カイ・シデン

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カイ・シデンKai Shiden)は、アニメ『機動戦士ガンダム』『機動戦士Ζガンダム』『機動戦士ガンダムUC』に登場する架空の人物。宇宙世紀0061年生まれ。

声優古川登志夫。『ガンダムさん』では下山吉光

概要

サイド7に住むプエルトリコ系移民の17歳。大型特殊の免許をいくつか所持している。家族関係は劇中では明かされないが、父親はサイド系技術者、母親は医者と設定されている。

漫画『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』では、アムロ・レイハヤト・コバヤシフラウ・ボゥとは高校のクラスメイト(カイは留年)としている。また、コンボイレーサーとして知られた存在であると公言。反抗的な不良少年でアムロたちを強引に連れ出し、立ち入り禁止の開発区に入り込もうとして銃撃されるなど無茶な一面も見られた。後にジャーナリストとして身を立てる伏線として政治にも強い関心を持っていた。

一年戦争終了時の最終階級は、テレビ版では伍長、劇場版では少尉である。

一年戦争終結後は軍を退役。社会復帰プログラムの援助を受け、ベルファスト大学でジャーナリズムを専攻。通信社勤務を経てフリーのジャーナリストへと転向する。戦後の代表的な著作は「巨人達の黄昏~グリプス戦役」「天国の中の地獄」「月の専制君主たち」。

劇中での活躍

機動戦士ガンダム

元々民間人で、戦争に対しても逃避的であったため、当初は皮肉や嫌味など憎まれ口を叩くことが多く、ブライト・ノアを始めホワイトベースの乗組員らから煙たがられていた。第2話では「軟弱者」とセイラに平手打ちされ、第7話でも態度に業を煮やしたブライトから鉄拳制裁を受けている。20話でも一時的にハヤトらと脱走した際に、彼だけがリュウ・ホセイに殴られる。表向きはおちゃらけたキャラクターで、皮肉を飛ばしたり照れ隠しにうそぶいたりもするが、実際は誰よりも現実主義者で、頭の回転が速く物事の本質を突く能力に長けているが、人前ではそういった姿はめったに見せなかった。

しかし、ホワイトベースが正規の乗組員(軍人)のほとんどが戦死・負傷したことで人手不足となったことと、作業機械のライセンスを持っていたことから、機銃射手やガンタンクの操縦手として半ば強制的に駆り出されることになる(初陣となったテレビ版第3話では、ハヤトと共にガンタンクに搭乗しパプア補給艦を撃沈している)。ホワイトベースが地球に降りてからはガンペリーも操縦し、13話ではガンダムの空中換装などにも協力している。物語中盤以降は、主にガンキャノンのパイロットとなる。ランバ・ラル黒い三連星などといった、ジオンのエースパイロットに翻弄されながらも、機体性能に助けられつつ激戦を重ねる。

第26話でホワイトベースがベルファストに寄港した際、軍人になるのを嫌った彼は艦を降りる。その際、ジオンのスパイであるミハル・ラトキエと出会うが、彼女が弟妹を養うために否応なくスパイに身をやつしていることを看破し、戦争の非情さを感じ取る。同情したカイは、ミハルにホワイトベースの状況を伝えた。その後、水陸両用MSの攻撃に苦戦するホワイトベース・クルーの様子を見かねた彼は、ホワイトベースへ舞い戻りガンタンクで応戦、ガンダムと連携して敵を撃退した。この戦闘の混乱に乗じてホワイトベースに潜入したミハルは、情報収集のために潜入した艦長室でカイと偶然再会、密航者(恋人)としてカイに匿われるが、その直後の大西洋上での戦闘で「弟たちが助かって、あの子たち(カツレツキッカ)が死ぬなんて道理はない」とカイに戦闘参加を懇願。ガンペリーで一緒に出撃したミハルは被弾による電気系統の故障で格納庫から直接ミサイルを操作するが、そのミサイル発射時の爆風に吹き飛ばされてしまった。彼女の死は、今まで戦争というものに真正面から向き合っていなかった彼に戦う意味を与え、その後の行動に大きな影響を与える転機ともなった。第29話のジャブロー攻防戦では、その悲しみを乗り越え、ジオンを叩く力強い決意を表す。

