カナブン

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カナブン(金蚊)は、コウチュウ目コガネムシ科ハナムグリ亜科に属する昆虫であり、やや大型のハナムグリの一種である。

ただし、近縁のが数種あり、さらに、一般にはコガネムシ科全般、特に金属光沢のあるものを指す通称として「カナブン」と呼ぶ場合もあるためアオドウガネドウガネブイブイなどと混合されることもある。

生息地

日本では本州四国九州のほか、佐渡島伊豆諸島隠岐諸島対馬壱岐島五島列島種子島屋久島黒島に生息する。海外では朝鮮半島済州島中国大陸に見られる。低地から山地まで全般的に生息している。

生態

主に木上に足の先についているを木にひっかけて止まっている。

成虫

大柄なハナムグリで、頭は四角く、背中が平らになった形をしている。全身に緑褐色の金属光沢がある。この金属光沢にはいくつかの型がある。緑色と銅色のものがよく見られる。

飛行能力が優れている。飛び方が特徴的で、飛翔時に前翅(鞘翅)を内側に傾けると、多くの甲虫のように開かなくても側面に隙間ができ、この状態で後翅を伸ばせるので、前翅を閉じたまま後翅を羽ばたいて飛ぶ。また、足場が無くても離陸できる。

クヌギコナラアキニレシラカシヤナギアカメガシワなどの広葉樹樹液を餌とする。カブトムシクワガタムシの集まる樹液の出るところでは、このカナブンや近縁のハナムグリ類が多数集まるのが良く見られる。

姿はシロテンハナムグリ等に非常に似るが、彼らと違い越冬能力を持っておらず、成虫の活動期間は例外なくひと夏のみ、それも1ヵ月程度である。

幼虫

カナブン類は普通種であるのにもかかわらず幼虫の生態は長い間不明であったが、近年の研究によると、クズ群落などの乾燥した環境に生息し腐植物を食べて育つらしいことがわかった。ただしこういった環境は相対的に希少であるため、枯れ草や落ち葉がある程度有れば発生を繰り返すことの出来るシロテンハナムグリなどに比べ、環境破壊への耐性において本種は劣勢を強いられている。なお飼育する場合はマットの水分量が多いと前蛹での死亡率が高くなってしまうため、かなり水分量を少なめにする必要がある。

近縁種

日本に生息する近縁種として次のようなものがある。生息地、習性も似通い混生する場合が少なくないが、緩やかな棲み分けも認められる。

形態学的識別点はいずれもはっきりしており、不明瞭、緩慢な差異ではない。

和名からもわかる通り体色に違いがあるが、カナブン自体にも同じような色彩変異があり、一概に決められるものではなく、色彩だけで種類を同定しようとするのは危険である。

アオカナブン Rhomborrhina unicolor Motschulsky, 1861
緑色型のカナブンよりも金属光沢が強く、彩度が高い。体型は細長く、後脚の左右の基節が互いに接する。相対的に冷涼な環境を好み山地性の傾向を持つ。気温が高いと産卵せず、大都市近郊での激減の大きな原因となっている。北海道にも生息する。福江島には亜種 ssp. fukueana
クロカナブン Rhomborrhina polita Waterhouse, 1875
体色は完全な黒色であり光沢は強い。野生状態では多年1化であり、繁殖速度が遅い。アオカナブンと違いかつては都市部の公園でも大量の個体が見られたが、今世紀に入り激減して珍品化した。
サキシマアオカナブン Rhomborrhina hamai Nomura, 1964
石垣島と西表島に分布する。山地性で湿度の高い土壌に見られるが幼虫期間が長く羽化まで3年以上かかる。
チャイロカナブン Cosmiomorpha similis nigra Niijima et Kinoshita, 1927

先島諸島に分布し島ごとに4亜種に分類されている。

関連項目

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参考文献

外部リンク