:45メートル
  • 体重:6万トン

本作ではX星人の操る怪獣として登場。単眼から散弾状の破壊光線(拡散光線ギガリューム・クラスター)と、胸部から小型の丸ノコ(ブラデッド・スライサー)、両腕から鎖を発射する能力を持つ。

かつてX星人が地球に侵攻してきた時に使役され、先代のモスラを倒して当時の古代文明を滅ぼし、その後、ミイラとなって海底で眠っていた。北海道近辺の海で、地球防衛軍に回収されて保管されるが、X星人の再来襲時には統制官の掛け声で再起動。「ギガリューム・クラスター」で地球防衛軍本部を破壊し、南極でゴジラを復活させようとする轟天号を妨害しようとするが失敗。ゴジラ復活後は、その首にチェーンをかけて引き込み、胸のカッター(ブラデッド・カッター)で倒そうと迫るが、至近距離からの熱線で頭部を吹き飛ばされ倒される。

その後、飛来したモスラに対し破壊された頭部を新造、両腕のブラッディ・トリガーをブラッディ・チェーンソーに換装されるなどの強化改造を施されて再戦することになる。モスラとの激しい空中戦の末にブラッディ・チェーンソーを使った空中逆手不意打ち切りでモスラの羽を切断し一度は撃墜する。モンスターXと共に東京でゴジラと闘うが、ゴジラを倒すことは出来ずに、再び飛んできたモスラを追撃、ブラデッド・スライサーで油断させた隙に放ったギガリューム・クラスターによって倒したかに見えたが、モスラの放った鱗粉で軌道を狂わされたカッターによって自らの首を切断され、直後モスラのファイアーヒートアタックによって倒される。

造形
デザイナーは韮沢靖
再登場怪獣としては最も見た目が変わっており、その身体はダークメタリックブルーのレザーで覆われたようなものとなり、関節部には刃のついた装甲、そして両腕には大型化された機械武装が装備され、よりサイボーグらしさが強調されている。また、前者と比較して体系はややスマートになり、鱗の意匠は失われ、ダークメタリックブルー、シルバー、メタリックレッドを基調としたカラーリングとなっている。
着ぐるみのほかに改造前の形態の飛び人形が製作されているが首の部分の色が改造後の銀色になっている。
玩具
映画公開にあわせて発売されたバンダイのソフビムービーモンスターシリーズ(第一次製造型)は、早期に完売(後に小型化された第二次製造型ソフビが発売された)。
前年の3式機龍と同サイズで超合金としても発売。首や頭部の付け替えで、飛行形態や強化形態を再現可能。メタルブラックとメタリックレッドを基調とした韮沢のデザインカラーに合わせた限定版も発売された。

『流星人間ゾーン』のガイガン

第11話「間一髪 ゴジラの叫び!」に登場。M宇宙ハンター星雲人の怪獣としてではなく、ゾーンファミリーの敵であるガロガバラン星人に操られる「恐獣」として登場する。宇宙からやってきてゴジラやゾーンファイターと戦う。一度はゴジラに倒されるが「ガイガン忍法生き返りの術」で復活する。ゾーンとの死闘の末、流星ミサイルマイトの直撃を受けて泡を噴いて絶命、直後に大爆発する。復活の際、「両腕の爪がある限り不死身」とナレーションされていて、ゾーンの流星プロトンビームで爪を傷つけるシーンがあるが、結局は有耶無耶にされたまま終わる。

  • 着ぐるみは『ゴジラ対メガロ』で新調されたものの流用。スーツアクターは図師勲

『ゴジラアイランド』のガイガン

宇宙最強の殺し屋怪獣として、ゴジラと西部劇を想わせる対決を繰り広げる。サムライ的な、ストイックでニヒルなキャラクター。のちにはデストロイア、メガロの卑怯なやり口にゴジラを助けるなど、ライバル的性格を強くしていく。自分の名前を汚した変身怪獣ドロリンとも戦う。目からは弓矢状の光線を出し、矢文としても使用する。

M宇宙ハンター星雲人が、幽閉されているハンター星雲人の解放を条件にザグレスに貸し出す。非常にプライドの高い性格で、戦闘の前には相手を分析し、イメージトレーニングをすることも欠かさない。更に対戦前には相手に挑戦状を送るなど、古風な面も持ち合わせている。また、一対一の対決を好み、邪魔をするものは例え味方でも排除する。ゴジラとの戦いはサンダ平原で行われ、長い睨み合いの末、一回戦は勝利する。一回戦は痛み分けに終わったため、後日行われた2回戦でゴジラと再び対戦し、敗れる。その後、ゴジラを倒すためにマタンゴ島で修行を続けていたところ、デストロイアメガロがゴジラを襲っているところに遭遇。ゴジラと共闘して2体を倒す。このときには「お主を倒すのは拙者だ」と捨て台詞を吐く。第2シーズンでも修行を続けており、このときはランデスの誘いに乗らない。変身怪獣ドロリンに騙され、一時ゴジラと喧嘩状態になるが、再びゴジラと共闘してドロリンを倒す。武器は腕のカッターと目からの光線。劇中にてルーカスが「20世紀のゴジラと戦った奴と同じ種族」と語る。

その他の作品

  • 漫画『怪獣王ゴジラ』に悪の科学者であるマッド鬼山が、かつてM宇宙ハンター星雲人に操られた個体を改造したネオ・ガイガンとして登場。
  • 『CRゴジラ3・4』の実写カットは『FINAL WARS』の着ぐるみを使用。『4』ではキングギドラ、アンギラスとともにゴジラと戦うムービーがある。スーツアクターは西村郎(4)。

関連項目

脚注

テンプレート:Reflist

参考文献

テンプレート:ゴジラ
  1. テンプレート:Cite book
  2. テンプレート:Cite book
  3. 一見、刃物のような形状だが実態は鈍器である。
  4. スクリーン特編版 ゴジラvsモスラ特集号(1992年近代映画社)のp75では、キングギドラは「威厳に満ちた大悪役」、ガイガンは「血に餓えた凶暴な殺人鬼」、メカゴジラは「冷たく冷静なプロフェッショナル(の殺し屋)」のイメージがあると評している。
  5. なお、キングギドラやメカゴジラなどは、作品によっては善役(=ゴジラと戦う人間側)で描かれる事もある(『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』、『ゴジラvsメカゴジラ』など)
  6. 「斬新なデザインが子どもたちに受け、デビュー作『ゴジラ対ガイガン』につづき、翌年の『ゴジラ対メガロ』にも連続出演を果たしている。」 - ゴジラマガジン Vol.2(1993年勁文社
  7. 水氣隆義のデザインになる『ガイガン』
  8. 「ゴジラ画報」1993年(竹書房)P153、「妖怪馬鹿」2001年(新潮社)P245、「映画秘宝」2008年11月号(洋泉社)P37(中野昭慶インタビュー記事) 
  9. 中野昭慶の発言より。なお中野本人は「講談社のミズキなる人物」のデザインである事は知っていたが、それが水木しげるだと明言はしていなかった
  10. ゴジラに岩をぶつけられた際には、一瞬だけ発光する描写がある。さらに劇場ポスターでは、この光線砲からビームが発射されている。
  11. ゴジラ怪獣を紹介する本の中では、その他に「目からビームが出る」「口から熱線が吐ける」という記述がなされ、ゲームなどでは使用されるが、やはり劇中にそのようなシーンはない。
  12. バンダイムービーモンスターシリーズ超合金ガイガン2005など。
  13. テンプレート:Harvnb 「平成ゴジラバーニング・コラム」No.024。