物語後半以降は、敵MS部隊に先制射撃をするスレッガー・ロウをたしなめたり、アムロを除く他のパイロットにリーダーシップを発揮したりと、積極的に戦闘に参加する場面が見られた。サイド6入港時にザンジバルと遭遇した際や、ア・バオア・クー攻略戦前のブリーフィングでは相変わらずの口ぶりであったが、その意識は物語当初からは想像できないほどに変わっていた。劇場版では、ジオン(赤い彗星)に縁のあるセイラに「(ジオンを倒した)その後で連邦も叩くかい?」と以後の地球圏の趨勢を見通したうえでの疑問を投げかけるなどの鋭さを覗かせる。戦災孤児であるカツ、レツ、キッカらを可愛がっており、ジャブロー寄港時に、3人が施設に預けられそうになるのを阻止したりするなど、子供好きの面も見せていた。

宇宙へ上がってからは、アムロらと共にホワイトベースの主戦力として活躍。ソロモン、ア・バオア・クーなどの主要攻略作戦では多数の敵機を撃墜している。ソロモンではガンダムと連携して要塞上陸の突破口を開き、ア・バオア・クーでは「こういう時は、臆病なくらいで丁度いいのよね」と自嘲気味に愚痴りながらも冷静な判断でSフィールドへの上陸を果たすなど多大な戦果を上げ、WB隊第二のエースパイロットとして一年戦争を戦い抜いた。

ア・バオア・クーでの決戦時、乗機のガンキャノンを破壊されるも脱出し、白兵戦でホワイトベースを死守。後にアムロの声を聞き、他の乗員と共にランチで脱出した。

『THE ORIGIN』版

漫画『THE ORIGIN』では、アニメ版以上に何でも屋ぶりを発揮するが、ジョブ・ジョン、ダニーといったパイロットたちと同程度の技量として、つまりオールドタイプの1人として描かれている。パイロットとしてはアニメ版ほどの活躍はみせておらず、命中率が低いと整備員にもからかわれる。ガンキャノンの設定は、最新鋭機ではなく重装型の旧式量産機という扱いに変更され、度々大破している(ホワイトベース隊以外の戦闘でも、旧ザク相手に一方的に撃破される描写がある)。ジャブローに向かう途上で起きたクラウレ・ハモン率いるギャロップとの戦闘では、不足した戦力を補うため、鹵獲したザクに破損したガンキャノンの頭部を乗せた「キャノンザク」をカイが発案し、この機体で出撃するがタチ中尉の旧ザクに返り討ちにされた。

カイはほぼ一貫して乗機としたガンキャノンに特別な愛着を示し、ア・バオア・クー前にはハヤトに「キャノンに愛を捧げて死のうな」と言うほどであるが、2機のガンキャノンは脱出時まで撃破されることなくセイラを救助して生還した。しかしアムロの声を聞くシーンはなく、カイの覚醒を伺わせるシーンは最後までなかった。

小説版

小説版では、民間人ではなく、他のキャラクターと同様、最初から軍人(パイロット候補生・曹長)として登場する。終盤では中尉に任官され、アムロやハヤトと共にニュータイプへと覚醒し、怒涛の活躍を見せた。ハヤトに続きアムロまでもが戦死する中、カイは物語の最終局面まで生き残り、キシリアやシャア、ペガサスクルーと共にズム・シティへ乗り込んで制圧。逃亡を図るギレンを感知して捕捉したのもカイのニュータイプ能力がなせる業だった。キシリアがギレンを射殺した直後、そのキシリアも即座にシャアに殺されるという一連のザビ家滅亡の顛末を見届けた。その際「なあ、アムロ・・・コレでいいのか?」とアムロに疑問を投げかけるシーンがある。

一年戦争後

公式作品
機動戦士ガンダム THE ORIGIN』外伝「アルテイシア0083」
ノア夫妻の依頼で新聞記者を装ったカイが、イギリスで「アストライア財団」の一員として戦争孤児の救援に奔走するセイラを訪ねるエピソードが描かれる。ジオン過激分子らの接触への用心を託けるのが目的であったが、逆に己の軟弱ぶりを恥じさせられるカイであった。これをきっかけに、カイはジャーナリストへの道を選ぶことになる。
機動戦士Ζガンダム
地球連邦軍の内情を探ろうと白い背広姿という出で立ちでジャブローに潜入する。そこで、偵察に潜入していたエゥーゴのレコア・ロンドと出会うが、共に連邦軍兵士に捕まってしまう。ジャブローに降下したカミーユ・ビダンに救出されてカラバに合流するが、指導者としての能力がありながらクワトロ・バジーナの偽名で一パイロットに甘んじているシャア・アズナブルに疑問と不満を抱いていた。その後はジャーナリストの立場でエゥーゴやカラバに独自の支援を続けた。テレビ版ではハヤトにクワトロはシャアだと書かれたメモだけを残して有耶無耶に消えているが、劇場版では、直接ハヤトに「クワトロはシャアだ」と告げるシーンが描かれており、共闘することに疑問も呈している。ラストではセイラと再会し、シャアに関するインタビューを行うシーンが添えられた。
機動戦士ガンダムUC
宇宙世紀0096年5月、連邦政府の上院議員ローナン・マーセナスから直接指名を受け、ネオ・ジオン残党軍襲撃後のダカールに赴く。「ラプラスの箱」をめぐる一連の事件におけるビスト財団の関与の証拠を提示され、その公表を依頼されるが、カイは申し出を断り、交渉は物別れに終わる。なお会話の中で、隕石落としを決行したシャアに対して、カイが徹底して批判の立場を取っていることが明かされている。OVA版では、ブライトから反ジオン派ながら信頼のおける人物として、ネオ・ジオンのジンネマンとの共同作戦を執るための交渉役を任される。
非公式作品
以下に挙げる作品に登場するが、いずれも公式な設定というわけではない。
漫画作品
機動戦士Ζガンダム デイアフタートゥモロー ―カイ・シデンのレポートより―
劇場版『Zガンダム』の設定に準拠して描かれている。
グリプス戦役時代のジャーナリストとしてのカイを主役に据えて物語が展開された。本作では、ハヤト以外にもアムロやベルトーチカ・イルマに直接協力するなど、主にカラバと連携した活動を行っている。劇中ではカラバのジャケットを着ているシーンも見られる。
機動戦士VS伝説巨神 逆襲のギガンティス(原題『ガンダムVS伝説の巨神』)
ロンド・ベル隊発足記念式典に出席したアムロ・レイを影武者と発表するが後に撤回する騒動を起している(撤回するまでの間にブライト・ノアが接触し事情を説明したとの説が作中で囁かれている)。
機動戦士ガンダム 英雄伝説
「SDクラブ」に掲載(No.8 - 12)された漫画。
第二次ネオ・ジオン抗争で行方不明になったアムロを探すカイを描いている。かつてのガンダム・チームの面々と接触し、レストアされたガンキャノンでヤザン・ゲーブルの駆るギラ・ドーガと戦った。
機動戦士ガンダム デイアフタートゥモロー ―カイ・シデンのメモリーより―
宇宙世紀0105年にサイド3にて開催されている「一年戦争展」の会場を舞台にジャーナリストとしてのカイを主役に据え、一年戦争を回想する形式で物語が展開されている。
ゲームブック
機動戦士ガンダム シャアの帰還
第一次ネオ・ジオン抗争後にホンコンシティでシャアと遭遇した場面が描かれている。シャアが再び歴史の表舞台に登場することを信じ、ルオ商会への紹介状を渡すことで間接的ながら挙兵に協力した。
その他
アナハイム・ジャーナル
宇宙世紀0099年におけるアナハイム・エレクトロニクス社の企業広報誌という設定。
カイがアナハイム社のメラニー・ヒュー・カーバイン名誉会長(当時)に行ったインタビューが収録されている。

主な搭乗機

逸話

ソロモン編で、出撃の際に注意を受けたセイラへ「愛してるよ」と返すシーンがある。担当声優の古川登志夫は本気の告白であると考え、そのように演じたが、監督の富野由悠季から「カイはそんなセリフを喋る男ではない」と怒られ、軽口を叩いているように演じ直させられた。このことは古川には少々不満のタネになったらしく、あとで残念がっている。

また、『機動戦士ガンダム』でチーフシナリオライターを務めた、脚本家の星山博之は自分の好きなキャラクターにカイを挙げ、戦後のドイツ・デュッセルドルフの「蚤の市」における彼との架空会見記をムック『ガンダム・センチュリー』にしたためている。

関連項目

脚注

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